この手順書は、初めて海外輸送する方に向けて、基本的な知識を記載しています。
海外輸送の手順書
1.事前確認
貨物の輸入規制を調べます。税関は、輸入禁止物品や規制品を定めています。
例えば、著作権を侵害する物、社会秩序を乱す物は輸入禁止。口に入れる物、肌に塗る物、人に危害を与える物、環境を破壊する物、天然資源、お酒、たばこ等にも規制があります。まずは、輸入を検討している貨物の輸入規制を確認しましょう。
輸入規制は、税関の実行関税率表の他、各地の税関にメールや電話等で相談ができます。輸入するために必要な書類、資格、許認可などを確認します。
忘れやすい「輸送規制」も注意! 危険物の輸送
輸入規制の他、輸送規制もあります。輸送規制とは、海上輸送や航空機輸送の安全性を守るために、一部について規制する物です。輸入は問題ない。輸送が難しい。こういう品目があります。
例えば、化粧品類、タンク、リチウムイオン電池関係、塗料等です。これらを国際輸送するときは、危険物として特別な料金の支払いとラベルの表示義務等があります。品目によっては、航空輸送は不可です。
【危険物輸送】海上輸送と航空輸送の落とし穴 IMDG Code等をご覧ください。
主な相談先:
- 輸入の全体的なことを相談したい→ ミプロ
- 輸入で必要な許認可、書類、関税率、HSコード等を確認したい→ 税関
最初は、輸入規制も輸送規制もどちらも問題がない品目を取り扱うと良いです。
2.相手との交渉点
相手と交渉・確認・要求するべきことをご紹介します。主な物は、次の3つです。
- 商品価格(まずはサンプル価格でOK!)
- 荷姿(梱包時の重さと大きさ)
- 各種書類の作成可否の確認
最初は、商品の品質等がわからないため、本格的な交渉は避けた方が良いです。まずは、有償サンプルの請求から始めます。
交渉相手には、商品に興味があることを伝えた上で、ファーストメールを送ります。
例えば…..
「この製品について興味があります。私は、日本でこういうショップを経営しています。こういう販売先があります。まずはサンプル等をお願いします!」
などの内容を英語にして送ります。その際、相手もあなたのことがわからないため、メールの文末等に英語サイトのURLやワッツアップ、WeChat等のアカウント情報をのせておくといいです。
完成品の荷姿(重さや大きさ)、必要書類の発行の可否などもあわせて確認します。
例えば、サンプル請求をした。実際に商品が届いた。いざ、本格的に輸入交渉しようとしたら、実は売り手には輸出権がない。日本側で必要な書類を発行できない。などのケースがあります。軽くても良いので、日本側で必要な書類を発行可否についても確認をした方が良いです。
サンプルは有償であり、実際に取引が成立したときには、請求金額からサンプル代を引いてくれることが多いです。サンプル自体は、小包で送られるため、送料のことは考えなくて良いです。
まずは、自身のアピール。サンプル請求に向けて交渉するべし!
3.有償サンプルの取り寄せ
実際に有償サンプルが届いたら、次のことを行います。
- 実物のチェック
- 事前教示によるHSコードや関税率の特定
商品説明欄の内容と写真と比較して、実物の品質を確認します。このときに気になる点、改良したい点を検証します。可能なら、自分以外の人にも検証をお願いします。
複数の人がレビューをすると、良い点や改良するべき点が見えてきます。実物のサンプルを通して、相手に要求する事項を整理しましょう!
次に、実物のサンプルを使い税関に問い合わせをします。税関には、事前教示制度があります。事前教示制度とは、貨物のHSコード、関税率を特定してくれる仕組みです。実物のサンプルを手に入れたら、事前教示を受けてみましょう!
事前教示を受けることで、正確なHSコードと関税率がわかり、日本に輸入するときの諸税を正しく計算できます。
実物のサンプルを評価して、改善点を洗い出すこと。また、日本側の正確な諸税を計算するために、実物のサンプルで事前教示を受けます!
