通関士は見た!輸入と輸出のトラブル事例 守るべき点は?

輸入と輸出のトラブル事例貿易コラム
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日本に商品を輸出入するときは、税関に対して申告をし許可を受けます。輸出入申告は、自身の分をするのは自由です。しかし、専門的な知識が必要なことから、一般的には、通関業者(通関業者)に依頼します。今回は、この通関業者で20年以上も勤務経験がある通関士がこれまで遭遇したトラブルをご紹介していきます。

この記事で紹介するトラブル事例から、通関における大切なポイントを理解していただき、あなたの実務に活かしていただければ幸いです。

輸出入通関のトラブル事例

輸出通関トラブル事例

輸出申告のタイミングに注意!

トラブル事例の詳細:

先にコンテナ詰し通関するときのトラブル事例。この場合、一旦、保税に入れるよりかは遥かにコストダウンができる。しかし、税関検査で中身と書類が一致しない事実が判明する。そのため、税関は、輸入者に対して、内容点検確認を指導する。結果、デバンニング費用と倉庫費用が発生。申告の取消しは許されず数倍のコストアップにつながった。

要約・解説

これは、平成23年10月1日日から施行された「輸出通関における保税搬入原則」の見直しに関係する物です。搬入原則が見直される前は、輸出品は、原則「保税地域」に搬入した後でなければ、輸出申告はできない仕組みでした。これが改正により、保税地域に搬入する「前」でも輸出申告ができるようになったのです。

  1. 貨物が工場や倉庫にあるタイミングで輸出申告をするのか?(改正後=任意)
  2. 貨物を保税地域に搬入した後に輸出申告をするのか?(改正前)

の違いです。当然、1番の方がコストダウンやリードタイムの短縮には、都合が良いです。しかし、この制度は「税関検査」に注意が必要です。上記の場合、すでにコンテナに荷詰めをしている状態で税関検査が確定しました。そして、税関職員が実物と書類を確認した所、不一致が発生したため、内容点検を指示したのです。

内容点検とは? →コンテナの中の全ての貨物をデバン(取り出し)て一つ一つ数を数えること

コストやリードタイムの削減のために搬入前に輸出申告するわけですが、書類内容と実物との不一致により、逆に多くの時間とコストが発生してしまったのです。ちなみに、この事案のときは、当然、本船に積み込む締切日(カットタイム)も守ることができなく納期も著しく遅れてしまいました。これは、テキトーな申告による致命的なミスが引き起こした人災とも言えます。当然、納期遅れによる損害賠償の請求にもつながる可能性があるでしょう。

書類内容と実物は正確に。特に搬入前の申告は便利な分、税関検査で引っかかったときのリスクが高い。

輸出貿易管理令「非該当証明書」の発行は慎重に!

トラブル事例

輸出貿易管理令の非該当証明書をテキトーに作ったことによるトラブルです。あるメーカーがよく調べずに輸出非該当証明(輸出貿易管理令)を発行していた所、貿易管理令に該当する商品であることが判明する。しかも、その商品が「ヤバイ国」に届いたとの情報が入り、経済産業省が一連の輸出に関わる「荷主」「通関業者」に対して立ち入り調査が実施される。結果、経産省は「メールのデータ」まで確認する大きな騒動になった。

要約・解説

一時期、韓国のホワイト国外しで話題になった「輸出貿易管理令」のことです。輸出貿易管理令とは、武器開発や世界的な治安を乱すことになる商品や技術などを日本国外に輸出するときは、経済産業大臣より承認を受けなければならない仕組みです。この仕組み、どこか「自分には関係がない」と考えがちですが、貿易をする人には、多いに関係があります。

例えば、輸出貿易管理令で規制される可能性がある商品を製造しているメーカーは、自社の商品がリストの規制対象ではないことを証明する「非該当証明書」を発行する機会があります。ようは「私の商品は輸出貿易管理令の対象でないので輸出ができます!」と証明することです。この事案は、この「非該当証明」をよく理解しないまま発行し、さらにその輸出先がヤバイ国であったことが重大なトラブルに発展したのでした。

ここで改めて輸出貿易管理令についてゼロから学ぶことをお勧めします。メーカー、輸出者、フォワーダー通関業業者など、立場に関わらず、非常に大きな問題に発展する可能性があります。「知らなかった」は通じません。違法に輸出をすると「不正輸出」となり、外為法違反。さらに「安全保障貿易情報管理センター」などに実名入りで公表されます。

例:シムカード、電子計測機など、意外に多くの物が規制対象!

