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海上危険物の申告フロー(書類・時間軸)
海上危険物申告フロー(書類・時間軸)
海上で危険物を輸送する場合、最も重要なのは 「誰が・いつ・どの書類を準備し、どの時点で船会社の承認を得るか」 です。この流れを誤ると、ブッキング不可・輸出遅延・港則法違反など実務上重大なトラブルにつながります。
実際の輸送では関係者が多く、それぞれの責任範囲とタイミングを誤解すると手続きが停滞します。まずは全体の流れを4つのフェーズに分けて整理しましょう。
危険物申告の全体像
危険物輸送は次の 4 ステップで進みます。
1.事前確認フェーズ(出荷2〜4週間前)
貨物の危険物性の判定、UN番号・クラス・PG の確定、包装とラベルの要件確認
2.承認フェーズ(出荷1.5〜2週間前)
船会社へ危険物情報を提出し、積載承認(Approval)を取得します。
3.書類作成フェーズ(出荷1週間前〜CY搬入前)
DGD(危険物申告書)、SDS、その他必要書類を準備します。
4.搬入・出港フェーズ(CY搬入時)
コンテナへのプラカード表示・VGM提出・港則法に対応します。
最初のステップは、危険物であるかどうかを正確に見極めることです。ここを誤ると、その後の承認や書類手続きがすべて無効になるため、最も慎重な確認が必要です。
1. 事前確認フェーズ(出荷 2〜4 週間前)
貨物が危険物かどうかを判断します。
判断の起点は SDS(安全データシート)セクション14 です。
- UN番号(UN No.)
- 正しい船積み品名(PSN)
- クラス分類(Class)
- パッキンググループ(PG)
- 特別規定(SP)
- 数量制限(Ltd Qty / EQ)
これらは IMDG コードではなく SDS の記載が一次情報 です。荷主は SDS 内容の正確性に責任を持つ必要があります。
容器・包装の要件確認(UNマーキング)
容器に以下が刻印されているか必ず確認します。
- UNマークの記号(4G、1A、1H など)
- 比重(Specific Gravity):充填する液体の比重がこれを超えてはならない
- 耐圧値(kPa):輸送中にガス発生がある液体では重要
不適切な容器は承認されず、再梱包が必要になります。
数量制限(LTD QTY / EQ)の確認
該当する場合は以下が可能になります。
- 通常ラベル → LTD QTY マーク に変更
- DGDの記載:数量欄に “Limited Quantity” と明記
- 料金面:危険物サーチャージ(DGS)が低くなる場合がある
危険物の内容を把握したら、次に行うのは船会社への申告と承認です。ここは輸出を正式に進めるための「積載許可」を得るプロセスです。
2. 承認フェーズ(出荷 1.5〜2 週間前)
船会社の積載承認(Approval)取得
危険物は Approval がなければブッキング確定になりません。
提出する主な情報:
- SDS(最新バージョン)
- DGDドラフト(署名前で可)
- UN No. / PSN / Class / PG
- 充填量・数量・容器情報(UN仕様)
- 温度管理が必要な貨物は加温条件(必要温度)
承認リードタイム
危険物の種類により承認までの時間が変化します。
- PG III(低危険度):早い(1〜2日)
- PG II:中程度(2〜5日)
- PG I(高危険度):長い(5〜10日)
- Class 2.3、Class 6.1、Class 7:拒否される場合がある
Approval が遅れると ブッキング締切に間に合わないため、早期提出が必須です。
承認が下りたら、次は実際に輸送書類を整える段階に入ります。このフェーズでは、法的に義務づけられたDGDやSDSなどの正確な作成がポイントです。
3. 書類作成フェーズ(出荷 1 週間前〜CY搬入前)
必要書類
- DGD(危険物申告書)
- SDS(Safety Data Sheet)最新版
- コンテナロードレポート(CLR)または充填証明書
- 危険物ラベル貼付チェックリスト
- プラカード情報
DGDに記入する主な項目
- UN番号(例:UN 1993)
- PSN(例:FLAMMABLE LIQUID, N.O.S.)
- クラス、PG
- 包装形態(例:UN 4G)
- 数量(LTD QTY の場合はその旨記載)
- EmS番号(F-E, S-E など)
- 署名(荷主または代理人)
DGDは 荷主が危険物規則を遵守したことを宣言する法的文書 です。
書類が整ったら、いよいよ現場での搬入と出港準備です。ここでは安全表示や港湾手続きなど、実際の動きに直結する作業を行います。
4. 搬入・出港フェーズ(CY搬入時)
コンテナへのプラカード貼付
危険物を積んだコンテナには、四面すべてにプラカードが必要です。
- サイズ:25×25cm 以上
- デザイン:危険物ラベルと同一
- 貼付担当:フォワーダー/CFS/CY
- 荷主の義務:正確なラベル情報(UN No., Class)を提供
VGM(総重量)提出
IMDG 貨物は過積載が重大事故に繋がるため、VGM の正確性は特に重要です。
港則法の手続き
港則法に基づく手続きは 船会社または代理店(ライナーエージェント)が担当 します。 荷主の役割は次の通りです。
- 正確な危険物情報(DGD)を提出
- 補足情報の依頼があれば迅速に回答
港則法の申請が不備の場合、船は入港できずスケジュール遅延の原因になります。
危険物申告フロー(時間軸まとめ)
| 時期 | 荷主の作業 | 船会社・フォワーダー |
|---|---|---|
| 出荷 2〜4 週間前 | SDS確認 / UN番号・クラス・PG確定 / 容器確認 | ー |
| 出荷 1.5〜2 週間前 | SDS・DGD案を提出 / Approval取得 | 危険物承認(可否判断) |
| 出荷 1 週間前 | DGD作成 / プラカード情報提供 | CY搬入予約 |
| CY搬入時 | プラカード貼付確認 / VGM提出 | 港則法申請 / 最終確認 |
| 出港後 | 船積書類の控え受領 | 運航管理 |
輸送が完了しても、荷主やフォワーダーの責任は一部残ります。特に液体危険物などは、申告後の管理体制や証拠の保持が重要です。
申告後のリスク管理と責任
液体危険物では、バルブやマンホールを封印し、シール番号をDGDやCLRに記録する。責任分岐点を明確にするため必須。特定品目ではNKKKの収納検査が必要で、CY搬入前後に実施される。
実務の円滑化には、荷主だけでなくフォワーダーの協力が不可欠です。ここでは、フォワーダーが担う調整とコスト管理のポイントを見ていきます。
フォワーダーの役割とコスト戦略
LCLの混載判断とCFS手配はフォワーダーの役割。混載不可時はFCL切替やDGSの交渉を依頼する。DGSは船会社と航路で差が大きく、見積段階で調整する。
書類の保管義務
DGDやSDSは法的文書として一定期間保管が必要。監査や事故対応の基礎資料となる。
以上の各フェーズを理解したうえで、実務者が特に押さえるべき重要ポイントを整理します。
まとめ
海上危険物の申告は 情報の正確性と時間軸管理がすべて です。
- UN番号・クラス・PG は SDSで確認
- Approval は早めに取得(特にPG Iは時間がかかる)
- LTD QTY を活用すればコスト削減の可能性
- プラカードとDGDの整合性は必須
- 港則法対応には荷主の正しい情報提供が不可欠
この流れを理解することで、危険物輸送の遅延・拒否・コスト超過を防ぐことができます。

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