海外から輸入するときは、商品ごとに異なる関税を支払います。しかし、日本を含めた世界では、この関税を撤廃しあう自由貿易協定を次々と結んでいます。自由貿易は、お互い関税を撤廃しあい、両国の貿易を活発にして、経済発展を目指す上で重要です。
しかし、残念ながら、自由貿易は、限られた国としか結んでいません。2018年現在、日本は世界の160か国以上と貿易取引をしています。そのうち、自由貿易協定を結んでいるのは、15の国だけです。そのため、積極的に自由貿易を活用しようとしても、現状は、限られた国の物にだけ適用できると考えておきましょう!
そこで、今回から合計5回で、EPA輸入をするための基礎的な知識をお伝えしていきます。ステップ1では「日本とEPAを結んでいる国」をご紹介していきます。
2018年現在、日本は、15のEPAを結んでいます。
目次
EPAは、別名、経済連携協定(けいざいれんけいきょうてい)と言います。世界的には「自由貿易協定」の呼び方が一般的です。EPAは、日本と外国との間で、特別な経済協定を結び、経済的な国境を無くすことです。2017年現在、日本は、15のEPAを結んでいます。下の地図にある緑色又は赤く塗られている国が日本とEPAを結んでいる国です。
日本が最も多くのEPAを結んでいるのは「東南アジア地域」です。この地域は、とても経済が発展していて、国民の所得がグングンと上昇しています。この成長著しい地域の市場を目指して、世界のさまざまな工場が東南アジアへと移転し続けています。近年では、工場を建設するだけではなく「最終消費地」としての魅力がどんどん高まっています。
ポイント:一昔前、中国が「世界の工場」として君臨していた時代がありました。しかし、最近では東南アジアの豊富な労働力とEPAによるメリットが大きくなり、この地域に工場を移転する会社が増えています。中国→インドネシア→ベトナムです。つまり、人件費が安いところへ、少しずつ移転していることになります。そのあたりの脱中国化のお話は「これからアパレルを輸入するビジネスを始めるなら東南アジアがお勧めな理由」をご覧ください。
東南アジア地域(7+3)合計10か国
日本とEPAを結んでいる国を確認したところで、より詳しくEPAの加盟国を見ていきましょう!日本がどの国とEPAを結んでいるのかを知れば、貴社の貿易ビジネスの方向性を決める上で大きな判断材料にできます。まずは、東南アジアに属する国々です。
東南アジア地域は、二国間EPAと多国間EPAが併存する珍しい地域です。二国間EPAとは、日本とシンガポール、日本とマレーシアなど、二か国だけに適用するEPAです。一方、多国間EPAは、名前の通り多数の国で適用される制度になります。東南アジアでは、このEPAが並存しているため、輸入する商品によって、適切な方を選んで輸入するようにします。
二国間EPA | 多国間EPA | |
シンガポール | ● | ● |
マレーシア | ● | ● |
タイ | ● | ● |
インドネシア | ● | |
フィリピン | ● | ● |
ベトナム | ● | ● |
ブルネイ | ● | ● |
ミャンマー | ● | |
カンボジア | ● | |
ラオス | ● |
上の図をご覧ください。背景が黄色の国々は、2018年現在、日本との間で二か国EPAは結んでいませんが多国間EPAには加盟しています。もし、ミャンマー、カンボジア、ラオスから輸入するときは「日アセアンEPA(多国間EPA)」を利用して輸入します。又は、カンボジア・ラオスであれば「特別特恵制度」を利用できます。
ポイント:
- 東南アジアは、二国間EPAと多国間EPAが併存する地域
- 商品ごとに異なる税率を見比べて、有利な協定を適用します。
- カンボジア・ラオスあたりは、EPAではなく、最も優遇されている「特別特恵」を利用します。
北米+南米地域(3か国)
2016年ブラジルのリオでオリンピックが行われました。そんなブラジル周辺にある三カ国も日本とEPAを結んでいます。チリ産ワインが急激に増えた理由も、商品その物の品質の高さと、EPAによる関税削減の恩恵を受けていたのですね。関連記事:チリのワインが増えている理由
