TPP11(2018)の影響・野菜の価格と関税は?

農家 TPP/日欧/日米協定
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アメリカを除くTPP11は、11カ国が加盟する多国間EPAです。これは、従来型の二国間EPAよりも「累積効果」や市場規模の大きさからして、非常に大きなインパクトがあります。2018年7月現在、日本は、TPPに関連するすべての国内手続きを終えて「批准」しています。メキシコに続く批准となり、残り4か国の批准が終わり次第、いよいよ巨大な経済圏が誕生します。

さて、TPPと合わせて語られることが多いのが日本の農業です。一般的には、「TPPで国の農業がダメになる!」と否定的な見方からTPPを語る人が多いです。ただ、TPP賛成派からすると、そもそも「食料自給率の算定基準がおかしい(廃棄飼料などを含めている)」や、「農林水産省やJAの存在意義がなくなってしまうから反対しているだけだ!」との主張が目立ちます。

実際の所、農業=弱いと考えるのは、不正確であり、ある種のプロパガンダが行われていることは間違いないです。しかし、だからといって、TPPが開始されることにより、日本の農業に全く影響が無いのかと言うと、そうではありません。あまり、賛成、反対と立場を決めず、客観的な事実から、来るべき時代に備えておくことが何よりも大切だと考えます。

ちなみに、私の立場を申し上げると、どちらかというとTPP賛成派です。ただし、この賛成は、日本の農業を崩壊させたいのではなく、むしろ、閉鎖的で利権まみれになっている慣習や人を「リングの外に追い出したい」との想いから来ているものです。農業はTPPで変わる。そんなことを期待しています。

そこで、今回は、農業の内、野菜の関税に注目して、どのように変化するのか?をご紹介していきます。

農家

TPP11による野菜の影響

TPPと共に語られることが多い農業。巷の新聞では、TPP=日本の農業を滅ぼす物と語られることが多いです。しかし、具体的に、どのような野菜に、どのような影響があるのかまでを紹介する所は少ないです。そこで、この記事では、TPPの影響で変化する野菜の関税率をご紹介していきます。(情報元:附属書2-D(日本国の関税率表」)

TPP11による野菜の影響をご紹介する前に、まずは基本的な部分を説明していきます。野菜を貿易上の分類で考えると、次の3つに分けられます。

  • 7類 生鮮品・冷蔵野菜
  • 12類 種
  • 20類 野菜の加工品

類とは、HSコードの分類です。HSコードとは、世の中にあるすべての貨物を6桁以上の数字で表した物す。HSコードは、世界各国共通で使われており、貿易取引のときは、このHSコードを使い、輸出や輸入をしています。HSコードの内、類とは、ある特定の貨物をまとめた分類を示します。つまり、野菜が絡んでいるグループは、7類、12類、20類になります。

例:じゃがいも(ばれいしょ)=0701.90、トマト=0702.9

今回は、この内、7類に分類される野菜への影響をご紹介していきます。なお、HSコードの情報は「HSコードの教科書」、野菜のHSコードを調べるきは「ウェブタリフ」をご覧ください。

TPPで野菜の関税はこうなる!

TPPが発効されると、一部を除き、ほぼすべての野菜の関税が「即時撤廃」されます。即時撤廃されない物であっても、概ね6年かけて関税が撤廃されていきます。9割ほどの野菜が即時撤廃、残りの1割ほどが発効から数年かけて撤廃されていくと考えておけばいと思います。また、僅かではありますが、関税の引き下げが行われない物もあります。

下の表をご覧ください。表の一番上には、状態、商品&種別、基本税率、関税がゼロになるときなどが並んでいます。それぞれの意味は、次の通りです。

  • 状態=保存状態を指します。例:冷蔵なのか? それとも冷凍なのか?
  • 品名&種別=具体的な野菜を例示しています。左列が親、右列が子を表します。
  • 基本税率=この場合の基本税率とは、MFN税率を表します。つまり、EPAが適用されないときの本来の関税率です。
  • 関税がゼロになるとき=関税がゼロになるタイミングを示します。

即時は、協定発効と同時に関税率が撤廃されるもの。数字が書かれているものは、協定発効から何年目で関税が撤廃されるのかを示します。多くの場合は、六年。長ければ、11年経ってから関税が撤廃されます。また、関税の撤廃がされない物もあります。関税の削減パターンはいくつかありますが、基本税率が高いほど、EPAによる関税削減効果が高いといえます。

