海外ビジネスでは「〇〇の商品を購入したい」「〇〇の見積もりを欲しい」と、買い手からの意思表示を「引合い」と言います。
一方、この引合を受けて、売り手から意思を伝えることを「オファー」と言います。オファーとは、買い手が示す内容(引合い)について回答することはもちろんのこと、自社にとって受け入れられる条件を明確に意思表示することでもあります。
そこで、この記事では「オファー」の役割と種類、確認条件等についてご紹介します。
■この記事の要点
- 確認条件付きオファー:売り手がオファー、買い手が承諾しても最終的に売り手が「確認」をしない限り取引が成立しない方法(在庫調達に不安があるときに活用)
- ファームオファー:買い手又は売り手に対して行う取引の申込みの総称です。
- カウンターオファー:相手からのオファーに対して、再提示すること(カウンター)
売り手としての役割・オファーとは?
自社商品について海外のバイヤーから問い合わせが来ることがあります。問い合わせの理由は様々です。たまたま、貴社のホームページを見つけてコンタクトしてくることもありますし、外国で販売されている商品から貴社のことを知る可能性もあります。このようなバイヤーからの問い合わせを「引合い」と言います。
引合いには、買い手が希望する商品名、数量などが書かれています。もちろん、この引合いの時点では、買い手の一方的な条件が記載されているため、これに対して売り手の意思を示します。引合いは、すべてを拒否することもあれば、一部の条件だけを受け入れることもあります。このように販売者から、購入者へ伝えることを「オファー」と言います。
オファーには3つの種類が有り!
貿易取引は、最初に買い手からの「引合い」があり、それに対して販売者が「オファー」を出すことが一般的です。もちろん、いきなり売り手から買い手へアプローチすることもあるため、あまり形にこだわらなくていいです。大切なことは、お互いの意思をしっかりと相手に伝えることです。
オファーには、次の3つがあります。
- ファームオファー
- 確認条件付き申し込みオファー
- カウンターオファー
ポイントは、拘束性の有無です。1番は、確定申し込みといい、一度、条件を出すと、簡単に取り消せないです。2番は、条件は提示する物、最終的に売り手が確認(確認条件)をしない限り、契約は成立しないオファーです。
1.ファームオファー(Firm offer)
買い手又は売り手から相手に対して売買契約の申し込みを行うことです。ファームオファーは、Selling offer(売りの申し込み)とBuying offer(買いの申し込み)の2つがあります。
オファーには「有効期限」が定められており、この期限を超えると無効になります。オファーに対して「Acceptance(承認)」をすれば、無事に契約は成立します。
2.確認条件付きオファー
売り手が商品を用意できるか不安なときに利用するオファーです。売り手から提案したオファーに対して、買い手が承認をしてもすぐに契約は成立しません。買い手がオファーを承認した後、売り手がそれを「確認」することで取引が成立します。
3.先売り御免オファー
複数の買い手にオファーを出しているため、売り切れたらごめんなさいというオファーです。
■ポイント
オファーは、簡単には取り消せない為、相手に提示する前に、内容について確認が必要です。特にファームオファーは、自分が出した条件が「自らを拘束すること」にもなります。できるだけ迅速な判断をしつつ、見落としを防ぎます。
オファーの出し方とは?
オファーは、どのように出せばいいのでしょうか?
買い手にオファーするときは、必ず記録します。母国語でやり取りをしても聞き間違いなどの問題は、発生します。これが外国人との間であれば、なおさらです。「言った。言っていない。」の水掛け論にならないためにも、記録に残すことが重要です。具体的には、電子メールなどが一般的です。緊急性が高い場合は、取り急ぎ電話で伝えておき、後ほど、eメールで送信します。
ポイント:記録に残る方法でやり取りをすることが大切です。
オファーに関する2つの注意点
オファーには、次の2つの注意点があります。
- オファーによって拘束されること
- 有効期限があること
1.ファームオファーによって拘束される
ファームオファーには、オファーを出した人を拘束します。提示した以上、簡単には取り消せないです。このオファーに対して、相手が受け入れたなら、当然、相手も拘束されます。この仕組みにより、交渉の途中で、好き勝手に中断できなくなるため、お互いが安心して貿易交渉ができます。
例えば、あなたが輸出者の場合を考えてみましょう!自社の魅力的な商品を海外へ輸出したいです。展示会などに積極的に参加をして、ある一社との間で、貿易取引を進めることで一致しました。
輸出者側は「●●という商品を10,000ドルで売却する」というファームオファーを出しました。しかし、このオファーを出した直後、急激な円高に見舞われてしまい、価格を「12,000ドル」にしなければならなくなりました。この場合、輸出者は価格を上げることができるのでしょうか?
