果樹農園に訪れる外国人が「リピーター」になる時代へ
日本産の果物は、世界中から注目を集めています。さくらんぼ、桃、シャインマスカットなど、国内で日常的に食べられている果物も、海外では高品質なギフト商品や贅沢品として人気です。特に台湾、香港、ベトナム、タイなどのアジア圏では、日本のフルーツに対する信頼は高く、美味しさと見た目の美しさの両方が評価されています。
これまで多くの果樹農園は、訪日外国人へのフルーツ狩り体験や直販を中心に展開してきましたが、近年では「越境EC」を通じて、体験をきっかけにした海外販売へと発展するケースが増えています。つまり、果樹農園は観光の場であるだけでなく、輸出ビジネスの入り口にもなりうるということです。
訪れた外国人観光客にSNSでのつながりを持ち、帰国後に果物や加工品をオンラインで購入してもらう。この流れを設計することで、観光農園は「一度きりの体験」ではなく、「継続的な関係性=継続ビジネスの可能性」を築く場へと進化していきます。
海外農園での成功事例
すでに海外農園では、外国人向けの集客に成功している所が多数あります。
ペナン・トロピカル・フルーツファーム(マレーシア)
- 特徴: マレーシアのペナン島に位置し、200種類以上の熱帯果樹を栽培
- 体験内容: ガイド付きの農園ツアーやフルーツの試食、ジュース作り体験など
- ウェブサイト
成功要因:
- 多言語対応のガイドと資料
- SNSや旅行サイトでの積極的な情報発信。
- 地元の文化や食を体験できるプログラムの充実
ハンター・バレー・ワイナリー(オーストラリア)
- 特徴: オーストラリアの有名なワイン産地で、ブドウ園とワイナリーが点在
- 体験内容: ワインテイスティング、ブドウ収穫体験、地元の食材を使った料理教室など。
- ウェブサイト
成功要因:
- 高品質なワインと食の提案
- 美しい景観とリゾート施設の併設
- 観光客向けのパッケージツアーの開発
「体験→SNS→EC購入」までを設計する発想
来園者を単なる観光客として終わらせず、「その後も自社の商品を購入してくれる海外顧客」へと変えていくことが、今の果樹園に求められる新しい視点です。そのためには、体験の場で顧客とつながり、オンライン上でも継続的に接触できる仕組みを整える必要があります。
SNSや越境ECの活用次第
SNSや越境ECを活用すれば、小規模農園でも手軽に海外とつながれます。とくにInstagramやFacebook、LINEなどは、訪問者が現地で撮った写真を投稿しやすく、自然な形で商品や農園の魅力を拡散してくれます。そこから農園のアカウントをフォローしてもらい、収穫時期や販売情報を定期的に発信すれば、帰国後もECサイト経由で購入してもらうことができます。
この導線をつくるためには….
- 日本での収穫体験
- オンラインのつながり
を連動させることが重要です。
例えば….
- 園内にフリーWi-Fiを設置し、SNSに投稿しやすい環境を用意する。
- 英語・中国語など多言語対応の案内板やパンフレットを用意し、QRコードからSNSやECサイトにアクセスできるようにするなど。
さらに対応できる方は、世界中に映像を届けられる配信サイトを活用し、全世界に対して「日本の○○農園からライブ中継中!」と映像を流し続けるのも良いでしょう。

Wi-Fiの重要性を認識した方が良いです。その場ですぐに投稿してもらうことが何よりも重要です。
外国人観光客を呼び込むには何が必要?
基本となるのは、英語を中心とした多言語対応です。看板やウェブサイト、案内板、予約システムなどが外国人にも分かりやすく作られていることが大前提です。中込農園のように早い段階から英語版ウェブサイトを設けている事例は、安定した集客とリピートにつながっています。また、平田観光農園や右田果樹園では英語ガイド付きの体験を用意することで、外国人にも安心感を与えています。
SNSを活用した発信も集客には効果的です。果物狩りや農業体験はSNS映えしやすく、外国人観光客にとって「日本らしさ」を感じられる貴重な体験です。こうした写真や動画を投稿してもらうことで、自然な形で集客と宣伝を両立できます。GoogleマップやTripadvisorといったレビューサイトへの対応も、信頼感の醸成に役立ちます。
さらに、観光体験を強化する工夫も重要です。
例えば、りんご狩りにおみやげ用の果物をセットにしたプランや、農業ボランティア体験のように長期滞在型の体験プログラムを組み合わせると、来園者の満足度が高まり、より深い関係性を築くことができます。

グーグルマップの口コミ、認知向上は非常に重要です。小さな雑誌に広告を打つよりもグーグルマップの対策(MEO)をした方が何倍も効果があります。逆に言うと、それほど、多くの方に選択されやすい環境にいると自覚することが重要です。
越境ECで果物を届けるための基本準備
訪問者との関係をECへとつなげるためには、まずは越境ECの仕組みを整えることが必要です。生鮮果物の輸出は、通関や鮮度保持など難易度が高いため、最初はジャムやジュース、ドライフルーツなどの加工品から始めるのが良いでしょう。これらは賞味期限の管理がしやすく、輸送中の品質劣化リスクも低いです。
ECサイトの構築には、日本国内のプラットフォームを利用し、Buyee連携などを活用して海外発送に対応する方法や、ShopeeやTmall Globalのような現地ECモールに出店する方法があります。いずれの場合も、商品紹介ページには高品質な写真とともに、英語での魅力的な説明を掲載することが重要です。
SNS戦略を重視しましょう!
SNSフォロワー限定のクーポン配布や、季節の収穫案内をDMで送るなど、リピーターを育てる工夫も欠かせません。農園のストーリーや土地の魅力と結びつけることで、単なる物販ではなく「体験の延長」として商品を受け取ってもらうことができます。

輸入規制、国際輸送ができるか? できる場合は、その具体的な方法を相談してみましょう!
果樹農園だからこそできる「日本ファンづくり」
果樹農園の強みは、ただ果物を売るだけではなく、「日本らしい体験」を通じて海外のお客さまと自然な関係を築けることです。これは通常のECサイトや商社では実現できない、唯一無二の魅力です。来園者は、美しい自然の中で日本の農業文化に触れ、実際に果物を収穫し、その美味しさを体感します。その経験が強い記憶となり、帰国後の購買行動へとつながります。
その後の関係づくりは、SNSと越境ECによって可能になります。投稿へのリアクション、DMでのやりとり、旬の果物の紹介といった小さな積み重ねが、長期的なブランドロイヤルティにつながります。特に都市部の富裕層や食の安全に敏感な層にとって、日本の果物は贈答用や自分用の高級商品として定着しつつあります。
農業と観光と輸出。この三つをつなぐのは難しく見えるかもしれませんが、実際には農園に来てくれるお客さまがすでに「種」として存在しているのです。大切なのは、それをいかに育て、花開かせるかです。
最近は、青果物の輸出手続きに一括対応している市場もあるようです。
もし、もう少し規模感を小さくして輸出したい場合は、クールEMS等を使った小口の配送手段もあります。
まとめ
- 日本産果物の人気は高く、訪日体験から越境ECへとつなげる動きが進んでいます
- SNSや多言語対応、英語ガイドなど、体験時の情報設計が重要です
- 越境ECでは加工品から始め、リピーター育成を意識した情報発信を行いましょう
- 果樹農園は日本体験の場として、世界のお客さまとの絆を作れる可能性あり
- 農業・観光・輸出の三位一体戦略は、小規模農園にも十分チャンスがあります



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