「貿易」TPPの原産地規則を理解するための16のポイント

TPP 原産地規則 TPP/日欧/日米協定
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アメリカを除く11カ国の自由貿易協定(TPP11)が2018年12月30日をもって発効されます。TPPは、日本とEPAを結んでいない、カナダやニュージーランドが含まれているため、何かと期待する方も多いかと思います。TPPによる一番の恩恵は、関税の削減です。関税とは、輸入国側で課税する輸入品に対する税金です。これを加盟国内で撤廃するのがTPPです。

もし、あなたが輸出者であれば、相手国に関税無税で輸出ができるため、これまでよりもビジネスチャンスが広がります。一方、あなたが輸入者であれば、日本に輸入するときに係る輸入原価が下がるため、売り上げの拡大か、利益部分の上振れを期待できます。これが関税無税の恩恵です。

さて、関税無税の恩恵を受けるには、TPP締約国の「原産品であること」を証明する必要があります。原産品とは、TPPで定められている原産地規則や品目別規則のルールを満たす物です。一体、原産地規則とは、どのような物なのでしょうか?そこで、この記事では、TPPで定められている原産地規則を理解するための16のポイントをご紹介していきます。

TPP 原産地規則

TPPの原産地規則サマリー

原産地規則とは、輸出する商品が「協定国で生産された物であるのか」を判断するための基準です。TPPの場合、以下の11カ国が協定国です。基本的に、これらの国で生産された物であれば、協定国の原産品の扱いを受けます。しかし、基本的にです。その理由は「何を持って域内で生産されたもの」と考えるのかにあります。

TPP11加盟国一覧
日本 カナダ ニュージーランド メキシコ
ペルー チリ オーストラリア ブルネイ
シンガポール マレーシア ベトナム

例えば、次のケースであれば、いかがでしょうか?

  • ケース1.韓国から桃を輸入しました。その後、日本の工場で、パッケージをした後、カナダに輸出しています。
  • ケース2.中国から家電製品を輸入した後、日本っぽい箱に移し換えて、ベトナムに輸出しています。

この場合、どちらもTPP協定の原産品にはできません。では、なぜ、できないのでしょうか? 何となくの感覚で「原産品にできる、できない」が決まるのでしょうか?もちろん、そうではありません。原産品にできる、できないは、協定で決められている原産地規則または品目別規則で判断します。

ここが非常に重要なポイントです。関税の免除を受けられるのは、協定国内の産物だけです。これをあえて逆に言うと、日本で生産された物でも、原産地規則を満たさない限り、協定上の原産品にはなりません。

TPP協定の場合、第3章(原産地規則及び原産地手続)に原産地規則。協定本体の付属書の3-Bに品目別規則が書かれています。この記事では、第3章に決められている原産地規則の内、特に理解するべき16のポイントをご紹介していきます。特に、TPPを活用して貿易をする方々には、必須の知識です。

TPP3章・品目別規則16のポイント

以下のポイントは、TPP協定の内、第三章のサマリーです。さらに詳しく知りたいときは、TPP協定書をご覧ください。

3章・五条 域内原産割合とは?

域内原産割合は、完成品価格の内、日本原産の材料や費用、利益などの割合です。

例えば、完成品の価格が100ドルのプラモデルがあるとします。このプラモデルを分解すると….

  • 部品A 10ドル(原産品)
  • 部品B 20ドル(非原産品)
  • 部品C 15ドル(非原産品)
  • 生産工場での生産費用 5ドル
  • 生産工場での人件費 10ドル

だとします。この場合、域内原産割合に含む対象は、部品A、生産費用、人件費の3点です。よって、完成品の価格100ドルに占める域内原産割合は、25/100=25%です。EPAでは、この域内原産割合の基準を定めて、何パーセント以上であれば、原産品とする基準があります。ちなみに、この域内原産割合を「RVC」といいます。

関連記事:TPPにおけるRVC(域内原産割合)とは?

3章・十条 原産部分を累積するとは?

域内原産品割合に含められる価格は、協定国の原産材料や費用、利益、工場の人件費などです。この原産部分は、TPP協定国内であれば、すべて累積できます。

例えば、ベトナムの工場で半完成品の状態にした後、最終加工を日本の工場で行うとします。この場合、原産部分に加えられる費用は、

  • ベトナム国内での材料費
  • ベトナム国内で生産に要する費用
  • ベトナムの工場の利益
  • 日本の工場の材料費
  • 日本の工場の人件費
  • 日本の工場の利益

などがございます。TPP協定国内の工場で作られている産品であれば、このように完成品に占める原産部分を積み増せます。この積み増す仕組みを「累積」と言い、これがTPP協定の大きな特徴である「累積原産性」です。

