外国の商品を日本に国際輸送するときは、海上コンテナが一般的です。航空輸送と比べても、輸送上のメリットが大きいからです。
コンテナ輸送には、FCLとLCL(混載コンテナ)の二種類があります。これらには、いくつかの特徴があり、それらがそのままメリットとデメリットとして表れます。ちょうど、真逆の特徴です。
この記事では、コンテナ輸送(FCL)と混載輸送(LCL)の概要、メリットとデメリット、使い分けのポイント、分岐点をお伝えしていきます。それぞれの特徴を知ることで、貨物に最適な輸送方法を選べます。
コンテナ輸送と混載輸送
FCLは、20フィート(約6m)や40フィートのコンテナ(専用の容器)を丸々1本占有して輸送する方法。一方、LCLは、20F等のコンテナを複数の荷主と共同で輸送する方法です。
FCL
FCLは、Full Container Load(フルコンテナロード)の略です。これはコンテナスペースを一人の荷主が独占して輸送します。使用するコンテナは、長さ、高さ、運ぶ商品の種類によって様々です。詳しくは、コンテナのサイズや種類のまとめをご覧下さい。
- 20フィートコンテナ
- 40フィートコンテナ
- 40フィートのハイキューブコンテナ
LCL(混載コンテナ)
一方、LCLは、20フィートや40フィートのコンテナのスペースを他の荷主と分け合う輸送方法です。図で表すと以下の通りです。
LCLは、コンテナ1本に満たない量の貨物を輸送するときに最適です。また、LCLのまとめ上げは「フォワーダー」がおこないます。
例えば、あなたが輸入者なら、輸出国側の売り手がフォワーダーに依頼します。一方、あなたが輸出者なら、日本のフォワーダーに依頼をしてLCLの輸出手配をします。
FCLのメリット・デメリット
- 1.貨物にダメージが発生しにくい。
- 2.貨物を受け取るまでの時間が短い。
- 3.荷物の量によっては割高
- 4.ドレージ手配(デバン含む)が必要
1.貨物にダメージ発生しにくい。
FCLの最大のメリットは、貨物へのダメージが少ない点です。20フィートコンテナの場合、コンテナスペースを独占的に使用できます。
一方、混載輸送(LCL)は20フィート等のスペースを他の荷主と分け合います。そのため、貨物同士がぶつかり、ダメージが発生する可能性が高まります。
2.貨物を受け取るまでの時間が短い。
2つ目のメリットは、貨物の搬入時間が短い点です。搬入時間が短いと、早く貨物を搬出できます。
一般的に船が入港すると船会社(提携する業者)がコンテナを船から下ろします。コンテナを下ろすと、ナックス(オンラインで税関とつながっているシステム)に「コンテナを船から下ろしたこと」を報告します。これが「搬入」です。
輸入実務の現場では「搬入がいつ上がるのか」がとても重要です。なぜなら税関への輸入申告は搬入後に行うからです。つまり、搬入時間が短い程、輸入許可の取得までの時間が短くなります。=貨物の引き取り時間が短い。
FCLとのタイミングが違う理由は「デバン(コンテナ取り出し作業)」があるからです。デバン日の分だけFCL輸送よりも引き取りが遅くなります。
- FCL=搬入が早い(入港日の翌日)
- LCL=搬入が遅い(入港日の翌々日)
3.積み荷の量が少ないときに割高になる
FCLは20フィート等のコンテナスペースを独占的に使い輸送します。そのため、積み荷が少ないと、このスペースが有効利用されず「デッドスペース」が生まれます。
