「外国に商品を輸出したら、いくらの関税が発生するのか?」この疑問を簡単に解消できるのが「ワールドタリフ(World Tarrif)」です。ワールドタリフは、HSコードを入れて検索するだけで、世界各国の関税率を簡単に調べられます。しかも、利用料金は無料。(ワールドタリフの運営者とジェトロとの包括契約により)誰でも自由に使えます。
- 海外に輸出している×関税率を調べたい
- EPA(自由貿易)の活用をしたい
方などは、ぜひ利用しましょう!そこで、この記事では、ワールドタリフ(WorldTarrif)の登録方法から使い方までを初心者向けに解説していきます。
ワールドタリフ
ワールドタリフは、世界各国の関税(MFN税率やEPA税率)を調べるツールです。具体的には、日本から輸出した商品に対して、現地側で何%の関税がかかるのか? 関税以外では、どのような税金がかかるのか?などを調べられます。
■主な関税率
- EPA税率
- MFN税率
- GSP
- EPA税率→日本とタイなど、特定の国同士だけに優遇した税率
- MFN税率→WTO(世界貿易機関)に加盟している国に適用する税率
- GPS→発展途上国に設定されている税率
この内、日本の商品は、輸出先の国により、EPA税率又は、MFN税率が適用されます。(例:2019年11月現在、日本→アメリカは、MFN税率が適用される)ワールドタリフの概要がわかった所で、ワールドタリフの登録方法と使い方を確認していきましょう。まずは登録方法からです。すでにワールドタリフに登録済であれば「使い方編」からご覧ください。
ワールドタリフの登録&使い方
ワールドタリフの利用料金は有料ですが、日本国内に居住している人であれば、ジェトロの登録画面から無料で利用できます。
ワールドタリフを使うまでの流れ
- ジェトロの登録ページよりり無料会員登録をする。
- 登録完了メールが届く。(合計2通)
- メールに記載されているIDとパスワードでログインをする。
- 利用開始(使い方編)
1.ジェトロの登録ページで会員登録
にアクセスします。以下の画像が表示されます。ここに、ご自身の情報を入力してください。入力すは、すべて英語です。入力項目にある「州(米国のみ)」は、そのままにします。もし、日本語の住所を英語にするのが難しいとき→「簡単に日本語の住所を英語にする方法」
2.登録が完了すると2通のメールが届く
会員登録が完了すると、登録したメールアドレスに二通のメールが届きます。1通ずつ、IDとパスワードが別々に届きます。(時間差で届く場合があります。スレッド式表示に注意)
3.ワールドタリフにログイン
2番の登録で届いたメールの中にIDとパスワードがあります。IDとパスワードを使いワールドタリフのログインページに入力します。ログインができないときは、画面の左下にある「パスワードをお忘れの場合」のリンクから、パスワードの復元作業を行います。*注意:パスワードは、3回間違えるとロックされます。
4.登録は完了
おめでとうございます!これで登録は完了です。次のワールドタリフの使い方編をご覧ください。
ワールドタリフの使い方(関税率の調べ方)
- ログイン
- 操作画面の説明
- 関税の調べ方
- 検索結果の見方
1.ワールドタリフのログイン方法
それでは、ワールドタリフを使っていきましょう!まずは、ログインします。ここでは、IDとパスワードの二つの情報を使います。どちらの情報もワールドタリフの登録作業が完了すると、二通のメールにより送信されてきます。通常、二通のメールは時間差で届きますが、場合によっては同時に届きます。
こちらがログイン画面です。メールで届いたIDとパスワードを入力する。
2.操作画面の説明
ログインが完了すると、こちらの画面が表示されます。関税率の検索をするときは、赤枠。その他、貿易に役立つ基礎情報を知りたいときは、青枠のリソースセンターを使います。(通常は赤枠のみでOKです。)
それぞれのボタンの意味は、次の通りです。
名称 | 意味 |
HSコード検索 | HSコードを特定して関税率を調べるときに使います。枠の一番下にある「番号」の部分に、コロン(点)などを除いた数字(6桁)を入力します。 |
テキスト検索 | HSコードの代わりに品目から検索するときに使います。テキストは「英語」です。例:apples |
複数選択 | HSコードを指定して、複数国の関税率を調べるときに使います。複数の項目を指定するときは、コントロールまたは、シフトキーを押します。 |
リソースセンター | 各国の関税に関する情報を紹介(英語です。) |
ワールドタリフアラート | 指定する国の関税率に変化があると知らせる機能 |
リソースセンターの内容