非該当証明書は、該当しないことを証明する物であるため、極めて責任が重い書類であることを強く認識するべきです。輸出貿易管理令の違反者は、実名で公式サイトに掲載される。

出荷ミスによるトラブル

トラブル事例

倉庫による出荷トラブルです。同時に仕向地違いの貨物を出荷したところマークの差異が分かりにくく、結果、倉庫で入れ違い輸出になった。貨物引き戻しとエア再出荷は倉庫負担。輸出者はクレーム対応に追われることになる。

要約・解説

このミスは、倉庫側の確認不足により発生しました。貿易をする貨物には、外装部分(ダンボールなど)に任意のマークを付けることにより、書類と実物があっているのかを確認しています。(このマークのことをケースマークと言います。)今回の事例は、一次的には、倉庫担当者のミスと言えますが、二次的には、輸出者にもあるといえます。

基本的にケースマークは、自由に決められるわけですから、同時期に似た物を輸出するなら、判別がつきやすいように全く違う物を付けるべきです。ミスの責任は、誰にある?との観点で考えるのではなく、なぜ、発生したのか? どうすれば、防げたのか? これを立場に関わらず、検討するべきです。

  • 倉庫担当者は、ケースマークと書類の確認を徹底する。
  • 輸出者は、仕向け地の判別が簡単にできるようにケースマークを工夫する

コンテナ内は結露が前提。それを見越した梱包がマスト!

トラブル事例

コンテナ内の気温と湿度の上昇を考えていない簡易梱包によるトラブルです。コストダウンするために機械装置を梱包せずに出荷、コンテナ内容結露により、到着時に装置は錆だらけになる。明らかな梱包作業の不手際で発生したと判断されて、貨物保険適用もされず廃棄することになる。当然、処分費用も支払うこととなる。

要約・解説

コンテナの内部温度は、洋上で50度以上になると言われています。他方、寒い地域にいけば、その逆です。コンテナ内は、結露が発生しやすい環境です。無梱包輸出による致命的なミス。完全に輸出者の落ち度といえるでしょう。コスト削減に興味があるのはわかります。しかし、梱包は、貨物を安全に輸送する上では、決して削ってはならない部分です。

梱包は盗難防止の観点でも重要!

トラブル事例

梱包費用を削減し、簡易梱包にしたため到着までに抜き取り盗難に遭うことに。相手国事情も考えて出荷手配が必要

要約・解説

日本人の感覚でいうと、輸送中の荷物が盗難などは考えられないかと思います。しかし、海外では、このような盗難は珍しくないです。

例えば、CFS倉庫などで働く作業員が目の前にある「取りやすい貨物」を抜き取ることもあります。すぐに中身がわかるような簡易梱包は、このような盗難リスクにさらされることを強く意識した方が良いです。梱包は「中身がすぐにわからないようにする」ことが重要です。

以上が輸出トラブル事例です。次に輸入トラブル事例を確認していきましょう。

輸入トラブル事例

申告外には注意!輸出者のサプライズがNG!