デッドスペースを防ぐには、貨物量に応じた輸送方法を選ぶことが重要です。もし、貨物が20フィートにも満たない量ならLCL(混載輸送)を検討します。しかし、LCL(混載輸送)とFCL(20フィート)の選択も迷います。
一般的には「13M3」前後がFCL(コンテナ輸送)とLCL(混載輸送)の境と言われています。ただし、納期を優先したければ、多少、貨物が少なくてもFCLを選びます。逆に安さだけを求めるならLCLでの輸送をします。
4.ドレージでの配送手配が必要
FCLで輸入する場合、コンテナのまま貴社の倉庫などに輸送します。このとき、コンテナは「ドレー(専用トラック)」で運びます。もし、FCL輸入は、ドレージ料金がかかります。
ドレー代は「ラウンド料金制」です。港から出発して納品場所まで輸送、その後、再び港に戻る運行をしているため、ラウンドと言います。
例えば、港から片道30kmの場合は、往復で60kmです。この場合は、ドレー会社が提供する料金表の中の「ラウンド60」の料金が基準です。
20フィート、40フィートのドレー代は、ほとんど変わらない。
例えば、コンテナ単位で輸送してきたとしましょう。輸入許可後、ドレーで国内配送をする場合、20フィートと40フィートは、どちらが安いのでしょうか? 答えは、ほとんど変わらないです。=ドレージの国内送料は、20フィートの方が割高です。
LCL(混載コンテナ)のメリット・デメリット
- 1.自分の貨物量に応じた輸送ができる。
- 2.デバンをしなくてもよい。
- 3.貨物の引き取りまでに時間がかかる
- 4.CFSチャージが発生する。
- 5.貨物にダメージが発生しやすい。
1.貨物量に応じた輸送ができる。
一定以上の物量がある場合、コンテナ輸送は割安です。しかし、一定以下は逆に無駄な輸送費用の支払いにつながります。これを解決するのがLCL(混載輸送)です。
LCLは貨物の量に応じた料金を支払う仕組みです。課金の基準は、縦×横×高さから求める容積重量と実重量の内、どちらが重い方です。物量に応じて輸送料金が決まるため、少量貨物の輸送に向いています。
例えば「本棚」一つを輸入するとします。これを20フィートコンテナに入れると、コンテナの中はスカスカです。コンテナのスペースを一人の荷主が占有するためです。
一方、LCLは、一つのコンテナの中を他の荷主と分け合うので、きわめて少量の貨物でも輸入できます。少量の荷物を輸入したい人は、便利な輸送です。
先ほど、FCLとLCLを使い分ける境として物量が「13㎥」と述べました。この境とは別のものとして「LCLと小包との境」があります。
例えば、国際郵便(EMS)などで送付できる重さは上限が30KGです。(他に民間輸送会社なら200KG)「小包で輸送するときとLCLで運んだ場合」でどちらが安いかを考えると、ここに二つ目の境があります。
当然、LCLの方がたくさんの荷物を割安で輸送ができます。
2.デバンをしなくてもよい。
FCL輸送はコンテナ単位での輸送のため、当然、最終的な納品場所にコンテナで届きます。コンテナで届いた場合は、コンテナから貨物を取り出すデバン作業が必要です。デバンをするためには、人員やドレージ車両が駐車できるスペースが必要です。
- スペースの確保
- 人員の確保
上記2つを整えられることが条件です。もちろん、人員には、コストが発生します。一方、LCLは最終納品場所には「貨物単体」で届くため、上記のリソースは不要です。
次にLCLのデメリットを確認していきましょう!
