EPA活用・りんごジュースをベトナムへ輸出する場合

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「ジュース加工会社がEPA(関税などをさげる自由貿易協定)を活用して輸出をするとどうなるのか?」 日本にあるジュース加工会社が「日ベトナムEPA」を適用して、ベトナム向けにリンゴジュースを販売しようとしています。日本からベトナムへリンゴジュースを輸出すると、ベトナムの税関にて既定の関税を支払う必要(MFN:30%)があります。そこで、最近、気になっているEPA輸出を行い、りんごジュースにかけられる関税の削減したいと考えています。

2016年現在、ベトナムのリンゴジュースに対する関税は30%です。しかし、日ベトナムEPAを適用すると、15%にまで下げることができます。さらにこの関税は、2024年ごろには、すべて撤廃される予定です。早速、リンゴジュースの生産から輸出までを自社で一貫して行うにあたり、どのように進めていけばいいのかを検討することにしました。

リンゴジュースの輸出にEPAを活用

りんごをすりつぶして果汁のみを取り出した物がリンゴジュースです。当然のことですが、EPAを行うにあたり重要なポイントです。EPAは、日本で製造された物、相手国(協定相手)で製造された物を「原産品」として扱います。この原産品として扱う定義は生産された国だけでなく「加工方法」「使用した原材料」などにも影響されることになります。

仮に日本で製造された商品であっても「加工方法」や「原材料」によっては「原産品ではない」判定がなされる場合があります。原産品でないことは、EPAを適用する上での最低限の条件を満たさないため、相手国内での関税面で優遇された扱いを受けられないことになります。そのため「原産品の基準を満たしている物であるか」が重要になります。

関連記事:EPAで原産品扱いを受けられる三つのパターン(定義)

この記事では、原産品の基準を満たすには、どのような点に気を付ければ良いのかを中心に説明していきます。最初に行わなければならないことは「事前調査」です。基本的なこととして「自社が販売したい物」を売り込むのはナンセンスです。「相手が求めている物」を売り込む必要があります。そのためには、相手を知ることがとても大切です。

原材料入手編・りんごを購入する三つのパターン

りんごジュースの製造をするにあたり、原材料を考えてみます。りんごジュースの原材料としては、以下の物があります。

1.りんご 2.砂糖 3.保存料など

これらの中で最も大きなウェイトをしめるのはリンゴです。これを入手する方法としては、次の三つが考えられます。

1.国内のリンゴ農家から購入する(原産材料を使用した加工)

国内の農家からリンゴを購入する方法です。EPAを適用する場合は、原材料レベルから日本国内の産品である必要があります。リンゴジュースであれば原料であるりんごが「どこで生産された物なのか」が重要になります。これを証明するための書類が「農産品生産証明書」です。通称、サプライヤー証明とも言います。

これを提出することにより「日本で収穫されたりんご」であることを証明することができます。

2.EPA締約国のりんごを輸入する(原産材料・累積を適用した加工)

日本で生産されたりんごだけが国内品の扱いを受けるのではなく、ベトナムで生産されたりんごも国内産品の扱いを受けます。

日ベトナムEPAの場合、締約国とは「日本またはベトナム」になります。どちらかの国で生産された農産品であれば「域内原材料品」として、日本国内で収穫した作物と同様の取り扱いを受けられます。これにより、ベトナムのりんごを使用してジュースを製造した後、ベトナムへ輸出しても日ベトナムEPAの適用が認められることになります。このように、域内の原材料を使って商品を製造する場合は、以下の証明書類が必要になります。

証明書類例:
・原産品に関わるインボイス
・原産品の原産地証明書など
・船荷証券(B/L)

1番や2番の方法であれば、すでに原材料としての基準を満たしています。そのため、各材料についてサプライヤー証明を入手するだけで、EPAを適用できるリンゴジュースにすることができます。しかし、中にはサプライヤー証明を取得するのが難しかったり、第三国のりんごを使用して、リンゴジュースを作りたいときもあります。この場合は「非原産材料を使用した加工ルール」を適用することになります。

3.第三国のリンゴを輸入する、または日本産のリンゴを外国産扱いにする(非原産材料)

日本やベトナム以外で生産された商品を「非原産材料(原産国で製造されていないもの)」と言います。EPAの加工ルールでは、非原産材料を使用したとしても「決められた約束」を守れば「原産品扱い=EPA税率を適用」できます。決められた約束とは、加工工程基準関税分類変更基準付加価値基準の三つです。これらのうち、いずれかの加工基準を満たすことにより、材料が第三国産であっても、日本の原産品として認められることになります。

例えば、リンゴジュースを作るためにロシアからリンゴを輸入するとします。このリンゴ(第三国産)を使って、リンゴジュースを作った場合「関税分類変更基準(かんぜいばんごうへんこうきじゅん)」によって、日本の原産品として原産品を証明すれば、日本原産の取り扱いを受けられるようになります。

それだけではありません。実は日本産のりんごであっても、あえて「非原産材料」にする場合もあります。先ほども述べた通り、原産材料を使用する場合は、生産者から「サプライヤー証明」を入手しなければいけません。これは、原産材料に関する書類を材料ごとに全て取り揃える必要があるため、とても手間がかかる作業になります。この負担を嫌う人たちは、あえて日本産のリンゴを「非原産材料」として、既述の「関税分類変更基準」を適用して特定原産地証明書を取得するようにしています。