トラブル事例

輸出者が心遣いのプレゼントを貨物に忍ばせたため申告外品で本来の商品の通関が留まる。

要約・解説

税関への申告は、内容、数量ともに正しくすることが重要です。そして、この申告は「偽りがない情報を宣誓したこと」と同じです。よって、この申告内容と事実との差には、相応の責任が発生すると肝に銘じるべきです。この事案は、輸出者の「好意」により、引き起こされた物です。好意で入れた物が書類上に記載されておらず「申告外貨物」と判断されたのです。

輸入申告をした内容は、書類との整合性が求められます。この整合性がないときは、税関から相応のペナルティを受けます。これは、あなたが申告外貨物の内容を知っている又は、知らなかった等は関係ないです。申告内容と事実が異なれば、輸入者が責任を負います。したがって、輸出者等に対しては、書類に記載する物以外は、入れないように念押しをすることが重要です。

例えば、空のダンボールを入れているなら、そのダンボールすら書類に記載します。傘一本、靴一足、鏡一つでもです。コンテナに入っているすべての貨物を正しく申告することが重要です。「コンテナに入れればバレない」と安易に考えるのはNGです。安易に考えていれば、超高性能な大型X線装置と、天下の「内容点検」があなたの不正行為をとことん追い詰めるでしょう。

税関を甘く見ない。一個人、一法人ごときが巨大な税関という組織に勝てるわけがない。軽はずみな行動が大きな責任と費用負担につながる。

インボイスの「セット」表記に気を付ける。

トラブル事例

インボイスに1セット表示となっているが、セットとは思えない品物がゾロゾロ出てきた。

要約・解説

インボイスには「○○セット」と記載している物があります。この事例は「セット」表記を悪用して、セットに含まれない物までをまとめて通関した事例です。通関では、インボイスにセットの表記がある場合「何が入っているのか?」「いくつずつなのか?」「それらはいくらなのか?」を確認します。したがって、この部分を突っ込まれたくない場合は、最初から「セット」表記になっている部分を具体的に記載したインボイスを発行してもらった方が良いです。

思い込みによる申告はヤバイ!

トラブル事例

通関業者に中国元決済を伝えず、業者の思い込みもあり「円」で通関。どちらもYEN

要約&解説

このトラブルは、輸入業者と通関業者の連絡不足が発端となった物です。税関に申告する輸入価格とは、商品価格の他、送料や保険代金などを加えた価格としています。そして、この価格に対して、税関が発表する公示レートをかけることにより、税金の対象になる「課税価格」が判明します。今回は、この商品代金の部分を「円」と「人民元」を勘違いし、日本円に換算するときの公示レートを全く違う物で計算した事案です。

別に例えるなら、10ユーロの商品を「10ドル」と計算することと同じです。

課税価格の決定原則を学ぼう

トラブル事例

課税価格に含めるべき費用の申告漏れのトラブルです。税関提出のインボイスには、前払い金を除いた額のみを記載したため修正申告に至る。

要約&解説

この件は、輸入者が課税価格の決定原則の知識が不足していたことによる物です。課税価格とは、関税や消費税を算出するための基準価格であり「CIF」価格とも言います。CIFとは、商品代金の他、日本までの送料、海上保険代金などの他、加算するべき費用を合計した物です。今回の「前払い金」は、貨物代金の一部を「前」に支払っているため、インボイスには、前払い金も含めて記載するべきです。

健康グッズは、表記内容により薬機法の規制を受ける。

トラブル事例

微妙な健康グッズの輸入トラブル例です。厚労省に事前確認せずに、コンテナで大量に輸入。しかし、税関からの指摘で、厚労省に確認したところ、商品パッケージの表記が「薬機法に該当する」との回答を得る。この結果、廃棄か積み戻しを選択することになる。

要約・解説

健康グッズなど、人の健康を売りにする商品の輸入は、常に「薬機法」との兼ね合いに留意が必要です。

例えば、輸入する商品のパッケージに「これを使えば○○が治る」「確実に●〇キロ痩せる」などです。今回は、商品パッケージの表記内容が薬機法に該当し、輸入不許可となった事案でした。このトラブルは、次の2つが大きな原因だったと考えられます。

  1. 薬機法、景品表示法などの関連知識が足りなかったこと
  2. 薬務課など、事前に薬機法に該当するかの確認を怠ったこと。

輸入は、誰でもできます。しかし、決められた条件をクリアし、税関から「輸入許可」を受けるには、それなりの準備が必要です。この点、輸入者は、日本側の規制を全く理解せず、軽はずみな輸入により、多大な損害を被ったと言えるでしょう。まさに自業自得です。輸入法規制は、絶対的な物です。子供のお使いのように「駄々をこねれば」クリアするわけではないです。

