貿易で相手方との決済方法にL/C(信用状)取引を選択した場合、
「ディスクレ(discrepancy)のない書類のやりとり」
と言うのがスムーズな決済のために非常に重要なポイントです。書類にディスクレがあると決済前の事務手続きが増えたり、決済が遅くなって輸入者が貨物を受け取るのが遅れたり、と様々なトラブルが発生する可能性があるためです。貿易取引をスムーズに行う為の大切なポイントとして、ディスクレについて復習していきます。
LC決済とディスクレ&アメンド
ディスクレとは?
正式名称はディスクレパンシー(discrepancy)と言います。輸出者がL/C条件に沿って準備した書類にどこか不一致があった場合の事を指すと思っていただければ良いです。L/C条件通りでない書類の事を「ディスクレのある書類」と言います。
ではディスクレにはどんな種類があるのでしょうか?主な種類を紹介します。
- LATE PRESENTATION … 呈示期限切れ
- L/C EXPIRED …L/Cの有効期限切れ
- LATE SHIPMENT …船積み期限超過
- OVER DRAWN …金額超過
主なディスクレを上記に紹介しました。しかし、L/Cには事細かに「○○の商品を○○個分○○日までに○○港から○○港へ、こんな船で船積みしてね、書類はインボイスとB/Lと○○と…」などの記載があります。そのため、ディスクレには、ここに書いたもの以外にも山ほどの種類があることも覚えていきましょう。
例えば、インボイスに書いてある商品名の記号が違うとか、B/Lにサインがないとか、そもそも空輸したいのに別の運送方法をL/Cで指定している…!等があります。
2.ディスクレがあった場合の対処法は?
ではディスクレがあった場合どのように対処すれば良いのでしょうか? ディスクレの種類が山ほどある、と前述しましたが、それと同様に対処法も山ほどあるのです。また、期限に余裕があるのか等も深く関わってきます。簡潔に基本の対処法を確認していきます。
まず「L/Cが輸出者に通知されて間もない段階でL/Cの中身に不備が見つかって、このまま書類を用意したら確実に不備になってしまう!」と言う場合。これは輸入者側にL/Cの内容変更(アメンド)をお願いするのが一番スムーズかと思います。
具体的に言うと、
- 船積期限が契約書と比較して短く設定されている
- 空輸のはずが海上輸送を指定している
- 船積港や到着港が契約した場所と違っている
等でしょうか。輸出側の方は契約書を交わした段階で安心するのではなくL/Cが通知されてきた段階でもう一度内容に目を通し、契約書との整合性を確認すると良いでしょう。そうする事で契約書に記載の無い不利な条件がL/Cに盛り込まれていないか?等を再度チェックができます。
また、内容が契約書通りだったとしても、書類を準備している段階で有効期限を延ばす必要が出てきたり、契約金額を増額する必要が出てきたりする場合もあります。その場合も、有効期限等に余裕があれば、輸入側にアメンドを依頼する事が一番スムーズにいきます。実際にアメンドが通知されれば、ディスクレの心配は無くなり、スムーズな取引が行えるためです。
次にL/Cを輸出者が受け取り書類を作成している段階で書類中の不備に気付いた場合ですが、これについては書類の作成者ができるだけ修正し、ディスクレのない書類を完成させます。インボイスやパッキングリストについては輸出者自身が作成する事が多いと考えられますので、作成時に日付、金額、商品名等再度確認します。
B/Lは船会社作成の場合、輸出者自身での訂正ができないので、船会社に訂正を依頼します。その他書類についても不備があった場合には作成者の修正が必要という点は頭に入れておきましょう。また、L/Cの有効期限や呈示期限を確認しつつ、間に合うように修正を行う事も大切なポイントです。
最後に銀行に書類を呈示した段階で、有効期限切れや呈示期限切れ等の修正出来ないディスクレ(前途の主なディスクレ)がある場合はどうなるのでしょうか? 主な方法として次の2点があります。
- ケーブルネゴをする
- ”取引”として進める。
L/C条件を確認し「ディスクレがあった場合はケーブルネゴを発電して下さい」とあれば発電し、事前にディスクレ内容を相手銀行に承諾してもらった上で書類を発送する方法があります。また、輸出者からの書類を「買取」でなく「取立」として預かり、事前に決済資金を渡さず、銀行間の決済が全て終わってから資金を渡す方法などがあります。ディスクレには、様々な対処法がありますので、実務をこなしていくなかで事例を重ねていく事が大切です。
3.アメンドについてもう少し詳しく知りたい!
前述のディスクレへの対処法の中でL/Cの条件変更(アメンド)アメンドについて少しお話させていただきましたが、アメンドは金額の増額・減額、有効期限、船積期限、呈示期限等の変更、運送手段の変更、商品内容の変更等、非常に多岐に渡ります。
輸入者はL/Cを発行する際に、信用状態、担保、保障の有無等について確認をされていますが、条件変更にて与信リスクを高めるような変更があった場合にも再度確認があります。また、L/Cは原則「取消不能信用状」です。そのため、減額等の輸出者(受益者)にとって不利な条件の変更の場合、受益者の承認が必要となる点もポイントです。
4.ディスクレ、アメンドの費用は?
最後に費用についてです。まずディスクレについてですが、L/C条件に「ディスクレがあった場合L/Cで保障されている金額から○○円(外貨建ての契約の場合外貨額で記載があることも)差し引いた金額で決済します。」のような文言が入っている事が多く、実際そのような形で決済される事がほとんどです。
これはディスクレ1つにつきいくら、とかではなく、全体の中でディスクレがあった場合、1つだろうが、2つだろうが記載してある金額を差し引くという意味だと思って良いです。だからといって、輸出者は「たくさんディスクレがあっても差し引かれる費用は変わらないから、書類は適当で良い」と考えるのは大きな間違いで、これでは決済自体が怪しくなります。
そもそもL/C自体がディスクレのない書類の呈示を受けた場合に支払いを保障します、というものですので、不備のない書類を用意する、というのが大前提にある事を頭に常に置いておきましょう。続いてアメンドの費用ですが、これは銀行によって様々なのと、手数料が輸入者、輸出者どちら持ちなのかによって、どちらが負担するのかも変わってきます。L/C条件を確認すると、手数料を負担する側についても記載があるはずなので確認してみましょう。
今回は、L/Cのディスクレとその対処法について紹介させていただきました。ここでは良くある一般的な事例等を紹介しましたが、貿易取引を実際に行って見ると、想像もしなかった様な事がたくさん起こります。貿易は国境をまたぐ取引ですから連絡もつきにくかったり、言いたい事が中々伝わらなかったりする事も多々あります。
しかし、L/C取引の「信用状統一規則」は全世界共通で当事者全員に拘束力を持っています。正しいL/Cの知識を学ぶ事が貿易を理解する有効な近道にもなり得るのです。
まとめ
ディスクレとは、LC決済MP条件と実際の書類の状態が不一致であること。
ディスクレの対処は、アメンドが一般的
基本は不一致が起きないように、書類を揃えるのが原則
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