着物の海外需要・個人で輸出(販売)する方法
私が生まれた1984年。ニューヨークで合意された「プラザ合意」により、急速な円高へ。それから約40年後の2023年現在、一ドルは151円です。街中で目にするガソスタの看板、リッター150円~160円前後の表示(2023年11月現在)もおなじみの光景です。少しずつスタグフレーションの足音が聞こえます。
超円安時代、一企業として考えたいことは「外貨の獲得」です。実は、HUNADEも毎月、外貨を獲得している為、円安の恩恵を受けています。皆さんにも外貨も得る安心感を味わっていただきたいと思います。
では、何を輸出したらいいのでしょうか? 今回は、その答えの一つになりえる「海外の着物の需要」について解説していきたいと思います。
日本国内の着物の問題
東京・大阪等の大都市に限らず、訪日外国人があふれています。表面的には豊富な観光資源と考えるも、本質的には「安い日本」になったことが最大の理由だと思います。但し、これは為替レートの問題であって、日本企業・日本市場には魅力的な部分があると思います。本日は、その中の一つの着物に注目します。
ご存じの方も多いと思いますが、今、日本の着物はゴミ化しています。一昔前、1000万円で販売されていた着物も今では値が付かない。むしろ、便利屋さん等に依頼するとゴミ扱される物がほとんどです。そういえば、このようなことわざがあります。
「 豚に真珠 」
ご存じの通り、価値がある物でもそれを理解できない人には無用の長物との意です。まさに、今の着物です。知識がある人が見れば「これは大島紬だ~」「100%シルクだ」とわかるもの、理解できない人にとっては、ただの和服です。正直、500円と言われても買いたくないでしょう。価値を理解できない人というより、価値を理解しようとしない人にとってまさに「邪魔物」です。
実際、ある便利屋さんがいうには、ごみの処分依頼の中には、着物が含まれていることが多いそうです。しかも桐ダンス丸ごと処分などです。当時の時価で換算すれば、すぐに高級外車を買える価格です。それが日本全国、津々浦々でゴミと化しているのです。特に相続等のタイミングで大量に発生するそうです。
また、着物についてもう一つ面白い情報があります。日本国内で着物が眠っている可能性が高い地域は、どこだと思われますか? ある有識者によると「お城近くの城下町」とのことです。これは、地域を問わず、けっこう当てはまるそうです。
上記の状況を考慮すると、日本で余っている着物、需要がない着物を活かして海外に販売することができれば、大きなビジネスになると思いませんか?
着物の需要・調査結果
では、海外における着物の需要を確認していきたいと思います。今回、需要の調査をするために以下、3つのツールを使ってみました。前提条件として、私は着物の知識はないです。着物に関しては、完全な素人ですので、その辺りは割り引いてお読み下さい。
- グーグルトレンド
- グーグルの検索キーワード
- 貿易統計
1.グーグルトレンド
まずは、グーグルトレンドで確認してみます。以下は、全地域×英語で条件を設定した上で「kimono」と検索するユーザー数を表したものです。(過去、5年の検索数の推移)基本的な傾向として、夏場に検索数が少なくなり、年末にかけて多くなるようです。
地域別では、ブラジル、ナイジェリア、フランス、米国が多いです。ブラジルの場合は、ブラジリアン柔術の関係から胴着を着物として認知している方が多いです。他、過去、データを見る限り、爆発的に検索数が増えているわけではないものの、一定の需要があることがわかります。
画像引用元:グーグルトレンド
2.グーグルの検索キーワード
次にグーグルの検索キーワードを確認してみましょう!検索結果では、およそ1500~3000程のキーワードがありました。着物本体のキーワードの他、着物関連品の検索ワードも非常に多く出ています。
グーグルの検索キーワード例 | ebayの検索キーワード例 |
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|
海外における着物の利用例
上記、キーワードを一つ一つ確認した結果、海外の着物に関する需要には以下の傾向があるようです。
- 大正時代の着物(下が袴のセット)系
- 禅などの精神統一系
- 着物の端切れを利用した製品
- 旅館の浴衣系
- 桜柄の着物などかわいい系
- アニメと関連付けている軽
- ジーパン等と組み合わせている系
- バスローブ系
- 鯉、鳳凰系
- 大きくて、背の高い人向け用
- 特定シーズン用の着物(クリスマス)
- 柔道着などの格闘系
- 脚が短い?着物
- 平安時代系(アンティーク性追求型)
- 武士道の連想系
- ビーチでふらふら系
- デニム生地を着物アレンジ系
- 特定の習慣に対応している系
ぜひ、色々とリサーチをして頂ければと思います。
3.貿易統計(HSコード)
実際の輸出申告データからも主な輸出先国と単価を調べらます。完成品の着物に関するHSコードは、次の通りです。このHSコードを基にして貿易統計で調べてみましょう!
