【EPA貿易】タイ向けクラッカーをCTCルールで証明

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商品の原産性を示すルールの一つとして「関税分類変更基準(CTCルール)」があります。これは完成品のHSコードと、完成品に使われる原材料のHSコードとの間に、一定の変化があることで、日本の原産品と判断するルールです。このルールを使う上での重要なポイントは、完成品のHSコードと原材料のHSコードには「差分」です。

例えば、外国産の原材料を利用してケーキを製造した後に輸出するとします。このとき、使われる原材料としては「小麦粉」「卵」「砂糖」などが考えられます。これら三つの原材料のHSコードが完成品であるケーキの原材料に対して、規定のレベルで変更しているのか?を確認します。

  1. 完成品のHSコード、原材料のHSコードを調べる。
  2. 原材料と完成品(ケーキ)のHSコードと見比べる。
  3. 1から2へと変化したことをHSコードで判断をする。

上記の1~3の流れによって、原材料と完成品(ケーキ)とのHSコードの違いを証明します。これがCTCルールの大原則です。この記事では、タイ向けにクラッカーを輸出するとして、その原産性をCTCルールで証明するまでの一連の流れをご紹介していきます。

原材料のHSコードを特定する方法

関税分類変更基準を利用するときは、完成品に使用するすべての原材料のHSコードを特定します。この特定とは、約10000ものHSコードから製品の特徴を考えて、たった一つのコードを見つけることです。10000という数を考えると、何かと大変な気がします。しかし、これらは決められた規則で分類されているため、慣れてしまえば特定は容易です。最近は、ウェブ上の検索ができる「ウェブタリフ」等もあります。

関税分類変更基準を適用する場合の原材料(HSコード)の特定作業の練習をしていきます。

関税分類変更基準(CTCルール)を適用する上での前提条件

関税分類変更基準の記事でも詳しく説明をしていますが、CTCルールを適用する場合は最初に二つの点を確認しなければなりません。

1.どのEPA(経済協定)を適用するのか?
2.品目ごとに定められている変更レベル

1.どのEPAを適用する?

2019年、日本は17のEPAを結んでいます。そのため、第一段階として「どこの国に輸出=どのEPAを適用するのか」をしっかりと決めなけければなりません。協定ごとに「免税扱いになるのか、ならないのか」「免税扱いになるための基準」などが異なるためです。要はしっかりと輸出する国を考えてから行うことが大切です。

2.品目ごとに関税分類の変更レベルが異なる

1番の適用するEPAが決まったら「原産地規則ポータル」を確認して、品目ごとに定められている「変更レベル」を確認します。変更レベルとは「商品がどれくらいの加工されたら原産品とみなすのか」を定めている基準です。これには、CC、CTH、CTSHの三つがあり、CC>>CTH>>CTSHの順で求められる変更レベルが大きいです。つまり、基準が高いです。

日ベトナムEPA 品目別規則

具体的には、CCはHSコードの上位二桁(類)の変更が求められます。CTHは四桁(項)の変更、最後のCTSHは六桁(号)の変更となります。これらの変更レベルが品目ごとに定められているため、最初にどのレベルの変更が求めれているのかを品目別規則で確認する必要があります。

関税分類変更基準(CTCルール)を適用する場合は、「1.どのEPAを適用るのか」「2.変更レベル」が必要になります。そのため、以下の記事を読み進める前に「関税分類変更基準を適用するための基礎知識」をお読みいただくことをおすすめします。今回は、タイ向けのクラッカーの輸出を「CTCルール」で証明していきます。

完成品(クラッカー)をタイへ輸出するときに考える手順

完成品(クラッカー)をタイに輸出するときの手順は次の通りです。

  1. 完成品のHSコードを特定する。
  2. 原材料のHSコードを確認する
  3. 協定上の原産性ルールを確認する。
  4. 対比表に落とし込む

まずは、以下の画像をご覧下さい。これは皆さんがご存知の有名クラッカーの原材料表示です。今回はこの製品に関する特定原産地証明書を取得すると仮定して、原材料部分における関税をどのように特定していけば良いのかをご紹介します。

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原材料をリストアップします。これらはすべて非原産材料(外国産材料)であると仮定した上で、関税分類変更基準を使って原産性を証明していきます。

原材料 原材料のHSコード 完成品(クラッカー)のHSコード 関税番号の変更
小麦粉  ?? 1905.90
植物油脂  ??
砂糖  ??
ぶどう糖果糖液糖  ??
食塩  ??
モルトエキス  ??
膨張剤  ??

1.完成品のHSコードを特定する

特定原産地証明書を取得する完成品のHSコードは、EPAを締結されたときのバージョンを基準とします。

例えば、日本とタイとの間にあるEPAを活用して輸出する場合は、タイ側で使用している「HS2002」を基にしてHSコードの特定をします。一方、「日ベトナムEPA」は「HS2007」を使用します。各EPAごとに異なりますので、必ず確認してください。関連記事:HSコードのバージョンの違いに注意!

