米/3Dプリンターで関税回避 中/書店はビジネスチャンス

セカイマ2020-34 貿易コラム
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今回は様々な分野でビジネスチャンスのある商品を紹介するとともに、貿易を巡る各国制度の話題もお届けする。アメリカからは輸出好調な3Dプリンターについて、中国の書店業界に進出した日本の蔦屋書店、シンガポールからは乳糖不耐症に対応した牛乳についての話題を紹介する。加えて、タイ政府による電子サービス税の徴収計画、カンボジア政府による貿易手続きのペーパーレス化計画のニュースもお届けする。

米/3Dプリンターで関税回避 中/書店はビジネスチャンス 泰/電子サービス税 来年にも 柬/ペーパーレス貿易へ 星/牛乳の新規開拓市場

アメリカ 新時代の3Dプリンター 関税回避も

アメリカ・マサチューセッツ州サマービルに本社を置く3Dプリンター製造販売のスタートアップ「Formlabs」は、今年3月からにわかに活気づいている。もともと、日本、中国、シンガポール、ドイツを含む国内外の中小企業と取引をしていたが、3Dプリンターがパンデミックによる収益減に悩まされる各事業者の救世主となったことが大きい。

例えば、オハイオ州のある歯科技工所は、このプリンターを使ってマスクなどの個人用保護具の製造に切り替えることで収益減を乗り越え、従業員を早く復職させることができた。その他のケースでは、このプリンターによる製造に切り替えることによって、海外から部品等を調達する必要がなくなり、輸入関税を回避することもできたという。

3Dプリンターの考察

パンデミックによってグローバリゼーションの終焉を予測する声もあったが、中国が輸出数の増加を報告するなど、世界貿易は予想よりも早く戻りつつある。ナショナリズムの風が吹くアメリカでは、スニーカーメーカーのニューバランスなど、”メイドインUSA”を謳う企業も出てきた。

一方、「Formlabs」の3Dプリンターは、本部はアメリカにあるが、製造は全て中国だ。コンパクトなサイズで高性能な機能を搭載しているにもかかわらず、安価に製造販売でき、コストパフォーマンスが高い商品だ。「Formlabs」代表のラカトシュ氏は、このプリンターはメイドインUSAではないが、中国で製造することで高度なスキルと低い労働コストを獲得でき、かつ、供給網が世界中にあることで急増した需要にも対応できたと答えている。

ちなみにこの記事では、ニューバランスが中国で製造された「Formlabs」の3Dプリンターを使って新モデルを製造していると皮肉を込めて指摘している。本記事から見えてくるのは、3Dプリンターには海外生産に頼ることなく関税が回避できるなどのメリットもあるが、国産にこだわり海外の供給網を断ち切ることは不利益を生じる可能性もあるということだ。

元記事:

  • Bankok Post, These Firms Are in No Rush to Say ‘Made in the U.S.A.’

中国 書店はビジネスチャンス 蔦屋書店の上海1号店

蔦屋書店は今年12月、上海・長寧区の文化パーク「上生・新所(コロンビア・サークル)」に新店舗をオープンすると発表した。コロンビア・サークルは、約100年前の租界時代に上海に住んでいた欧米人たちのレジャースポット「コロンビア・カントリークラブ」の建物を文化保存の対象として改築した複合施設などで有名な再開発地域。蔦屋書店の上海1号店は、東京の銀座店や代官山店と同様の内容で、厳選された書籍とライフスタイルを提案する商品が並ぶ大規模書店になる予定。

中国の書店の考察

中国語圏の書店業界は、世界的なデジタル書籍化とは一線を画す流れを見せている。台湾の「誠品書店」が日本に進出するなどの成功を収めたり、中国では90年代に生まれた民営書店の数がピークに達している。中国はEコマースが盛んな国にも関わらず、書店の実店舗数は増加の一途を辿っているそうだ。

元々中国には、歴史的に書物をめぐる強い文化があることに加え、最近では空間に付加価値を与えた書店が求められている。例えば、子どもが宿題をする場やイベントの場になるなど、地元の人々が集うコミュニティスペースのような役割を持つ店が増えてきているという。日本国内では書籍発行数が年々減少し続けているが、中国語では紙の書籍がまだまだ健在。蔦屋書店の上海進出がそれを証明している。

