国際輸送を行う際には、輸出先国ごとに異なる輸送規制に注意が必要です。特に、小規模な輸出事業者にとっては、事前の規制確認がスムーズな貿易取引の鍵となります。本記事では、主要輸出先国の規制と発送時の注意点を詳しく解説します。
主要輸出先国の輸送規制
アメリカの輸送規制
アメリカは食品、医薬品、電子機器、武器関連製品の輸入規制が厳しく、特にFDA(食品医薬品局)の許可が必要な製品は事前登録が求められます。
食品・医薬品
- FDAによる事前承認が必要。
- 食品安全強化法(FSMA)により、輸出業者は事前にFDAへの登録が義務付けられる。
- アルコール類の輸入には、ATF(アルコール・タバコ・火器取締局)の許可が必要。
電子機器・武器・軍事関連製品
- 無線通信機器はFCC(連邦通信委員会)の承認が必要。
- バッテリーを含む製品はDOT(運輸省)の規制に準拠。
- ITAR(国際武器取引規制)により、軍事関連製品やデュアルユース製品は厳しく規制。
中国の輸送規制
中国は輸入関税や許認可が厳格であり、特に特定の製品は輸入禁止または制限されることがあります。
食品・農産物
- 中国税関(GAC)の検疫検査を受ける必要あり。
- 食品添加物に関する規制が厳格。
電子機器・出版物・メディア関連
- 中国標準(CCC)認証が必要。
- 一部のハイテク製品には特別な輸入ライセンスが必要。
- 書籍、映像、ゲームなどの輸入は中国国家新聞出版署の検閲を受ける必要がある。
オーストラリアの輸送規制
オーストラリアは環境保護と安全管理を重視しており、海上輸送・航空輸送ともに厳格な規制が設けられています。
海上輸送
オーストラリアは国際船舶の安全性と海洋環境の保護に関する規制を厳しく管理しています。国内の商業船舶の安全基準が統一されており、オーストラリア海運安全庁(AMSA)が監督する「国家海上安全規制(National System for Domestic Commercial Vessel Safety)」の基準に準拠する必要があります。特に、化学物質や有害廃棄物を含む貨物は詳細な申請が求められます。
航空輸送
サプリメントやビタミン、食品関連製品は厳格な検査対象となっており、成分リストや栄養成分表示の提出が求められることがあります。特に、特別なセキュリティ指令が適用される地域からの貨物については追加の審査が行われ、乗客機での輸送には確立されたビジネス関係の証明が必要です。また、500g以上の貨物を送る際、未知の送信者からの荷物は貨物専用機のみで輸送されます。
スペインの輸送規制
スペインでは、栄養補助食品や化粧品の輸入に関する規制が特に厳しいことで知られています。これらの製品を発送する場合、事前に現地税関への確認が推奨されます。また、輸入の際に追加の書類提出が必要となるケースも多く、特に新しいブランドの商品は、現地の認可が得られるまで時間がかかることがあります。
その他の国の輸送規制
ブラジルの主な規制品目
- 中古品(特別な許可が必要)
- 特定の農産物(検疫証明書が必要)
- 医薬品(ANVISAの承認が必要)
- 通信機器(ANATELの認証が必要)
カナダの主な規制品目
- 特定の食品(カナダ食品検査庁の許可が必要)
- 武器・弾薬(輸入許可が必要)
- 特定の植物・動物(検疫証明書が必要)
- 一部の医薬品(Health Canadaの承認が必要)
ドイツの代表的な規制品目
- 特定の化学物質(REACHに準拠が必要)
- 電子機器(RoHS指令に準拠が必要)
- 特定の食品添加物(EUの規制に準拠)
- 医療機器(CE認証が必要)
フランスの代表的な規制品目
- アルコール飲料(特別な許可が必要)
- 特定の化粧品(EU化粧品規則に準拠が必要)
- 一部の農産物(植物検疫証明書が必要)
- 特定の医薬品(ANSMの承認が必要)
イギリスの代表的な規制品目
- 特定の動物製品(輸入許可と健康証明書が必要)
- 一部の植物(植物検疫証明書が必要)
- 特定の医薬品(MHRAの承認が必要)
- 武器・弾薬(輸入ライセンスが必要)
韓国の代表的な規制品目
- 特定の食品(KFDAの承認が必要)
