酒販免許のプロが解説 お酒を輸出するときのポイント
HUNADEの記事内でもご紹介の通り、お酒の輸出又は、輸入をする場合は、酒販免許が関係します。酒販免許は、ご自身で取得する方法の他、行政書士等に依頼して取得ができます。ご自身で申請する方が費用負担が少なくなる反面、免許取得までの時間が長くなりがちです。
とはいえ、行政書士に依頼すれば、短期間でスムーズに酒販免許を取得できると言い切ることも難しいのが現状です。理由は専門性です。実は、行政書士にも専門分野(得意な分野)があり、酒販免許ならその取得に精通する行政書士でないと費用対効果が高いとはいえないからです。今回、ご紹介する税理士事務所は、そんな酒販免許の取得に関するプロです。
代表の富川氏は、国税庁のOBで、長年、酒販免許を審査する側に所属し、通達の作成、酒類業界との折衝などを行っていた方です。国税庁発行の各種パンフレットの執筆の他、日本で唯一の酒税に酒税に関する総合的な解説本である「図解酒税」等を継続的に出版されるなど、著者としても活躍。事務所の一角に飾られている希少なお酒からも、同氏のお酒への愛着を感じられます。
*図解酒税は、アマゾン等も購入可能です!
今回は、同氏のご協力を頂き、お酒の輸出に関する留意点をご紹介させていただきます。下線より下の部分は富川泰敬税理士・行政書士事務所の代表が執筆された部分です。
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酒類には、「嗜好品+致酔性+担税物資」という他の物品には見られない特色があることから、これを製造・販売する場合には一定の規制等が設けられています。具体的には、その製造及び販売について免許制を採用しているほか、これを取り扱う者には、相当程度の社会的責任が求められることとなります。
このことから、酒類の輸出を行う場合も同様に、通常の輸出手続に加え、法制度を含め留意すべき点等が複数あります。当該留意点等について、以下ポイントを絞って解説します。
1 酒類販売業免許について
酒類販売業を行おうとする場合、酒税法に規定された「酒類販売業免許」を取得する必要があります。なお、この酒類販売業免許は、下表のとおり大きく「卸売業免許」と「小売業免許」に分かれます。
卸売業免許 | 小売業免許 |
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このうち、酒類を輸出しようとする場合には、事前に「輸出酒類卸売業免許」など酒類を輸出することができる免許を取得する必要があります。
この酒類販売業免許は、販売場(一般的には事務所)の所在地の所轄税務署長に対し、酒類販売業免許申請書及び添付書類を提出し、許可を得ることで取得することができます。詳細は割愛しますが、輸出酒類卸売業免許に特有の添付書類として、「輸出先(引取業者)からの取引承諾書」(様式は自由)が必要となります。よって、海外の引取業者が決まったら、この書類を作成し、サインをもらいましょう。
また、上記のとおり、酒類販売業免許には輸出酒類卸売業免許のほかにも何種類かあり、同時に(又は追加して)取得することも可能です。よくあるパターンとして、「一般酒類小売業免許」を取得して、料飲店や知人(消費者)に販売する。「通信販売酒類小売業免許」を取得して、ECサイトで国内の消費者に販売する、というケースが見受けられます。事業展開として、このようなことをお考えの場合は、お早めに申請等の準備をされることをお勧めいたします。
2 酒税について
酒類製造者が直接海外に酒類を輸出する場合、「輸出免税」という制度を用いて「酒税の免除」を受けることができます。ただし、この適用を受けるためには、その酒類製造者自身が、酒税の期限内申告書に輸出数量等を記載して税務署に提出する必要があります。
輸出業者(販売業者)は、直接この手続を行うことができないため、この適用を受けようとするときは、酒類製造者に免税手続を依頼する必要がありますが、酒類製造者との結びつきが弱い、又は、取扱数量が少量の場合には、酒類製造者がなかなか応じてくれないとも聞きますし、そもそも、出荷時に課税済みとなった酒類については、輸出免税の適用対象とはなりません。
このようなことから、輸出業者が酒税の輸出免税の適用を受けることは相当ハードルが高いように思われます。
話は変わりますが、主な酒類に係る酒税の税率は次表のとおりです(R5.10.1~R8.9.30)。
