海外バイヤーとの交渉が成立し、入金を確認した後、いよいよ貨物の輸出準備に入ります。この段階で必要となるのが、輸出通関の手続きです。この記事では、実務担当者が実際に行うべきステップを具体的に解説します。
出荷準備と輸出通関
輸出通関は、海外に貨物を発送するための税関に対する手続きです。
輸出許可を受ける=貨物を日本国外に出せる
とのルールがあります。逆にいうと、輸出許可を受けない限り、どれだけ準備をしても貨物を出荷することはできません。輸出通関は非常に重要です。そして、この輸出通関の前後に各種法令や書類の準備、貨物の準備などがあります。
ここでは、その流れを確認していきましょう!
出荷準備(輸出の流れ)
- 出荷準備
- 通関で必要な書類の準備
- 出荷貨物を準備する
- 貨物の搬入と輸出申告
- 税関審査&税関検査
- 輸出許可
1.出荷準備
海外バイヤーとの取引条件通りに入金が終わったとしましょう。今回は、よくあるパターン….
- 契約と同時に30%の入金
- 出荷完了後に70%の入金
の約束をしたとしましょう。契約後、海外バイヤーから30%の入金がありました。入金を確認したら、あなたは、取引条件通りに手続きを進めていきます。ここでいう取引条件とは、インコタームズを指します。両者で合意したインコタームズに従い、輸出者がすべきことを進めていきます。
今回は、CIPで契約したとします。CIPですから、輸出者側が相手国の空港や港までの輸送費や保険等の手配をする条件です。今回は、話を簡単にするために、すでに輸送手配や保険契約等を終えている前提にしましょう。=ブッキング済

輸送や保険の手配は、後述の通関業者やフォワーダーが一括で請け負っています。
2.通関で必要な書類を準備
税関へ輸出申告をするためには、書類が必要です。書類は、輸出者(あなた)が用意する他、通関業者やフォワーダーが用意する物があります。基本的に、輸出者は、インボイスやパッキングリストのみを作成し、それを通関業者等に送付します。書類を受け取った通関業者は、その他の書類とあわせて、輸出通関のために書類一式を用意します。
- 輸出申告書(通関業者が作成)
- インボイス(商業送り状)
- パッキングリスト(貨物の明細)
- 船積依頼書(貨物の輸送手配用)
- その他、税関が求める追加書類

原産国は非常に重要です。インボイス、商品ラベルなどで誤った原産国表示がないかを確認しましょう!
通関業者とは?
通関業者とは、税関に対して輸出入の申告を代行する業者です。通関業者は、荷主の荷物に関する申告書を作成し、税関の許可を取得するまでを担当します。
詳細は、通関業者の選び方をお読み下さい。
3.出荷貨物を準備する(梱包、ラベリング、バンニング)
書類の準備と並行して、貨物の準備を行います。この用意の事を「輸出梱包」とも言います。要するに、頑丈な梱包を施し、国際輸送によるあらゆるダメージから貨物を保護することが目的です。
輸出梱包とあわせてバンニングをします。但し、バンニングは、貨物の輸送形態によっても場所が変わります。
FCL(フルコンテナ)輸送の場合
FCL(コンテナ)で輸送する場合は、次の手順です。
- 港から空のコンテナが自社に到着
- 空のコンテナに梱包済みのカートンを積む。
- 貨物を詰めたら封をする。
- 実入りのコンテナが港に行く
自社でバンニングをする場合は、パッキングリストと照合しながら貨物を積み込みます。貨物の数量やシッピングマークの有無などを確認しながら積み込みます。コンテナに貨物を積める場合は、ラッシングや重心を考慮し、貨物が動いたり押しつぶされたりしないようにします。
LCL(混載貨物)輸送の場合
一方、LCLでは、貨物をフォワーダーの指定倉庫(CFS:コンソリデーション・フレート・ステーション)へ搬入します。通常、荷主(輸出者)が梱包を行い、そのまま指定倉庫に搬入します。ただし、フォワーダーが梱包サービスを提供している場合もあるため、事前に確認が必要です。梱包の強度が不足すると、貨物が破損するリスクがあるため、国際輸送に適した梱包を行うことが求められます。
4.貨物の搬入と輸出申告
港の指定場所(保税地)に貨物を入れることを「搬入」と言います。このときの注意点は、搬入日と出航日の関係です。輸出貨物は、出航する船毎に締切日が決まっています。これをカット日と言います。
カット日は厳守すべき条件です。仮にカット日に間に合わなければ、貨物は容赦なく取り残されてしまいます。そして、この「間に合う」とは、税関の輸出許可を受けた状態を指します。
つまり….
カット日までに輸出許可を受けていることが、本船に積み込まれるための必須条件です。
したがって輸出業者は、絶対、カット日まで間に合うよう、保税地が貨物を受け付ける日(CYオープン日)から計算をして、万が一、税関検査になったとしてもカット日までに間に合うタイムスケジュールで進めているのです。
搬入後、税関申告へ
通関業者は貨物が搬入されたら、税関に対して輸出申告をします。輸出申告をすると、貨物は輸出審査状況になります。

