日本のお菓子を海外に売る。逆に、海外のお菓子を輸入し、日本で販売する場合、どのような注意点や規制があるのでしょうか?
そこで、この記事では、海外に日本のお菓子を売るとき(輸出したい方)と海外からお菓子を個人輸入して販売するときに必要な知識をご紹介していきます。
お菓子の輸出及び輸入販売入門
貿易(輸出・輸入)は、用途(目的)が重要です。つまり、なぜ、輸出するのか? 輸入するのか?です。
もし、個人使用目的で輸出や輸入をする場合、特に輸入国側税関で問題とならないです。個人使用目的とは、輸入してあなた自身が食べるなどです。輸出の場合も同様です。友人へのプレゼント用等で、送る程度なら、特に規制を受けないです。
ただし、これが商売目的となると、話が変わります。規模の大小に関わらず、販売し、利益を得ていると商売目的です。
- 商売目的で輸出=お菓子を製造しているメーカーに無断で輸出した場合、万が一のトラブルの際に、訴訟リスクを負う可能性があります。
- 商売目的の輸入=輸入者である、あなたが製造物責任法上の全責任を負います。
まずは、この違いをしっかりと認識して、この後の記事を読み進めるようにお願いします。以降は、商売目的でお菓子を輸出入する前提で記事を記載していきます。
お菓子の輸出入を考えるとき
海外で魅力的なお菓子を見つけたら、思わず日本へ輸入したくなる気持ちはわかります。私自身もフィリピンへ行った際、現地のスーパーにて、豊富にあるスナック菓子を見て、輸入を考えたことがあります。しかし、これを実行すると、そのハードルが一気に高いことがわかります。
ただ、海外からお菓子を購入してくるだけでは販売はできないです。しっかりと、税関と食品検疫所に申告をして、食品衛生法と関税法上の2つをクリアすることが求められます。
例えば、この部分の違法行為をしている人がフリマアプリやヤフオク等で散見されます。おそらく、正しく申告していない物を違法に販売しているのだと思います。
なぜ、違法といえるのでしょうか? それは、正規のルートでお菓子を輸入販売するには、非常に多くの必要書類や情報がいるからです。個人が小遣い稼ぎ程度に申請をして、すぐに取得できる程、甘い物でないです。
後述しますが、海外メーカーから、原材料リストや製造工程表を入手した後、それを食品検疫所に提出して審査を受けます。一つ一つの原材料について、日本で認めていない添加物でないのか?の照合した後、初めて輸入できるのかが決まります。
よって、フリマアプリやヤフオクで海外のお菓子を販売している方は、ほぼ違法行為をしているとみていいでしょう。何度も申し上げます。同じお菓子を輸入する場合でも、それが商売なのか?によって、輸入のハードルは、雲泥の差があります。
輸入販売するときは、輸入時に「商売目的であること」を告げて申告をすることがポイントです。国際郵便の場合は、事前に食品検疫所などに「〇月〇日くらいに、○○国から届く商品は、商売目的の輸入であること」を告げておくようにします。
ここから先は、お菓子の輸出、お菓子の輸入にケース分けして確認していきましょう!
お菓子の輸出で必要なこと
2022年ごろから続く円安の影響により、越境ec、輸出に取り組む方が増えています。輸出する品目として、真っ先に浮かぶ物の一つとしてお菓子があるのではないでしょうか?