元記事:Retail News Asia, Japan’s Tsutaya Books opens first China outlet

タイ 国外事業者に電子サービス税 来年にも

タイ議会では先日、国外の電子商サービスプロバイダーに付加価値税(VAT、日本における消費税)を徴収するための電子サービス税(e-service tax)の草案が通過した。本法案は今のところ、2021年半ばの開始が見込まれている。現在、海外の事業者がオンラインで商品を販売する場合は電子サービス税の対象外だが、本法案が施行すれば、多くの海外事業者がサービス料を引き上げることが予想される。

電子サービス税の考察

電子サービス税制度は現在、タイ国内の事業者、および国外に拠点を置いているがタイで事業登録している事業者が対象となっている。国外の事業者は対象外だ。しかしこの制度が施行すれば、国外の事業者は販売価格を引き上げるか、低い利益を受け入れるかの選択に直面することになる。一方、タイ国内では、公平な競争の場が開かれるという期待が高まっている。

電子サービス税の対象となる企業は全て、サービスプロバイダーまたはプラットフォームとして、タイでVATの登録および支払いの義務がある。本制度の補足規則および罰則はまだ公表されていないため、登録時にタイ歳入局(TRD)のウェブサイトで確認する必要がある。

元記事:

  • Bankok Post, Draft e-service tax passes second hearing

  • The Nation Thailand, How will Thailand’s new e-services tax impact your online business?

カンボジア デジタル化でペーパーレス貿易へ

カンボジアの最大手インターネットサービスプロバイダーEZECOMは、カンボジア商務省が改革推進する貿易円滑化プロジェクト「デジタル自由貿易区(Digital Free Trade Zone, DFTZ)」を立ち上げる計画を発表した。EZECOMが遂行する事業には、貿易に際して必要なオンライン事業登録、原産地証明申請などのデジタル化だ。カンボジア政府は2023年までにデジタル経済に転換するという目標を掲げている。

ペーパーレス貿易の考察

「デジタル自由貿易区(Digital Free Trade Zone, DFTZ)」構想は、数年前にマレーシア政府によって、中国ECサイト最大手のアリババと共同で発足されている。マレーシアの例で言えば

・地元企業が簡単かつ優先的にEコマースで商品を輸出できる支援

・地元企業を国外の金融・保険サービスなどとつなぐ

・通関プロセスを効率的に管理する

などの政策が取られている。本記事を確認する限りは、カンボジアも同等の計画を推進したい考えだと思われる。このようなデジタル化の流れは、本国だけでなく海外の輸出入業者にとってもメリットとなるだろう。

元記事:

  • The Phnom Penh Post, EZECOM set to launch digital free trade zone

シンガポール 誰でも飲める牛乳は新規市場!?

シンガポール大手乳製品企業マグノリアは、乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)を消化できない「乳糖不耐症」に対応したラクトースフリーの牛乳を発売した。この製品は、植物など別の原材料を使った代替品ではなく、牛乳にラクターゼ酵素を添加して製造されている。牛乳の栄養素はそのままに、不快感などの症状を回避できる商品だ。

牛乳の新規市場の考察

牛乳やヨーグルトで胃腸に不調を感じる人は意外と多く、アジア人の実に約9割はその傾向があると言われている。「乳糖不耐症」には確たる治療法はなく、接種を避けるしか方法がない。

今回、紹介したラクトースフリー牛乳は、欧米を中心に海外では多様な製品が販売されている一方、日本産製品はあまり選択肢がなく、市場には輸入品も出回っているとは言えない。

一般社団法人Jミルクの調査によれば、日本は乳糖不耐症に対する意識が比較的低いという結果が出ている。つまり、自分の不調に気づかずに牛乳を飲んでいる人が多いということだ。言い換えれば、この分野は将来的な成長を遂げ、ビジネスチャンスがあるとも言える。乳製品の輸入には様々な手続きや規制があるが、新規開拓分野として期待が持てるのではないだろうか。

元記事:

  • CNA Lifestyle, Can you still enjoy milkshakes, Dalgona coffee and creamy pasta if you are lactose-intolerant?

  • 一般社団法人Jミルク, アジア5カ国・地域の牛乳類利用に関する調査

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