「日欧EPA」ヨーロッパ28か国のVAT(付加価値税)まとめ

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2019年二月一日、日欧EPAが発効しました。この発効に伴い貿易をする人は、何をするべきなのでしょうか? 最も重要なのは「ヨーロッパに詳しくなること」です。貿易ビジネスで成功するための大きなポイントは、相手国の市場を理解して、それにマッチした商品を提供する必要があるからです。

そこで、この記事では、ヨーロッパ貿易には欠かせない「VAT(付加価値税)」についてご紹介していきます。なお、この記事では、ヨーロッパに加盟する28か国のVAT標準課税と、代表的な減税品目を合わせてご紹介していきます。

ヨーロッパ28か国のVAT

ヨーロッパVAT

ヨーロッパと貿易をするときに「VAT(付加価値税)」を無視することはできません。VATとは、日本でいう消費税です。しかし、明らかに消費税とは、違う部分があります。それが「軽減税率」です。軽減税率とは、ある特定の品目について、優遇した税率を課す税の仕組みです。これがヨーロッパにはあります。

VATとは?消費税との違いはなに?

VATは、何らかの物品を購入するときに発生する税金です。日本のように、どんな商品を購入しても「同じ税率」ではありません。VATは、ある基準となる税率があり、そこから購入品目に応じた税の軽減を行う仕組みです。このとき基準となる税率が「標準課税率(ひょうじゅんかぜいりつ)」です。

VATの標準課税率は、ヨーロッパ各国によってバラバラです。2018年現在、最も低い標準税率の国は、ルクセンブルクの17%です。逆に最も高い標準税率の国は、ハンガリーの27%です。ヨーロッパに所属する国は、各国、独自にこの標準税率を決めています。多くの場合は、20%~25%くらいに設定している国が多いです。

ヨーロッパ各国は、この標準課税率を基準にして、品目ごとに個別に「税率を軽減」しています。

例えば、標準課税率が20%の国があるとします。この税率とは別に、食料品は3%、新聞は5%の税率が設定されているとすれば、食料品(3%)と、新聞(5%)以外の全ての商品に対して、20%が課税されます。

要は「基本的にすべて20%の税金を課します。ただし、ある特定の物については、個別の税率まで軽減します。」これが軽減税率=ヨーロッパにおけるVATの仕組みです。一方、日本の消費税は、どんな物に対しても一律10%の税金がかけられます。つまり、VATと消費税は「品目による軽減性あるのか」が大きな違いです。

  • ヨーロッパ各国は、すべての商品、サービスにVATを設定しています。
  • ただし、例外品目は個別に税率を設定して引き下げています(軽減税率)
  • 要は、生活必需品には、低い税率。贅沢品には、高い税率をかけるようにしています。

なぜ、VATを理解する必要がある?

ここまでの説明で、ヨーロッパにおけるVATの概要を理解いただけたかと思います。では、なぜ、私たち日本人がヨーロッパのVATを理解する必要があるのでしょうか? 個人的には、次の2つの観点から重要だと考えています。

  1. ヨーロッパで生活をするときの税負担がわかる
  2. 日欧EPAに関連して相手国の市場を理解するのに役立つ

1.ヨーロッパで生活をするときの税負担がわかる。

少しビジネスとかけ離れた所で言うなら、ヨーロッパに住むときの税負担を理解できます。

例えば、ヨーロッパに留学や、海外赴任をするときを考えてみます。このようなときは、当然、ヨーロッパ国内に居住することになるため、VATの納付義務が発生します。もちろん、ただの消費税でしょ!?と軽く考えることもできますが、おそらく、想像している以上に、税負担が重く感じられるはずです。

仮に、コンビニで販売している100円のお菓子を買うときに「130円」を支払わなければならないとしたらいかがですか? 最初は、そこまで大きく感じないかもしれませんが、購入額が大きくなるにつれて、税負担の重さを感じるようになるはずです。これを考えると、ヨーロッパでの生活を考える上で、このVATの理解は、重要です。

2.日欧EPAに関連して相手国の市場を理解するのに役立つ

VATの理解は、貿易ビジネスにも役立ちます。

例えば「日欧EPA」が結ばれると、日本の物がヨーロッパに輸出しやすくなり、一方、ヨーロッパの物が日本に出回りやすくなります。これがお互いの市場を開放するメリットです。ただ、市場が開放されたからといって、むやみに商品を輸出しても良い結果を得ることは難しいです。

ヨーロッパには、ヨーロッパに風習があり、日本には、日本の風習があるからです。もちろん、違うのは風習だけではなく、税に関する仕組みも大きく違いますね。仮に、あなたの輸出する商品が相手国における軽減税率の対象品目になっているのであれば、相手国で流通しやすい環境が整っているといえます。

一方、軽減税率の対象とはなっておらず、相手国で高額なVATがかかる物であれば、どんなに良い商品を輸出しようとしても、なかなか良い結果を出すのは難しいです。やはり、VATなどを通して、相手国の「マーケットを理解すること」が大切です。

■ポイント:あなたの輸出しようとしている商品は、相手国において「軽減税率」の対象になっていますか?

