「日アセアンEPA」果実酒を輸出するときの原産性証明方法

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日本と自由貿易協定(EPA)を結んでいる国へ商品を輸出するときは「特定原産地証明書(とくていげんさんちしょうめいしょ)」が必要です。この証明書は、日本側の輸出者が取得して、相手国の買い手(輸入国側)に送付するものです。相手は、日本から届いた特定原産地証明書を貨物の輸入申告のときに提出すると、免税や減税措置を受けられる仕組みになっています。

今回は、そんな特定原産地証明書の中でも「果実酒の輸出」に関するポイント、特に東南アジア諸国へ向けて輸出するときの利用すべきEPAについてご紹介していきます。

EPAを利用して果実酒の輸出をするときのポイント

2017年現在、日本は15の国と地域との間で、経済連携協定(EPA)を結んでいます。これにより、お互いの国で関税に関する優遇を行っています。

例えば、日タイEPAは、日本とタイとの間に結んでいる経済協定です。日本の商品をタイ向けに輸出するときは、タイ税関の方で関税の優遇を受けられます。一方、タイの商品を日本へ輸出するときは、日本税関で関税の優遇があります。(タイ側の視点)このようにお互いの国で、お互いの産品にかかる関税を優遇しあうことで、一緒に経済成長を目指すことを目的としています。ただし、優遇を受けるためには「原産品の証明」をすることが求められます。

原産品の証明とは、輸出しようとする商品が「本当に日本製であるのか?」を証明することです。もし、この証明がなければ、協定を結んでいる国以外で生産された商品にも関税の恩恵を与えてしまうことになるからです。どのような物が原産品にあたるのでしょうか? その基準が詳しく書かれているのが「品目別規則(ひんもくべつきそく)または「一般規則(いっぱんきそく)」です。

輸出者は、この品目別規則などで決められている「原産品の条件」に基づいて、輸出する商品の原産品を証明することになります。そして、この証明をして原産品の認定がされると、はじめて「特定原産地証明書」が発行さます。これがEPAによる関税優遇措置を受けるための全体的な流れになります。

さて、先ほど、輸出する商品の原産性基準は、品目別規則に書かれているとお伝えしました。この品目別規則は、それぞれの協定ごとに異なるため、広く浅く検討するときは、すべての品目別規則を一つ一つ確認する必要があります。今回は、果実酒に関する各協定の品目別規則に書かれている原産条件をまとめて調べてみました。その内容が以下の表になります。

■果実酒とは?

果実を利用して製造するお酒です。例:梨のお酒、ラズベリーのお酒など

協定名 原産条件
アセアン CC
ベトナム
シンガポール 2204項から2206項までの各項の産品への他の類からの材料の変更(8類または20類からの変更を除く)
マレーシア
タイ
インドネシア
ブルネイ
オーストラリア
メキシコ
ペルー
スイス
フィリピン 2206項の商品への他の類の材料からの変更(8類、9類、20類、21類からの変更を除く)
インド 締約国において製造され、かつ、製造に使用する全ての材料が当該締約国において完全 に得られるものであること。

左側の国名の部分は、すぐに理解できます。しかし、右側の条件部分は、何だか難しいことが書かれています。この部分が原産性条件といわれるところです。(原産性条件=どのような物を日本の原産品として認めるのか?)特定原産地証明書をとるときには、この部分が大きく関係してくるため、詳しく確認していきましょう。

原産条件に書かれている意味とは?

上記表の右列をじっくりと確認すると、CCや「2204項から2206項までの各項の産品への~」などが書かれています。これは、どのような意味なのでしょうか? まず大前提として、この条件部分に書かれている内容は「果実酒の原材料に外国産の物が含まれている場合」に適用するものです。もし、すべての原材料が日本産または、相手国産であれば、この条件は無視することができます。その代りとして、原産品であることを証明するサプライヤー証明書が必要です。

以下は、外国産の原材料を使って果実酒を作る前提で説明をしていきます。

原材料の中に外国産の物が含まれている場合は、どうすればいい?

外国産の原材料を使って完成品を作るときは「CC」や「2204項から2206項までの各項の産品への~」など、品目ごとに決められている原産品条件を満たすようにします。

CCとは、関税分類変更基準(CTCルール)のうちの一つのルールです。CTCルールは、完成品のHSコードと原材料のHSコードの違いをもって、原産品とみなすルールのことです。このCTCルールの中には、CC、CTH、CTSHの3つの変更レベルがあります。これらのうち、最も高い変更レベルを求めているのが「CC」です。具体的には、原材料のと、完成品のが異なっていると、原産品として認められます。詳細は:CTCルールとは?

