この記事は、個人事業主、従業員9名以下の法人様を対象とした輸出の始め方ガイドです。輸出全体像の把握、輸出市場性判断、販売チャネル、補助金、輸出トラブル、国際物流などを解説しています。
個人貿易・中小企業向け!輸出のはじめ方
まずは輸出を5つの観点で検討!
- 輸出の魅力と実行判断
- 進出(輸出)する市場調査
- 販売先(バイヤー)を見つける。
- 輸出する為の資金と代金回収の方法
- 各種規制の理解
1.輸出の魅力
輸出の魅力は、企業規模に関わらず、始められること。企業規模に合わせて、組織を大きくできる点にあります。
例えば、サラリーマンの傍ら、EBAY等の輸出もできます。すでに別の事業をしている会社なら、現在の事業と兼業する形で輸出に取り組めます。
また、企業規模に合わせて容易に拡大又は縮小できるのも魅力です。
例えば、建物を必要とする飲食店は、事業規模に合わせて拡大や縮小は難しいです。建物にお金をかけていますし、人件費は、商売の規模にあわせて自在に調整することが難しいからです。
この点、輸出は、建物は不要。自宅の一室、机、イスとネットがあれば始められます。また、DXや外注化戦略等を実施すれば、規模を大きくしない限り、従業員も不要です。
もし、あなたがすでにビジネスをしているなら、既存の仕事に加えて新規事業として輸出に取り組む人材を充てられます。最悪、失敗しても、元々、別事業の従業員である為、過剰人材を抱えるリスクも低いといえます。
輸出を実行する?やめる?の判断をする為の情報収集
本当に輸出に取り組むべきか?
これを検討する為に情報を収集します。貴社の取り扱い商品の現在と将来の市場規模の変化、輸出による売り上げ増、それと引き換えに抱えるリスクを検討しましょう!
- 輸出予定商品の市場調査
- 取り扱い品目に必要な許認可の把握
- 輸出に関する関連サービスの調査
- 輸出に関するリスク
- 資金回収方法等
2.進出(輸出)する市場調査
「どの国や地域に輸出すればいい?」
上記の疑問に対する仮説を立てる為に、様々な方法で海外市場を調査します。海外調査は、輸出予定商品の類似品の現地販売価格、現地の慣習や文化等にも注目します。自社商品の強みを分析して、参入すべき市場の仮説を立てます。海外調査の方法は、次の通りです。
- インターネットで調べる
- ジェトロ経由で調べる
- 各国の大使館にある商務部で調べる
- お付き合いのある銀行経由で調べる
- 海外販路開拓をする会社に依頼する。
どの方法も一長一短があります。自社の状況に合わせて選びましょう!
【輸出先・海外市場の調査】どこに輸出すれば勝算が高いかの仮説を立てる!
3.販売先(バイヤー)を見つける。
市場や地域に目星がついたら、その先にいる「販売先(バイヤー)」の開拓に取り掛かります。海外販路の開拓は、次の方法があります。
- アリババ等のB2Bサイトを使う
- ジェトロのe-Venueを使う。
- 展示会等に出展する
- 海外販路の専門サービスを使う。
公的機関のジェトロが海外販路開拓の支援事業の中心的な役割を担います。まずは、ジェトロを頼れば、費用を抑えながら海外販路の開拓できます。但し、公的機関は、”代わりに営業活動をしてくれる”わけではなく、販路開拓営業の環境を整えてくれるだけです。
したがって、ジェトロのe-Venue(マッチングサイト)を使ったり、展示会に参加したりしても、中々、結果が得られないことも多いです。その点、4番の海外販路専門サービスは、海外販路を見つける+アポイントまで取り付けてくれるど、公的機関では対応していない部分までカバーしています。
ぜひ、両者の違いを考えて、自社として便利な方を選んでみましょう!
4.輸出する為の資金と代金の回収方法
輸出のゴールは代金回収です。海外にいる相手から、輸出の代金を回収することが重要です。輸出代金を受け取るまでの一般的な流れは、次の通りです。
- 商品を販売する
- 買い手から輸出代金の全額又は一部を受け取る。
- 輸出通関及び国際配送手配完了
- 買い手に書類を送る。
- 2番で1部をもらっている場合はここで残額を回収する。
- 買い手に荷物が届く。
- 買い手は、4の書類を使い輸入する。
- 輸入完了
輸出は、物とお金が確実に交換されることが何よりも大切です。リスクを考えて、代金の未回収にならないように取引を進めます。なお、輸出代金の回収は、次の方法があります。
5.各種規制の理解
貿易の規制には、次の3つがあります。
- 輸出先国の規制
- 輸出元国の規制
- 国際輸送に関する規制
例えば、あなたは日本の輸出者、相手はアメリカの輸入者なら….
