外国から物を購入したり、外国へ物を売ったりするときは「関税」という壁があります。関税は外国の安い商品が国内へ流通しないようにする役割があります。国内産業を保護する目的としては、ある一定の効果があります。しかし、外国の商品を安く購入したい人は、関税によって「高い税金」を負担しなければならないことがあります。
では、この関税は必ずかかるものなのでしょうか。実は関税は商品毎に異なる物が設定されています。この商品はかかるけれど、これにはかからないということがたくさんあります。その他、商品ごとではなく「どこの生産国の商品なのか」によっても関税有無の違いがあります。また、日本とEPA(経済連携協定)を結んでいるのかによっても商品に対する関税がかからないことがあります。
この記事では、商品の関税を強力に削減できるEPA(経済協定)についてご紹介をします。
EPAの魅力と効果
目次
EPA(経済連携協定)はある特定の国との間に経済分野での約束をすることをいいます。約束の内容としては以下の物があります。EPAの目的は経済交流を活発にするために「経済の壁」を取り払うことです。EPAによって経済的な壁が取り払われるため、良くも悪くも世界の影響を強く受けることになります。
1.お互いの国にかけられている関税をなるべく撤廃すること
2.お互いの国における外国企業に対するサービス分野・投資分野の規制を撤廃すること
3.お互いの国民の交流が活発になるようにビザなどの発給要件を緩和すること
2016年現在、日本は世界の16の国と地域との間にEPAを結んでいます。この15の大半は東南アジア諸国です。この地域は今後も成長が続くと見込まれているため、これを取り込もうとする日本側の狙いがあります。この他、EPAを導入することにより以下のメリットがあります。
1.売上を増やせる可能性があります。
EPAは国の自治を維持したまま経済分野での国境を撤廃することを意味します。これは日本と外国が「経済的に統合」することを同じです。経済的な国土の拡大によって、貴社の商品が外国における勝負する場所が増えたとお考え下さい。お互いの国関税が撤廃されるというのは、脅威でもありチャンスでもあります。
2.外国の商品を安く仕入れることができる。
EPAはお互いの国においてかかる関税を撤廃します。当然、日本へ入ってくるときにかかる「関税」も掛からないため、関税分を安く仕入れることができます。
3.外国で商品を販売するときの価格競争力を向上できる。
上記でも述べた通り、お互いの国の関税を撤廃することにより外国の商品を安く購入ができます。しかし、EPAは外国商品を安く購入できるだけではありません。外国においても関税がかからないため、その分、外国における価格競争力をつけることができます。
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外国で商品を販売する際は、現地の方へなるべく安い価格で販売ができるようにするのが理想です。もちろん、日本ブランドであれば、現地での販売価格が相場より10%程度高くても許容される場合が多いです。しかし、この価格差が10%以上になると不利な立場に立たされるとお考え下さい。
実をいうと、関税は考えているよりも設定価格の中で大きなウェイトを占めるものです。物によっても異なりますが、中には30%という高関税が設定されている物もあります。それがEPAを適用することにより、一気にゼロになるわけですから、それだけでも価格競争力が大きく向上することがわかります。
4.自社の商品力そのもので勝負ができる
EPAは日本と外国だけのお話ではありません。外国同士も積極的にFTA(EPA)を締結しています。EPAを適用しないまま輸出をすれば「刀を持たない武士」として戦わなければならなくなります。先程も述べた通り、「日本ブランドだから高くても仕方がない」と許容される価格差は10%前後です。逆にいうと、現地で販売する商品の価格差がこれ以下であれば、値段の部分ではなく、品質で勝負ができることを意味します。
5.長期的な目線で貿易相手国を捉えれば、爆発的に売上をのばせる。
2016年現在、日本はと国との間でEPAを結んでいます。私たちが外国と聞くとすぐにアメリカやヨーロッパが浮かびますが、むしろこれからはEPAを締結している国をメインに考えるべきです。
基本的に日本とEPAを結んでいる国は「これからの成長が期待される地域」です。現状では、国民所得の観点からすぐに顧客とはならないかもしれません。しかし、向こう10年も経たないうちに加速度的に国民所得が向上して、すぐに貴社のメインターゲットとなる存在になるはずです。つまり、今のうちからこれらの地域との貿易を行っていれば、相手国の国民所得が向上するにつれて、貴社の売上が爆発的に増えていく可能性があります。
情報(思い込み)を制するものがより大きな果実(結果)を受け取ることができます。
人間は未知なる物に挑戦するときに何かしらの「思い込み」により断念することが多いです。貿易の世界で言うと、自社に海外で通用する人材がいない、資金がない、英語が不得意などの思い込みです。先程からご紹介しているEPAについても、担当者が「??」というところが意外と多いです。しかし、時代の流れが速い中での「停滞」は、後々痛い思いをすることになります。そのような停滞を防ぐためにも「EPAの相談窓口」等もありますので、お気軽にお問い合わせください。
現在は、インターネット等が発達しているため、今まで苦労していたことがすぐに解決するサービスが充実しています。
例えば、人材面で適した人がいないのであれば「クラウドワークス」と呼ばれるサービスによって、スポット的に人材の力を借りることができます。また、資金が不足しているようでれば、政府の「外国のマーケットに挑戦するさいの補助金」などを活用したり、「クラウドファンディング」と呼ばれるサイトで投資家を募ることができます。
EPAをしっかりと活用して有利な貿易を行えるかどうかは、貴社における貿易担当者の力量次第だと言えます。当たり前のようにITの技術を使いこなし、尚且つ貿易の知識に精通している人でなければならない時代が来ています。
まとめ
次世代の貿易としてEPAを活用した戦略的な貿易をご紹介してきました。2016年、日本は16の国と地域との間においてEPAを締結しています。そのため、これらの国々と貿易をすれば上記で説明をしたEPAの効果を受けられることになります。
できない理由を探して海外に挑戦をしないことは簡単です。しかし、この場合、貴社の同業他社に「おいしい果実」を取られるのは明らかです。また他社が海外市場のシェアを広げて潤っている一方、日本の中でジリ貧になっている貴社の姿が目に浮かびます。冒頭でも述べた通り、日本政府の大号令により、すでに10年以上前のEPA締結によって「海外を見よ」という方針が示されています。
この事実をふまえると、もはや海外市場を無視することはできなくなります。無視することはすなわち「くちて滅びる」ことを意味します。どんな小さな会社であっても必ず海外の市場を含めて考える必要があります。
むしろ日本を国内市場ととらえるのではなく、世界市場の中の一つの市場である日本と捉えるべきです。貴社の思い込みによる海外市場への断念が他社の「旨み」になります。諦めてくればくれるほど、他社は喜ぶのです。そのことをしっかりと考えなければなりません。

