海外から貨物を輸送するときは、B/L(船荷証券)という引き換え書類を頼りにして「貨物の所有者なのか」を明確にします。B/Lには、マスターB/LとハウスB/Lの2つがあります。
直接、船会社と輸送契約を結んでいる物が「マスターB/L」、中間業者と契約をしている物が「ハウスB/L」です。これらは親と子の関係に似ています。
輸入ビジネスでは、この親と子の関係が重要です。場合によっては「輸送代金を支払っているのに貨物が取れない」などの問題が発生する可能性があります。そこで、この記事では、マスターB/LとハウスB/Lの仕組み、注意点などをご紹介します。
■この記事の結論
・マスターB/LとハウスB/Lの関係は親子
・いい意味でも悪い意味でも、ハウスB/LはマスターB/Lの影響を受ける。
マスターB/LとハウスB/Lの違い
航空機や船などで輸送するときは、B/Lの存在が重要です。一般家庭向けの宅急便などで考えると、送り状に似たものです。貿易業界では、このB/Lを所有している人を「貨物の所有者」として考えます。もし、あなたが輸入者であるなら、このB/L原本を差し出して、貨物を受け取ります。(B/Lがサレンダーでないときなど)
では、このB/Lは、いつ、どこで、誰が、誰に対して発行するのでしょうか。
B/Lの発行
B/L(船荷証券)は、輸出国において発行されます。手順としては、輸出者が船会社に貨物を預けます。このとき、一緒に書類(B/L Instructions(旧:ドックレシート))を提出します。船会社は、このレシートに書かれている情報を頼りにして、B/Lの原本を3通発行して輸出者へ渡します。これによって「貨物を受領したこと」を証明します。こちなみに、B/Lの原本は3通ありますが、輸入国においては、いずれか1通を提出するだけで貨物を引き取れます。
マスターB/LとハウスB/Lの違い。
マスターB/LとハウスB/Lの違いを理解するときは、船会社の仕組みを理解することが大切です。船会社や航空輸送会社を別名「キャリア(VOCC)」といいます。実際に船や飛行機を持ち、輸送をする会社です。
他方、このキャリアが持つスペースを買いとり、荷主に再販売する会社があります。それが利用運送事業者、いわゆる「フォワーダー(NVOCC)」です。
フォワーダーは、キャリアからスペースを買いあげて、各荷主に販売します。(フォワーダーは、実際に船を所有している船会社からも購入している)これが国際物流における船会社、フォワーダー、一般荷主の立ち位置です。この関係性を前提にすると、マスターB/Lは、船会社(船会社もどき)から発行される書類、ハウスB/Lは、このマスターB/Lから枝分かれした物です。
- 船会社(航空会社)が輸送スペースを提供する。
- フォワーダーが1のスペースを確保する。
- 荷主が2からスペースを確保する。
このとき、船会社からフォワーダーへ発行されるB/LがマスターB/L。
フォワーダーから荷主に発効されるのがハウスB/Lです。
実は、一般的になっている航空機の「コードシェア」や、格安スマホ回線を実現する「MVNO」なども、すべてこの海上輸送から誕生した考え方です。
「私は、全日空の飛行機を予約した。でも、なぜかアシアナ航空にのっている~」という経験はございませんか? また、飛行機内のアナウンスで「この飛行機は、○○航空会社との共同運航便です」と聞いたことはありませんか? これらは、すべてこの海上輸送の仕組みが原型です。
では、もう少し具体例を挙げて考えてみましょう。いわゆる小口の荷物を輸送するときは、LCLを活用します。LCLとは、一本のコンテナの中に複数荷主の貨物を混載する方法です。
「貨物を輸送したい、けれどコンテナ一本を借りるほどのスペースはいらない」という場合に使われることが多いです。このLCLで考えるなら….