- 輸出先国はアメリカ
- 輸出元国は日本
1.輸出先国の規制
輸出先国の規制(輸入規制)を調べましょう。海外によっては、宗教上の理由から特定産品の輸入を一切禁止にしたり、特別な輸入ライセンスが必要だったりする場合があります。日本の食品には、海外で禁止されている添加物を含む物もあります。まずは、輸出先国の取り扱い商品に対する輸入規制を確認し、日本側で対応できるか?を確認します。(例:食品なら改良できる範囲なのか?)
- そもそも輸出自体が難しい。
- 日本側で必要な書類を用意できないなど。
2.輸出元国の規制
輸出元国(例:日本から輸出なら日本)にも一部の商品について輸出規制があります。
例えば、輸出貿易管理令で規制されている商品、輸出禁止品に該当する商品、ワシントン条約の禁止物品、商標権を侵害する商品などです。

輸出は、輸入時の規制(相手国)、輸出時の規制(日本側)の両方を把握します。
3.国際輸送に関する規制
3つ目は、国の規制ではなく、国際輸送上の規制です。国際輸送をするときに、壊れたり、爆発したりするなど、運送リスクが高いと、国の規制とは別に、輸送上の問題から輸出ができない可能性があります。
例えば、発火の恐れがあるリチウムイオン電池、化粧品類、香水などです。

国の規制をクリアしている商品であっても輸送上の問題で輸出が難しい場合があります。
まずは、上記5つのポイントで輸出を検討してみましょう!
輸出実務の全体的な流れ
ここら先は、実際の輸出取引における実務の流れをご紹介します。輸出実務では、ジェトロ、税関等の公的機関及び販路開拓支援サービス、貿易コンサル、フォワーダー、通関業者と一緒に進められます
- 市場調査(貿易相手を見つける)
- 信用調査(取引の安全性調査)
- 商談&契約
- 決済
- インボイス、パッキングリストの作成
- フォワーダーや通関業者に船積み&通関依頼をする。
- 指定の場所へ貨物を移動する。
- 輸出申告→輸出許可
- 本船に貨物を積み込む
- B/L Instructions(旧:ドックレシート)→船荷証券(B/L)
- 船積みが完了したらシッピングアドバイス
- 貿易代金の残金を受け取る。
- 海上保険を付保、B/Lの裏書き
- 輸出完了
1.市場調査(貿易相手を見つける)
輸出で狙うべき市場や国を見つけます。
2.信用調査
海外との取引は、相手の信用力が重要です。ジェトロでは、この信用力を調査するサービス(外国企業信用調査)を提供しています。その他、取引先の銀行経由で現地企業の情報を調査したり、ダンレポートを使ったりして、海外相手の調査をしていきます。
3.バイヤーへのコンタクト又は、バイヤーからの引き合い(Inquiry)
海外販路の候補が見つかったら、メール、電話等を使い接触を試みます。まずは、自社からの誘いに興味を持ってもらい「交渉のアポイトメント」を取得する所が目標です。実は、この最初のコンタクトが非常に大変です。弊社では、この部分を支援する「東南アジアの販路開拓サービス」を提供しています。リスト取りから、アポイント獲得までは、全て無料でできます。よろしければ、ご検討ください。
【東南アジアの販路開拓】貴社の海外営業マンとして交渉テーブル迄をセット!
4.交渉
先方が交渉を希望する場合は、売り手は、プロフォーマインボイス等を使い条件を提示します。プロフォーマインボイスには、最低限、次の6つの項目を記載します。買い手は、プロフォーマインボイスの内容を確認し、受け入れられる部分とできない部分を伝えてきます。
- 商品の規格
- 数量や輸出価格(日本出荷価格×5倍=相手国の小売)
- 納期
- 支払い条件
- 有効期限
上記の内、特に大切なのが「商品の規格」です。規格とは「販売する商品は、縦〇〇cm、横〇〇cm JIS規格〇〇に準拠」と決めることです。

重要:何を良品?不良品とするのか?の基準を設けること
5.交渉成立後、契約書(Cntract)を作成&契約締結
相手と交渉が成立したら「何を? いくらで? どのように?」など、決済する条件、貿易条件、通貨、数量など、合意した諸条件を書面(契約書=Contract)にまとめます。
- 妥結した内容
- 不可抗力条項
- 一般条項等
契約書のテンプレートは、ジェトロ等にもあります。もし、契約書のチェックが必要な場合は、リーガルチェックができる弁護士サービスを利用しましょう!