EPAの交渉をする中で最も強豪だった国は「メキシコ」です。日本は、メキシコ側にかなり譲歩した内容になっています。特に日本で高関税の代表格である「革靴」は、メキシコ製品に対して、かなり優遇を与えています。革靴のバイヤーさんは、メキシコ産の良い革靴がないのかを確認することをお勧めします。
国名 | 二国間EPA |
メキシコ | ● |
ペルー | ● |
チリ | ● |
アジア地域(2カ国)
中央アジアに位置するモンゴルと南アジアに位置するインドともEPAを結んでいます。「クレムリンメソッド」と呼ばれる本の中には、少子高齢化の日本が唯一、生き残っていけるのが、いくつかの国と強く連携することと紹介されています。その中の一つが「インド」です。一方、モンゴルは、中国と国境を接することで、あらゆる意味で「牽制」ができます。また、資源が豊富な国としても知られています。
国名 | 二カ国EPA |
インド | ● |
モンゴル | ● |
先進諸国(2か国)
先進諸国であるスイスやオーストラリアともEPAを締結しています。日本とオーストラリアとのEPA交渉は、特に農産物分野にて困難な交渉だったようです。基本的に、オーストラリアは、第一次産業(農産品)を日本へ輸出することを強く希望しています。それは、2016年あたりに議論されたTPPでも同じでした。
日本側としては、その分野はできるだけ開放したくないのが本音であり、双方の利害がぶつかりました。困難な交渉を乗り越えて、日オーストラリアEPAは取り合わされました。
一方、スイスは欧米先進国の中で、初めて経済協定を結んだ国です。現在、日本とEU全体とのEPA交渉が行われていますが、この日スイスEPAの状況によって、日本政府側の交渉のさじ加減を調整していると予想しています。しかし、日本とEUのEPAは、WTO(世界貿易機関)が反対する可能性も残されています。このような巨大な経済圏同士が、WTO抜きで作られてしまうと、WTOの存在意義がなくなってしまうためです。
国名 | 二カ国EPA |
スイス | ● |
オーストラリア | ● |
2018年現在、日本とEPAを締結している国々のまとめ
EPAを適用できる国の一覧です。こちらのリストに表示されている国を原産国とする限り、EPAによる有利な関税を適用することができます。
国名 | 二カ国EPA | 多国間EPA |
シンガポール | ● | ● |
マレーシア | ● | ● |
タイ | ● | ● |
インドネシア | ● | ● |
フィリピン | ● | ● |
ベトナム | ● | ● |
ブルネイ | ● | ● |
ミャンマー | ● | |
カンボジア | ● | |
ラオス | ● | |
メキシコ | ● | |
ペルー | ● | |
インド | ● | |
チリ | ● | |
モンゴル | ● | |
オーストラリア | ● | |
スイス | ● |
2018年7月現在の最新情報
2018年の7月時点の情報によると、アメリカを除くTPP11に対して、日本は批准をしました。メキシコに続く、二か国目の批准となり、何とか新TTPへの道筋がついた形です。残り4か国が批准すれば、ついにTPP11は、発効することになります。関連記事:日本、TPP11に批准!
また、併せてヨーロッパとの「日欧EPA」の大型案件も同時に発効する予定です。もし、新TTPと日欧EPAがどちらも発効すれば、ついに日本は、自由貿易の新たなステージに上がったことになります。また、これら2つとは、別に東アジア地域の包括的なEPA(RCEP)も大きな動きをしています。
今後、これらの協定が発効するにつれて、日本全国、津々浦々に、いい意味でも、悪い意味でも自由貿易の効果が浸透してくると思います。
まとめ
ステップ1のポイントは、輸入しようとする貨物が「EPAに加入している国か?」を確認することです。2016年現在、日本は15のEPAを締結しています。EPAを使って輸入する場合は、まずはそれらの国で作られた製品であるかを確認するようにします。
あれ、これと検討をする前に、そもそも日本とEPA(自由貿易)を締結している国なのかを確認します。
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