4.本貨物の輸入交渉
サンプルの善し悪しの評価を終えたら、本格的な輸入交渉をしていきます。輸入交渉では、実物に対するフィードバックをした上で、最低限、次の点を確認します。
- 商品価格とインコタームズの選定(輸送条件)
- 輸入で必要な書類の要求
- 品質基準の明確化
- 輸送で必要な荷姿情報
1.商品価格とインコタームズ(輸送条件)
通常、貿易取引では、業者用の価格(卸価格)を適用します。そして、この卸価格を適用する条件して最低購入数量(MOQ)があります。また、この商品価格には、次の2つがあります。
- 送料を含む価格(商品価格+送料)
- 送料を含まない価格(商品価格のみ)
送料を含む、含まない等の取引条件を「インコタームズ」と言います。インコタームズには、2種類11条件があります。売り手と買い手は、この内、一つを定めて(合意して)取引を行います。
商品価格+送料の代表格は、CIF・CIPです。一方、商品価格のみの代表格は、EXW/FOB/FCAです。
例えば、FOB Shanghai port 500 USD なら、売り手は、上海港の港に停泊する本船に船積みする迄の費用を支払う条件で、商品価格を500ドルで引き渡します。(上海港以降は、買い手が費用を負担する)この場合、買い手は、上海港以降から日本の最終納品地までの諸費用を全て負担しなければらないです。
一方、CIP NARITA AIRPORT 3500 USD なら、売り手は、成田空港までの輸送費込みで3500ドルで売却します。この場合、買い手は、成田空港の通関以降からの諸費用を負担すれば良いです。上記のようにインコタームズにより、売り手と買い手の負担範囲が変わります。
参考情報:中国輸入でEXWで取引する場合は?
中国の売り手(サプライヤー)とEXW(売り手の工場渡し)で取引をする場合は、DIGISHIP等を提供するフレートマンロジックス株式会社に依頼をすれば、売り手の倉庫引き取りから対応してれます。
適切なインコタームズがわかりませんか? ゼロイチコンサルで支援します!
インコタームズは、送料や保険代金を買い手が負担する場合と売り手が負担する場合があります。つまり、商品価格の提示を受けることは、適切なインコタームズを選定することでもあります。
2.輸入で必要な書類を要求
輸入通関(国際輸送)で必要となる貿易書類を要求します。貿易書類は、売り手側が作成し、買い手が受け取ります。一般的には、次の書類を依頼します。
- インボイス
- パッキングリスト
- B/L
- 原産地証明書(必要な場合)
- その他の検疫証明書(必要な場合)
売り手側から必要な書類を入手します!
3.品質基準の明確化
商品の品質基準を話し合います。別の言い方をすると….
- 何が不良なのか?
- 何が良品なのか?
この2つの基準を明確にすることです。ここが不明確であると、後々、品質部分で売り手側とトラブルになることが多いです。
4.輸送で必要な荷姿情報
次に完成品の荷姿情報(梱包サイズ)を聞き出します。
- カートンなのか?
- カートンは、一つ何キロ?
- カートンの縦、横、高さは何センチ?
荷姿情報を後述するフォワーダーに伝えて、国際輸送費の見積もりをお願いします。
5.フォワーダーに見積もりを依頼(海外コンテナの輸送料金)
例えば、交渉の結果、インコタームズを………..
- 例1:FOBにすると→ 買い手側が送料を負担→ 見積もりが必要
- 例2:CIPにすると→ 売り手側が送料を負担→ 輸送手配は不要
例1の場合、買い手が送料を負担するときは、どうなる?
国際輸送業者(フォワーダー)に国際輸送の見積もり依頼が必要です。
【コンテナ】海上運賃の相場 内訳とサーチャージの調べ方を解説!
例2の場合、売り手が送料を負担するときは、どうなる?
この場合は、2つの対応方法があります。
- 業者の提示通りに国際輸送を委ねる。
- 売り手から商品代金のみ、フォワーダーから送料の見積もりをもらう。
2番の詳細→ 売り手が商品代金20万円+送料が5万円だと提示してきたとしましょう。
この場合、売り手には、FOBやEXWだと商品代金を確認します。同時に、フォワーダーから、FOBやEXWなど、国際輸送に関する見積もりを取ります。
この結果….
- 売り手からは、商品代金のみの見積もり
- フォワーダーからは、配送代金の見積もり
が集まります。この価格を売り手が提示する送料込みの価格と比較検討します。
買い手側が手配するフォワーダーをノミネーションと言います。
フォワーダーの得手・不得手を確認する
国際輸送業者(フォワーダー)は、得意な輸送と不得意な輸送があります。
例えば、中国との路線を主力路線にしている業者は、欧州や北米方面は、他のフォワーダーに案件を投げていることが多いです。得意な部分は、フォワーダーによって異なるため、輸送案件に適したフォワーダーに見積もりを依頼することが重要です。
HUNADEでは、フォワーダーの得意な分野等を紹介する「フォワーダーランキング」を公開しています。よろしければ、参考にしてください。
国際輸送の見積もりで必要な情報
国際輸送の見積もりで必要な情報は、次の通りです。
- 荷姿
- 積み地、揚げ地(どこから、どこに輸送)
- 荷姿(パレット?カートン?)