ここでは、お菓子を小口輸出する場合に必要な情報を記載していきます。
お菓子の輸出で注意すること
まず、注意するべきことがあります。日本のお菓子を購入し、海外に輸出する場合は、日本のお菓子のメーカーに、輸出していいかを確認した方が良いです。
日本のお菓子メーカーは、日本市場向けに商品を供給しています。日本で認められている添加物のみで製造しており、海外で食べられることを一切想定していない場合も多いです。
例えば、日本で認められている添加物でも、EUで禁止している物などがあります。万が一、相手国で禁止になっている添加物を含むお菓子を輸出した場合に、何らかのトラブルになる可能性があります。特に商売目的で輸出する場合、このあたりを調べた方が良いです。
海外受けが良いお菓子の調べ方
海外受けが良いお菓子は、ネットを使い調べられます。
例えば、YOUTUBEやインスタグラム等です。これらのSNSに、お菓子関連のキーワード+JAPANで検索をすると、投稿されている動画や写真がヒットします。それらの内から、特に人気がある物をピックアップして、関連品を販売する方法があります。
また、最近では、海外にドンキホーテが進出しています。海外のドンキに良き、棚の幅が広い物、在庫が少なくなっている物について注目すると良いと思います。
例えば、名古屋の浅間町には、様々なお菓子問屋がございます。ここで駄菓子関係を仕入れるときに、どういう人が、どんな物を購入することが多いのか?などと聞くことができます。
お菓子を小口で販売&輸出する方法
上記のリサーチの結果、ある程度の候補が上がったら、テスト販売をします。一番手軽なのはEBAYです。その他は、海外販売ができるネットショップ(ASP)、フリマアプリのアメリカ版、アマゾンのアメリカ版等の方法があります。ご自身が取り組みやすい方法で始まれると良いと思います。
配送については、小口で行う程度なら、国際郵便等を活用するだけで十分にカバーできます。ある程度の規模になった場合は、国際輸送自体の変更だけでなく、もう少し法的な部分での準拠が必要です。もし、ある程度以上の場合は、弊社の海外販路開拓サービス又は、ゼロイチコンサルにお問い合わせください。
輸出先国の法令調査から、小口輸送でないプロ仕様の輸送、海外のバイヤーとの交渉等ができます。
お菓子の輸入で必要なこと
お菓子の輸入販売をするときの手続きは、次の2つです。
- 食品検疫所への「食品届」
- 税関に適正な関税を支払うこと
食品検疫所は、輸入お菓子が安全であるかを確認します。まずは、ここに申請をして「食品届け出済証」を取得します。
次に、税関です。税関は、関税の徴収に関する審査をします。お菓子の輸入は、これら2つについて確認を受けて、問題がなければ、輸入許可が下ります。
お菓子の関税は何パーセント?
お菓子といっても様々な物があります。
例えば、チョコレートは、HSコードで言うと、17類前後です。この辺りの物は、関税率が20%前後と高いです。ただし、輸入元の国が日本とEPAを結んでいると、関税率が低いです。
例えば、業務目的、1000円分のお菓子、送料500円、関税率が20%のお菓子を輸入する場合は…..
- 関税額 → (1000円+500円)=0.2
- 消費税額 → (1000円+500円+関税額)×0.1
- 支払うべき税金= 300円(関税)+180円(消費税)
上記のように計算します。なお、関税率は、以下のリンク先でも確認ができます。
関税を削減する場合は、後述する「特定原産地証明書」を提出して免除手続きをします。それでは、以上の通り、お菓子に関する基本的な部分を頭に入れて、より詳しい流れを確認しましょう!
各機関への具体的な手続き方法
ここからは、国際郵便など、数量30キロ以下、輸入価格が20万円以下の少量輸入を想定して、より具体的な話を進めていきます。
これ以上の貨物(一般商業輸入)は、もう少し複雑な手続きが必要になるため、通関業者と呼ばれる業者に依頼することが一般的です。なお、この先の記事は、事前に「ゼロから覚える食品輸入の手続き」の内容を頭に入れておくと、理解が早いです。
1.食品検疫所への手続き内容
食品検疫所は、輸入菓子の安全性を審査します。海外からお菓子を輸入&販売するときは、必ず届け出ます。具体的には、食品輸入届と、その書類の内容を証明する付属書類を提出して審査を受けます。
食品検疫所へ提出する書類
- 食品輸入届け
- 食品輸入届の内容を証明するための書類
食品検疫所は、輸入者から食品輸入届が出されると、日本の食品衛生基準と照らし合わせて問題がないかを確認します。具体的には、次の2つの観点から審査をします。
- 違法な添加物は含まれていない?
- 適法な添加物は、規定以下の量におさまっている?
輸入者は、上記2つの点で安全性に問題がないことを書類を使い立証していきます。
食品検疫所への問い合わせ方法
食品検疫所に電話するときは、輸入国、輸入するお菓子について、明確に答えられるようにしましょう!具体的には、輸入するお菓子の状態がわかる書類を取りそろえた上で、検疫所に相談します。
2.必要な書類と輸入先との関係
お菓子の輸入に必要な書類は、次の2つです。
- 原材料リスト
- 製造工程フロー図
- 特定原産地証明書
1.原材料リスト
原材料リストとは、お菓子に含まれる「原材料の一覧」です。書式などは、決まっていませんが、輸入するお菓子の全ての成分がリストアップされている必要があります。もちろん、この中には小麦粉、砂糖など、一般的な原材料がありますし、添加物などもあります。
まずは、輸出者にお願いをして、お菓子に含まれているすべての原材料を書き出してもらいます。
原材料のリストアップが完了したら….
