多国間EPA(日アセアン)と二国間EPA(日タイ)の使い分け

多国間と二国間EPA自由貿易(EPA)
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関税を低くする仕組みに「EPA」があります。この制度は、特定の国との二国間と多国間との間で取り決める物があります。当サイトのメイン市場である東南アジアは、この二国間EPAと多国間EPAが併存する地域です。二国間と多国間のどちらも適用できる場合、どのように使い分ければいいのでしょうか?

多国間EPAと二国間EPAは、商品の種類によって、有利・不利が変わります。したがって、輸入する商品ごとに「どちらのEPAを適用した方が有利になるのか」を考える必要があります。

多国間EPAと二国間EPAが併存する場合

ベ・ドンチョル氏の「2030年 富の未来図」によると、列強時代から続く欧米中心の国際社会が「アジア中心に大きく」シフトすると言われています。また私自身の経験からもアジア地域、とくに東南アジアに大きな可能性を感じます。2019年現在、日本と東南アジア地域とは「一つの多国間EPA」と「7つの二国間EPA」があります。一方にしか加入していない国もありますし、どちらにも加盟している国があります。

二国間と多国間の2つの違い

二国間と多国間には、次の2つの部分に違いがあります。

  1. 関税率の差
  2. 原産性ルールの厳しさ

1.適用される関税率に差がある

関税率とは、その商品を輸出したときに、相手国で何パーセントの関税が課せられるのか? です。実は、同じ商品を輸出するときも、二国間EPAと多国間EPAでは、適用される関税率に差があるときがあります。輸出する品目によっても異なりますが、一般的に、二国間EPAを適用して輸出した方が有利な関税率が適用される場合が多いです。

下の表(2016年現在)は、日本酒をベトナムとタイ向けに輸出したときの関税率を表しています。タイでは、日アセアンEPA(全体EPA)と日タイEPA(個別EPA)のどちらを適用しても無税になります。しかし、これがベトナム向けになると、およそ倍の関税率の差です。

同じ商品でも適用するEPAで相手国での税率が変わる。
ベトナム向け輸出MFN(WTO税率)日アセアンEPA日ベトナムEPA
55%24%12%
タイ向け輸出MFN(WTO税率)日アセアンEPA日タイEPA
60%無税無税

2.原産品条件の厳しさに違いがある。

「何をもって原産品とするのか?」これを決めるのが原産性条件です。原産性条件は、商品ごと、国ごとに違います。そして、同じ国に同じ商品を輸出しても、適用するEPAによっても厳しさに違いがあります。原産性情報は、各EPA協定書に一般規則または、品目別規則で記載されています。

例えば、品目別規則には、以下の図のような内容が書かれています。

日アセアン

この意味は「赤枠に所属する商品を輸出したいときは、緑枠の条件をクリアしてください」ということです。実は、アセアン全体EPAと、個別EPAを見ると、同じ商品であっても、この条件の部分が微妙に異なっている場合があります。

商品に設定されている原産地規則に違いがある。一般的には、二国間協定の方が原産性条件が厳しい。

東南アジアのEPA一覧

2019年現在、次の七か国と二国間EPAを締結しています。

日・シンガポールEPA
日・マレーシアEPA
日・タイEPA
日・インドネシアEPA
日・ブルネイEPA
日・フィリピンEPA
日・ベトナムEPA

また同時に次のような「日・アセアンEPA」という多国間EPAも締結しています。このEPAに加入しているのは、以下の10か国です。

二国間協定日アセアン協定(多国間)TPP11(多国間)
シンガポール
ベトナム
マレーシア
ブルネイ
タイ
フィリピン
インドネシア
カンボジア
ミャンマー
ラオス
輸出先が同じ、さらに同じ商品であっても、適用される関税率が違う。複数の協定から最も有利な物を選ぶ。