3章・十一条 重要!僅少(デミニマス)ルール

TPPの恩恵を受けるには、TPP加盟国の原産品の基準を満たす必要があります。このとき、原産品を完成品と、完成品に使われている構成材料に分けて考えます。

完成品は、いくつかの構成材料を合わせて作られた物

TPPの恩恵は、TPP協定国の完成品の原産品に対してのみ受けられます。しかし、これは、原産品に使う構成材料までをTPPの協定国内から調達することを求めているのではありません。構成材料は、お隣の中国など、TPPに加盟していない国から調達しても良いです。ただし、TPP加盟国以外の構成材料を使うときは、TPPで決められている変更基準を満たす必要があります。この変更基準が次の3つです。

  1. 関税分類変更基準
  2. 付加価値基準
  3. 加工工程基準

それぞれの詳細は、各リンク先でご覧ください。第十条で決められているデミニマスとは、上記3つの内、関税分類変更基準に関係します。関税分類変更基準とは、完成品と原材料との間に、HSコードの変化があれば、原産品とみなす仕組みです。しかしながら、使う材料によっては、この変更基準を満たさないこともあります。このときに使えるのが僅少(デミニマス)です。

デミニマスとは、完成品のHSコードと、その完成品に使われている原材料のHSコードの間に、関税変更が起きていなくても、それが一定の割合以下であれば、無視できる仕組みです。TPPでは、この割合を10%、つまり、産品の価格の10%>>非原産材料の合計価格になっていれば、無視ができます。

関連記事:TPP(環太平洋) デミニマス(僅少)の除外品目まとめ

TPPのデミニマス基準:非原産材料の価格の合計が産品出荷価格の10%以下

3章・十三条 付属品や予備品、解説書なども原産品?

輸出する産品と一緒に、付属品や予備品、説明書など輸出するときは、それらは、どのような取扱いになるのかを決めています。この場合、原産品を証明するルールにより取り扱いが変わります。

  • 関税分類変更基準(CTCルール)で証明するとき:原産性を考慮しません。(無視してもOK)
  • 付加価値基準(VAルール)で証明するとき:非原産材料(VNM)として考慮する必要があります。

どちらの場合であっても….

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    • 産品のインボイスと別建てになっていないこと
    • 完成品と一緒に輸出されること
    • 数量や価格が「慣習的なこと」

などの条件を満たすことが重要です。また、インボイスには、各オプション品のそれぞれの品目を記載しないほうがいいです。できれば、オプション一式として記載して、その中に〇〇がある。としたほうがいいです。あくまで産品の付随物であることを強調する表現がいいです。

原産性を無視できる一例

・付属品
・予備品
・工具
・マニュアル(解説資料)

3章・十四条 小売用に包装される資材はどうなる?

小売用に包装するための資材は、原産性を考慮する必要はありません。もし、価格を基準にして原産性を証明するVAルールを使うときは、この包装資材の部分を含めてもいいですし、含めなくてもいいです。域内原産割合の程度により、判断すればいいかと思います。(*域内割合を超えないときに、原産部分として積み増すなど)

3章・十五条 輸送用の梱包資材の取り扱い

輸送用の梱包品なども原産性を考慮する必要はありません。

3章・十六条 間接材料も原産部分に含められます!

商品を生産するときやテストなどをするときの材料を「間接材料」といいます。実際、商品自体には組み込まれていませんが、その商品を作るときに支払っている材料費(費用)であるため「間接」といいます。この間接材料は、生産場所に問わず、すべて原産材料とみなします。間接材料には、次の物があります。

  • その商品をテストするための燃料
  • 試験に使用するときの設備、備品
  • 手袋、保護メガネ、履物、専用安全福など
  • 工具
  • 予備部品や潤滑油など
商品を開発、生産するために、間接的に支払っている費用=間接材料

3章・十七条 産品のセット品を作るときはどうなる?

産品のHSコードは、より特徴がある部分で所属が決定するルール(通則)があります。TPPでは、商品のセット品のHSコードを決めるときは、この通則に従うようにルール付けされています。商品のセット品に対する通則は、次のプロセスで決まります。

  • 下に表示する通則3A または Bでその商品の所属を決定する
  • セット品に含まれる商品がすべて原産品であること
  • セット内容のうち、非原産の産品価格がセット価格の10%以内であれば、原産品にできる。