- 医療機器(KFDAの認証が必要)
- 特定の化学物質(K-REACHに準拠が必要)
- 一部の電子機器(KCマーク取得が必要)
シンガポールの代表的な規制品目
- 特定の医薬品(HSAの承認が必要)
- 一部の食品(SFAの許可が必要)
- 通信機器(IMDAの認証が必要)
- 特定の化学物質(NEAの許可が必要)
タイの代表的な規制品目
- 特定の食品(タイFDAの許可が必要)
- 医療機器(タイFDAの登録が必要)
- 一部の化粧品(タイFDAへの通知が必要)
- 特定の電子機器(NEBTCの認証が必要)
ベトナムの代表的な規制品目
- 中古機械設備(特別な許可が必要)
- 特定の食品(食品安全法に基づく検査が必要)
- 一部の化学物質(化学品法に基づく登録が必要)
- 医薬品(ベトナムMOHの承認が必要)
メキシコの代表的な規制品目
- 特定の食品(COFEPRISの許可が必要)
- 医療機器(COFEPRISの登録が必要)
- 一部の化学物質(環境天然資源省の許可が必要)
- 特定の電子機器(NOMの認証が必要)
ジンバブエの輸送規制
ジンバブエでは、ほぼすべての製品カテゴリーに厳格な輸入規制が適用されています。繊維製品、自動車部品、機械装置など、多くの商品が規制対象となるため、事前に輸送業者や現地の通関業者に確認しましょう。特に化粧品や医薬品の輸入には特別な許可が必要であり、品質基準の審査を通過しなければなりません。
ロシアの代表的な規制品目
ロシアは特に電子機器に関する輸入規制が厳しく、関税手続きに時間を要することがあります。
例えば、ノートパソコンやスマートフォンなどの通信機器は特別な許可が求められる場合があり、通関時の検査が数日かかることも珍しくありません。特定の軍事関連製品に関しては、厳格な輸出管理が適用されるため、事前の確認が不可欠です。
*2025年現在、取引禁止
一般的な国際輸送の注意点
すべての国際輸送は「輸出」とみなされ、米国の輸出管理法(EAR)をはじめとする各国の貿易管理規制の影響を受けます。特に、デュアルユース製品(軍事転用可能な民生品)や高度な技術製品は、輸出ライセンスが必要な場合があるため、発送前の確認が必要です。
危険物輸送の規制
危険物に分類される品目(例:リチウム電池、化学薬品)は、輸出規制とは別に国際輸送のルールに準拠する必要があります。適切なラベルや梱包方法を遵守しなければ、税関で差し止められるリスクがあります。
【危険物輸送】海上輸送と航空輸送の落とし穴 IMDG Code等
ラベリング要件
多くの国では、製品のラベル表示に関する規制が厳しく定められています。
例えば、アルゼンチンでは、原産国、数量、成分、正味重量の表示が必須です。また、食品や加工品に関しては、添加物や着色料の表示規制が厳格な場合があり、輸入許可や検査が必要になることもあります。
輸出梱包ラベルの作成と貼り方のルール【実務で活用できる完全ガイド
輸入許可と検査要件
一部の国では、輸入前に特定の許可や検査が求められるケースがあります。
例えば、コンゴ民主共和国では魚製品を輸入する際に、獣医サービスによる検査が必要です。同様に、コスタリカでは加工水産物の輸出前にラベル登録が必要とされることがあります。
包装と輸送要件
輸送方法や包装に関する特別な要件がある場合もあります。
例えば、アルゼンチンでは塩漬け・乾燥魚の輸送には特定の包装方法が義務付けられています。
まとめ
- 各国の輸送規制は頻繁に更新されるため、最新の情報を常に確認
- 食品、電子機器、化粧品、医薬品などのカテゴリーは特に輸入規制が厳しい
- ラベル表示の要件や輸入許可、検査要件が各国で異なる
- 危険物輸送や特定の品目については、輸出規制とは別に、国際輸送ルールに適合することが求められます。
- 予期しない通関トラブルを避けるために、現地の規制当局や輸送業者に相談しながら手続きを進めることが推奨されます。
このように、輸出先国ごとに異なる輸送規制を理解し、適切な手続きを踏むことで、スムーズな国際取引を実現することができます。



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