貿易業務をしていると、フォワーダー以外にも乙仲や通関業者、海貨業者などの言葉を聞くことが多いです。一体、これらはどのような違いがあるのでしょうか?
そこで、この記事では、フォワーダー、乙仲、通関業者、海貨業者の違いをご紹介していきます。
フォワーダー、通関業者、キャリアの違い。
貿易をしているときに聞くことが多い、フォワーダーや通関業者とは、どのような業者なのでしょうか? また、それらは、どのような違いがあるのでしょうか?
港湾に関係する業者一覧
下の画像をご覧ください。こちらは、港湾に関係する業者とそれぞれの役割です。
港湾(貿易)業務に関係する業者を分けると、次の5つに大別されます。(上の図の番号とリンクしています。)
- 乙仲
- 通関業
- 倉庫業
- 国内配送業
- フォワーダー
1.乙仲
乙仲とは、戦前の「海運組合法」で規定されていた乙種海運中立業に由来します。業者により業務範囲は様々ですが、コンテナ船からの荷卸しに始まり、バンニング、デバンニング、検数立ち合い、倉庫運営、通関、国内配送など、非常に幅広くサービスを提供しています。
2.通関業
港湾業務の内、通関業務を中心に行う業者です。業者の所在地は、ハード(施設)を持っていれば港近く。ハードがない所は、丸の内など、オフィス街に事務所を構えています。通関業務の他、国内配送やフォワーダー業務(船舶手配)などを合わせて行うことが多いです。各船会社の「D/O発行業務」も請け負います。
3.倉庫業
港湾近くに倉庫を構えていることが多いです。「保税倉庫」の指定を受けていることが多く、輸入許可前の貨物の一時保管をしています。倉庫では、コンテナの中身を取り出すデバン、詰めるバンニング、その他、輸入貨物の検品や純粋な倉庫としての貸し出しなどが主な業務です。
*こちらの倉庫業も港湾関係の事業者があわせて提供することが多いです。
4.国内配送業
輸入許可になった貨物を国内へ配送する業者です。ドレー(コンテナ状態でそのまま輸送)会社とトラック会社の2種類があります。しかし、どちらかだけを運営する所は少なく、多くはドレーとトラックのどちらにも提供しています。こちらの配送業務も通関業者や乙仲などがあわせて運営することが多いです。
*港近くにある「○○陸運」や「○○海運」などと看板を掲げている会社は、この国内配送業を提供しています。
5.フォワーダー
フォワーダーの業務範囲は、上記4社よりも非常に幅が広いです。上記でいうと、5の部分がフォワーダーの範囲です。業者によっては、輸出者の時点から輸入者までのすべての物流を手配することもあります。ただし、一般的には、港から港または空港から空港などにおける物流のみをカバーしている所が多いです。
それでは、上記5つの内、さらにフォワーダー、通関業者、乙仲を詳しく見ていきましょう!
フォワーダーと乙仲の違い。
とは、国際物流を手配する専門の会社です。具体的には、下記に示すキャリアからスペースを買いとり、一般の荷主に再販売しています。
例えば、名古屋から上海までのコンテナを手配するとします。このときは、誰に頼めばいいのでしょうか? 「そんなの船会社に決まっているだろ!」との声が聞こえてきそうですね。しかし、一般的には、船会社ではなく、フォワーダーに任せます。
フォワーダー:輸送会社(船、航空、陸路)と荷主の間に立ち、多様な輸送ニーズを満たす業者
例えば、名古屋から上海までの輸送を考えている荷主でも、次のようなニーズがあります。フォワーダーは、これらのニーズを満たせるように、様々な形態のサービスを提供しています。
- 最も安く輸送したい。
- 冷凍品を輸送したい。
- コンテナ一本分の荷物はないから、もっと小分けに輸送したい。
- 最も早くつけたい。
一見すると、フォワーダーが入ると、輸送費が高くなるような気がします。しかし、実際は、そのようになることは少ないです。輸送会社(キャリア)は、フォワーダーに対して「卸価格」でスペースを販売する一方、直接、荷主に依頼されたときは「小売価格」で販売することが多いからです。
また、乙仲と違いは、少し曖昧です。乙仲は、どちらかというと、日本側の港での業務が中心です。フォワーダーは、上海支店、ニューヨーク支店等、海外に拠点等を置き、国際輸送の手配を中心に業務を展開していると考えると良いと思います。
- 乙仲=日本側の手配が中心
- フォワーダー=国際輸送手配が中心
*最近は、両者がお互いの業務範囲に進出しあっているため、明確な区別なくなってきています。
フォワーダーと船会社(キャリア)との違いは?