3 2(b)の規定の適用により又は他の理由により物品が二以上の項に属するとみられる場合に
は、次に定めるところによりその所属を決定する。
(a) 最も特殊な限定をして記載している項が、
これよりも一般的な記載をしている項に優先
する。ただし、二以上の項のそれぞれが、混合し若しくは結合した物品に含まれる材料若
しくは物質の一部のみ又は小売用のセットの構成要素の一部のみについて記載をしている
場合には、これらの項のうち一の項が当該物品について一層完全な又は詳細な記載をして
いるとしても、これらの項は、当該物品について等しく特殊な限定をしているものとみな
す。
(b) 混合物、異なる材料から成る物品、異なる構成要素で作られた物品及び小売用のセット
にした物品であって、(a)の規定により所属を決定することができないものは、この(b)の
規定を適用することができる限り、当該物品に重要な特性を与えている材料又は構成要素
から成るものとしてその所属を決定する。

(c) (a)及び(b)の規定により所属を決定することができない物品は、
等しく考慮に値する項
のうち数字上の配列において最後となる項に属する。

引用元:日本税関(http://www.customs.go.jp/tariff/mikata/tuusoku.pdf)

3章・十八条 産品は直送することが必須条件!

TPPの原産品を輸送するときは、直送が条件です。日本からカナダ、カナダからオーストラリアなど、加盟国間をダイレクトに輸送します。第三国を経由しても良いのは、輸送上、積み替えのみです。それ以外で第三国を経由すると、その時点で、原産性資格を失います。また、積替え船の場合、スルーB/Lの提出が必要です。

3章・二十条 特恵待遇の要求をするときに必要な知識

TPPで決められている関税の優遇措置を受けるときに必要な書類や条件などが記載されています。

関税の優遇措置を受けるための原産地証明書は….

  • 所定の様式に従わなくてもよい。
  • 書面によるものであること(電子的な手段でもよい)
  • 商品が原産品であることと、要件を満たすことを記載する
    付属書三-Bに定める一連の必要的記載事項を含める。
  • 原産地証明書は、英語または、輸入国側の言語で記載する。

の4つがポイントです。また、原産地証明書の使用回数には、次の2つの規定があります。

  • 一回限りの輸送で使う物
  • 12か月以内、同じ商品を二回以上輸送するときに使うもの

ご自身の貿易形態により使い分けるようにしましょう!

3章・二十一条 原産地証明書を発行するときの根拠となるものは?

TPPの原産地証明書は、輸出者と輸入者のどちらも発行できます。ただし、発行するためには、それぞれ条件があります。

輸出者(生産者でない人)が原産地証明書を発行できる条件

1.産品が原産品であることを証明するための十分な情報を入手できること
2.生産者が所有する原産品情報を入手できること

輸入者が原産地証明書を作成する条件

1.原産品であることについて輸入者が所有する書類を用意できること
2.原産品であることを輸出者または、生産者から提供された書類を入手できること

3章・二十二条 軽微なミスは、ネチネチと指摘するな!

原産地証明書は、一文字一句間違えることなく、記載することが基本です。ただし、だからといって、輸入国側の税関は、表現の相違や軽微な誤り(誤記)をもって、原産地証明書を否認してはならないと規定されています。

3章・二十三条 原産地証明書の提出が免除される条件

すべての取引で原産地証明書が必要になるわけではありません。TPP協定上、輸入品の課税価格が1000アメリカドルを超えない場合は、原産地証明書は不要です。

例えば、EPA協定国のネットショップから商品を輸入したときに、EPA税率が適用されていないときは、税関にクレームを言いましょう!ただし、関税の課税間違いを発見したときは、配送時に、商品を受け取ってはいけません。必ず受け取り拒否をします。

関連記事:「輸入ビジネス」国際郵便の受け取りで「関税額が違う!」と思ったら受け取り拒否しましょう!

3章・二十四条 TPPにおける輸入者の義務

関税の免除を受ける輸入者の義務が記載されています。また、虚偽申告をしたときの罰金に関する規定なども記載されています。

3章・二十五条 TPPにおける輸出者の義務

輸出者としての義務が書かれています。

3章・二十六条 記録の保管

提出した原産地証明書やそれに付随する文書の保管について記載されています。

3章・二十九条 輸入後の還付手続きについて

輸入時に関税の免除を受けなくても、輸入後に、申請することで、還付を受けられる仕組みがあります。ただし、次の条件をすべて満たすことが必要です。

輸入の日の後、一年以内に….

  • EPA税率の要求をすること
  • 輸入時に、産品が原産品であったことを申告すること
  • 原産地証明書の写しを提供すること
  • その他、輸入国側が要求する書類を提出できること

まとめ

  • EPAの恩恵を受けるには、協定上の原産品であることが条件
  • 原産品の判断は品目別規則や原産地規則と照らし合わせる
  • 特に三章・29条に規定されている「輸入後」の還付手続きは重要です。

ゼロから学ぶTPP(環太平洋パートナーシップ協定)

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