- 梱包時の大きさ(何キロ?)
あなたは、どこの誰で、何を、何キロの? 大きさは? どこからどこに、輸送するのか?
を明確にした上で見積もりを依頼します。必要な情報が不足している程、フォワーダーからは明確な回答が返ってきません。または無視されます。
国際輸送の形態
国際輸送の形態は、様々です。緊急性、貨物の危険性、劣化性等を踏まえながら、適切な輸送手段を選びます。ここで簡単に国際輸送の形態を確認します。
輸送方法 | 基準重量/容積 | 特徴 |
エアクーリエ | 100KG前後 |
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航空貨物 | 100~300KG前後 |
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海上輸送(フェリー) | 300KG~ |
|
海上輸送(LCL) | 300KG~ |
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海上輸送(FCL) | 11~13M3以上 |
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航空輸送と海上輸送の比較
海上輸送
- 海上輸送(FCL)は、貨物の大きさに関わらず定額
- 海上輸送(LCL)は、立法メートル単位で請求される。
- 重量物を大量に輸送する場合は輸送コストが安い。
- 大量に在庫を抱えるため倉庫保管料に注意
- 濃霧、船の故障など起きる時がある。
- 港湾ストライキ等も発生しやすい。
- 港湾の混雑等もよくある。
- 航海日数が長いときは、途中で船会社が破産するときがある。
航空輸送
- 航空輸送は、実重量と容積重量を組み合わせて料金を決める。
- 貨物のサイズが小さい物、軽くて高価な物に向いている。
- 海上輸送よりも輸送日数が圧倒的に短い。
- スケジュールの変更も臨機応変。輸送が安定している。
エアクーリエ
メリット
- 宅配便のように自宅に貨物が届く。
- 商品代金+自宅までの輸送費がわかる。
- 迅速に貨物が届く。
デメリット
- 基本的に一回の輸送が50KG~100KGくらいが限界
- 上記の範囲を超えると一気に割高になる。
航空輸送のメリット・デメリット
メリット
- 300KG程度までなら、海上輸送よりも航空輸送の方が安い場合が多い。
- 海上輸送特有の○○チャージが少ない。
- 空港間を迅速に輸送できる。
デメリット
- 基本的に輸出国の空港から輸入国までの輸送をしている。
- 日本到着後の手続きは、別に通関業者等を手配する必要がある。
FCLとLCLの違い。メリットとデメリット
FCLのメリット
- 約11~13M3以上又は、10~12パレット以上を輸送する場合に検討
- 大容量を格安で輸送するとき最適(価格がボックスレート)
- 船への積み込み、船からの積み下ろしが早い。
- 輸送中は、他の荷主の貨物と干渉しないため安全
- 温度管理のFCLもある。
FCLのデメリット
- 送料を圧縮するために、一度に大量に貨物を運ぶので在庫管理が大変
- 料金がLCLの場合よりも変動しやすい。
- コンテナ不足の状況になったときは、コンテナの確保が難しい。
- デマレージ料金が高い。特にリーファーは高額
- ディテンションチャージにも注意(デバン後に空コンテナを戻す期間)
LCLのメリット
- FCLよりも少ない貨物量で海上輸送ができる。
- 一回の輸送量が300KGを超えるようになったら検討
- 重量(容積)の分だけ料金を支払えばいい。
- コンテナ不足の時にスペースを確保しやすい。
- フレートマンロジックス株式会社のDIGISHIPは、LCLなのに日本国内までの着値がわかります!
