この記事は、輸出や輸入時の契約書のテンプレートと実務的に使える英文契約書の作成方法についてご紹介していきます。
自社の商品について海外企業から問い合わせがありました。相手企業に問題がないことを確認した上で、販売できる条件を提示。相手先企業とは、何度か交渉をした後、無事に合意に至りました。ここで重要になるのが「英文契約書(売買契約書)」です。
英文契約書には「商品価格は〇〇円」「いつまでに納品する」「支払いのタイミング」などの約束事が記載されています。もちろん、海外企業との書面であるため、全て英語で作成します。
さて、どのように用意をすればいいのでしょうか? ここで重要になるのが次の2つです。
- すでにある英文契約書のテンプレートを使う。
- 記載事項の入力を終えたら、リーガルチェックを受ける。
この記事では、上記2つの手順を具体的に説明していきます。
輸出の英文契約書の入手と考えるべきポイント
売買契約書は、貿易交渉の末、決まった諸条件(商品、数量、金額、決済方法、インコタームズ等)を書面にし、トラブルの発生を未然に防ぐ目的があります。契約書には、一般的な条項と個別条項があり、使用する書式(フォーマット)は自由です。
また、契約書は、輸出者から輸入者に対して作成する「Sales Contract」の他、輸入者から輸出者に作成する「Purchase Contract」があります。(*作成する側で名称が違う)
- 輸出者→輸入者=Sales Contract
- 輸入者→輸出者=Purchase Contract
売り手、買い手のどちらも自由に契約書を作成できます。貿易会社などでは、自社専用の契約書のテンプレートを用意していることが多いです。契約書は、どちら側が作成した物でも構いません。しかし、契約書は、作成者側が有利な条件で作成されていることが多いため、締結前は、リーガルチェックが必要です。
例えば、あなたが輸入者の立場であり、相手(輸出者)から、Sales Contractのドラフト(下書き)が送られてきた場合は、表面はもちろんのこと、裏面部分の条項等を含めてチェックが必要です。裏面には、トラブルの際の裁判をどこの国でやるのか?なども記載されています。
「文字がたくさんあって読むのが面倒」と、内容も理解しないまま締結する方がいらっしゃいます。気持ちはとてもよくわかります。しかし、貿易取引では、非常にリスクが高いためやめましょう。
相手が作成した契約書を使用してもOK!でも、内容を理解せず締結するのは絶対避けよう!
関連疑問:小規模事業者と契約書の実態
例えば、海外通販のノリで輸入事業をしている方も多いです。このような方々は、そもそも「契約書ってなに?」から始まることが多いでしょう。おそらく、アリエクスプレス、アマゾンなどのECサイト経由で商品を調達しているからだと思います。
アリババで取引する場合に限れば「Trade Assurance」に対応する業者と取引をする限り、特段、別に契約書を用意する必要はないです。ただし、取引相手の全てのメッセージは、アリババのチャットシステムを使ったり、支払いをアリババ経由でしたりすることが条件です。
貿易で使う契約書テンプレートを手に入れる方法
海外・貿易(輸出・輸入)取引で使う契約書のテンプレートは、どのように入手すればいいのでしょうか?
例えば、貿易取引といっても….
- 単なる売買契約
- OEM生産の契約書
- 委託加工契約書
- 機械製品の売買契約なのか?
- 雑貨の売買契約なのか?
