外国との間で商品を輸送するときは、輸出者や輸入者のいずれかが輸送代金を支払います。どちらが支払うのかは、貿易取引(インコタームズ)によります。
例えば、貿易条件の一つである「CIF」では、海上輸送費と保険料を輸出者が負担します。本来、輸出国側で輸送費などを支払うため、輸入者側では一切の費用が発生しないと思うかもしれません。しかし、実際は、CIFであっても、輸入する側で「貨物を引き取るための諸費用」を支払います。コンテナ諸費用やサーチャージ(追加費用)と呼ばれるものです。
そこで、この記事では、海上輸送費と関連費用を詳しくご紹介していきます。
海上輸送費の内訳
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船で輸送するときの費用を「海上運賃」といいます。航空機での輸送が可能となった時代であっても「運べる量」と「コスト」から、現在でも主流の輸送方法です。昔から、海上運賃は中身がわからない料金体系をしています。その原因が「海運同盟」と呼ばれる合法的な「価格協定」にあります。
本来であれば、価格協定は「独占禁止法」の取り締まりの対象です。独占禁止法は、ある市場を数社の会社によって独占して、価格を操作できないようにする法律です。私たちの生活は、この法律があることによって、企業による不当な価格調整から、脅かされることがないようになっています。
例えば、納豆を作る会社が日本に5社しかないとします。この5社が意図的に高い価格で販売すると、誰も安い価格で納豆を食べられなくなります。私たちの納豆が数社の意向によって脅かされるのです。これを防止するのが独占禁止法の目的です。
しかし、先に説明をした「海上輸送分野」については「航路の安定確保」のために、独占禁止法の適用除外分野です。具体的には、世界の海運会社が同盟を結び、航路間(〇〇港~●●港まで)の料金表を作成しています。
同盟を結んでいる船会社は、同盟で定められた運賃表(タリフ)を守るように、各顧客に国際輸送サービスを提供しています。これによって、無駄な価格競争が起きずに、安定した経営ができます。本来、このような価格協定は「カルテル」にあたり、違法行為です。しかし、海上輸送船の分野については、適用が除外されて法令違反には当たらないです。
ここでお伝えをしたいのは、海上輸送費は、このような特別な恩恵で守られている物であることです。さらに国際間の輸送契約であるため、基本運賃と合わせて、何かと「〇〇費」などを請求される業界であること知っておくといいです。
海運同盟はほぼ消滅。自由な価格競争により海運会社が破綻する事例も発生!
海上輸送費の大きな内訳
いわゆる国際輸送費は、以下3つの合計額を基本とします。
- 海上運賃
- 各種調整金(サーチャージ)
- 輸入国側のコンテナ取扱料金など(CFSチャージ含む)
そして、これら3つをさらに細分化した物が次の5つです。これらの費用は、貨物が到着するときに発行される「アライバルノーティス」に記載されています。請求項目は、使用する船会社、航路などによりバラバラです。よくある物としては、BAF、YAS、THCなどがあります。いずれの費用も5つのいずれかに分類されます。
- 海上運賃(基本運賃)=ベースレート=オーシャンフレート
- 燃料系の割り増し料
- 為替的な割り増し料
- 危険回避の割り増し料
- 輸入港における作業料
1.海上運賃(オーシャンフレート)
船会社は、NVOCCまたは一般の荷主と「S/C」を結び、運賃の値引きをしています。S/Cとは、一定期間、一定の物量を輸送する約束した上で、輸送料金の値引きを得る仕組みです。いわゆるNVOCCや大口の荷主が結んでいることが多いです。つまり、物量が少なく、スポット的な輸送契約をする荷主ほど、高い海上運賃を支払います。通関業者から請求書が発行されると「船社立替金」等の名称で表示されています。
海上運賃を負担する人:FOB→輸入者 CIFなど→輸出者
関連記事:世界中の海上運賃を検索する方法
その他、ベースで割り増しになる要素
- 重量割り増し 一定の重さを超えると割り増し
- 長尺物割り増し 一定の長さを超えると割り増し。
関連的に疑問・海上運賃には消費税はかかるの?