ヨーロッパ28か国におけるVAT(標準課税率)の一覧

VATの重要性がわかってきたところで、各国別のVATの標準課税率を確認していきます。以下の表は、ヨーロッパ28か国におけるVAT標準税率の一覧です。日本の消費税率よりも極めて高い税率が設定されています。特にハンガリー、スエーデン、デンマーク、クロアチアなどは、高いです。下の国名部分をクリックすると、各国が設定している減税率と、代表品目を確認できます(ページ内リンク)

国名 標準課税率 国名 標準課税率
イギリス 20 キプロス 19
イタリア 22 エストニア 20
フランス 20 フィンランド 24
ドイツ 19 ハンガリー 27
オランダ 21 アイルランド 23
オーストリア 20 ラトビア 21
スペイン 21 リトアニア 21
ギリシャ 24 ルクセンブルク 17
デンマーク 25 マルタ 18
ポーランド 23 ポルトガル 23
ベルギー 21 ルーマニア 20
チェコ共和国 21 スロバキア共和国 20
ブルガリア 20 スロベニア 22
クロアチア 25 スウェーデン 25

ヨーロッパにおけるVATの特徴

ヨーロッパにおけるVATには、次の特徴があることがわかりました。

  • これが無くては生きてはいけない物
  • 情報を伝達する物
  • 芸術、知識、文化レベルを向上させる物

には、どの国も低い税率を課していることがわかります。

具体的には、「これがなくては~」であれば、食料品や医薬品、身体補助具が該当します。また「情報を伝達~」であれば、雑誌、新聞、図書、定期刊行物などが該当します。

最後の「芸術~」であれば、骨とう品、アート作品など、文化・知識レベルを向上させる幅広い物に減税が設定されています。「なぜ、ヨーロッパは芸術が優れいているのか?」を考えると、もしかすると、このような税負担の恩恵も一理あるのかなと考えております。いずれにしろ、素晴らしい制度ですね。

そして、これら以外のいわゆる「贅沢品」は、極めて高い税率が設定されています。何を軽減税率の対象にするのか?は、議論の余地がありますが、軽減税率の制度自体は、とても良い物だと思います。では、最後にVATの観点で、税負担が重い国と、軽い国をそれぞれご紹介します。

VATの負担が重い国

VATの負担が重い国は、以下の三か国です。選定基準は、VATの課税標準が高いこと、かつ、食料品に軽減税率がないことの2つです。これらの国は、そのどちらの条件も満たします。

デンマーク 標準課税率:25%
ブルガリア 標準課税率:20%
フィンランド 標準課税率:24%

VATの税負担が軽い国

一方、VATが軽い国は、ルクセンブルクとドイツです。この選定基準は、VATの課税標準が低いこと、かつ、食料品に軽減税率が設定されていることです。

ルクセンブルク 標準課税率:17% 食料品:3%
ドイツ 標準課税率:19% 食料品:7%

各国VAT減税率の代表品目まとめ

各国で設定している軽減税率と、軽減税率の対象になっている品目例をまとめてご紹介しています。ざっくりと紹介しているため、こちらの品目例に記載がない=すべて標準課税率が適用されるわけではありません。ただし、基本的には、ここに記載されていない品目は、標準税率が適用されると考えても良いです。

*下の表は、あくまで参考程度にお願いします。詳しくは、ジェトロさん等でリサーチをされることをお勧めします。

イギリス

減税している税率 品目例
 5% 燃料、電力、女性用の衛生品、避妊薬、チャイルドシート、禁煙製品、ソーラーパネル
 0% 特定の食べ物、飲み物、子供服と靴、書籍、新聞、音楽、地図、薬、障がい者用補助具、失禁製品など
 免税 芸術作品

イタリア

減税している税率 品目例
 10% 植物系商品、ほぼすべての食品、医薬品、骨とう品
 5% フレッシュバジル、ローズマリーなど
 4% 農産物、基本食料品、医薬品、書籍、新聞

フランス

減税している税率 品目例
 10% 農産物、木材製品、医薬品
5.5% 食品全般、水、骨とう品、本、女性用の衛生用品
 2.1% 医薬品など

関連記事:日本にいながらフランスのVATを還付する方法

ドイツ

減税している税率 品目例
 7% 生きている動物、食料品、生きている植物、水、木材、本、新聞、障がい者用補助具

オランダ

減税している税率 品目例
 6% 生きている動物、農業や園芸の種子、植物製品、木材、飲食物(アルコール除外)、水、医薬品、書籍、新聞、雑誌、芸術作品

オーストリア

減税している税率 品目例
 13% 生きている動物、野菜加工品、木材、骨董品
 10% 食料品、水、医薬品、本、新聞

スペイン

減税している税率 品目例
 10% 食料品全般、水、医療機器、ホテルのサービス
 4% パン、ミルク、果物、野菜、医薬品、書籍、雑誌、新聞、障がい者用補助具

ギリシャ

減税している税率 品目例
 13% 生きている動物、魚製品、卵、ミルク、天然はちみつ、野菜、果物、シリアル、殺虫剤、小麦粉、オリーブオイル、サプリメント、水、医薬品、避妊器具、障がい者用補助具
6% 新聞、書籍、医薬品