類とはなに?

世界にあるすべての品目は6桁の数字で表しています。これを「HSコード」と言います。HSコードは1類~97類まであり、世界中にある品目は、この類の中のいずれかに必ず該当しています。先ほどから出てきている「類」とは、このHSコードの所属のことを示しています。完成品を製造するときに使われている原材料を一つ一つリストアップして、それぞれが「どこの類に属する物なのか?」を検討していきます。

例えば、説明中にでてきた22類、8類、20類であれば、次のような物が属します。22類は、水やアルコール全般、食酢などが含まれます。8類はナッツ類、20類は、加工した果実ジュースやナッツ類が該当します。これらの類に属している原材料を使って、果実酒を製造しているときは、日本の原産品とは認めない ということを示しています。もし、使っている原材料が、どこの類に含まれているのか調べたいときは「ウェブタリフ輸出版」を使います。

分類 原材料名
22類 水、アルコール全般、食酢など
8類 食用の果実やナッツ類
20類 保存ができるように加工した野菜や果実ジュース・ナッツ類全般

もう一つの条件例を考えてみましょう。「2204項から2206項までの各項の産品への他の類からの材料の変更(8類または20類からの変更を除く)」の一文には、次の2つの条件が書かれています。

1つめは、2204項~2206項までに所属する製品(果実酒は、2206)は、他の類からの材料の変更が必要とすることです。これは、果実酒を製造するときに使用する原材料のHSコードが22類以外であることが条件ということです。

2つめは、使用している原材料の中には、8類や20類に属する材料を使うことは認めないということです。先ほど、類に所属する貨物でもお伝えした通り、8類や20類には、果実や果実の調整品が該当します。果実酒を作ろうとしているのに、その原料の中心である果実(外国産)を使えないことになります。これでは困ってしまいますね。そこで「別の協定を適用できないのか?」を考えます。

果実酒 特定原産地証明書

下の図をご覧ください。左の赤枠には、アセアンとベトナムが書かれています。その右側の原産条件には「CC」と書かれています。実はこの部分がその答えになります。CCとは、原材料の類と完成品の類が変更されていれば良いという原産性のルールです。この場合、それ以外の細かいルールが設定されていないことがポイントです。

東南アジアには、2つのEPAがあります。

東南アジアには、2つのEPAが併存しています。「1.日本との個別EPA」、「2.日本と東南アジア全体EPA」です。

日本との個別のEPAは、日本と一対一の協定です。日タイEPAや日マレーシアEPAなどが該当します。一方、日本と東南アジア全体EPAは、東南アジア(アセアン加盟国)に所属するすべての国で有効なEPAです。つまり、東南アジア向けにEPAを利用して輸出するときは、個別EPAと包括EPAのどちらが有利なのかを判断して適用するようにします。

果実酒の場合、アセアンとベトナム協定には、CCという条件のみが設定されています。これは、その他の協定を使うときよりも緩やかな原産性条件であることを意味しています。この事実から次のような考えがうまれます。

「ベトナム向けであれば、日ベトナムEPA、その他の東南アジア向けであれば、日アセアンEPAを適用して輸出する」です。

二国間EPAだと、原産条件に「8類または20類に属する材料(果実やその調整品)が使えない」という根幹的な問題があります。一方、日アセアンEPAでは、CC以外の条件が設定されていないため、日本の原産品としての証明ができるからです。ただし、日アセアンEPAと個別EPAには、相手先の国で設定されている関税率に差があることも考慮した方が良いです。これについては、「2国間EPAと全体EPAの使い分け方法」でお伝えをしています。

まとめ

基本的に東南アジア地域への輸出は、果実やナッツ類に関係する製品は、厳しい条件が設定されています。外国産材料を使って製品を作っても良いけれど、その外国が「東南アジアに属する外国」と指定されていることもあります。そのため、もし、原産性の条件を満たすことが厳しい場合は、二国間EPAではなく、アセアン全体EPAを適用できないかを考えます。

今回の果実を利用して作ったアルコール全般でいうと、二国間EPAでは、原料の中心である「果実」が外国産であることを認めていません。一方、日アセアンEPAの場合は、この原料の部分が外国産品であっても良いことになっています。そのため、果実酒を輸出するときは、日アセアンEPAを利用するという結論になります。

基幹記事:東南アジアのトビラ

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