消費税は、かかりません。輸入許可前の貨物は外国貨物であるからです。
2.燃料系の割り増し料金(BAFなど)
上記のオーシャンフレートに追加される費用が「サーチャージ」です。その他、運行する航路によって、別のサーチャージを支払う場合があります。以下のサーチャージは、全て貨物を受け取る輸入者側が負担します。
BAFなどは、燃料費の上昇や下降による調整を行う目的があります。基本的には、原油価格の上下に対するリスク分散費用だとお考え下さい。BAF以外にも様々な呼び方がありますが、単純に考えると「燃料調整系の費用」です。
EBS、ECR、BC、BAF、FAF、GBF、LSFS(海洋汚染の防止)、EFAFEなど。
3.為替的な割り増し料(CAF・YASなど)
「○○港から○○港までは400USD」など、基本的に船の運賃はUSDで決められています。各国の船会社は、USドルから自国通貨へと切り替えて運賃を回収したいです。このとき、USドルと各国通貨との為替による収益の調整を行うのが「CAF」です。
他にYAS(円高による調整金)など
4.危険回避の割り増し料(ERSなど)
中近東を航行する際の危険回避に関わる費用負担です。
他にCSS(Carrier Security Surcharge)などがあります。
5.輸入港における作業料(THCなど)
輸入国側でかかる費用には、次の物があります。
- ターミナルハンドリングチャージ
- CFSチャージ
- 空コンテナ取扱料金
- DO発行費及び書類発行手数料
1.ターミナルハンドリングチャージ
コンテナターミナル内で発生する費用。CY内のガントリクレーンによる荷卸し費用、ターミナル内の輸送、その他、コンテナターミナルの維持・管理のための費用にあてられます。
2.CFSチャージ
コンテナフレイトステーション内で発生する費用。いわゆるLCL(混載輸送)で物を輸送してきたときに請求される。相場は、1M3=4000円前後
3.空コンテナ取扱料金(ECHC)
空コンテナを取り扱ったときに発生する費用
4.DO発行費及び書類発行手数料
D/Oは、貨物をコンテナターミナルや保税倉庫から引き取るための書類です。この書類の発行を受ける費用が「D/O費」です。その他、船が港に着いたことを知らせるアライバルノーティスの発行手数料が「DOC FEE」として請求されます。常識的に考えて、貨物の到着案内書類を有償で発行するなどありえないのですが….貿易業界ではまかり通っています。
書類発行時に請求される費用例
- D/O FEE=デリバリーオーダー(D/O)の手数料
- DOC FEE(B/L FEE)=B/Lを発行する手数料
中国航路特有の費用
- SPS=上海港の使用料金
- CRC=香港初アジア域内運賃にかかる割増金
- DCF=書類作成費用
- システムチャージ=中国からの輸入貨物に加算される。中国のフォワーダーが中国側の輸出者から取るべき費用を取らず、日本の輸入者から徴収する料金支払いを拒否すると、貨物の留置権を盾にして強引に支払わせようとする。関連記事:システムチャージとは?
台湾と韓国特有の費用
- KAC 台湾/基隆港から出す貨物に課される割増金
- CNTR TAX コンテナへの税金(韓国)
- Wharfage 埠頭使用料金(韓国)
北米方面特有の費用
- SPSC 北米向け海上運賃に適用される夏季割り増し運賃
- AMS 北米、EU向けの船積み、24時間ルール対応のための手続き費用
運河系通行料金
- STF スエズ運河を通過する費用
- PCS パナマ運河の通行料
大阪特有の費用
- 搬出手数料 大阪港の保税地域から輸入貨物を引き取るときに発生する。(大阪のみの特殊料金)
その他、海上運賃に関連する費用
用語 | 意味 |
O/F | オーシャンフレイトの略=海上運賃。これにサーチャージが加わる |
AFR | 24時間ルールに対応するために海外で徴収される費用 |
ARB | 長尺物・重量物に加算される |
CIC | 中国路線に加算される費用 |
ACC | アラメダコリドチャージ ロングビーチ港を経由するときの負担金 |
ALL IN | 燃料割り増し系など、すべての加算費用を含めた価格 |
CFS | 混載輸送の方式 |
CIF | 輸出者が国際送料と保険料を支払う |
CFSチャージ | 船会社のCFSでデバンやバンニング、入出庫する費用 |
CMC | コンテナの修復に関する費用 |
COLLECT | 輸入者側が海上運賃を支払うこと |
CSS | セキュリティを高めるためのチャージ |
CUS | シャーシの使用料金 |
CSC | SOLAS条約のISPSコードの対応費用 |
DCF | 書類の作成費 |
DDC | コンテナ取扱料金=THC |
EMC | コンテナ自体の品質管理にともなうコスト |
ENS | 欧州版24時間ルールに関する費用 |
EPS | 使用済みのコンテナや空コンテナを移動する費用 |
GRI | 海上運賃を一括で値上げすること(海運同盟) |
IPI | 内陸国にある地点までを輸送することを指す。 |
WRS | 戦争地を通過するときの費用 |
S/C | 一定期間一定量の積み荷を保証すること=特別割引運賃 |
LSF | 燃料の硫黄分濃度排出規制にともなう費用 |
seal fee | コンテナに封をするための費用 |
VAT | 付加価値税 |
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よくある疑問
1.海上運賃諸費用の課金単位は?
船が港に到着する間際に、船会社からアライバルノーティスが発行されます。
アライバルノーティスは、本船が輸入港に到着したことをお知らせする書類です。この中に、輸入者として支払うべき諸費用が書かれています。この費用を支払うと、船会社(代理店)からD/Oが発行されます。その後、無事に輸入許可を受けると、ターミナルに許可書とD/Oを差し入れて貨物を引き取ります。
アライバルノーティスには、請求額を示すに当たり「課金単位」を表示しています。課金単位には、次のものがあります。
名称 | 意味 |
B/L | 一つのB/Lに対して課金 |
RT | 一トンあたりに課金 |
VAN | 一つのコンテナに課金 |
20’DRY | 20フィートのドライコンテナ一本に課金 |
W/M または WM=レベニュートン | 実重量と容積重量を比較して、大きい方を採用 |
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2.海上運賃には消費税はかかる?
海上運賃には消費税はかかりません。消費税とは、国内貨物に対してかかる物であり、外国貨物にはかからないです。輸入品は、輸入の許可をもって、外国貨物から内国貨物へと切り替わります。海上運賃は、外国貨物に課金されているため、必然的に消費税は免税扱いです。
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まとめ
- 輸送費=海上運賃+各種調整金+コンテナ輸送代金
- 各種調整金は、季節、航路、船会社により様々
- 貿易条件で、輸送費を輸出者負担になっていても、別途、日本側の費用が発生する
- 各種調整金の中には、意味不明な物もある。支払いを抵抗しても無駄に終わる可能性が高い。
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