実際に輸入交渉する前に、食品検疫所に原材料リストを確認してもらいます。なぜなら、輸入お菓子の中に、日本で禁止対象の添加物が含まれていると輸入ができないからです。
- まずは原材料リストだけをリストアップしてもらう
- 食品検疫所に確認をしてもらう。
- OKであれば、具体的な購入を検討する。
まずは、具体的な輸入交渉に入る前に、「法的に輸入できるお菓子であるのか?」を確認することが先決です。この部分が崩れていれば、この先の話を進めても全く意味はありません。
2.製造工程フロー図
原材料リストと合わせて必要になるのが「製造工程フロー図」です。簡単に言うと、原材料を投入してから、どのような工程を経て完成品になるのかを説明する資料です。こちらも決まった書式はなく、自由記述式で資料を作成していきます。(輸出者が)
一例をあげると、
- 原材料投入
- 焼き工程
- 蒸し工程
- 冷却工程
- パッキング工程
などを紙にまとめて、それぞれの工程の詳細を絵や文章などで肉付けしていくイメージです。
もし、輸出者で対応できないと言われたら….
原材料リストと製造工程フロー図の作成をお願いすると、断られることが多いです。この場合は、日本側の輸入者が「現地の情報を熟知している」前提で、輸出者に代わり資料を作成できます。
ただし、この場合は、必ず資料のレターヘッドの部分に、輸出者の情報(会社名、住所など)と、代理作成者(輸入者)の情報を示す必要があります。「製造者は、この人。その資料は、私が作りました」という説明をします。
三つめは、特定原産地証明書です。EPAという自由貿易制度を活用して輸入するときに必要です。
EPAを結んでいる国同士は、お互いに関税の撤廃をしたり、撤廃とまではいかなくても、削減などしたりしています。
2024年4月現在 | |
発効済(利用できる国) | シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP12、TPP11、日EU・EPA、米国、英国、RCEP(韓国+中国+アセアン+オーストラリアなど) |
交渉中 | トルコ、コロンビア、GCC、日中韓 |
その他(交渉中断等) | カナダ、韓国 |
では、お菓子の輸入とEPAには、どのような関係があるのでしょうか? 実は、日本は加工系のお菓子に高い関税率を設定していることが多いです。
例えば、一般的な「砂糖を加えているお菓子」には、だいたい20%前後の関税があります。
もし、EPAを活用して輸入すれば、輸入する商品によっては、関税削減のメリットを受けられます。
以上がお菓子を輸入するときの流れです。ここから先は、無事にお菓子を輸入した後のお話について説明していきます。
2.お菓子を輸入した後に行うべきこと
ここからは、輸入後の国内販売についての説明です。
輸入したお菓子を国内に販売するときは、食品表示法への対応が必要です。食品表示法とは「その食品がどんな物か?」を誰でも判断できるようにする法律です。具体的には、海外から輸入したお菓子の外装部分にある栄養表示部分を日本語化することです。
■日本語ラベルは、どのタイミングで貼り付ける?
貼り付けるタイミングは、いつでも大丈夫です。海外側で日本語ラベルを貼り付けても良いです。日本へ輸入後でもいいです。輸入時の審査には、この日本語ラベルの有無は関係ないです。ただし、どのタイミングで日本語ラベルを貼り付けるにしろ、実際に商品を販売するときには、必ず貼り付けなければなりません。
日本語のラベルを貼ることによって、英語が全く分からない人でも安心して外国のお菓子を購入できます。また、この食品表示と合わせて規制されるのは「景品表示法」です。=虚偽の説明をして販売すると罰する法律です。
例えば、実際は、●●という栄養成分が3しか含まれていないのに、10含まれているように見せるなどです。基本的には、この食品表示法と、景品表示法の2つへの対応が、お菓子を輸入した後に意識するべき法律です。
この他、お菓子の中でも一部の物については、その業界で「自主規制」しているルールなども存在(チョコレートなど)するため、あわせ注意しましょう!
また、お菓子を輸入するときは、PL保険(製造物責任法による賠償を補償する保険)や、アレルギー表示規制なども注意が必要です。もし、輸入に関する一連の流れを今一度確認したいときは、ミプロさんの無料貿易相談を利用してみてください。ミプロは、輸出のジェトロとならぶ公的機関です。
まとめ
ここまでの内容をまとめると、次の1~9のステップを踏めば、個人であってもお菓子の輸入販売は可能です。
- 需要のチェッック
- 輸入に必要な書類を用意
- 食品検疫所に食品輸入届を提出
- 税関申告
- 輸入許可後、販売するための用意する。
- 食品表示法などに対応するため、製品に日本語で作成したラベルを貼り付ける
- 万が一のことを考えて、製造物責任保険(通称PL保険)をかけておく。
- 輸入&販売するための準備は完了です。
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