など、様々な形があります。当然、契約書も個別の取引ごとに記載するべき項目は変わってきます。ただし、基本的には、次の項目が記載されていれば、一般的な売買契約書は成立しています。
- 買い手と売り手の名前、会社名、住所
- 契約締結日とリファレンス番号
- 取引する品目の一覧と単価と合計
- インコタームズと建値
- 輸出地、輸入地
- 出荷日
- 物品の検査(出荷時検査)
- 梱包形態、梱包基準
- 支払い方法
- 海上保険の有無
- 売り手と買い手のサイン
- クレーム品質の基準
- 不可抗力
- 仲裁
- 準拠法
ただ、実際の所、これらの項目を全て自社で作成するのは難しいですね! そこで、英文契約書のテンプレートを利用します。
例えば、以下の2つの機関には、取引ケースごとに英文契約書のテンプレートを用意しています。(渉外弁護士が監修)
価格的な面で言うと、日本商事仲裁協会の方が安いです。上記のいずれかで契約書のテンプレートを購入し、自社の取引に活用しましょう。なお、ジェトロでは、輸出契約書の作成講座も開催しています。こちらも併せて参加されることをお勧めいたします。
契約書のサンプルを見たい場合は「貿易実務完全バイブル 著者:黒岩章氏」をご覧ください。
契約書の基本的な3つのポイント
商品の買い手との間に契約書を作るときは、次の3つの点を意識しましょう。
- 引合からオファーまでの全ての事項を盛り込むこと
- 裏面の約款事項(やっかんじこう)を確認すること
- オリジナル契約書を二通用意、肉筆のサインをすること
1、引合からオファーまでの事項をすべて盛り込む。
契約書は、買い手と売り手が合意した内容を書面にした物です。この契約書には「引合からオファーまでの合意事項をすべて盛り込む」ようにします。これによって、お互いが契約書に縛られることになり、貿易取引が滞りなく進みます。契約書に縛られると聞くと、悪く感じてしまいます。しかし、これは自分を含めて相手にも約束を守らせられるため、とても重要です。
例えば、支払いの約束を考えてみましょう。契約通りに商品を製造して輸出しました。しかし、不手際によって、契約書の中に、支払い時期を明記していなければいかがでしょうか? 商品の買い手が考える支払い時期と、売り手が考える支払い時期が必ずしも一致するとは限りません。この場合は、あなたが考えている以上にお金が支払われる時期が遅くなる可能性があります。
これは、貿易取引上、とても問題です。商品はすでに送っているにも関わず、代金が支払われないのは、相手に対して無償でお金を貸しているのと同じです。このような事態を避けるため、契約書には「引合からオファーまでの合意事項」をすべて盛り込むようにします。上記の例で言えば、支払い時期についても「by Sep 23,2017」と記載するべきです。
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2.契約書の裏面にある約款の意味も確認する。
一般的に契約書の裏面には、文字がぎっしと並んでいます。見るだけで嫌気がさすほどの量です。この部分のことを「約款(やっかん)」と言います。約款には、契約に関する様々な条件が記載されています。一般的には「General Terms&Conditons」と記載されている場合が多いです。先ほど、ご紹介した契約書のテンプレートを使う場合であっても、どのような内容が書かれているのかを簡単に確認しておきましょう。
3.契約書は二通用意して、肉筆のサインする。
契約書を作成したら、原本を二枚用意します。この二枚に対して、お互いが肉筆のサインをします。その後、1枚ずつを分け合って保管しておきます。サインをするときは、重ねて記載事項について確認をします。サインをした時点で「ウィーン売買条約」に基づく契約のルールが適用されるため、細心の注意をします。
疑問・契約書の構成内容は、どうなっている?
売買契約書は、表面と裏面の2つがあります。
- 表面=該当する取引の個別的事項
- 裏面=該当する取引を含む一般的な事項
が記載されています。裏面の部分は、通称「裏面約款」ともいわれており、個別取引を含めた一般的な取引におけるルールが記載されています。これを大福に例えるなら…..
- 中身の餡=今回の個別取引の内容を記載
- 外側を包む餅=個別取引を含む一般的なルールを記載
まとめ
- 売買契約書は、インコタームズとは別のお話。
- 売買契約書は、売り手と買い手の商取引の細かい部分を決めた物。
- インコタームズで不明な部分を売買契約書に落とし込む。
- 契約書は、輸出者作成でも、輸入者作成でもOK!
- 但し、相手の契約書を使う場合は、相手が有利になっている箇所がないかを確認。
- 契約書の疑問があれば、締結前に質問をし、そのやり取りを保管すること
- 実際の英文契約書は、テンプレートを流用すればいい。
- テンプレートに自社の情報を記載し作成する。
- 作成した契約書を専門家にチェックしてもらう。
- 内容が良ければ、相手と自社の双方で保管すること