- 船会社から一本のコンテナを借りる=マスターB/L ←フォワーダーのB/L
- その後、一本のコンテナを分割する=ハウスB/L ←各荷主へのB/L
- フォワーダーが荷主に発効するB/L=ハウスB/L
- キャリアがフォワーダーに発行するB/L=マスターB/L
関連情報1.マスターB/LとハウスB/Lの関係による影響
マスターB/LとハウスB/Lはb/l、親子関係に似ています。ときには、この親子関係によって貨物を引き取るときにトラブルになることがあります。
記事の冒頭でも述べた通り、輸入する国で貨物を引き取るためには「輸出国で発行されたB/L」と「所定の手数料」を支払います。この手数料とは、アライバルノーティスに記載されている「CTHなど」の日本側でかかるチャージです。このチャージを支払うと、貨物を引き取れます。
しかし、中にはB/Lも提出、チャージも支払っているのに、貨物を引き取れないときがあります。それがマスターB/Lの悪影響を受けているときです。
例えば、A社と貨物の輸送契約をしたとします。A社はフォワーダーであるため、B社、C社といった荷主を束ねています。関係としては、以下の通りです。
- A社と船会社=マスターB/L
- A社とB社、C社の=ハウスB/L
B社、C社はB/Lや所定の手数料をA社に支払ってます。しかし、A社が船会社に対してB/Lを差し入れていなかったり、所定の手数料を支払っていなかったりするときは、B社、C社は貨物を引き取ることができません。なぜなら、A社のマスターB/Lの下にB社、C社のハウスB/Lがあるからです。大元のマスターB/Lがロックされている限り、その下にあるすべての貨物が影響を受けます。
この事実を考えると、フォワーダーを選ぶ場合、資金力や仕事の速さもポイントです。もし、資金力が乏しかったり、仕事が遅かったりする場合は、貨物引取りに関して余分な時間がかかります。混載便を利用する場合は、フォワーダーをしっかりと調査した上で輸送契約を結びます。
関連情報2.実際のハウスB/Lのときの表記
ハウスB/Lは、マスターB/Lの発行を受けている人から発行される子B/Lです。では、ハウスB/Lでは、シッパーとコンサイニーは、どのような表記になるのでしょうか? シッパーとは、貨物を輸送する人、つまり輸出者です。一方、コンサイニーとは、貨物の受け手である輸入者です。
L/C決済を結んでいないことを前提にすると、ハウスB/L上のシッパーとコンサイニーの記載は、次の通りです。
船会社→フォワーダー→各荷主を前提にすると….
シッパー(輸出者) | コンサイニー(輸入者) | |
マスターB/L(船会社とフォワーダー)上の表記 | フォワーダー | フォワーダーの現地会社 |
ハウスB/L(フォワーダーと荷主)上の表記 | 輸出国側の荷主 | 輸入国側の相手 |
このマスターとハウスを前提にする輸送が「LCL」という小口輸送です。LCLは、一本のコンテナの中に、複数の荷主の貨物を輸送する方法です。つまり、マスターB/Lの下に、コンテナに積める荷主の分だけハウスB/Lがあります。
しかし、このマスターとハウスは、必ずしもLCL(コンテナ未満の輸送)だけを前提にはしません。マスターとハウスは、FCL(コンテナ単位の輸送)でも活用されています。実は、多くの場合、各荷主は、直接、船会社と輸送契約をするより、フォワーダーと契約したほうが安い場合が多いです。これは、ドコモ、au、ソフトバンク(船会社に相当)などと直接契約するよりも、マイネオなどと契約をしたほうが安いことと同じです。
また、近年の船会社の経営状況の悪化していることも留意が必要です。直接、船会社と輸送契約を結ぶと、B/Lの約款がそのまま適用されます。一方、間にフォワーダーを通すことで、フォワーダーの責任で輸入港までの輸送を確約してもらえるメリットがあります。輸送上のリスクヘッジの意味でも重要です。
まとめ
マスターB/LとハウスB/Lは、親と子の関係に似ています。基本的に、船会社と直接契約をする場合は、マスターB/Lです。混載などで輸送する場合は、どこかのマスターB/Lの下であるハウスB/Lで輸送されます。ハウスB/Lは、マスターB/Lの小分けとしてハウスB/Lが存在するため、様々な意味でマスターの影響を受けます。
もし、マスターB/Lを持っているフォワーダーが船会社に必要な手数料やB/L原本の差し入れを行っていない場合、その下にあるハウスB/Lも同じく貨物を引き取ることができません。そのため、フォワーダーを選ぶ際は、得意先の航路を確認することはもちろんのこと、資金力がある業者かをしっかりと確認することをお勧めします。
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