LCLのデメリット
- 重量(容積)に応じて、CFSチャージがかかる。
- 他の荷主の貨物と合積みされるため、ダメージが発生する可能性がある。
- デバンが遅い(搬入が遅い)=輸入貨物を引き取るまでに時間がかかる。
- 他の荷主の貨物の影響を受けることがある(リマ―ク確認など)
フェリー輸送
メリット
- 一回の輸送が300KGを超える場合はフェリー又は、LCLを検討する。
- フェリーの最大の特徴は、海上輸送なのに航空輸送並みの速さを誇ること
- 特に中国から日本、韓国から日本の場合は、航空輸送よりフェリー輸送を検討した方が良い。
- 航空輸送並みの速さなのに、送料が圧倒的に安い。
デメリット
- フレートマンロジックス株式会社のDIGISHIP Super Expressを除き、基本は、港と港のみの輸送となる。
- つまり、港到着後以降の輸入通関、国内配送手続きを別の業者に依頼する必要がある
海上輸送は、輸送期間は長く、料金は安い。航空輸送は、輸送期間は短く、料金が高いです。基本的に逆の性質です。しかし、海上輸送の中でもフェリー輸送は、非常に特殊です。
例えば、中国とのフェリー船を利用するDIGISHIP Super Expressは、中国から日本まで最短3日着です。海上輸送であるにも関わらず、航空便級に速いです。
であるにも関わらず、航空料金よりも安い価格で輸送できるのが魅力です。中国や韓国からの輸送を考えている方は、航空便よりフェリー船がオススメです。
その他、国際輸送の大原則を2つほどご紹介します。
国際輸送の大原則1
国際輸送は、港や空港留めが原則!
クーリエのように玄関先までの輸送は特別扱いです。
国際輸送の大原則2
輸送に必要な資料や情報は、輸送依頼者の責任で集めます。
フォワーダー等は、輸送を担当するだけです!
6.輸入通関、消費税、関税と国内配送
輸入通関と国内配送は、次の2つのパターンがあります。
- フォワーダーが全て対応
- フォワーダーと通関業者が対応
フォワーダーは、主に国際輸送が中心的な事業です。一方、通関業者は、日本到着後の輸入通関以降を中心事業にしています。両者には、明確な基準はなく、互いに職域を兼ねている所も多いです。
できるだけ国際輸送から通関部分を簡単にしたい場合は「一気通貫」を提供する事業者に依頼すると良いです。一気通貫とは、国際輸送から輸入通関、許可後の国内配送までを一貫して提供するサービスです。
有名な所は、フェデックス等のインテグレーターが一気通貫です。また、DIGISHIP Super Expressも一気通貫サービスとして優れています。
輸入通関で必要な資料
輸入通関で必要な書類は、売り手に要求するべき書類と同じです。追加で必要な資料は、商品や契約関係、取引状況等を説明する補足資料です。基本は、売り手からもらった資料を基に輸入申告をして許可を受けます。
- インボイス
- パッキングリスト
- B/L
- アライバルノーティス
- 補足資料(貨物を説明する資料)
- 原産地証明書(必要な場合)
例えば、補足資料は、商品の情報が記載されているカタログ、買い手から売り手に支払った送金明細書、ライセンスの契約書等があります。必要な補足資料は、輸入申告する品目や申告先の税関官署によって多少変わります。
いずれの場合も通関業者を通して、質問や追加の資料の提出が求められます。
輸入通関と関税、消費税の関係
輸入品は、輸入時に関税と消費税がかかります。関税は品目や原産国等、EPAの有無で変わります。消費税は、食品は8%、それ以外は、10%です。つまり、輸入品には、約10%~20%の輸入税がかかります。
他方、輸出×海外輸送の場合は、輸出許可を受けることにより、国内仕入れの分の消費税が還付されます。当然、輸出に関する関税等は存在しないです。関税は輸入時に発生する物です。
商品の内容、契約関係、取引状況等を様々な資料をエビデンスとして輸入申告します。必要な場合は、提出資料について税関から問い合わせが入ったり、追加の資料が求められたりします。
7.許可後の国内配送
輸入許可後の国内配送は、次の3つのパターンがあります。運送会社に自分で依頼することもできますが、多くは、通関業者がそのまま国内配送を手配します。
- FCL(コンテナ)のまま輸送
- トラック混載で輸送
- トラックチャーターで輸送
輸入許可後、コンテナのまま輸送すると、最終納品先までの往復ドレー代金の支払いとデバンをするための施設が必要です。LCL輸送で到着した貨物は、すでに港にて、コンテナから取り出されているため、自社でのデバン作業は不要です。
LCL輸送の貨物の納品方法は、混載便トラックとチャータートラックの2種類があります。混載便は、他の荷主の分と合わせて運ぶため、時間指定は不可です。指定ができるのは、●月●日の午前や午後等が限界です。それより細かい指定は不可です。
もし、●月●日の午前9時に~とピンポイントで指定する場合は、チャータートラックを使います。チャータートラックは、好きな時間を指定できます。但し、混載便で輸送するよりも大幅に送料が上がるため注意が必要です。
トラックの種類 | 料金 | 時間帯指定 | 特記事項 |
混載便 | 安い | できない。最高でも午前中や午後等。 |
|
チャータートラック | 高い | できる。 |
|
許可後の国内配送 覚えておきたい2つの原則
原則1.貨物は車上渡しが基本
輸入貨物の配送は車上渡しが基本です。宅内や倉庫内の輸送はサービス外です。もし、宅内配送が必要な場合は、車上から宅内までを別に便利屋等に依頼します。(トラック運転手は対応不可)
原則2.公道上での作業は禁止
都心部は、時間帯により規制している部分があります。納品場所周辺の交通規制を確認します。特に道路上の作業は、一切禁止です。すぐに近隣住民から通報が入り、警察が出動する事態になるため、十分に気を付けましょう!