(注)小規模事業者の特例(軽減税率)が適用される場合、各金額の80%となります。
品目 | alc 度数 | 1㎘ 当たり | 1ℓ 当たり | 1本当たりの酒税額 |
清酒 果実酒(ワイン) | - | 100,000円 | 100円 | 720㎖の場合 72円 |
ビール | - | 181,000円 | 181円 | 350㎖の場合 63円 |
焼酎(甲類乙類とも) | 25度 | 250,000円 | 250円 | 720㎖の場合 180円 |
ウイスキー・ブランデー スピリッツ(ジンやラムなど) | 40度 | 400,000円 | 400円 | 700㎖の場合 280円 |
以上のとおり、1本当たりの酒税額は、(商品価格に比べれば)それほど高額とは言えないことから、免税に係る事務量等と比較衡量し、あえて酒税の免税を酒類製造者に求めない輸出業者も多いと聞きます。なお、その場合、酒税は商品価格を構成する一つとなるため、輸出の際の消費税の還付金額は、酒税相当額を含んだ価格で計算されることとなります。
3 社会的要請への対応について
酒類販売業免許の規制緩和が進む中で、二十歳未満の者の飲酒防止をはじめとした様々な社会的要請が高まっていること、また、酒類販売場において法令を遵守した「酒類の適正な販売管理」を確保するための体制整備が求められていることから、平成15年に「酒類販売管理者」の制度が設けられました。
これに基づき、上記1の小売業免許を取得した方は、酒類の販売業務を開始する時までに、過去3年以内に「酒類販売管理研修」を受講した方の中からこの酒類販売管理者を選任する必要があります(卸売業のみを行う者は除かれます。)。
なお、酒類販売管理者は、酒類小売業者及び従業員に対して、次のような助言・指導を行うこととされています。
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4 その他
酒類については、海外においても厳しい規制や独自のルールなどがありますので、輸出先を検討する際には、これらについても事前に調べておく必要があります。
なお、日本産酒類の輸出は、国を挙げて奨励しており、所管官庁である国税庁も情報提供や補助金などの支援を積極的に行っています。よって、酒類の輸出をご検討されている方は、国税庁ホームページ(お酒に関する情報)などもご確認してみてはいかがでしょうか。
末筆に当たり、貴方の酒類輸出ビジネスが順調に発展されることをご祈念いたします。
以上
下線まで富川泰敬税理士・行政書士事務所の代表が執筆
HUNADEの感想
今回、富川様にお酒の輸出について執筆をしていただきました。実は、文章中には、国内のメーカーからお酒を買い付けて海外に販売する方がよく経験する問題とその解決方法が書かれています。しっかりと読み込まれることをお勧めします。
聴くところによると、酒販免許に精通する行政書士との違いは、確実性と取得までのスピードです。
例えば、海外から醸造する機器を輸入し、国内で酒販免許を取得して、お酒をつくるビジネスをしたいとしましょう。その場合、行政書士に依頼すれば、すぐに取得できると考えない方が良いそうです。申請後、税務署の審査担当者とのやり取りが始まります。そこでしっかりと対応できない場合、いつまでたっても免許を取得できません。酒販免許がないと営業が開始できない為、言うまでもなく、酒販免許の取得スピードは、非常に重要となります。
記事の冒頭から申し上げている通り、同氏は、国税側、つまり酒販免許を審査していた方側の出身なので、国税側の観点と依頼者側の事情のどちらにも精通しています。となると、当然、酒販免許の取得スピードにも大きな違いが出てきます。
今回の記事を通して、酒販に精通していない行政書士と精通している行政書士には、雲泥の差があることを知って頂けたらと思います。なお、同氏に対して「貴所では、大企業しか相手にされていないのでしょうか?」と質問したところ…..
「そんなことはないですよ!初心者向けの講習等も実施しています。ぜひ、あまり気張らずにご相談ください」との回答を頂いています。ということで、もし、酒販免許の取得を検討されてる方は、同氏の事務所に相談されることをお勧めします。
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