国内取引であれば、交渉で何とかできそうな気がします。しかし、海外との取引においては、これを行うことはできません。なぜなら、すでに輸入者に対して「ファームオファー」を出しているためです。ファームは「確約」の意味が含まれているため、提示した内容については拘束されます。
もちろん、再交渉もできます。しかし、それを相手が受け入れるかは別問題です。受け入れなければ、ファームを出したときの条件で進めていく必要があります。
2.オファーには、有効期限がある。
オファーには、拘束力の他、有効期限もあります。あなたがオファーを出すときは、必ず有効期限を設定しておき、期限内に相手から何も反応がない場合は「無効」になるようにしておきます。
この仕組みを活用すると、ファームオファーの有効期限の日数を調整することにより、相手からの反応を促せます。ファームの有効期間を長く設定すると、相手の反応が鈍くなりばかりでなく、様々な変動による影響(為替の変動など)を受ける可能性が高くなります。だからといって、あまりにも短すぎると、相手の意思決定に要する時間が足りないこともあります。これらのことをふくめて適切な期間を設定します。
次にオファーで書かれている情報を確認していきます。
オファーに書くべき情報
買い手から引合いがあり、それについて「オファー」を出すときは、「引合いで書かれている情報」についてすべて回答する必要があります。できること、できないことを1~10まで回答した上で、以下に説明する項目を盛り込みます。必ず引合いの内容を100%返した上で、自社に有利な条件を再提示するイメージです。下の一覧は、オファーを出すときに記入するべき項目です。
1. 有効期限
オファーの有効期限です。オファーは有効期限内だけ有効であり、期限を過ぎれば無効です。
2. 売り手と買い手の情報
国名、会社名(輸入者名)、郵便番号など、輸出者と輸入者のそれぞれの情報を記載します。これによって、オファーの当事者が誰なのか?を明確にできます。
3. 商品に関する情報(価格など)を書きます。
商品名、品質、数量、重量、梱包方法、価格などを記載します。商品名は、種類ごとに数量など表示するようにします。取引価格は、適用するインコタームズ(貿易条件)と合わせて記載します。
インコタームズとは、貿易取引を行う上で、どこまでの範囲を輸出者や輸入者が費用や危険負担するのかを明確にする取引ルールのことです。
例えば、インコタームズの一つである「DDP」であれば「輸出者」が輸出国の工場から相手先の指定場所に届けるまでの全ての費用と危険負担をします。また、これとは逆の「EXW」は、全ての費用と危険負担を「輸入者」が行います。
適用するインコタームズによって、貿易に関する条件が大きく異なるため、違いを理解することが大切です。詳しくは「初めてのインコタームズ入門」をご覧ください。
4. 輸送に関する情報
どのように運ぶのか?(コンテナ単位なのか)、船なのか、飛行機なのか。輸出港や輸入港はどこにするのか。船積みの時期などの情報を記載します。
ポイント:オファーを出す前に輸出諸費用などを計算しておく必要があります。特に「CIF」の場合は、船の輸送費用と海上保険代金を輸出者が負担します。そのため、これらの費用を計算しておかないと、思わぬ経費倒れになりかねません。
5. 貿易代金の決済と保険に関する情報
貿易代金をどのように支払うのかという情報を記入します。また、海上保険の付保に関することも記載しています。
海外取引(輸入・輸出)の決済方法 どのようにお金をやり取りする?
6.その他
紛争の解決方法やクレーム処理の方法について取り決めます。万が一、貿易取引で問題が発生した場合は、それをどのように解決するのかを記載しています。また、出荷する商品をどのように検査するのかについても記載しておきます。
オファー書類のサンプルが欲しい!
輸出者が使うオファーのサンプルが欲しいときは、貿易手続きの解説本の購入をお勧めします。
オファーのまとめ
貿易取引を始めるにあたり、最初に行うのが引き合い、そして「オファー」です。売り手又は買い手、いずれの立場でも、相手に提示した内容については「拘束力」があります。
オファーには、全部で三つの種類があります。ファームオファー、最終確認条件付きオファー、カウンターオファーです。ファームオファーは「買ったり、売ったり」することを「確約」するものであり、簡単には取り消しができません。最終条件付きオファーは、売り手のオファーを買い手が承認をしても、再び売り手が確認をしなければ契約は成立しません。
カウンターオファーは、ファームオファーの内容の一部または全部について拒絶をして、新しく自分の希望するオファーを相手に投げかけることです。いずれのオファーでも、何度か繰り返すことにより、両社が納得する条件で貿易取引が行えます。
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