- 国別情報:どこの国とEPA(FTA)を結んでいるのかを確認できる。
- HS 収録内容表:1類~99類に該当するHSコードの品目例を確認できる。
- 規則の解釈:関税率表の解釈に関する通則の説明
- 用語と略語:略語が示す意味を説明
- 関税評価:関税の評価額を決定する上での規則を説明
- 調剤薬:29類の医薬品に関する免税リストなどを説明
- 通貨略語:各国通貨の略語を説明
- よくある質問:HSコードに関する一般的な疑問への回答集
3.関税率の調べ方
こちらが関税率の検索画面です。各画面機能は、次の通りです。
番号 | 意味 |
1 | 輸出する先の国(関税率を調べたい国) |
2 | 商品の大分類を選ぶ(省略可能) |
3 | 大分類を選択した場合、その中にある小分類を選ぶ(任意) |
4 | 具体的な品目名を入れる(例:TOMAT) |
5 | HSコードがわかっている場合は、コードを入れる。 |
この検索画面は「どこの国に、○○を輸出するときの相手国の関税率」を調べる所です。輸出先は、1番で指定した後、品目は、2~4のいずれかを指定します。
例えば、商品のHSコードを知っているのであれば、1番に輸出先の国を指定後、5番にHSコード入力します。もし、商品のHSコードがわからなければ、2または3の項目から大>>小と品目を選び、対象の産品を確定させます。
3番をクリックしたときの画面。ここは、2番の大分類の詳細が表示されます。(連動)
このように品目分類、品目名または、HSコードなど、いずれかの方法で関税率を調べたい品目を指定します。
4.検索結果の見方
上の画面にあるサブミットを押すと、具体的な関税率が表示されます。赤枠は、対象の国で設定されているHSコード。青枠は、WTO税率(MFN)を示します。もし、MFN税率ではない税率(EPA税率など)を調べるときは、赤枠に表示されているHSコードをクリックします。
すると、国ごとに関税率が表示されます。ページを下にスクロールして、中ほどにある「JAPAN」の行を確認します。下の画面だと「FREE」と表示されていますね。つまり、この輸出先における該当商品の日本産品は、関税がゼロです。さらにこのゼロである情報の詳細を確認しましょう!
詳細情報を確認するときは、下の虫眼鏡を押します。左の虫眼鏡は、適用される協定と商品の原産性ルールが記載されています。右側の虫眼鏡を押すと、協定ごとの現在の関税率や今後の削減予定などを確認できます。ワールドタリフを使うときは、主に右側の虫眼鏡を利用することが多いです。
右側の虫眼鏡を押したときに表示される画面です。
各項目は、次の意味です。
番号 | 意味 |
1 | この商品に適用される協定と現時点での関税率を示す。 |
2 | 協定ごとに関税の削減日程を示します。。上記商品の場合、2016年で関税は完全に撤廃される。 |
3 | JTEPA=日タイ協定 AJEPA=アセアン協定を示す。 |
4 | ベースレートは、該当商品の基本税率です。 |
5 | JTEPAにおける関税の削減詳細です。2番がサマリー、その詳細が5番で表示される。 |
6 | 最初の削減日と毎年、いつの時点で関税が削減されるのか?を示します。 例えば、6番であれば、協定は2007年11月に最初の関税の削減が行われて、その後、毎年4月1日付で関税の削減をする意味です。 |
実践・ベトナムの日本酒の関税率を調べてみた!
ここまで説明した内容を基にして、ベトナム側でかかる日本酒の関税率を調べてみましょう。まずは、検索オプションを選びます。日本酒のHSコードがわからない前提で「テキスト検索」を選びます。
国の部分は、ベトナムを選択
その下にある「類/部名」や「項」は無視。テキストの部分に「SAKE」と入力してから検索ボタンを押します。
すぐ下に以下の画面が出てきます。HSコードの部分をクリックします。
関税以外の税金が発生するときは、画面の上部に表示されます。
画面をスクロールして「Japan」の以下の部分をクリックします。
ベトナム×日本酒×日本製の条件を満たしたときの関税率が表示されます。それぞれの意味は、次の通りです。
- MFN→EPAを全く適用しない場合に適用される税率
- AJCEP→日アセアン協定を適用した場合にかかる関税率
- CPTPP→TPPを適用した場合にかかる関税率
- VJEPA→日ベトナムを適用した場合の関税率
ちなみに、MFN税率を適用した場合の関税率と日ベトナム協定を適用した場合の関税率の開きは、約50%です。同じ日本製の日本酒であっても、EPAを適用できるのか? で、これだけの関税率の差がうまれてしまいます。必ずワールドタリフを使い、相手国側の関税率を確認する癖をつけましょう!