8.許可後の保管方法
輸入貨物の保管方法には、次の5つがあります。
1.自社の倉庫
2.混載業者の倉庫
3.ちょ庫っと
4.アマゾン倉庫(FBA)
5.オープンロジ等
上記は、次の観点で決めます。
- 倉庫保管料
- 安全性(火災事故)
- オペレーション
- 港や空港からの距離等
- 保税機能の有無
アマゾンやオープンロジの倉庫
例えば、ネット通販ビジネスの商材を保管するならアマゾン倉庫やオープンロジ等が便利だと思います。最新の設備に加えて、作業人員のオペレーションが良いです。
自社倉庫
自社の倉庫は、保管料としての発生はありませんが、倉庫自体の費用(固定資産税等)は発生します。また、倉庫人員の人件費等、隠れた費用が発生する点にも注意します。
混載業者やちょ庫っと等
港近くにある混載業者も倉庫機能を提供しています。混載業者にて保管する場合は、必要な分だけ配送ができる点、保管にかかる人件費や設備の維持費がかからない点にメリットがあります。
最近では「ちょ庫っと」という倉庫サービスもできています。これは、倉庫機能とオフィス機能を併せ持つサービスで、特に貿易ビジネスのスタートアップに便利です!
保税機能がある倉庫
保税倉庫とは、外国貨物を保管することができる特別な倉庫です。保税倉庫で保管をすると、売れ行き状況に合わせて必要な分を輸入申告&許可を取得。売れ行きが悪い場合は、そのまま積戻し又は、保税転売ができる倉庫です。
品目別の輸送注意点
コーヒー豆の国際輸送
コーヒー豆は、生豆と燻蒸済みの2種類に分けられます。
- 生豆
- 焙煎済みの豆
生豆は、日本到着後の植物検疫検査で害虫が発見されたり、農薬が検出されたりして輸入不許可になることがあります。輸出国によっては、燻蒸済みのコーヒー豆しか輸出許可が下りないケースがありますので、事前の確認が必要です。
ポイント:品質面では、害虫と農薬の2つ!しっかりとサプライヤーと打ち合わせが必要
梱包方法
は「麻袋」を使用します。また、一つ辺りの麻袋の重さにも注意します。サプライヤーによっては、成人男性が一人で持てない重量にしてきます。
ポイント:サプライヤーも手間を省こうとします。一つの梱包重量が大きくなりすぎないように打ち合わせます。(目安は最大でも30KG/個)
30キロ以上は、人力による荷役が難しくなり、別に費用が掛かかります。
ポイント:重たいんじゃ!だから、超過料金を取るからよろしく!
コーヒー豆の輸送は……
- 生豆? 焙煎?
- 農薬大丈夫? 害虫の混入
- 一つの梱包重量は、30kg以下?
- 植物防疫法、食品衛生法
以上の4つを頭に入れて、サプライヤーと交渉しましょう!