例えば、ご自身で歯医者を経営している。ここで使う消毒剤を輸入すると考えても「薬監証明」の取得など、実現するべきハードルは高いです。輸入を検討する際は、具体的なコスト計算の前に、そもそも輸入のハードルはどれくらい高いのか?を検討することが重要です。いくらコスト計算ができても「そもそも、輸入は難しいのですが…」との結果になれば、本末転倒です。

インコタームズの費用負担でのトラブル

トラブル事例

海上輸送費用は輸出者負担のはずなのに高い燃料調整費の請求が発生した。

要約・解説

貿易をするときは「インコタームズ」と呼ばれる貿易条件と基にします。インコタームズとは、輸出者と輸入者の責任負担と費用負担を明確にし、できる限り、トラブルがない取引を実現する役割があります。

例えば、インコタームズの一つである「CIP」は、輸出者が海外から日本までの送料と海上保険費用を負担する義務を負う取引です。この条件で取引をする場合、本来、輸入者には、国際輸送部分の費用はかからないと考えられます。しかし、実際は、日本側で発行されるアライバルノーティスに「燃料調整費(サーチャージ)」など不明な項目が請求されることが多いです。実は、この問題は非常に寝深く、貿易業界の「ガン」ともいえます。

アライバルノーティスの費用計算ツール ボッタクリも暴露

このトラブルは、ほぼすべての貿易取引に関係すると考えても良いです。むしろ、公正取引委員会などが動くべき問題です。ですから、現状、このトラブルを根本的に解決する方法は、ほとんど残されていないです。あまりにも闇が深すぎるため、一個人や一会社では、何ともできないと考えた方が良いと思います。

商品の原産国表示は適正にする。

トラブル事例

商品の原産地が実際の原産地でなく日本や他国を匂わす表示があっては輸入できない。原産地シールの印刷が間に合わず、輸入者指示で見切り発車で輸出。しかし税関検査により発覚し、高い港湾倉庫でシール貼り作業を行う事になる。

要約・解説

輸入商品は、必ず「MADE IN ○○」の正しい表示が必要です。この部分の原産国が日本や第三国を類推するような形にしていると輸入は認められません。税関は、この原産国の表示が正確にされていないため、輸入を留保し、はっきりさせる迄は、許可を出さないとしました。もちろん、貨物は、輸入許可を受けていないため、保税地域外に出せません。よって、保税地域内で原産国の問題を解決する必要があります。

そこで、輸入者は、保税蔵置場を所有している業者に依頼をし、原産国のシール貼り作業を依頼。その作業後、再び、税関の確認を受けて、輸入許可を取得したのでした。今回は、納期の関係か、輸入者の見切り発車により、不要な日数と費用を負担することになりました。すでに何度も申し上げている通り、やはりこれも輸入者の準備不足が招いたことだといえます。

原産国を誤認させる可能性がある状態での輸入はできない。

いかがでしたでしょうか? 商品を輸出や輸入するときは、必ず「準備」や「下調べ」が必要です。無知による貿易は、費用や法令違反による責任に直結することだと考えて、あらためて、ご自身の貿易ビジネスを見直されることをお勧めします。

「バレなければいい。」この考え方で貿易ビジネスをすると、必ず「痛い想い」をする日が来ます。ちょっとしたことでも数十万、数百万単位であっという間に資金がなくなることをキモに銘じておきましょう! 無知ほど怖いものはないです。

まとめ

  • 輸出と輸入に限らず、無知は費用負担に直結する。
  • 思い込みの輸出入はやめよう。
  • 意外な商品の輸出入が法令上、完全にアウトの可能性もある。
  • 輸出貿易管理令を甘く見ない。テキトーな申告は実名公表など汚点につながる。
  • 少しでもわからない点があるときは、税関、厚生省、経済産業省、各種貿易専門家に相談をすること

個人輸入の通関代行サービス 個人事業主/小規模法人向け

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