ちなみに、契約書は、ORIJGINAL(正)とDUPLICAT(副)の二部を作成後、署名します。これにより、輸出者と輸入者の双方が書面の条件通りに貿易することを約束します。
関連書類
継続的な取引をする場合は、基本契約書を用意しておき、個別に売約書や発注書を作成するのが一般的です。
- 売約書(Sales Note)
- 発注書(Purchase Order)
6.決済戦略 30%~50%の前払い条件で妥結を目指す
貿易取引には、当然、リスクがあります。特に資金リスクのコントロールは重要です。両者にとって、リスク負担が公平なのが「L/C決済」です。しかし、実際は、T/T決済が一般的です。
T/T決済は、貿易保険やペイパルなどを利用すれば「商品を販売したのに、代金が回収できないこと」を避けられます。また、次のように、輸出代金を分割して受け取ることも、資金回収のリスクを下げられます。
1.売買契約書を取り交わしたら売買代金の半額をもらう。
2.B/Lの発行(船積み完了後)に、残りをもらう。
3.決済が完了したら、B/Lの原本を送付する
【海外の交渉】輸出販売する為の交渉をする!代金の受け取り方と輸出価格の算出
7~11.必要書類の作成、梱包、通関、本船への積み込み
契約+入金確認後、必要書類の作成、輸出梱包へと勧めていきます。
- 【輸出と物流】製品仕様の決定・フォワーダーとのお付き合いと出荷書類の用意!
- 「輸出通関の流れを徹底解説 」
- 輸出コンテナ船の予約~バンニング・搬入までの流れ
- 【輸出梱包】 種類、規制、危険品、費用感をプロが解説!
- 輸出するときは「カット日」が重要!CYはいつになる?
12.船荷証券(B/L)の受け取り
本船への積み込みが完了したら、船荷証券(B/L)が3通発行されます。発行されたB/Lを船会社に戻すと「サレンダーB/L」になり、輸入者側でB/Lの原本が不要になります。
13.その後、シッピングアドバイス
その後、輸入者に対してシッピングアドバイスを送ります。シッピングアドバイスは、輸出商品の品名、個数などを記載するとともに、どこの港から、何という本船で、何日出航するのかを示しています。
シッピングアドバイスを受け取った輸入者は、本船が無事に出港したことを確認できる上、輸入国側の輸入申告の準備をします。
14.残りの貿易代金を決済
シッピングアドバイスのときに、残額の貿易代金を決済してもらいます。(もちろん、相手との取引契約による)
- 契約時に半額を受け取る。
- 船積み完了時にEメールなどでB/Lを送る。
- 残りの分を決済してもらう。
- B/Lの原本をDHLなどで送付する。
- 輸入者は、B/L原本を使い貨物を引き取る。

決済のタイミングは輸出者と輸入者の個別契約による。
15.海上保険を付保、B/Lの裏書き
貨物の海上保険をかけときは、最初に「海上保険の予約」をしておき、本船への船積みが完了した時点で「確定保険」に切り替えます。また、B/Lのコンサイニーの欄が「TO ORDER」の場合「B/Lの裏書」をします。B/Lの裏書とは、B/Lの裏面に自社の社印やサインすることです。これによりB/Lを手放したことを意思表示します。
16.輸出完了!
これで輸出は完了です。後は、リピート注文が来るようにバイヤーとの定期的なコミュニケーション、売れ行き情報などのフィードバックを受け取り、海外バイヤーと共に成功することを目指すと良いと思います。
HUNADEの想い。
HUNADEは、日本製品。地方にある素敵な商品が海外に「船出」し、世界の人を幸せにすることを目標としています。実際、中小零細企業は、大企業と比べて、資金も人材も不足しがちです。海外市場に興味はあっても、中々、挑戦できない方も多いと思います。HUNADEは、そんな方々を以下2つのサービスで支援しています。
どうぞ、気負いせず、お気軽にご相談頂きたいと思います。皆様からのご連絡をお待ちしております。
2023年5月23日
HUNADE代表及びサポートチームより

