日ベトナムEPA(関税などを安くする経済協定)により、ベトナムからの商品は原則無税または低率で輸入ができます。これは、日本側とベトナム側双方によって「関税の引き下げに関する約束」を行っているためです。実は、この関税の引き下げは、協定発効からの「経過年数」と「品目」によって細かく決まっています。
例えば、ベトナム産の生鮮のリンゴであれば、協定発効から10年、つまり2019年の4月1日より関税が無税となります。緑茶であれば、協定から15年である2024年の4月1日より、同じように関税がなくなる予定になっています。このように、どんな商品が、どのタイミングで関税が下がるのかは「日ベトナムEPAの譲許表(じょうきょひょう)」によって掲載されています。
このようにEPAを活用した貿易は、譲許表の読み込みがかかせません。
ベトナム商品の関税撤廃予定
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先ほども申し上げた通り、関税の削減予定は「譲許表」によって確認ができます。しかし、実は譲許表にも「日本側の譲許表」と「ベトナム側の表拠標」の二種類があります。これらは、あなたが輸出をするのか、それとも輸入をするのかによって使い分けることになります。
例えば、ベトナムから輸入した商品を日本に輸入する場合であれば「日本側の譲許表」を確認します。一方、日本の商品をベトナムへ輸出するのであれば「ベトナム側の譲許表」を確認しなければなりません。必ず「商品を持っていく先」の政府が発表している譲許表を確認してください。
これからの貿易ビジネスでは、必ずこの譲許表による関税の調査が必須になります。この記事では、ベトナムの商品を日本へ輸入するときに役立つ「日本側の譲許表」から、特に関税の下がり方が大きい物をご紹介します。
日本側の関税撤廃リスト
日ベトナムEPAの経過年数は、2016年現在で8年目にあたります。この経過年数は、日ベトナムEPAの発効年数を基準としています。EPAごとに異なりますので、意外に経過年数の把握に苦労します。そこで、この経過年数を簡単に知るために「EPA締約国の年数早見表。「今、発効後何年目?」」の記事を用意しています。ぜひ、ご覧ください。
話を戻します。2016年現在、日ベトナムEPAは、すでにいくつかの品目について関税を撤廃しています。経過年数が8年目になるため、当然といえば当然です。そのため、次に大きく関税が撤廃されるタイミングは「2019年」と「2024年」の二回になります。この記事では、これら二度のタイミングで、どのような品目の関税が撤廃されるのかまとめています。
特に表中の赤色部分については、高額な関税率が適用されていた物になります。
下のリストをご覧になる前の注意点
■すべてを網羅しているわけではありません。
下の表で掲載されている品目は、関税撤廃品目の全てではありません。当サイト(HUNADE)が取り上げたい物を掲載しているだけです。そのため、この表だけではなく、必ず合わせて譲許表を確認するようにしてください。
■品目から類推するようにしましょう
ここで取り上げている品目は、単なる一例です。掲載されている商品の関連品であれば「関税が撤廃される」可能性が高いことになります。表からピッタリな品目を見つけるのではなく、譲許表を確認するための「アタリをつける目的」で活用します。
■何を輸入するのかを具体的に決めることが大切。同じ品目であっても別に分類される可能性あり
パイナップルがあるとします。パイナップルをそのまま輸入するのか、カットしてくるのか、砂糖をいれるのか、密封容器にいれるのかなどによって、それぞれ分類されている所が違います。
例えば、「0301.93・鯉→関税率○○%」のように数字と項目、それに関税率が相互に関連しています。この数字は、行っている加工方法、添加している物によって異なります。つまり、同じ品目であっても「所属する番号が違う=関税の扱いが異なる」ことになります。
このような理由から、何を輸入するのかを「具体的に決めること」が大切になります。この数字と項目についてさらに詳しく知りたい方は、初めての貿易取引で必要なHSコードと関税(関税率表)の仕組みをご覧ください。
上記の三つの注意点を頭に入れながら、下記の品目リストをご覧ください。
2019年4月1日以降に撤廃される物
まずはベトナムの関税撤廃である「B10」に指定されている商品です。B10とは、協定発効から11年目に関税が撤廃される物になります。一見、数字から判断すると10年のような気がします。しかし、11年目が正しい年数になりなります。
下の表を確認すると、多くの生鮮品分野の関税が撤廃されることがわかります。あわびなどの水産物の解禁なども見逃すことはできません。また、41類や42類の革関連製品の関税も一部を除いて撤廃されます。
0207.32 | あひるのもの | 0809.40 | プラム |
0210.92 | 海牛目のもの | 0810.10 | ストロベリー |
0301.93 | こい | 0810.40 | キウイフルーツ |
0301.91 | ます | 0811.10 | ストロベリー(砂糖を加えたもの) |
0302.21 | ハリバット | 0811.90 | サワーチェリー |
0302.22 | プレイス | 0812.90 | グレープフルーツ(保存に適する処理) |
0302.23 | ソール | 0903.00 | マテ |
0302.61 | いわし | 1102.10 | ライ麦粉 |
0302.62 | ハドック | 1103.20 | ペレット(小麦・米・とうもろこし・オートなど) |
0302.63 | コールフィッシュ | 1104.23 | コーンフレークの製造に使用するもの |
0302.64 | さば | 1302.19 | 飲料用の植物エキス |
