「新TPP/CPTPP」表面だけじゃない!完全累積制度のとらえ方

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ベトナム・ダナンで開かれた関係閣僚会合により、TPP11(アメリカ抜き)は、大筋合意に達しました。今後は、各加盟国の国会において批准作業が行われる予定です。仮にこの批准が11か国中、6国以上になれば、TPP11(CPTPP)は、発効されます。

さて、このTPP11については、きわめて大きな関心を持っておられる方も多いはずです。「関税はどうなる?」「海外勢との価格競争力はどうなのか?」などです。未だ発効されるのかは不透明な状況ではありますが、少しずつ未来に訪れるであろう「TPPルール」を理解していくことをお勧めします。

そこで今回は、TPP11の一部分である「完全累積制度(かんぜんるいさきせいど)」をご紹介します。

中小企業と完全累積制度

TPPとは、複数の国との間に共通の経済圏を作り、その中で行われる取引について、様々な規制を取り払い自由化することをいいます。この自由化する項目は、商品にかかる関税の削減に始まり、投資、サービス提供、国外移動に関するルールなど、幅広い分野にわたります。今回、説明する関税累積制度とは、この関税部分に関係するルールの一つになります。

■TPP11の加盟国

アジア 日本ベトナムシンガポール
ブルネイ マレーシア
北米カナダ
オセアニアオーストラリアニュージーランド
南米メキシコペルーチリ

TPPに限らず、自由貿易を利用する上での最も重要なポイントは「締約国内で生産された物であるか?」という点です。TPPは、日本を含む11か国との間で作る経済圏のことです。この11か国の中で生産された商品のことを「原産性がある貨物」と言います。ただし、ここでいう原産性貨物とは、ただ単純に締約国内で生産されていれば、良いわけではありません。原産性のルールを満たす加工や生産をしているのかが問われます。

例えば、あなたは、中国(TPP加盟国)からクッキーを輸入した後、日本国内で包装して輸出するとします。このような商品は、日本の原産品になるのか?ということですね。もちろん、この場合はTPPで決められている「実質的な加工」には当たらず、日本の原産品にすることはできません。

では、次の場合は、いかがでしょうか。域外である中国から木製の家具の完成品を輸入したとします。この家具に必要な部品をいくつか取り付けた物を輸出しようとした場合、これは日本の原産品になるのか?ということです。「日本の工場で生産しているから原産品になる」と思いがちですが、残念ながらそれは間違いです。たとえ、本当に日本の工場で生産されていたとしても、それがそのまま「原産性がある商品」とはならないことになっています。

なぜなのでしょうか? それがTPPで決められている原産性基準や「完全累積制度」に大きく関係してきます。今回は、これらの内、完全累積制度について詳しく説明していきます。

完全累積制度とは?

先ほども説明したように、TPPを利用するときは、商品に原産性があることが条件です。仮に日本の商品に対してTPPの効果を受けるには、日本国内において「完全に生産すること」または「実質的な変更を加えること」のどちらかの条件を満たすことが求められます。ただし、TPPの場合は、この条件に加えて、他の加盟国で生産した物を合算することが認められています。

例えば、自動車の完成品を日本で生産しています。この内、日本で製造した部分が20%、TPPの加盟国で作られた部分が30%だとします。仮に日本で作られた部分だけを原産部分だと考えると、完成品に対する原産部分が20%となってしまいます。このように原産部分が低い場合、TPPにおける「原産商品」にすることはできません。そこで、この日本の原産部分に対して、他のTPP加盟国で生産された物を合算=累積できる仕組みがあります。

上の自動車の場合であれば、日本の原産部分20%と、他のTPP加盟国の30%部分を累積して、原産性部分が50%になります。商品によっても異なりますが、多くの場合、50%~60%前後の水準に達している物であれば「原産性がある」と判断されることになっています。この原産部分を合算できる仕組みのことを「完全累積制度」と言います。

アジア 日本ベトナムシンガポール
ブルネイ マレーシア
北米カナダ
オセアニアオーストラリアニュージーランド
南米メキシコペルーチリ

完全累積制度には、どのようなメリットがある? ビジネス環境はこう変わる!?