パターン1・「革製のバッグ」を輸入する場合

下の表は革製のバッグの関税表となります。東南アジア地域を原産国とする革製バッグには、どのような関税がかかるのかを確認できます。

背景が青色になっている部分が対象の関税率です。上下に二つある理由は、カバンに装飾されている物の有無によって異なる関税が適用されるからです。この例でいうと、重要ではありませんので、どちらか一方のみをご覧ください。なお、以下に掲載する画像は、ウェブタリフの画面を保存して加工した物です。

東南アジアEPA-HUNADE (4)

まずは、この表の見方を説明します。表の左側には、商品の特徴や材質などの項目(情報)が記載されています。表の上側は国名(EPA名)が並んでいます。左の商品の項目(情報)と上にある国名がクロスするところが商品に適用する関税となります。例えば、日ベトナムEPAであれば、革製のものが3.1%、または1.7%の関税が適用されることになります。

東南アジアEPA-HUNADE (4) - コピー

それではもう少し表の中を細かく確認していきます。まずは革製のバッグには、どのような基本関税がかかるのかを確認します。下の表を見ると、約10%~20%弱の高額な関税がかかることがわかります。これは1万円の商品であれば、2000円もの消費税を払うのと同じことです。これが革製のカバンにかかる基本的な関税率です。

一方、特別特恵を適用できる国(ラオス、カンボジア、ミャンマーなど)では無税になったり、EPAを活用すれば、同じく無税や低率になったりすることが分かります。これを前提として以下を説明していきます。

HUNADE

マレーシアEPA、タイEPA、インドネシアEPAを適用すれば「無税」で輸入できます。

東南アジアEPA-HUNADE (1)

フィリピンEPAやベトナムEPAであれば、通常の関税よりも「低率」で輸入できます。

東南アジアEPA-HUNADE (3)

多国間が加入する「アセアンEPA」も同じく通常の関税よりも「低率」な関税が適用される。

東南アジアEPA-HUNADE (2)

一方、アセアン諸国の中で最も「革製のバッグ」に対する関税を厳しくしているのがシンガポールです。シンガポール産の革製バッグには、日本との二国間EPAは存在しません。そのため、上記の通り、アセアンEPAを適用して輸入するしかありません。

東南アジアEPA-HUNADE (5)

以上をまとめると、次のように1、2、3ステップで考えることができます。

1.その国は、特別特恵(LDC)を適用できる国なのか?→特別特恵で輸入

2.1に該当しない場合、二国間EPAか多国間EPA(日アセアン)の適用を考えます。

3.二国間と多国間どちらも適用できる場合は、どちらを適用した方が関税が安いかを考えます。

東南アジアの革製バッグと関税率の対応表

下の表は、アセアン地域から革製バッグを輸入する場合、特別特恵、二国間EPA、多国間EPAのうち、どの制度を適用した方がいいのかを示すものです。特にベトナムの例外には気を付けなければなりません。ベトナムの場合は、二国間EPAの税率の方が、多国間EPAの税率よりも高くなっています。

ベトナムの事例からもわかる通り、原産国や商品によっては、多国間と二国間の税率が異なる場合があります。このようなときに適切な制度を選ぶことができるかが重要です。

 原産国 特別特恵 二国間EPA 多国間EPA(日アセアン)
ラオス
ミャンマー
 カンボジア
シンガポール
マレーシア○ *無税
 タイ○ *無税
 インドネシア○ *無税
 ブルネイ
フィリピン ○
 ベトナム○*注意

まとめ

EPAの中にも二国間と多国間の差があることがわかりました。これは、商品の種類や原産国によって細かく異なっています。今回の革製バッグに限って言えば、この例外はベトナムに存在しました。ベトナムから革製バッグを輸入する場合は、日ベトナムEPAではなく、多国間EPA(日アセアンEPA)を適用するべきです。これによって、わずかながら有利な関税率を適用できます。

このようにEPAを適用する場合は、原産国や商品によって二国間EPAや多国間EPAを適用するかの判断が大切になります。この判断を他の貨物と同じように「一つのEPA」だけを適用していると、実は大きな損をしていることもあります。しっかりと商品に対する「適用できるEPAを選択」することが、あなたの輸入ビジネスの成功につながります。

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