生豆と焙煎の違いを理解すること。焙煎の有無により適用法令が変わります。また、梱包は、一つあたりの重量が重くなり過ぎないことに注意です。重すぎると、リパック等の余分なコストがかかります。
日本酒、ワインの国際輸送
日本酒やワインなどの酒類を輸入(国際輸送)する際は、日本国内での酒販免許が必要です。
ポイント:一にも二にもまず酒税免許の取得!これがなければ、一切販売はできないです!(例外もありますが、ここでは内緒)
酒販ラベル(お酒の裏側等に貼るシールの事)
は、積み地側(輸出国側)で貼った上で出荷します。貼り付けていないと、輸入通関許可は下りないです。この場合、日本の保税区内で全数にラベル貼りつける作業が必要です。
ワインの海上輸送は、常温輸送でも問題無いケースがあります。大手スーパー等で行う安売り輸入ワインは、コスト面から常温で運ぶケースも多いです。しかし、ワインの品質等を重視する場合は、リーファーコンテナをお勧めします。
ポイント:フォワーダーは、リーファー、ドライは荷主様の判断にお任せしています。各輸入者様は、様々な断熱系商品を利用して、リーファーコンテナを使わずに定温輸送しています。結局、最終判断は荷主さんです。
もし、ドライコンテナで輸送する場合は、積み替え船なのか?ダイレクト船なのか?などの確認します。積み替え船によっては、長時間、貨物が滞留し「ホットワイン」になることもあるからです。
関連記事:少量食品輸出向け!リーファーコンテナ(混載)サービス9選
例えば、日本酒(生酒)を国際輸送するときは、マイナス5℃~20℃帯を設定します。リーファーコンテナは、ドライコンテナ(常温輸送するコンテナ)と比べて、国際輸送料金やデマレッジなどの費用が高いです。また、コンテナ自体の数も限られているため、早めの手配がおススメです。
関連知識:リーファーコンテナのデータロガーで輸送品質をチェック
梱包形態は、日本酒、ワインともにパレット積みが一般的です。なお、木製パレットを使う場合は、燻蒸済のパレットも求められることに留意しましょう!
保税蔵置をすることも多いです。ワインを輸入すると、最大で関税+消費税+酒税の三つの税金がかかります。輸入後の売れ行きが悪くても、一度、輸入許可を受けた分の税金は返ってきません。そこで保税蔵置の仕組みを使い、日本側の港近くで「外国貨物」として保管をしておき、日本側の輸入状況に応じて許可を取得するケースもあります。
お酒の輸送は……
- 酒税免許の取得
- 酒販ラベルの貼り付け
- 積み替え船の確認
- リーファーコンテナの費用感と手配の難しさ
を意識してサプライヤーと交渉しましょう!
芋類の国際輸送
芋類の輸入
は、他の生鮮貨物同様、食品検疫、植物防疫法の両方が必要です。それぞれは、農薬の有無又は使用量、害虫の有無等が審査されます。仮に、害虫等が見つかると「燻蒸処理(くんじょうしょり)」が必要です。
ポイント:芋に害虫が付いていないこと、土がついないこと、日本で禁止の農薬を使っていないこと等が審査の対象です!
一方、サツマイモの輸出は、ビジネスとして注目されています。実は今、日本のサツマイモが東南アジアの各国で大人気です。年々、輸出量が増加しています。
サツマイモと聞くと、とても丈夫。どんな輸送環境でも良いように感じます。しかし、実はとてもデリケートです!
サツマイモは、腐りやすいため、国際輸送では、中温帯(10℃~15℃帯)輸送が望ましいです。これよりも低すぎると、傷みやすく、高すぎると、芽が出てきます。サツマイモ君には、中温帯がちょうど良いのです!
しかし、現在の海上混載サービスは冷蔵、冷凍での温度帯が一般的です。この他、海上輸送が難しい場合は、航空便での輸送もします。
芋類の輸出(国際輸送)は、土等の付着物が付かないように洗浄します。また、サツマイモ等の一次産品は、相手国側の関税率が高いです。そのため、EPAを活用して、相手国側の関税が減税されるように特定原産地証明書を用意します。
例えば、ベトナムに0714.20のかんしょ(さつまいも)を輸出した場合は、AJCEP、CPTPP、VJEPAを使うことで、MFN税率(標準の税率)で10%が無税になります。
芋類の国際輸送輸送は……
- 輸入は、食品衛生法、植物防疫法
- 害虫、土、カビ、農薬等に気を付ける。
- 輸出、輸入ともに土の付着はNG
- 意外にか弱いサツマイモ君
- 国際輸送は、中温帯が理想
- 寒すぎると腐り、あつすぎると芽がでる。
を意識してサプライヤーと交渉しましょう!