TPPが発効と野菜の関税率一覧

それでは、上記の説明を頭に入れた上でTPPによる野菜の関税率の変化をご確認ください。

状態 品名&種別 基本税率 関税がゼロになるとき
生鮮または冷蔵 ばれいしょ 3 即時
その他 4.3 即時
トマト 3 即時
たまねぎ 8.5 6
シャロット 3 即時
にんにく 3 即時
ねぎ類 ねぎ 3 即時
その他 3 即時
キャベツ類 カリフラワー 3 即時
芽キャベツ 3 即時
その他 ブロッコリー 3 即時
結球キャベツ 3 即時
はくさい 3 即時
その他 3 即時
レタス 結球レタス 3 即時
その他 3 即時
チコリー ウィットルーフチコリー 3 即時
その他 3 即時
にんじん、かぶ類 にんじん&かぶ 3 即時
その他 ごぼう 2.5 即時
その他 3 即時
きゅうり及びガーキン 3 即時
豆類 えんどう 3 即時
ささげ、いんげんまめ 3 即時
その他 3 即時
その他の野菜 アスパラガス 3 即時
なす 3 即時
セルリー 2 即時
きのこ、トリフ きのこ 4.3 即時
まつたけ 3 即時
トリフ 3 即時
しいたけ 4.3 引き下げなし
その他のきのこ 4.3 即時
とうがらし類 ピーマン 3 即時
その他 3 即時
ほうれん草、つる菜 3 即時
その他の野菜 アーティチョーク 3 即時
オリーブ 3 即時
かぼちゃ類 3 即時
その他 スイートコーン 6 4
その他 3 即時
冷凍野菜 ばれいしょ 8.5 6
えんどう 8.5 即時
ささげ、いんげんまめ 8.5 即時
枝豆 6 6
その他 8.5 即時
ほうれん草、つる菜 6 6
スイートコーン 10.6 即時
その他の野菜 ごぼう 12 6
その他 ブロッコリー 6 6
その他 6 即時
野菜ミックス スイートコーンメイン 10.6 6
そのほか 6 即時
保存処理をした物 オリーブ 9 即時
きゅうり及びガーキン 9 即時
きのこ及びトリフ きのこ 9 即時
その他 9 即時
その他の野菜のミックス なす 6 即時
らっきょう 6 即時
わらび 6 即時
その他 ごぼう 12 6
なす 9 即時
れんこん 9 6
ケーバー 9 即時
その他 9 即時
乾燥野菜 たまねぎ 9 6
きのこ きのこ(はらたけ) 9 即時
きくらげ(きくらげ属) 9 即時
白きくらげ(白きくらげ属) 9 即時
その他 しいたけ 12.8 引き下げなし
その他 9 即時
その他、野菜を混合したもの スイートコーン 9円/kg 即時
その他 たけのこ 9 即時
ぜんまい 9 即時
大根 9 即時
かんぴょう 9 即時
その他 9 即時
乾燥した豆 えんどう 関税割当内の物 10 即時
その他 354/kg 11
ひよこ豆 8.5 即時
ささげ属またはインゲン豆属 緑豆 無税 無税
小豆(数量内) 10 即時
小豆(数量外) 354/kg MFNに準拠
いんげんまめ(数量内) 6 即時
いんげんまめ(数量外) 354/kg MFNに準拠
バンバラ豆(数量内) 10 即時
バンバラ豆(数量外) 354/kg MFNに準拠
ささげ(数量内) 10 即時
ささげ(数量外) 354/kg MFNに準拠
そら豆(数量内) 10 11
そら豆(数量外) 354/kg 11
き豆(数量内) 10 11
き豆(数量外) 354/kg 11
生鮮のもの、冷蔵、冷凍または乾燥 かんしょ 冷凍、その他 12 6
ヤム芋 冷凍 12 6
そのほか 9 即時
さといも 冷凍 10 11
そのほか 9 即時
アメリアさといも 冷凍 12 6
その他 9 即時
その他 冷凍 12 6
その他 9 即時

野菜農家として考えること

いかがでしょうか? ご自身が関係する作物は、関税削減の影響を受けそうでしょうか?

表をご覧になるとわかる通り、TPP=野菜の関税は、ほぼすべて撤廃されます。関税が削減されることは、これまでの防波堤がなくなることでもあります。防波堤がなくなり、安い野菜が入ってこれば、価格の値下げ圧力が強まります。また、輸入野菜の価格が下がるため、それに引きずられて国産野菜の価格も下がるはずです。

しかし、だからといって、これを危機的だと考える必要もないです。なぜなら、関税上の壁が無くなったとしても、輸送上の問題から、海外から持ってくることが難しい作物も多いからです。

例えば、現在、生鮮品を輸送するには、リーファーコンテナやCAコンテナと呼ばれる特殊コンテナを使います。リーファーは、温度を一定に保ったまま海上輸送ができるもの。CAは、この温度管理に加えて窒素ガスにより、野菜の鮮度を保ったまま輸送する方法です。どちらのコンテナを使うにしろ、輸送コストと利幅の関係から日本に持ってくるのが厳しい作物があります。

つまり、各農家は、諸外国の得意としている農産物を研究して、競合しにくい作物を作ることで、あまりTPPの影響を受けない農業を行うことができます。まさに、ライバル研究、しかもグローバルな視点により、海外の農家を研究することが重要になります。今後は、田舎のJAが出す情報だけを鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えて、戦略的な農業を行っていくことが大切です。

まとめ

  • TPPにより野菜の関税は、ほぼ即時撤廃されます。
  • 野菜農家は、競合性作物、海外にいる競合農家を研究する必要があります。

ゼロから学ぶTPP(環太平洋パートナーシップ協定)

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