完全累積制度によって、貨物に対する原産部分は、他のTPP加盟国の物と合算することが可能になります。では、この仕組みによって、どのようなメリットがあるのでしょうか。また、今後、予想されるビジネス環境は、どのような変化が訪れるのかを予想してみたいと思います。

まずメリットの部分です。こちらは、生産工場や仕入れ先国などがぐっと柔軟になる事です。

例えば、TPPの加盟国であるカナダから、基幹的な原材料を調達します。それをTPP加盟国である「ブルネイの工場」で加工して、日本または他の国へ輸出します。これにより、技術力が高い国からの部材を柔軟に仕入れることができる一方、生産自体は、コストが低い国へシフトできるため「品質が良い、かつ低価格商品」を提供できるようになります。つまり、TPP圏内において、仕入れ国と生産国を柔軟に調整できるメリットがあります。

では、この辺りのことを含めて、TPP11によりビジネス環境は、どのように変化するのでしょうか? 新たに誕生するであろうビジネスモデルを考えると「国際OEM」が考えられます。OEMとは、自社の製造工場を持っていないメーカーが、製造工場を持っている会社へ生産を委託して、自社の商品を製造してもらうことをいいます。この生産方式は、すでに日本で一般的であるため、特に疑問を持たれることは少ないはずです。

私が言う「国際OEM」とは、この生産工場が国内にあるのではなく「TPP域内」にあることを想定しています。

例えば、ブルネイ、ベトナム、シンガポールなどに、様々な生産工場があるとします。それぞれの工場には得意、不得意の分野があり、生産量なども様々です。日本の企業は、それぞれの工場が提供する生産レベルと照らし合わせながら、これら海外にある工場に対して、柔軟に委託生産するモデルが考えられます。なぜなら、TPP域内で生産や製造された商品であれば、原則的に「原産性がある商品」とみなされるためです。

このような状況を考えると、新しく生まれるビジネスモデルとしては、TPP域内にある生産工場と、日本の生産委託したい企業との「調整役」が考えられます。

例えば、

「シンガポールにあるBという生産工場であれば、○○と〇〇の生産が得意であり、品質レベルは○○ある」

→日本で生産を委託したいC社には、シンガポールのB工場をつなげる。

または、

「シンガポールの工場でB行程まで終えた商品を、ペルーにある工場でC行程から行いたい」

→生産を委託したいD社には、シンガポールとペルーの国での工場をつなげたり、調整したりする。

その他、このビジネスモデルに関連することも発展の余地があると考えております。これが完全累積制度による広い意味でのメリットとなります。

完全累積制度における3つの国の分類

完全累積制度には、これまでの生産に関する考え方を大きく変えるメリットがあります。この状況を踏まえて、今後は、TPP域内にある国を次の3つに分類して考えることが重要です。「1.基幹部品を生産する国」「2.賃金が安く生産コストを抑えらえる国」「3.所得が高く、消費する国」です。

1.基幹部品を生産する国

日本のような国です。ある完成品を生産するときに、品質レベルを考えて、高度な技術力を必要する「核となる部分品」の生産を得意とする国です。

2.賃金が安く生産コストを抑えられる国

TPP域内において、賃金や物価水準、労働力、知的レベルなどを考えて、最も安くかつ高品質な商品を作り上げられる国のことです。最近の傾向でいうと、ベトナム産の商品が増えているように感じます。

3.所得が高く、消費する国

日本やカナダ、シンガポールやベトナムなどが入ります。将来的には、ベトナムなどもこの類の国になります。

まとめ

TPPにおける完全累積制度は、表面的にとらえると、あまりメリットがないように感じます。しかし、もう少し広くとらえると、これまでの生産の現場で常識だったことを大きく覆す可能性があります。実は、この記事でお伝えしていないビジネスモデルもたくさんあります。ぜひ、新しいTPPに関するルールを広い視野でとらえていただき、世界に販売を拡大していただきたいと思います。

ゼロから学ぶTPP(環太平洋パートナーシップ協定)

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