一般的な通関所要日数:1〜3日です!
5.税関審査と検査対応
税関は、輸出申告がされたら、その内容を書類で審査します。輸出実績が少ない場合や法令違反等が多い貨物の場合は、現物を確認する税関検査が行われます。なお、書類審査は、以下のような点をチェックされます。
- HSコードは適切?
- 申告価格は適正
- 他法令規制に抵触していない?
- 貨物に別の許可が必要ないか?
- 禁制品が含まれていない?
HSコードは適切か?
適切なHSコードで申告されているか?
申告価格が適正?
輸出申告価格に明らかな不備がないのか?
他法令規制に抵触していない?
食品、化学品、機械類などは、別途許可や認証が必要な場合があります。
貨物が許可証や証明書を必要としない?
輸出貨物が輸出貿易管理令で規制されていないかを確認
禁制品が含まれていない?
輸出入が禁止されている貨物が積まれていない?(禁止物品一覧)
通関業者に輸出通関をお願いすることで、通関士(通関業者に所属)が上記の点で問題ないことを確認して申告しています。それでもなお、税関職員から問い合わせがあった場合は、通関業者経由で答える形です。

一般的な通関所要日数:1〜3日です!また、税関検査の立ち会いは、通関業者が行います。
6.輸出許可取得後の船積み・航空機への搭載
輸出許可が下りた後、貨物は船や航空機に搭載されます。許可が下りる前に貨物を早期に搬入すると、仮置き費用などの追加コストが発生する可能性があるため、通関スケジュールを慎重に管理する必要があります。
この後、B/Lや輸出許可書のコピーをバイヤーに電子メール等で送付すると、バイヤーは残りの70%の代金を支払ってくれます、
以上が輸出通関から出荷完了、代金回収までの流れです。
よくある通関周りのトラブル
- 税関検査になった
- 申告内容の誤りを指摘された
- 貨物の積み残しが発生した
1.税関検査の対象になった
貨物が検査対象となった場合、予定よりも通関時間が長くなるため、輸送スケジュールに影響を与える可能性があります。貨物の情報を正しく申告し、事前に必要な書類を揃えておくことで、リスクを軽減できます。
2.申告内容の誤り
HSコードや貨物の価格に誤りがあると、修正申告が必要になり、余分な手間が発生します。出荷前に、取引書類と申告内容を照らし合わせることが重要です。
3.貨物の積み残し(カットタイムに間に合わなかった)
輸送スケジュールが厳しい場合、貨物が積み残されることがあります。通関業者やフォワーダーと緊密に連携し、搭載確認を徹底しましょう。
まとめ
- 入金確認後、輸送条件に応じた出荷準備を行う
- 必要書類を揃え、通関業者と連携して輸出申告を進める
- FCLの場合、インボイスやパッキングリストと照合しながらバンニングを行う
- LCLの場合、フォワーダーの指定倉庫へ貨物を搬入し、適切な梱包を施す
- 税関はHSコード、申告価格、他法令規制、禁制品の有無などを審査
- 申告ミスを防ぐため、書類チェックを徹底する
- 輸出通関の費用(通関料・消費税)についても事前に確認する
- 輸出通関の所要日数(標準処理時間・緊急時の対応)を把握する


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