日本時間9日未明、南米チリにおいてTPP11の署名手続きが行われました。これにより、各国は批准作業へと入り、順調にいけば、2019年にもTPP11が発効される予定です。
米国以外11ヵ国・TPP11へ署名
アメリカは、世界最大の経済国です。最近は、自国の産業(鉄製品)を守るために、次々と「関税」と呼ばれる鉄壁を築き上げようとしています。しかし、いくらアメリカであっても、世界の「自由貿易化」の流れを変えることは難しいです。世界最大の経済国であったとしても、自由貿易圏単位で考えると、最大ではなくなってしまうからです。
さて、そんなアメリカの動きとは対照的に、世界ではますます自由貿易の動きが活発になっています。少し前「日欧EPA」という巨大な自由貿易圏の話がまとまったかと思ったら、今度は、TPP11(通称・TPPイレブン)にも署名です。日本を含めて世界的には、自由貿易の流れになっていることは間違いないです。
TPP11の発効までの流れ
3月9日の未明、アメリカを除く11か国において、TPP11への署名が行われました。今後は、所属する各国が「各国の国会」において、TPP11へ批准(承認)するのか?を決めることになります。この批准が6か国以上に達すれば、TPP11は発効されます。日本政府は、3月中に国会にTPP関連法案を提出して批准する予定です。
■TPPが実施されるポイント
協定加盟国の内、6か国以上が各国の国会において批准作業を終えること
TPP11の注目国とビジネススキームは?
日本は、TPP11の加盟国の内、ほとんどの国とは、すでに同様のEPAを結んでいます。そのため、TPP11による新しく自由貿易圏を作るのは「カナダ」と「ニュージーランド」だけです。その他の国とは、既存のEPAとTPP11を比べて、原産品規定の難易度や、関税の削減率から有利な方を選ぶことになります。
ちなみに、カナダとニュージーランドは、どちらも第一次産品(農産物・肉系)の輸出を得意としています。そのため、TPP11の発効後は、これら関連製品の価格に何らかの影響を与えそうです。また、カナダといえば「革関連品(素材系)」の輸出も得意な国です。革関連の関税は、どのような取扱いになっているのかにも注目です。
また、TPP11が発効すれば、メキシコやカナダ、そして日本が一つの自由貿易圏に属することになります。したがって、何らかの形で、これらの国(NAFTA(北米自由貿易協定))を活用すれば、巨大な消費地であるアメリカ市場へも関税上、有利な取り扱いを受けられるようになります。
例えば、日本から部材をカナダやメキシコの工場へ輸出します。このときは、TPP11を活用して輸出します。(関税は無税)その部材を使ってカナダ、またはメキシコの工場において完成品を作ります。その後、作った完成品をアメリカへ輸出します。このときは「北米自由貿易協定」を活用して関税無税で輸出します。
1.部材を輸出するときにTPP11を活用する。
2.完成品を輸出するときに北米自由貿易協定を活用する
この2つのステップを踏むことにより、アメリカ側で関税がかからないように輸出できるようになります。(関税税率は、商品によって異なる)
もちろん、輸出だけではなく、輸入するときにも活用できます。
例えば、現在、カナダやニュージーランドから輸入されている商品で関税率が高い物については、大きく削減される可能性があります。
例えば、現在、25.5%の関税率が設定されている天然はちみつなどがあります。ニュージランドもカナダも蜂蜜の輸出が盛であるため、この辺りの関税削減を日本に要求している可能性があります。もちろん、これは、ほんの一部です。あなたが輸入しようとしている製品も、TPP11の発効と同時に関税が撤廃されたり、大きく削減される可能性があるため、要注目です。
TPP11のメンバー
日本、カナダ、シンガポール、ニュージーランド、メキシコ、ペルー、チリ、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、ブルネイ
まとめ
TPP11は、賛成・反対と意見が分かれます。しかし、世界的な動きを考えてみても、自由貿易の流れを変えることは難しいです。それが事実です。そのため、いつまでも無駄な抵抗をするのではなく「どのように活用すれれば良いのか?」を考える方が賢明だと思います。
- TPP11は、11各国との間で署名
- 日本にとって新しい締約国はニュージーランドとカナダ
- カナダ、メキシコをうまく活用すれば、アメリカ市場への有利なアクセスも可能