HSコードは、簡易的に調べるのであれば、日本の税関で公https://hunade.com/use-epa-ex/#2/#hsver開されているHS2002やHS2007に該当する「輸出統計品目表」を確認すれば良いです。しかし、同じバージョンであっても国によって多少の違いがあります。そこで以下の二つの方法によってさらに正確性を高めます。

1.輸入者を通して現地の税関にHSコードを確認

一つ目の方法が輸入者に頼んで相手先の税関に確認してもらうことです。特定原産地証明書を受け取る側の税関から確認をいただくので、最も安心できる方法です。関連記事:外国税関の事前教示制度(Advance Ruling System)対応状況

2.ワールドタリフで各国で使われているHSコードを調べる。

このサイトを使えば、世界各国で使用されているHSコードや関税率などを横断的に調べることができます。このサービスは基本的に有料です。しかし、ジェトロ(日本貿易振興機構)とフェデックスとの包括契約によって、日本在住の人や企業であれば誰でも自由に使うことができます。とても便利な機能であるため積極的に使うようにしてください。

ワールドタリフ(WorldTariff)の登録方法ワールドタリフの使い方

ポイント:完成品のHSコードは、相手国のコードが基準!

2.原材料のHSコードを特定

先ほどの表をもう一度確認します。関税分類変更基準は、原材料と完成品のHSコードに違いがあることが条件です。先ほど、完成品のHSコードはタイ側が基準となると説明しました。今回の原材料の部分については、日本側のHSコードを基準しても問題はありません。(表中の?の部分です。)

原材料 原材料のHSコード 完成品(クラッカー)のHSコード 関税番号の変更
小麦粉  ?? 1905.90
植物油脂  ??
砂糖  ??
ぶどう糖果糖液糖  ??
食塩  ??
モルトエキス  ??
膨張剤  ??
完成品:タイ側のHSコードを基準 原材料部分:日本側のHSコードを基準してもOK!

クラッカーのHSコード(完成品)を現地の税関へ問い合わせところ「1905.90」だということがわかりました。よって、使われるすべての原材料が、1905.90で定められている変更レベルで加工されていればいいです。では、次にその加工レベルは、どのようになっているのかを確認します。

3.クラッカー(1905.90)に求められている変更レベル

日タイEPAを適用して輸出する場合は、完成品のクラッカーには、どのような変更が求められているのかを日タイEPAの原産地規則で調べます。(原産地規則ポータル

以下の画像をご覧ください。赤枠部分で「1905.90号のその他の産品への他の類からの変更….」と書かれています。これは上記で説明をした「CC(類の変更)」レベルの変更を求めていることです。よって、この表記から、クラッカーの製造で使用される全ての原材料が完成品のHSコード以外(19類以外)から調達しなければならないことがわかります。

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上記の通り、クラッカーを製造する際は原材料が19類以外に属する必要があります。19類には、どのような物が含まれるのでしょうか。関税表で確認をすると、以下の物が含まれることがわかります。基本的には小麦粉で製造した全ての商品が該当します。そのため、ここに分類される原材料を含まないように製造する必要があります。関連知識として、ある一定以下の量であれば、僅少ルール(デミニマス)を用いることもできます。

4.対比表に落とし込む

最後に対比表を作成したら完成です。ご覧になるとわかる通り、すべての原材料のHSコードと、完成品19類が異なっていますね。よって、CTCルールを適用して原産性を証明することができ、特定原産地証明書を取得することができます。本当に対比表に記入するときは、もう少し原材料のHSコードを細かく特定することが必要です。例:11類→11●●.●●など。

完成品(クラッカー)のHSコード 原材料 原材料のHSコード 関税番号の変更
1905.90(変更レベル・CC) 小麦粉 11類 11類→19類 OK
植物油脂 15類  15類→19類 OK
砂糖  17類  17類→19類 OK
ぶどう糖果糖液糖  17類  17類→19類 OK
食塩  25類  25類→19類 OK
モルトエキス  13類  13類→19類 OK
膨張剤  21類  21類→19類 OK

HSコードが変更レベルを満たさないときの救済

使用している原材料と完成品とのHSコードが異なっていなかったり、必要とされる変更レベルを満たしていなかったりする場合はどのようにすればいいのでしょうか。この場合は、デミニマス(僅少ルール)を使います。この場合、関税番号が変更されていなくても、ある一定の割合以下であれば無視ができます。つまり、CTCルールを利用して原産性を証明できます。

まとめ

外国産の原材料を使って商品を製造したとしても「関税分類変更基準」を使えば、日本産にできます。このルールの大切なポイントは、原材料部分と完成品のHSコードの変化です。これがあるかどうかによって、原材料に「実質的な変更が加えられたのか」が判断されます。つまり日本の原産品扱いにできるかどうかの大きなポイントです。

CTCルールを利用する上でのポイントは「1.完成品のHSコードを正しく特定すること」、「2.求められている変更レベルを確認すること」「3.原材料のHSコードを特定すること」の三つです。これらの情報が基になり、完成品と原材料とのHSコードとの変化を確認することです。

【HUNADEマニュアル】初心者向けEPA貿易スタートガイド

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