近年、中国の一般家庭では、日本の「畳」を取り入れることがはやりのようです。この要因は、日本へ来た留学生が畳を経験したときの「心地よさ」が忘れられなくなり、中国の自宅においても畳を取り入れたいとの理由によるものです。これは中国に限ったことなのでしょうか。もしかすると、EPA税率を適用できる国においても「畳」の需要があるのかもしれません。
この記事は、ベトナム向けに畳を輸出する場合、日ベトナムEPAを適用できるように「特定原産地証明書」の取得方法についてご紹介します。今回は、原産性を証明するルールとして「CTCルール」を適用します。
ベトナムへ畳を輸出する場合の特定原産地証明書
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「ベトナムに畳をEPA輸出したい!」と考えたときは、次のステップに基づき検討しましょう!
- ベトナムにおける完成品のHSコードを調べる
- 完成品のHSコードを基にして、原産ルール(ROO)と税率を確認する。
- 原産性ルールの難しさと税率の兼ね合いから適用するべき協定を選定する。
- EPA協定を適用するための証明書を「取得するための資料を用意」
- 原産資料の用意ができたら、日本商工会議所へ申請する
- 申請後、判定がおりると証明書を取得できる。
この1~6の流れで考えています。
1.ベトナムにおける完成品のHSコードを調べる
まずは、ベトナム側の輸入者に頼み、対象産品のベトナム税関が認めるHSコードを特定します。よく「当社は、このHSコードで日本から輸出している!」と、そのまま日本側のHSコードを活用される方はいますが、それは間違いです。必ずベトナム側の税関が認めるHSコードに基づく必要があります。
ベトナム税関に対象のHSコードを聞きたいときは「Advance Ruling System」を活用します。今回は、この畳のHSコードを「4602.19」とします。
2.完成品のHSコードから原産性ルールとベトナム側の関税率を確認
完成品のHSコードから…..
- 対象産品の原産性ルール
- 関税率の確認します。
原産性ルールは、税関が運用する「原産地規則ポータル」で確認、関税率は、フェデックスが運用する「ワールドタリフ」で確認します。
関連記事:ワールドタリフの登録方法
2-1.原産地規則ポータルで確認
2019年2月現在、ベトナムは、日ベトナムEPA、日アセアンEPA、TPP11の三つの協定を利用できます。適用する協定により、ベトナム側の関税率や原産性ルールの難しさに違いがあるため、比較検討します。原産地規則ポータルで調べた所、原産性ルールは、以下の通りです。
- 日アセアン=HS2002
- 日ベトナム=HS2007
- TPP=HS2012
ここで注目するのは、完成品のHSコードです。実は、EPAには、協定ごとに基準とするHSコードのバージョンが違います。つまり、バージョンの影響により、同じ品目でも、HSコードが違う可能性があるため、必ず協定に適したHSコードを特定するようにします。畳の場合は、日アセアンからTPPまで次のように2つのコードがあります。
ポイント:協定に適した完成品のHSコードを特定すること
完成品のHSコード | 協定名 | 原産ルール |
4602.10 | 日アセアン | CTHまたはVA40% |
4602.19 | 日ベトナム | CTHまたはVA40% |
4602.19 | TPP11 | 第四六・〇二項の産品への他の項の材料からの変更 |
2-2.協定ごとの関税率を確認
ワールドタリフには、現在の最新版のコードを入力します。畳の場合であれば「460219」を入れます。その結果が次の通りです。
協定名 | MFN(WTO) | 日アセアン | 日ベトナム | TPP11 |
関税率 | 20% | 9% | 11% | 0% |
3.原産性ルールと税率の兼ね合いから適用する協定を選ぶ。
関税率だけで判断すると、TPP11を適用するのがベストです。では、この結果だけをもって、TPP11を適用するべきと判断しても良いのでしょうか?もちろん、そうではありません。必ず原産性ルールと併せて考えます。日アセアン協定、ベトナム協定、そしてTPP11の原産性ルールと関税率は、次の通りです。この場合であれば、第一に関税率が最も低いTPPを検討します。検討の結果、原産ルールを満たせないときは、次の日アセアン協定を検討します。
日アセアン | CTHまたはVA40% | 9% |
日ベトナム | CTHまたはVA40% | 11% |
TPP11 | 第四六・〇二項の産品への他の項の材料からの変更 | 0% |
*TPP11を適用するときは、以下で説明する特定原産地証明書は不要です。特定原産地証明書に代えて輸出者または輸入者が「原産品申告書」を作成することにより、EPAのメリットを享受できます。
4.原産性を証明する資料を用意する
特定原産地証明書を取得するには、日本商工会議所に対して、産品が原産品である旨を証明する必要があります。具体的には、対比表またはワークシートと呼ばれる原産性資料を作成した後、商工会議所へ提出して審査を受けます。
対比表の作成順
対比表とは、完成品を原材料に分解して、原産性ルールを満たすことを証明する表です。
例えば、畳の完成品の中には、いぐさ、畳表、縁の3つがあるとします。この場合、作成するべき対比表は、次の通りです。(私は畳の専門家ではないため、間違っている可能性があります。)=考え方をお伝えしています。
完成品のHSコード | 原材料 | 原材料のHSコード | 原産国 |
4602.19 | イグサ | 1401.90 | 日本 |
合成繊維糸 | 5407.43 | 中国 | |
稲わら | 1213.OO | アメリカ |
対比表の左側にある完成品のHSコード(4602.19)と、右側にある原材料のHSコード(1401.90など)は、TPP、日アセアン、日ベトナムなどの原産性ルールを満たしています。よって、こちらの原材料の組み合わせであれば、どの協定でも特定原産地証明書を取得できます。(TPPは自己証明制度)
対比表の作成ができたら、日本商工会議所の発給システムより「原産品判定依頼」をします。判定依頼をすると、対比表を求められるため、これを提出します。
まとめ
今回は、畳を海外へ輸出することを想定して、畳の原産性をCTCルールで証明しました。CTCルールの最も大きなポイントは、使われている原材料部分のHSコードと完成品のHSコードが指定されたレベル(CC、CTH、CTSH)で変更されている必要があります。逆に言うと、この変更さえ証明ができれば、どこの外国産の貨物であっても原産性が認められることになります。

