「FOB SHANGHAI」ってどういう意味?貿易のノミネーションの基礎をやさしく解説
海外から届いた見積書に「FOB SHANGHAI」と書かれていて、意味がわからず困ったことはありませんか?また、今までは「CIF」など売り手が輸送を手配する取引をしていたけれど、これからは自分で手配する「FOB」や「FCA」に切り替えたいと思っている方もいるでしょう。
この記事では、「FOB取引」で買い手が自分でフォワーダー(輸送会社)を手配する方法、つまり「貿易のノミネーションフォワーダー」について、基礎からわかりやすく説明します。
貿易のノミネーションとは?かんたんに言うと…
ノミネーション(Nomination)とは、買い手が「このフォワーダーに輸送を任せます」と指定することです。特に「FOB」や「FCA」でよく使われます。
この仕組みを使えば、貿易取引の内、国際輸送部分を信頼できる業者(フォワーダー)に依頼でき、輸送費もコントロールしやすくなります。無駄な費用を防いだり、トラブルを減らしたりできるため、小規模な輸入業者にも役立ちます。

こちら側(買い手側)が輸送をコントロールできる点に最大の魅力があります。
FOBやFCAって何?誰がどこまで担当する?
FOBやFCAは、どこまでが売り手の責任で、どこからが買い手の責任かを決めるルール(インコタームズ)です。詳細は、インコタームズを徹底解説を参照
たとえば「FOB SHANGHAI」と書かれている場合、売り手は上海港まで商品を届けて、船に積むところまでを担当します。そこから先、日本までの船便の手配や費用は買い手が担当します。
一方「CIF TOKYO」と書かれている場合は、日本までの輸送手配も費用も売り手が行います。
つまり、FOBやFCAにすることで、買い手は自分で輸送方法や費用を選べるようになり、全体のコストをより上手に管理できるのです。
ノミネーション取引とは?
ノミネーション取引とは、「買い手が自分で輸送会社(フォワーダー)を選ぶ取引」のことです。売り手ではなく、買い手が輸送を主導するのがポイントです。
自分で手配することで、費用が見えやすくなり、スケジュールも調整しやすくなります。逆に、売り手がフォワーダーを選ぶ場合は、ノミネーションとは言いません。
ノミネーションの手続きの流れ
FOB条件で、買い手がフォワーダーを手配する流れは次のとおりです。
1. 売り手から商品の情報をもらう
まずは、売り手から「インボイス」や「パッキングリスト」といった書類を受け取ります。これには、商品内容や数量、サイズなどが書かれており、輸送の見積もりに必要です。
2. 日本のフォワーダーに見積もりを依頼する
次に、日本のフォワーダー(A社)に書類を渡し、輸送費などの見積もりを頼みます。A社は現地のパートナー会社(B社)と連携して、輸送が可能かどうかや費用を確認してくれます。
見積もり時には、次の情報が必要です。
- 出発地と到着地(国や港)
- 荷物の形や重さ、大きさ、個数
- 商品の内容
- 通関や国内配送の希望があるか
新しく取引する会社の場合は、会社情報や輸出入者コードを確認されることもあります。
3. 売り手にフォワーダーの連絡先を伝える
見積もりに納得したら、フォワーダーA社が現地のB社を担当に決めます。そして、B社の連絡先を売り手に伝えます。
その後、売り手とB社が直接やり取りしながら、出荷の準備を進めていきます。倉庫の情報などは、フォワーダー同士で連携するので、買い手が細かく答える必要はありません。
4. 売り手がシッピングインストラクション(S/I)を送る
売り手は、現地のフォワーダーB社に「S/I(シッピングインストラクション)」という出荷指示書を送ります。これには、出荷の数量や日付、申告内容などが書かれています。
この情報をもとに、B/L(船荷証券)という輸送の証明書が作られます。なお、買い手がフォワーダーを選んでも、B/Lに書かれる「送り主(Shipper)」は売り手になります。
フォワーダーが発行するB/Lには、「マスターブル(Master B/L)」と「ハウスブル(House B/L)」の2種類があるので、記載内容には注意が必要です。
ノミネーションレターとは?書き方と注意点
ノミネーションレター(Letter of Nomination)は、買い手が「このフォワーダーにお願いします」と伝える書類です。とくに信用状(L/C)を使う取引では必要になることがあります。
書類には、次のような内容を記載します。
- 買い手の会社名と連絡先
- 指定するフォワーダーの会社名と連絡先
- 対象となる貨物や契約の内容
- 有効期限やその他の注意点
作成時の注意点は以下の通りです。
- 信用状(L/C)の内容とズレがないようにする
- 必ず社印や署名を入れる
関連疑問:なぜ信用状(L/C)でノミネーションレターが必要?