0302.66 | うなぎ | 1302.19 | 除虫液のエキス |
0302.69 | ふぐ | 1401.90 | いぐさ |
0303.31 | スス | 1604.30 | キャビア |
0303.72 | ハドック | 1702.90 | ソルボース |
0306.22 | ロブスター(冷凍など) | 1803.10 | ココアペースト |
0307.10 | かき | 1805.00 | ココア粉 |
0307.39 | い貝 | 1903.00 | タピオカ |
0307.60 | かたつむり | 2001.10 | きゅりおよびガーキン(酢漬け) |
0307.99 | あわび | 2001.90 | スイートコーン(酢漬け) |
0307.99 | はまぐり | 2003.10 | フレンチマッシュルーム |
0702.00 | トマト(生鮮) | 2004.10 | ばれいしょ加工(マッシュポテト) |
0703.20 | にんにく | 2004.10 | たけのこ加工 |
0709.40 | なす | 2004.10 | ヤングコーンコブ加工 |
0709.60 | ピーマン | 2005.40 | えんどう(さやつきのもの気密容器入り) |
0710.21 | えんどう | 2005.99 | 食材を気密容器に入れたりする物が含まれる。 |
0710.22 | いんげんまめ | 1008.11 | 落花生(ピーナッツバター) |
0710.40 | スイートコーン | 2009.19 | ぎんなん |
0710.80 | ごぼう | 2008.40 | なし(保存処理済・砂糖添加・気密入り・パルプ状) |
0711.40 | きゅうり・がーきん | 2008.40 | なし(保存処理済・パルプ状・気密入り) |
0712.31 | きのこ | 2008.40 | なし(保存処理済・パルプ状・気密入りしていない) |
0714.10 | カッサバ芋(飼料用以外) | 2008.50 | あんず(保存処理済・砂糖添加) |
0714.90 | さといも | 2008.60 | さくらんぼ(保存処理済・砂糖添加) |
0802.31 | くるみ | 2008.60 | さくらんぼ(保存処理済・砂糖なし・パルプ状) |
0805.40 | グレープフルーツ | 2008.80 | ストロベリー(砂糖を加えたもの) |
0806.10 | ぶどう | 2009.31 | ライムジュース |
0807.19 | メロン | 2009.80 | プルーンジュース |
0808.10 | りんご | 2103.30 | マスタードの粉 |
0808-20 | なし | 2106.90 | おたねにんじん又はそのエキスを含有する飲料のもと |
0809.10 | あんず | 2309.10 | 犬用の飼料 |
0809.20 | さくらんぼ | 4101.20・50 | 原皮(クロムなめし以外) |
0809.30 | 桃 | 4104.11 | 湿潤状態 フルグレーン(クロムなめし以外) |
42類全般 | 革製品全般 |
2024年4月1日以降に撤廃される物
次に協定発効後15年である2024年です。この頃になると、フルーツの加工品が解禁されます。さくらんぼやオレンジの加工品(ジュースなどを含む)、ばれいしょの粉など高額な関税が一気に撤廃されます。
0408.11 | 卵黄 |
0703.10 | たまねぎ |
0712.20 | たまねぎ(乾燥) |
0714.20 | かんしょ |
0802.40 | くり |
0805.10 | オレンジ |
0805.20 | マンダリンなど |
0812.10 | さくらんぼ(保存に適する処理) |
0812.90 | オレンジ(保存に適する処理) |
0901.21 | コーヒー |
0902.10 | 緑茶 |
1105 | 鈴薯のこな、ミール。フレークなど |
1901.10 | 育児用の調整品(一部) |
1905.20 | ジンジャーブレッド |
2001.90 | ヤングコーンコブ |
2002.10 | トマト(保存加工) |
2004.10 | アスパラガス加工 |
2005.60 | アスパラガス(気密容器入り) |
2008.19 | ナッツ系の物で16.8%から無税になる物がある。(保存処理をしたもの) |
2008.30 | かんきつ類の果実(パルプ状のもの:保存処理をしたもの) |
2008.40 | なし(保存処理済・砂糖添加・気密入りしていない・パルプ状) |
2008.40 | なし(保存処理済・気密入りしていない) |
2008.70 | 桃(処理済・パルプ状、砂糖添加によって10年撤廃品目もあり) |
2008.91 | ミックスフルーツ(パルプ状。砂糖を加えてたもの) |
2009.11 | オレンジジュース |
2009.21 | グレープフルーツジュース |
2009.61 | ぶどうジュース |
2009.71 | りんごジュース |
2204.30 | 生鮮のぶどうから製造したお酒 |
2206.00 | ぶどう以外の発酒(りんご、なしなど、アルコール1%未満のもの) |
まとめ
日ベトナムEPAにおける日本側の譲許表を説明しました。ベトナムの商品を仕入れて日本に輸入する場合は、2019年のタイミングで関税が下がる物を検討するようにします。特に表中の赤字で書かれた品目については、関税の引き下げ額が大きい物になります。関税的に有利になるこれらの品目を細かく検証していき、日本のマーケットにピッタリな商品を輸入しましょう。
基幹記事:東南アジアのトビラ


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