完成した着物等 | HSコード | 他法令 |
綿製のもの | 6211.42 | ET |
人造繊維製(ポリエステル) | 621143 | ET |
その他の紡織用繊維製のもの | 6211.49 | ET&HU |
ショールスカーフ | 6214.10 | ET |
- ET=輸出貿易管理令
- HU=鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律
貿易統計の結果を平均数量順、平均単価準で並び変えてみます。その結果が以下の通りです。
平均数量順の上位10カ国
- 対象期間:2022年度(一年間の合計)の貿易統計
- HSコード:6211.49
- 情報元:財務省の貿易統計
国名 | 着 | kg | 平均単価(着) | 平均単価(kg) |
中華人民共和国 | 41265 | 35446 | ¥2,214 | ¥2,577 |
香港 | 5467 | 3098 | ¥73,011 | ¥128,841 |
フランス | 5337 | 5183 | ¥1,992 | ¥2,051 |
ベトナム | 4734 | 4975 | ¥6,492 | ¥6,178 |
オランダ | 1961 | 251 | ¥503 | ¥3,928 |
ニュージーランド | 1811 | 547 | ¥550 | ¥1,821 |
アメリカ合衆国 | 1603 | 864 | ¥17,718 | ¥32,873 |
英国 | 972 | 579 | ¥3,747 | ¥6,290 |
台湾 | 546 | 405 | ¥27,588 | ¥37,193 |
大韓民国 | 226 | 193 | ¥37,677 | ¥44,119 |
平均単価順の上位10カ国
国名 | 着 | kg | 平均単価(着) | 平均単価(kg) |
クウェート | 1 | 2 | ¥1,000,000 | ¥500,000 |
チリ | 1 | 13 | ¥300,000 | ¥23,077 |
サウジアラビア | 1 | 3 | ¥212,000 | ¥70,667 |
スイス | 1 | 0 | ¥211,000 | #DIV/0! |
オーストラリア | 7 | 15 | ¥168,286 | ¥78,533 |
マカオ | 5 | 9 | ¥117,000 | ¥65,000 |
マレーシア | 5 | 13 | ¥96,000 | ¥36,923 |
香港 | 5467 | 3098 | ¥73,011 | ¥128,841 |
イタリア | 21 | 42 | ¥59,000 | ¥29,500 |
インドネシア | 9 | 1 | ¥41,889 | ¥377,000 |
貿易統計からの考察
上記価格は、日本の港価格(FOB)です。また、平均単価であることに留意します。その上での考察です。まず、数量別に並べ替えると中国向けが一番多いです。ただし、単価も非常に低いです。
一方、平均単価順に並べ替えると、中東地域が上位に入ります。但し、数量は、1などあてにはならないです。例えば、個人的なつながりがあるなどの事例を除き、最初から狙わない方が良さそうな地域です。
数量順かつ単価順のどちらも上位に入るのは香港です。香港の着物市場には、何かしらのヒントがありそうです。着物の輸出を検討している方は、一度、香港市場を重点的に調べてみましょう!
個人でもできる着物輸出&着物ビジネス
これまでお読みいただいた通り、着物には、一定の需要があります。ただし、日本の着物がそのまま受け入れられるとは考えない方が良さそうです。着物の輸出で成功するには「着物に対する価値観、固定観念を捨てること」が重要です。
例えば、水着、ビーチと聞いてそこに着物が結びつくとは考えられないでしょう。しかし、海外では、水着の上から羽織るように着物を着る方がいらっしゃるようです。着物に対する価値観、固定観念を捨てることにより、海外における新しいニーズを拾えそうです。
この記事の冒頭で申し上げた通り、日本には大量の着物が並んでいます。昔は、一着何百万円もする物でもゴミと化しています。他方、海外では、着物に対する一定のニーズがあります。後は、これをどう結び付けてビジネスをするかだと思います。
例えば、メルカリ等を見ると「着物リメイク品」が非常にたくさん出品されています。一人メーカー、コツコツと自ら製作して出品している方がいらっしゃいます。これを海外向けに行うのも一つです。具体的には、ショッピー、ebay等ですね!これを活用すれば、比較的、小規模でも輸出ができるはずです。特にショッピー輸出は、着物などの小物類に向いている気がします。
参考情報:着物を輸出する上での注意点
着物を輸出する場合は、次の点に注意しましょう!
留意するルール | 意味 |
古物商 | 日本国内で着物を買い取る際に必要です。最寄りの警察署に問い合わせをします。 |
他法令 | 着物の種類によって、関税法以外の法律により、輸出が制限されています。輸出貿易管理令は、制裁対象国に対して、輸出を制限する物です。
|
関税 | 関税は、輸入者(買い手側)が支払う物です。関税率は、各国ごとに異なり、日本とのEPAとの有無でも変わります。 例えば、アメリカ向けに6211.42の着物を輸出した場合、8.1%の関税がかかります。(2023年11月現在)フランス向けなら12%のところ、日欧EPAを適用することで無税です。 |
国際輸送 | 国際輸送は、当分の間、EMSで十分だと思います。一定規模以上になった場合は、みかん箱などのサービスを使います。 |
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