信用状付きの取引では、銀行が「どのフォワーダーを使うか」や「必要な書類」に細かいルールを決めていることがあります。
その中で、買い手が特定のフォワーダーを使いたい場合、「レター・オブ・ノミネーション(Letter of Nomination)」を出すよう求められることがあります。これは、自分で信頼できる業者を使うための大事な手続きです。
関連疑問:ノミネーションが必要になる取引条件とは?
ノミネーションは、基本的に「FOB」や「FCA」のように、買い手が輸送を手配する条件で使われます。
ただし、たとえ「CFR」や「CIF」のように売り手が輸送をする条件でも、信用状の内容や個別の合意により、買い手がフォワーダーを指定することがあります。つまり、例外もあります。
ノミネーションの「いい点」と「注意点」
ノミネーション(買い手がフォワーダーを指定すること)は、次の点に注意します。
項目 | 良い点 | 注意点 |
費用 | 複数の会社に見積もりを取れるので、安くできる可能性がある | 最初は、比較や交渉に時間がかかることもある |
信頼 | 実績のある会社を選べる | 信頼できない会社を選ぶとトラブルになる |
スケジュール | 自分でスケジュールを調整しやすい | 売り手との連携が必要になることもある |
管理 | 全体を自社でコントロールできる | 手配ミスやトラブル対応も自分で行う必要がある |
できるだけノミネーションフォワーダーとしての実績がある業者を選ぶようにしましょう。詳しくは、優良フォワーダーを見分けるポイントをご覧ください。
よくあるトラブルとその対策
よくあるトラブルは、以下の通りです。
- 指定したフォワーダーが現地とうまく連携できず、出荷が遅れる
- 売り手がフォワーダーの指定に協力してくれず、手配が進まない
- フォワーダーが現地の状況に詳しくなく、書類ミスが起きる
トラブルを防ぐには、以下の準備が大切です。
- 取引契約の時点で「ノミネーションを使うこと」を書面で決めておく
- 売り手と事前に連絡体制を整えておく
- 指定するフォワーダーが現地対応に慣れているかを確認する
特別なケースでノミネーションが必要になる場合
ノミネーションは、主にFOBやFCAで使われますが、例外もあります。
- 第三国を経由する貿易(例:三国間貿易)で、別の国の業者を指定するケース
- 危険品や冷蔵品など、特別な扱いが必要な貨物
- 契約書や信用状(L/C)に「買い手が輸送を手配する」と決まっている場合
なぜ今、買い手が輸送を管理すべき?
2020年以降、コロナや戦争の影響で、船が足りなかったり、運賃が急に上がったりするなど、物流のトラブルが続いています。こうした中で、売り手はリスクを避けるために「輸送は買い手に任せたい」と考えるようになっています。
つまり、これからは「買い手自身が輸送を手配する力(物流マネジメント力)」が必要です。
商品の品質は売り手に任せ、輸送の品質はフォワーダーに任せる。そして買い手は、その全体をうまくつなぐ役割を果たすのが理想です。
もし、中国からの国際輸送を最適化したい方は、DIGISHIP Super Expressが便利です。初心者、比較的、小規模な輸送でもノミネーションフォワーディングを利用できます。ぜひ、検討してください。
まとめ
- ノミネーションとは、買い手が輸送会社(フォワーダー)を自分で選ぶこと
- FOBやFCAなど、買い手が輸送を担当する取引でよく使われる
- 手続きの基本は「商品情報の入手 → フォワーダーに見積もり → 売り手に連絡」
- フォワーダーは価格だけでなく、対応力や実績も見て選ぶ
- 信用状の取引では、指定フォワーダーを通知する書類(ノミネーションレター)が必要なこともある
- CIFやCFRでも、条件によっては買い手がフォワーダーを指定する場合がある
- ノミネーションでは、スケジュールや情報の管理に注意が必要
- これからの貿易では、買い手が物流を主導する力がより大切になります