デンマーク

減税している税率 品目例
 免税 新聞

ポーランド

減税している税率 品目例
 8% 食料品、建築資材、ホテルサービス、交通費
 5% 農産物、林業、狩猟、漁業製品

ベルギー

減税している税率 品目例
 12% おむつ、マーガリン、石炭など
 6% 生きている動物、野菜製品、食料品と飲料(あるコール除く)、医薬品、書籍

チェコ共和国

減税している税率 品目例
 15% 食料品および飲料(アルコール飲料は除く)、水、生きている動物、図書、医薬品、チャイルドシート、骨とう品
 0% 乳児用の食べ物、グルテンミル製品、避妊薬、雑誌、子供向け絵本

ブルガリア

減税している税率 品目例
一般的な物で減税品目無し

クロアチア

減税している税率 品目例
13% 新聞、食用油脂、ベビーフード、水(ボトル水は除く)、芸術的な雑誌
 5% パン、ミルク、母乳の代用品、教科書、新聞、雑誌

キプロス

減税している税率 品目例
 5% 生きている動物、種子、ジャガイモ製品、アイスクリーム、ナッツ類、水(ボトル以外)、殺虫剤、新聞、雑誌、書籍、チョコレート、ドーナッツ、マフィリン、クロワッサン、避妊薬、女性用衛生用品、障がい者用補助具、チャイルドーシート、ほとんどの食料品や飲料

エストニア

減税している税率 品目例
 9% 本、医薬品、避妊薬、ポルノ雑誌等
 0% 航空機に使われる装備品など

フィンランド

減税している税率 品目例
 14% 生きている動物、水道水、アルコール飲料、たばこ
 10%  医薬品、芸術作品、書籍全般

ハンガリー

減税している税率 品目例
 18% 乳製品、穀類、小麦粉、ミルク
 5% 医薬品、障がい者用の補助具、書籍、新聞、定期刊行物、楽譜、豚の肉、食品、家禽類の肉、卵

アイルランド

減税している税率 品目例
 13.5% チャイルドシート、アンティーク
 9% 新聞、雑誌、リーフレット、地図、楽譜、漫画
 4.8% 家畜類
0% 特定の食べ物と飲み物、本、子供服や靴

ラトビア

減税している税率 品目例
 12% 特定の医薬品、幼児を対象とした特定の製品、教育文学、新聞、雑誌、その他、定期刊行物
 0% 航行の安全にするための各種製品

リトアニア

減税している税率 品目例
 9% 書籍、新聞、雑誌
 5% 医薬品、障がい者用補助具
 0% 航行の安全にするための製品

ルクセンブルク

減税している税率 品目例
 14% 洗濯、クリーニング、13%を超えないぶどうのワイン、印刷物、商業用カタログ
 8% 電力、観葉植物、写真
 3% 水道水、食料(アルコールを除く)、14歳未満のための衣服、アクセサリー、手袋、履物、書籍、治療アイテム、障がい者用の補助具、医薬品全般
免税 特定の農産物

マルタ

減税している税率 品目例
 5% 菓子類、電気、医療器具、印刷物、美術品、骨とう品
免税 ほとんどの食料品、医薬品

ポルトガル

減税している税率 品目例
 13% 人間が食べる特定の製品、一般的なワイン、農業機械全般
 6% 肉、魚、乳製品、卵、オリーブオイル、果物、野菜、水、新聞、雑誌、医薬品

ルーマニア

減税している税率 品目例
 9% 食品全般、飲料(アルコールを除く)、書籍、新聞、医薬品、パン
 5% 書籍、新聞、雑誌

スロバキア共和国

減税している税率 品目例
 10% 医薬品、べびーおむつ、肉類、淡水魚、ミルク、バター、特定のパン
 免税 農産物

スロベニア

減税している税率 品目例
 9.5% 動物飼料、水道水、医薬品、本、新聞、芸術作品

スウェーデン

減税している税率 品目例
 12% 食品全般、美術品、骨とう品
 6% 書籍、パンフレット、絵本、子供用の書籍、新聞、雑誌、楽譜、地図

まとめ

ヨーロッパにおけるVATをご紹介してきました。VATは、日本の消費税に比べて、きわめて高い税率が設定されています。しかし、すべての商品に対して、適用されるのではなく、一部の商品には、減税した税率が課せられています。これにより、贅沢品は高い税金を課し、生活費必需品には、低い税率が適用されます。

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