キャリアとは、船や飛行機を所有する会社です。一方、フォワーダーは、このキャリアからスペースを買いとり、再販売する会社です。
- キャリア=輸送機を所有する会社(今回はオーナー制の部分は省略)
- フォワーダー=キャリアから輸送スペースを調達し、自社スペースして再販売する会社
例えば、DHLやTNT等の輸送会社がありますね!(船会社も同じ考え方です)下の写真をご覧ください。何かお気づきになりませんか? 機体に大きく「DHL」と記載されていますね!実は、この飛行機は、DHLの責任の下、運行されているのです。まさしく、これがキャリアです。
しかし、ご存じの通り、飛行機は非常に大きな輸送スペースがあるため、そのすべてをDHLだけで販売するのは大変です。そこで、DHLは、同様の輸送サービスを提供する他社に対して、自社便の輸送スペースを販売しているのです。そして、このスペースを購入しているのが「フォワーダー」です。
キャリア | フォワーダー |
DHLは、自社の飛行機スペースを他社に販売 | A社 |
B社 | |
C社 |
関連記事:インテグレーターの意味 フォワーダーとは何が違うの?
参考情報:航空輸送×キャリアとフォワーダーは、容積重量の考え方が違う。
貨物の配送料金は、実重量と容積重量を比較して重い方を基準重量として配送料金を計算します。基本的に、航空輸送関係の会社は、この考え方で料金を計算すると考えておけばいいです。
ただし、容積重量に対する考え方の部分で若干の違いがあります。
例えば、容積重量を求めるときに日系は、6000で割る。外資系は5000で割るなどです。その他、容積重量の「とらえ方」の部分でも違いがあります。
ここでは、DHL、TNT、FEDEX等のキャリア系とフォワーダー系(佐川さん等)の違いをご紹介します。もちろん、容積重量の考え方は、フォワーダーによっても変わるため、ここでは、佐川さん系列(フォワーダー系)を前提にします。
- DHL,FEDEX,TNT(キャリア系):1箱毎に容積重量と実重量の重い方を適用する
- 佐川(フォワーダー系):容積重量の合計と実重量合計の重い方を適用
例えば、次の2つの箱を送るとしましょう。
箱1 | 箱2 | ||
容積重量 | 実重量 | 容積重量 | 実重量 |
22kg | 30kg | 22kg | 14kg |
上記の場合の各社の実重量に対する適用方法は、次の通りです。
佐川さん系列の場合(フォワーダー系)
適用重量:44kg→ 44kgの送料で運べる
計算方法
- 箱1の容積重量と箱2の容積重量を足す=44kg
- 箱1の実重量と箱2の実重量を足す=44kg
- 上記の場合、44kgを基準重量とする。
DHL、TNT等の場合(キャリア系)
適用重量:52kg→ 52kgの送料で運べる
- 箱1の容積重量と実重量を比較=30kgを適用
- 箱2の容積重量と実重量を比較=22kgを適用
- 上記の場合、30kg+22kg=52kgを適用する
同じ容積の貨物を運ぶのに、輸送の依頼先が違うだけで、配送料金が大きく変わる可能性があります。まさに知っている人だけが得をする仕組みですね!
しかし、実際、上記の知識があっても容積重量や実重量との比較をするのは面倒ですよね!その場合は、あまり深く考えなくてもいいと思います。「あえて無視」することも一つの戦略です。
海貨業者=乙仲と考えてもよし! 船会社との違い。
海貨業者とは? それを知るために、まずは港の仕組みを知りましょう!
