「逆輸入」ってどんな意味?
「逆輸入」という言葉を耳にしたことはありますか? 特に、輸出入ビジネスに携わる方にとっては、この仕組みを知っておくことが、仕入れ戦略や商品企画に活かせる可能性があります。今回は、小規模な貿易事業者向けに「逆輸入」とは何かをわかりやすく解説します。
逆輸入とは?意味と基本構造
逆輸入とは、もともと日本で生産、または企画された商品が、一度海外に輸出された後に再び日本に戻ってくる輸入形態を意味します。英語では”re-importation”と呼ばれます。通常の輸入は、海外で生産された商品を日本に取り入れるものですが、逆輸入はその逆で、元は国内にあった商品が戻ってくる点が特徴です。
この背景には、海外の方が生産コストが安かったり、海外市場で特定モデルがヒットした結果、国内でも再販売の需要が生じるケースがあります。逆輸入された商品は、製造国は海外であっても、日本ブランドとしての信頼や品質が根強く評価される傾向があります。
なぜ、逆輸入?その理由と背景
逆輸入という形態は、一見すると複雑なように見えますが、理解してしまえばシンプルです。そして、この仕組みを知っておくことで、以下のようなメリットが得られます。
- 海外限定モデルを国内で展開する機会を見つけられる
- 国内で人気のない商品でも、海外での評価を踏まえて販売再開ができる
- 海外で製造することでコスト削減しつつ国内市場に投入する戦略が立てられる
これらはすべて、小規模輸出業者や越境EC事業者にとって、ビジネスチャンスの拡大につながる要素です。
実際に逆輸入されている商品の例とは?
たとえば、日本の自動車メーカーであるホンダやヤマハが製造するバイクは、欧州向けにデザイン・仕様を変更して輸出されることがあります。これらは一部の熱狂的なファンにとって魅力的なモデルであり、日本国内での販売がないため、逆輸入という形で個人やディーラーが輸入します。
化粧品の逆輸入
化粧品やアパレル製品も代表的なジャンルです。日本のブランドがフランスなど海外で製造し、現地での人気を得た後に「海外限定モデル」として日本に再輸入されることがあります。このような商品は、付加価値が付いているため、国内向け商品より高価格でも売れる傾向にあります。
書籍や映画の逆輸入
さらに書籍や映画、ゲームの分野でも、日本発の商品が海外で翻訳・再編集され、逆輸入される事例があります。ファンにとっては、海外版の特典や装丁が魅力に感じられ、日本版にはない希少価値があるとして逆輸入を選ぶことがあるのです。
海外市場で認められた価値がブランド力に
逆輸入は単なる「輸入」と異なり、商品が日本発であること、そして一度海外市場を経由して戻ってくることがポイントです。このような流れの中で得られる価値は、元の商品に加えて、「海外で受け入れられた」という実績やストーリーです。これをうまく活かせば、ブランディングや販売戦略の一環として有効になる可能性があります。
トランプ関税と逆輸入の政治的な駆け引き
2025年春、日本政府は「米国産日本車」の逆輸入案を検討していると報道されました。これはトランプ政権が課している25%の自動車関税の撤廃を狙い、日本側が米国の対日貿易赤字を是正する一環として提案したものです。
この案の背景には、米国市場で製造される日本車(右ハンドル)を日本に逆輸入することで、日本市場での販売台数を増やしつつ、米国の輸出実績を増加させるという意図があります。1990年代の日米貿易摩擦の際にも、ホンダ「アコード・クーペ」などが逆輸入され、成功を収めた事例があります。
政治的な交渉材料として逆輸入が活用されるのは、単なるビジネス手法を超えた国家戦略の一部とも言えます。関税の引き下げ交渉の中で、逆輸入は柔軟な対応策として、今後さらに注目される可能性があります。

但し、この記事の逆輸入とは、本来の逆輸入とは意味が違う為、ご注意ください。本来は、日本で製造した物を他国へ輸出。これを再び、日本に輸入することです。
小規模事業者にとっての逆輸入ビジネスの可能性
小規模な輸出入事業者にとって、逆輸入は新たなビジネスチャンスだとも考えられます。
たとえば、海外で人気となった日本製品を調査・仕入れて、日本国内で再販売するビジネスモデルが考えられます。これは、海外バイヤーの目線を国内に逆輸入するとも言えます。
越境ECとの相性も良く、海外での販売情報やSNSの口コミをいち早くキャッチすることで、国内需要を先読みした商品展開が可能です。ただし、商標権や原産地表示、税関での通関手続きには十分注意が必要です。販売前には、法令や規制の確認を怠らないようにしましょう。
逆輸入と並行輸入の違いとは?
逆輸入とよく混同される概念に「並行輸入」がありますが、この2つはまったく異なる流通経路を指します。逆輸入は、もともと日本で生産された商品が海外経由で戻ってくる流れであり、ブランド本体の意思に沿った動きです。一方、並行輸入は、海外の正規品を第三者が独自に輸入する行為で、メーカーや正規代理店の流通網とは無関係です。価格メリットがある反面、保証やサポートを受けられないケースがあるため注意が必要です。
逆輸入時の関税と実務上の注意点
逆輸入される商品には、通常の輸入と同様に関税や消費税が課される場合があります。ただし、「再輸入免税」という制度を活用することで、条件次第では関税が免除される可能性があります。たとえば、日本から輸出した製品が未使用のまま短期間で戻ってくる場合や、修理目的で一時輸出された製品などは免税対象となることがあります。
そのほか、製品ラベルの日本語表示義務、PSE・食品表示・車両認証といった各種法規制の確認も不可欠です。こうした対応を怠ると、輸入後に販売ができなかったり、検査機関での指摘によりコスト増となる可能性があります。
詳細は、加工又は修繕のため貨物を輸出する際の税関手続をご覧ください。
まとめ
- 逆輸入とは、日本発の商品が海外を経由して再び国内に戻る輸入形態です。
- 主なジャンルは自動車、化粧品、アパレル、書籍、カルチャー商品などです。
- メリットは限定品の入手やコストダウン、デメリットは保証・規制リスクなどがあります。 ・海外で評価された商品の再販戦略として、逆輸入は有効です。
- 小規模事業者でも逆輸入品を活用したビジネスは十分可能です。
- トランプ関税交渉の文脈でも、逆輸入は国家レベルの戦略として使われています。
- 並行輸入とは異なる点を理解し、実務上の注意点を押さえて活用しましょう。


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