3.貨物の引き取りまでに時間がかかる
既述の通り、荷主が貨物を受け取るまでには「デバン」があるため、FCLよりも引き取りまでの時間が長くなりがちです。特に、同じコンテナに積載していた他の荷主の貨物確認(ケースマークと書類の照合)等ができなかったり、マスターB/Lの未入金などがあったりすると、遅延しやすいです。
4.CFSチャージが発生する
で輸送すると、日本側で貨物を受け取るときに、一立方メートルあたり4000円ほどのチャージが発生します。
例えば、5M3の貨物であれば、4000×5=20000円です。もし、LCL輸送で貨物を受け取るときは、このCFSチャージの部分も含めてトータル的に考えることが重要です。何も考えずにLCLで発送すると「おい!CFSチャージがめちゃくちゃかかったぞ!」とクレームを言われることもあります。
CFSチャージ計算機→ アライバル費用計算ツール
5.貨物にダメージが発生しやすい。
LCLで輸送する場合、輸出国の倉庫にて仮置きれます。これはコンテナの中に荷物を詰める前の段階です。仮置きされているときに作業者によってダメージがつけられる可能性があります。
また、LCLは他の荷主と合積みします。そのため、基本的にコンテナの中は、びっしりと入っています。コンテナ船は洋上を渡ってきますので、大波によって船の船体が大きく揺れます。このようなとき、コンテナの貨物と貨物がぶつかり合って傷つくことがあります。
船に載せる前、載せている最中、載せた後のそれぞれで、貨物にダメージが発生する可能性があります。
国際輸送(FCLとLCL)の分岐点
EMS/国際小包とLCL・航空輸送の分岐点
- 一回の輸送が200KGを超える
- 又は、1㎥を超えるとき
LCL輸送で最適なゾーン
一回の輸送がおおむね2㎥~13㎥以下
FCL輸送で最適なゾーン
一回の輸送がおおむね13㎥を超えるとき
参考情報:FCL(コンテナ単位)で輸入した場合に小口にする方法
もし、あなたの意向やサプライヤーの手配によって、日本側にFCL(コンテナ単位)で運ばれてきた場合は、次の方法により、小口にして複数個所に配送できます。なお、これらの作業は、すべてご自身の敷地で行うこともできます。今回は、全て業者に丸投げする方法をご紹介します。
- 輸入許可を受ける。
- 混載業者やドレー業者に仕分けを依頼する。
- 指定の箇所に配送を依頼する。
まずは、税関に対して、輸入申告をして、許可を受けます。許可後、あらかじめ依頼をしておいたドレー会社や混載事業者の所にコンテナを移動させます。移動後、対象のコンテナから貨物を取り出し(デバン)し、指定の納品先ごとに仕分けをしてもらいます。
なお、ドレー会社や混載事業者は、港近くにあります。探す方法は、「●●港 ドレー会社」又は「●●港 混載事業者」等のキーワードで検索してみます。ドレー会社(混載事業者)には、パッキングリストと仕分けリスト等を送付して、納品先ごとに正しい数量で仕分けがされるようにします。
もし、このときに、業者側の検品等を依頼する場合は、その基準となる条件も合わせて指示をします。業者は、デバンが終わった後、それぞれの混載便に貨物を積めて、出荷します。これがFCLの輸入から小口配送の流れです。
デバン費用と検品費用例
これは、これまでの取引実績等にも大きく左右されるため、相場はあってないです。
例えば、上記で説明したケースであれば、費用として次の項目が請求される可能性があります。
- 港からドレー会社や混載業者までのショートドレージ代金(移動代)
- コンテナから貨物を取り出す代金(デバン代金)
- 取り出した貨物を検品する代金
- ドレー会社や混載事業者の敷地から配送先までの費用
少なくても上記の4つの費用がかかります。
例えば、デバン代金であれば、1M3あたり2000円等など。何度もいいますが、港地区や業者、そして、あなたの取引実績により、作業内容によって、この費用は大きく変わります。
したがって、ある程度の実績ができるまでは、取引する通関業者に一括でお願いをした方が手間や最終的なコスト面から有利な場合が多いです。
参考情報:FCLとLCLの価格(価格)を差を調べられる?
実際の所、物量や輸送品目、輸送ルートなどによって、FCLとLCLの分岐点や価格差などは変わります。また、お見積りをするフォワーダーによっても、大きな差が生まれます。大雑把に調べる場合は、オンライン見積もりサイトを使います。
参考情報:FCLに関する役立ち知識
- 1フィートは約30cm
- 40フィートには、高さが違うタイプがある。
1.1フィートは約30センチ
1フィートは約30cmです。これをメートルに換算するときは「3」で割ります。20フィートのコンテナは20/3=約6~7メートル、40フィートのコンテナは40/3=約12~3メートルです。20フィートと40フィートは、コンテナの「長さ」の違いを表しています。
2.40フィートには「高さ」が違う物がある。
40フィートには、高さが違うコンテナがあります。高さがある方を「ハイキューブ」といい、重量の割に「容積」が大きい物=ファッション系を運ぶときに利用します。
- ノーマルタイプ
- ハイキューブタイプ
まとめ
FCL(コンテナ輸送)とLCL(混載輸送)のメリット・デメリットをお伝えしました。それぞれの輸送方法で一長一短があります。求めている配送品質、納期、通関速度など総合的に考えて選択することをお勧めします。
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