外国から貨物を輸送するときは、船や航空機を使います。どちらの輸送方法も一長一短があるため、運ぶ商品によって、うまく使い分けるようにしています。
船であれば、何といっても輸送料金が安い点が大きいです。大量かつ低価格で輸送するときは、船で運ぶことが一番です。一方、航空機の利点は、何と言っても「輸送日数」にあります。地球の裏側にある国から荷物を輸入しても、わずか数日の間に届くため、厳しい納期が求められているときに役立つ輸送方法です。
- 船は料金が安い。
- 航空機は、納期が短い。
それぞれの輸送方法は、これらのメリットとデメリットを併せ持つ性質があります。完璧な輸送方法は存在しないため、貨物などに合わせた最適な輸送方法を選ぶ力が重要になります。
そこで、この記事では、船で輸入した場合、日本の港へ着いてから、どのような流れで輸入通関が行われていくのかをご紹介していきます。
輸入貨物の流れ~FCLとLCL
船で輸入すると、日本側の港では、どのような流れで手続きが進んでいくのでしょうか? 具体的な説明に入る前に、まずはFCLとLCLの違いを説明していきます。
FCLとLCLの違いとは?
コンテナ船での輸送には、大きく分けると2種類あります。一つ目は、FCL(コンテナ)、2つ目はLCL(コンテナ未満)です。通関実務の中では、FCLのことを「CY」、LCL貨物のことを「CFS」とも言います。これら複数の呼び方がある理由は、後ほど説明する貨物が搬入される所に関係してきます。
CY=コンテナヤード CFS=コンテナフレイトステーション
FCLとは何?
下の図をご覧ください。FCLとは、フルコンテナロードという名前の通り、コンテナ1本を借りて輸送する方法です。コンテナ1本分のスペースを借りて、その中にできるだけ多くの貨物を載せたい人に便利です。しかし、輸送する商品によっては、そこまで大きなスペースがいらないこともありますね。
極端なことを言うと、みかん箱一つくらいしかないのに、大きなコンテナを1本丸ごと借りる必要があるのか? ということです。もちろん、そんな必要はありません。そこで「LCL」という輸送方法があります。
LCLとは?
LCLとは、レス ザン コンテナロードという名前の通り、コンテナ1本未満の荷物を運ぶときに便利な輸送です。「できるだけ送料を安くしたい!でも、一般の配送便(国際郵便や宅配便)なでは運んでくれない!」このようなときにLCLとして輸送します。
下の図をご覧ください。こちらがLCLを図にした物です。一本未満のスペースを複数の荷主と合積みすることによって、スペース分だけの輸送料金で貨物を輸送できます。このように、一本のコンテナスペースを買いとり、他の荷主の貨物を集めて商売する業者を「フォワーダー」と言います。今後、最適な輸送を構築するためにも、このフォワーダーとのお付き合いを大切にすると良いです。
コンテナ輸送の中にある2つの輸送方法・FCLとLCLは、運ぶ荷物の量によって切り替えます。しかし、実は、運ぶ量以外の点でも、FCLとLCLを使い分ける理由があります。それが次の2つです。
- できるだけ早く輸入許可を受けたい。
- できるだけダメージを受けないようにしたい。
これらを希望するときは、少ない量であっても、あえて「FCL」を使うことも多いです。
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それでは、FCLとLCLの違いが分かった所で、それぞれにおける輸入通関の流れを説明していきます。
FCLで輸入するときの流れ
まずは、フルコンテナで貨物を引き取るときの流れです。ステップとしては、次の1~6です。
- 荷揚げ
- 輸入申告
- 書類の提出
- 税関審査→輸入許可
- 貨物のピックアップ
- 国内輸送→デバン→コンテナ返却
1.荷揚げ
まずは、到着した本船からターミナルへコンテナがおろされます。搬入が終わると「搬入終了」をナックスに登録します。これにより、通関業者や税関などは、本船の貨物がターミナルに荷卸しされたことを確認できます。
関連記事:搬入があがるとは、どういう意味?