サプリメントの国際輸送
サプリメントの国際輸送は、常温+カートンボックスです。サプリメントを輸入するときに気をつけることは薬機法への抵触です。サプリメントに含む原材料が医薬に該当するのか? 食品に該当するのか?の違いが非常に重要です。
サプリメントは、何らかの効果を期待して購入する方が多いため、医薬と混同しがちです。しかし、法律上、サプリメントと医薬は明確に違います。サプリは「単なる食品」です。食品であるからこそ、サプリメントに効果や効能を標榜することは認められません。
何が食品なのか? 医薬に該当するのか?
これは、食薬区分リストを基準に判断します。もし、サプリの原材料が食薬区分リストの医薬に該当する成分を含む場合は、医療品販売許可がなければ、輸入出来ません。事前にイングレ(原材料表)を入手して確認しましょう。(海外からの個人輸入であれば例外的に輸入可能です。)
最後にサプリメントを国内販売する場合は、食品表示法の規制があります。原材料等を日本語にしたものを貼り付けます。食品表示ラベルの貼り替え作業は、売り手側に依頼する場合も多いです。
サプリメントの輸送は……
- サプリの国際輸送は、常温輸送+カートンボックス
- サプリメントは単なる食品。効果等をうたえない。
- 売り手から原材料リストと加工工程書を取得できる?
- 食品表示ラベルの貼り付
を意識してサプライヤーと交渉しましょう!
チーズやバターの国際輸送
チーズやバターを国際輸送する場合は、フレッシュ貨物として2℃~8℃で温度管理して航空輸送されることが多いです。夏場は溶けやすいため、ドライアイスを同梱して送ることもあります。(主な梱包方法はco9)また、動物検疫があることを想定し、事前に日本側で「動物検疫に対応する倉庫」を確保しておくことも一つのポイントです。
主にヨーロッパから輸入されています。他法令は、食品申請だけでなく、動物検疫が必要になるケースが多いです。事前に動検対象になるかを確認しましょう。
もし、動検対象になる場合、積み地で貨物を封印します。シールは最終目的地まで外すことはできないです。(シールが無くなっている場合は輸入不可)
チーズやバターの輸送は……
- チーズやバターの国際輸送は、2〜8度の定温輸送をする。
- 航空輸送または、リーファーコンテナで輸送する
- 梱包は、co9
- 日本側では動物検疫、食品検疫が関係する。
- 積み地の貨物封印シールが重要(ないと輸入不可)
を意識してサプライヤーと交渉しましょう!
お菓子など、様々な加工食品の国際輸送
お菓子などの加工食品は、輸入時には食品申請のためのイングレ、製造工程表が必要です。国際輸送時は、原則として温度管理が不要なため、食品の中では比較的容易に輸送できます。
お菓子や加工食品の輸送は……
- お菓子等の国際輸送は、常温+カートンボックスで輸送
- 少量の場合は、航空輸送が一般的
- 日本側では食品検疫が関係する。
- 売り手から原材料表、加工工程表を入手する
- 日本側の食品表示シールの指示もしておく。
を意識してサプライヤーと交渉しましょう!
大型機械や建設機械の国際輸送
大型の機械の場合、最も重要なのが梱包です。船での輸送がメインになるかと思いますが、ヨーロッパ、北米向けの場合は航海日数も長くなり、破損や錆のリスクが高まります。
一般的には破損、錆の両リスクを軽減できるケースバリア梱包がおススメです。また、次に注意しなければならないのが、機械のサイズです。コンテナには高さ制限があり、高さのある機械の場合、コンテナに入らないケースがあります。
その場合、オープントップコンテナ等の特殊コンテナを事前に手配しなければなりません。当然、梱包する場合は梱包後のサイズでコンテナに入るかを確認する必要があります。
- 機械を保護する梱包がなされていること(近日、輸出梱包ノウハウを公開予定)
- 適切な輸送モード(オープントップ等)を選ぶこと
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池を輸送する場合は、基本的に「危険物」として認識し、必要な梱包、ラベル要件を確認する必要があります。特に航空におけるリチウムイオンの輸送は、発火等が重大事故につながる可能性があるため非常に厳格です。
- ワット数
- セル、バッテリ
- 重量、入り数
- 状態
- 国際輸送、海上輸送、陸路、鉄道
等ににより細かく規定されています。国連輸送試験38.3、IATA、IMDGなどが関係します。
国際輸送の見積もりを依頼
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