例えば、大きなコンテナ船が港に入ってきたとしましょう。船会社は、コンテナ船を港につけた後、船に積んでいるコンテナを自らおろしません。港に待機する「専門の荷物おろし業者」が船からおろします。この業者が「海貨業者」です。*逆に荷物を積み込む作業もあります。
現在は、写真のようなクレーンでコンテナをおろします。しかし、ひと昔前は、在来船が中心だっため、貨物をおろすには、多くの人が必要でした。この人員を束ねたのが海貨業者の始まりです。
船会社は、○○港であれば「〇〇という組織」に荷下ろしを依頼するなどの独自のルールがあります。また、船が到着する港湾地区は、保税地域に指定されています。
保税地域とは、「輸入許可前の貨物」を一時的に保管する施設です。コンテナ船であれば、船からコンテナをおろして並べる所です。保税地域に関する業務は、一部の会社しか取り扱えないため、名のある大企業よりも、海貨業者の方が経営が安定しているとも言われる理由です
例えば、名古屋港でいうと、伊勢湾海運さん、名港海運さん、上組さん、フジトランスさんなどが有名です。これらの会社は、船会社と荷降ろしの契約をしています。名古屋のNUCT(Nabeta United Container Terminal)は、このオペレーターが次から次に変わる場所として有名です。
海貨物業者は、船会社とガッチリと契約して、次のような業務をしています。
- 船から港へ荷物をおろす。
- 荷物を船に乗せる
- コンテナターミナル内を移動させるなど
また、海貨業者とあわせてよく聞く言葉に「乙仲」があります。これは、戦前に「海運組合法」により、船の取次ぎをする業者のことを「乙種仲立業」と規定していたことに由来します。短縮して「乙仲」ですね。しかし、この法律は、今から50年以上も前に廃止されているため、すでに乙仲というのは、法律上、存在しません。
ただ、昔ながらの名残として、乙仲という言葉を遣う人は多いです。そういえば、神戸市には「乙仲通り」という地区がありますが、まさにあそこが「乙仲が軒を連ねていた所」として有名でした。港町として栄えた神戸ならではです。機会があれば、行かれることをお勧めします。
乙仲はすでに存在しない。よって、乙仲=海貨業者と考えても良いです。
通関業者 フォワーダーとの違いは?
通関業者は、通関業という法律に基づき、輸出入者の代理人として、税関に対して申告業務の「代行」する業者です。もちろん、貿易をする人が自ら税関に対して輸入申告や輸出申告などもできます。しかし、複雑な仕組みを理解したり、申告間違いを防いだりするためにも、多くの業者は通関業者にお願いすることが多いです。
通関業者は、税関への輸出入申告の代理業務が中心。他方、フォワーダーは業務は、国際輸送の手配が中心です。業務範囲が被る部分が多いため、実際は、フォワーダー×通関業者で業務をしている所が多いです。
しかし、いわゆる独立系フォワーダーのように、あえてフォワーダー業務をせず、国際輸送の部分だけで勝負をする会社もあります。=非常に価格競争力がある所。
通関業者は、輸出入者に代わって、税関への申告を代行する業者を指します。
海貨業者、通関業者、フォワーダー違いのまとめ
海貨業者、通関業者、フォワーダーの違いがお分かりいただかと思います。しかし、記事の冒頭でも申し上げている通り、実務上は、これらの違いを理解することはあまり意味がないです。
例えば、港湾業者が通関とフォワーダーを兼ねていたり、フォワーダーが通関業を行っていたりすることが多いです。実際、以前、私が所属していた会社も、海貨業者でありながら、通関業、さらには、国内輸送事業なども行っていたため、業者の境は、ほぼないと断言することができます。
ただ、このような状況の中で、強いて違いを申し上げるのであれば「港湾、通関、貨物調整など、ベースとするポジションの違い」だと思います。後は業者によって、様々なところへ事業を広げていることが多いです。
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