2.輸入申告
搬入が上あがると、税関に対して輸入申告をします。基本的には、この輸入申告は、通関業者にお任せするところがほとんどです。別に自身でもできますが、かける時間と削減できる代行料を考えると無意味に近いです。輸入申告のときに提出する書類は、輸入貨物のインボイス、パッキングリスト、アライバルノーティス、必要であれば原産地証明書などがあります。
3.書類の提出
税関への輸入申告とは別に、貨物を引き取るための「D/O」という書類を取得します。この書類は、船会社(代理店含む)に対して「現地で発行されたB/Lと、アライバルノーティスに示されている諸チャージ」を支払うことにより発行してもらいます。 例えば、NYK(日本郵船)であれば、こちらのページに書かれている「D/O担当」へ手続きをします。
4.税関審査→輸入許可
2番で提出した書類に対して税関審査がおこなわれます。基本的に、書類だけで審査は完了しますが、違反が多い貨物、輸入歴が浅い輸入者からの申告は、審査を厳しくします。必要であれば、税関検査等をして、書類と申告貨物に相違がないのかを確認します。問題がなければ、税関審査は終了して輸入許可が出されます。
5.貨物のピックアップ
輸入貨物を引き取るときは、3番で取得したD/Oと、4番で発行された輸入許可書を持って、コンテナが搬入されているターミナルに行きます。(もちろん、実際にこの引取り作業をするのは、コンテナを輸送するドレー会社です。多くの場合は、通関業者とドレー会社が提携していて、これらの一連の作業をすべてお任せできます。)
輸入者であるあなたは、通関業者に対して「〇月〇日何時ごろ○○に配送してほしい」と伝えておくだけでいいです。
6.国内輸送→デバン→コンテナ返却
無事に配送手配が完了していると、指定の日時、指定の場所にコンテナが到着します。コンテナが到着したら中身を取り出します。これをデバンと言います。デバンにようする時間は、およそ2時間まで決まっています。それ以上、時間がかかるときは、コンテナを運ぶ会社から待機料を請求されることがあります。
無事にデバンが終了して空になったコンテナは、港に戻っていきます。これがコンテナ単位で輸入するときの流れです。次は、コンテナ未満で輸入するときの流れを確認してみましょう。
関連記事:デバン作業で抑えておくべきポイント
LCLで輸入するときの流れ
コンテナ未満で輸入するときは、次の1~8の流れになります。コンテナ単位の説明と重複している所は、説明を省きます。
1.荷揚げ
FCLと同じです。
2.コンテナターミナルからCFSへ保税運送
1番でコンテナターミナルにコンテナがおろされると、デバン(取り出し作業)をするために、ターミナル近くの保税倉庫へ移動します。
3.デバン(貨物の取り出し)
LCLの場合は、このタイミングで、合積みになっているコンテナから荷主ごとに商品を取り出します。無事に取り出し作業が終ると、倉庫の従業員によって、ナックスに「搬入の通知」をします。つまり、FCLの場合は「●●ターミナルに搬入された」と搬入をあげる一方、LCLの場合は「○○倉庫に搬入された」と情報をあげることになります。
どこの倉庫でデバンされているのかは、アライバルノーティスの下に記載されているでD/O交換先およびデバン倉庫を確認するとわかります。
4.輸入申告
FCLと同じです。
5.書類の提出
FCLと同じです。
6.税関審査→輸入許可
FCLと同じです。
7.国内輸送(混載便やチャータートラックなど)
通関業者が契約している混載便業者に、輸入許可書とD/Oを渡します。混載便業者は、これらの必要書類をもって、貨物が保管されているデバン倉庫へ荷物を引き取りに行きます。無事に荷物を引き取れたら、指定の納品先へ納品をして終了です。
以上、FCLとLCLにおける輸入通関の流れでした。
まとめ
- FCLとLCLは、コンテナを丸ごと借りて輸送するのかの違いです。
- なるべく納期を早くしたい、貨物にダメージを与えてくないのならFCLがお勧めです。
- FCLは、ターミナルにおろされたタイミングで搬入があがります。
- LCLは、保税倉庫でデバンをした後、倉庫の作業員により搬入が行われます。
- 輸入通関は、これらの搬入の後、輸入申告→税関審査→輸入許可→引き取り準備→引取り→返却になります。
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