関税分類変更基準は、次のうち、どちらにも適用することができます。

1.外国産の材料を使って、商品を製造する場合
2.日本産の材料をあえて外国産として商品を製造する場合

関連記事:「CTCルールとは?条件を満たさないと非原産品扱い!?」をご覧ください。

それでは、りんごジュースを製造するさいは、三つの加工基準のうち、どのルールを適用するべきなのでしょうか。これを知るためには、日ベトナムEPAの品目別規則(品目ごとに定められた加工ルールを示している表)を調べます。

りんごジュースに求められている加工基準を確認します。

EPA税率を適用するために認められている加工基準は、次の三つです。これらの加工基準は、自分が好きなルールを自由に適用できるのではなく、商品ごとに細かく決まっている場合が多いです。今回のベトナム向けリンゴジュースであっても、品目別規則によって適用するべきルールが決められています。

1.加工工程基準(SPルール)、2.関税分類変更基準(CTCルール)、3.付加価値基準(VAルール)

例えば、ぶどうジュースを製造する場合であれば関税分類変更基準を適用する。包丁であれば付加価値基準を適用するなど、商品ごとに適用するべき加工ルールが決まっています。これらの変更基準は、各EPAに付属している「品目別規則」にすべて記載されています。(CC=関税分類変更基準の一つ、他にCTH、CTSHがあります)

 

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日ベトナムEPAで設定されているりんごジュースの加工基準の確認方法

「日ベトナムEPA」の品目別規則の中にある「りんごジュースの加工基準」を調べることにします。

日ベトナムEPAの品目別規則を確認すると、以下の赤枠の部分に「CC」と記載されています。これは、非原産材料(外国産のりんご)を使って、りんごジュースを作る場合は「関税分類変更基準」をクリアすれば、原産品として認めることを意味しています。つまり、りんごジュースを製造する場合は、残りの加工基準(加工工程基準、付加価値基準)を適用できないことになります。(外国産りんごを使用する場合)

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CCとは?関税分類変更基準の中にある三つの基準

関税分類変更基準の中にもCC、CTH、CTSHの三種類があります。それぞれは、関税番号の変更を必要とする加工レベルの違いを意味します。求める加工具合のレベルとしては、CC>>CTH>>CTSHのように変更基準が厳しくなります。上図の赤枠の中には「CC」が記載されていますので、加工としては最も高いレベルを要求しています。

・CC…上位二桁変更(類の変更)*最も厳しい加工レベル
・CTH…上位四桁変更(項の変更)
・CTSH…六桁のうち、いずれか(号の変更)

詳しくは「CTCルールとは?条件を満たさないと非原産品扱い!?」をご覧ください。

日ベトナムEPAの「りんごジュース」の原産地ルールは「CTCルール(関税分類変更基準)」で証明しなければならにことがわかりました。以降の説明では、りんごジュースを関税分類変更基準で証明する方法をご紹介していきます。

りんごジュースで使われる原料部分のHSコードなどを把握します。

関税分類変更基準で最も大切なポイントは、完成品のHSコードと原材料のHSコードが異なっていることです。これを証明するためには、最初に原材料部分のHSコードを一つずつ特定することが大切です。

りんごジュースを分解すると「りんご、砂糖、保存料」などになります。まずはこれらの現在の一つ一つに対してHSコードを特定します。すると、以下の画像のようになります。以下に表示している情報は、説明用に「なんとなく」適用しているだけです。実際の証明作業においては、正確なHSコードの特定が求められるため、ご注意ください。

原材料 HSコード りんごジュースのHSコード 関税変更
りんご 0808.10 2009.71
砂糖 1702.11
保存料 3808.92など

それぞれの現在に赤文字部分と、完成品のリンゴジュースのHSコード(20)が異なっていますので、関税分類変更基準による原産資格を満たしていることになります。このさい、関連する項目として「デミニマスルール」がありますので合わせてご確認ください。

関連記事:「CTCルールとは?条件を満たさないと非原産品扱い!?」をご覧ください。

りんごジュースを製造する

CCレベルでHSコードの変更ができると確認できた場合に製造します。りんごジュースを製造した場合は「農林産加工品にかかわる製造証明書」を作成して、特定原産地証明書を取得する際に必要になる書類を作成してください。ここまでの作業を終えたら、特定原産地証明書取得の準備は完了です。次に特定原産地証明書の発給ステップに進むようにします。

*実際に現地向けに食品を輸出する場合は、相手国の食品規制等もあわせて確認をする必要があります。

まとめ

ベトナム向けにりんごジュースを輸出する場合は、日本で製造したことを証明する「特定原産地証明書」が必要です。これを取得するさいは、次のうち、いずれかの方法によって「日本で生産されたことを証明」します。

1.原産材料を使用して製造したことを証明
2.非原産材料を使用して製造したことを証明

1や2であれば、どちらの方法で証明をしても問題はありません。しかし、必要とされる書類の数から言うと、2番の非原産材料を使用して製造したと証明する方が楽です。これは、外国産のりんごを使って製造することはもちろんのこと、日本でとれたりんごであっても、あえて外国産として申請をする場合も含まれます。

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