以上、ワールドタリフを使った関税率の調べ方でした。
その他、TIPS! 相手国の税関サイト、事前教示制度
ワールドタリフは、一つのサイトで170か国を超える関税率を横断的に検索できる点が素晴らしいです。しかし、ワールドタリフの内容を過信するのは禁物です。実は、ワールドタリフの関税率は、常に各国の税関サイトで公開されている関税率と違うときがあります。そのため、より正確な情報を欲しいときは、次の2つの方法をお勧めします。
- 各国の税関サイトのタリフを確認する
- 事前教示制度を利用する
1.各国の税関サイトのタリフを確認
各国の税関サイトには、必ずタリフが公開されています。ワールドタリフの数値と違うときは、必ず輸入国側の税関が公表している関税率を採用します。各国税関のサイトは「国名+税関+タリフ」などのキーワードで検索するだけです。
例えば、タイであれば….「thai customs tariff」と検索します。すると、以下のサイトが見つかります。
2.事前教示制度を利用
外国税関におけるHSコードや関税率を確定するときに最も有効な仕組みは「事前教示制度=アドバンスタリフルーリング」です。現地の税関に対して輸入産品に関する資料を提出すると、書面などによりHSコードや関税率などを回答してくれます。この仕組みで照会を受けた内容は、実際の輸入通関時に優先して適用されるため、輸入リスクを小さくします。
よくある疑問
- ワールドタリフの登録ができない。
- パスワードのリセット方法がわからない。
- 英語が苦手でも使う方法は?
- ある国の自由貿易締結状況を確認するには?
- 国外からアクセスすることはできる?
1.ワールドタリフ(Worldtarigff)の登録ができない!
「ワールドタリフの登録作業が完了できない!」ときは、画面上に「フェデックスのカスタマーサポートに連絡」という表示でています。この場合は、次のポイントを確認しましょう!
トラブル例 | 対処方法 |
登録する事項はすべて満たしている? | 州(米国のみ)以外の10項目はすべて記入が必要。未記入があると、受け付けてくれません。 |
過去、登録した覚えはない? | 過去に一度でも登録をしたことがあると、名前が重複となり、登録を受け付けてくれません。この場合は、名前の欄に何かを加えるなどしてご対応ください。例旧:MASA→新:MASARU |
同じメールアドレスで登録していない? | 別のメールアドレスを使います。 |
半角英数以外を使用している? | パソコンの先生に「半角と全角の違い」を教えてもらいましょう! |
インターネットブラウザが対応していない? | インターネットエクスプローラー、クローム、ファイアーフォックス、サファリなど、いくつかを切り替えてみましょう! |
2.パスワードリセットの方法は?
右上にある「マイアカウント」>>パスワード変更
入力する所が三列あります。一列目の以前使っていたパスワードとは、登録時に届く二通目のメールに記載されているパスワードです。
一列目:以前使っていたパスワード
二列目:新しいパスワード
三列目:新しいパスワード(同じ物)
パスワードの変更が完了すると、変更完了メールが届きます。
3.英語が苦手!どう使ったらいいの?
「ワールドタリフを使い相手国の関税を調べたい。でも、英語が苦手。しかも、商品のHSコードはわからない」方は、ワールドタリフ内にあるテキスト検索を使用の上、ウェブタリフ輸出版と見比べることで、簡単にHSコードを探せます。
まずはメニューにある「テキスト検索」をクリック!
左がワールドタリフ、右側がウェブタリフ輸出版の画面です。いかがですか? ほとんど、対応しているはずです。もし、英語が苦手な方は、このように2つの画面を見比べて検索をしてください。ちなみに、ブラウザなどの翻訳機能は、ログアウトしてしまい、うまく機能しないようです。ウェブタリフの使い方(輸出)
4.ある国の自由貿易締結状況を確認するには?
ある国の自由貿易締結状況を確認するには、ワールドタリフの「リソースセンター」を確認します。以下の手順でアクセスしてください。トップページ>>リソースセンター>>国別一般情報>>対象の国
5.日本国外からアクセスはできる?
ジェトロ経由で登録をしたワールドタリフのアカウントは、日本国内からアクセスするのが条件です。海外にいるときにアカウントに入ろうとすると、下の図のように「ログインしているのに、空欄」が表示されてしまいます。国外からアクセスするには、VPNを利用するしかないと思います。ただし、ジェトロとの規約上、VPNによるアクセスがOKなのかはわかりません。
まとめ
- WTOに加盟する各国は、WTO税率を適用する。
- ワールドタリフは、世界各国が設定している関税率を調べられるサイトです。
- ワールドタリフの利用は有料です。ただし、ジェトロを通して登録すると無料です。