海外から革靴を輸入するときは、日本側で発生する高い関税に気を付けます。安い革靴でも、日本側で高い関税がかかれば、結局、国内で買えばよかったと後悔します。革靴の関税率は「商品価格の30%または、一足当たり4300円のどちらか高い方」です。革製品は、様々な品目の中でも特に高いことで有名です。
この記事では、個人使用目的で革靴を輸入するときの関税率と計算方法をご紹介していきます。
■この記事の要点
- 革靴の関税は高い。一足4300円(両方で8600円)と本体価格30%を比較する。
- 1の結果、高い方が納税するべき関税額
- 1の場合における「本体価格」は、個人使用の場合は0.6をかけた物。
- 規模の大小に関わらず、商売目的の輸入は、0.6倍できない。
- EPA締約国、特別特恵国など一部の国の革靴には、関税が削減されている。
- EPA締約国からの革靴×20万円以下の物は、自動的にEPA税率を適用してくれる。
- コンポジションレザーとは、革製品の製造に適さない「革のクズ」を集めて作った物
関税が高いのは革製品全体
革靴を含めて製品の一部または全部に革が使われている製品の関税率は非常に高いです。
例えば、革の鞄(かばん)。こちらの関税率は、20%前後です。他の素材でできた鞄が関税率10%前後のところ、革でできたカバンのだけが突出して高いです。
革靴の関税率はどれくらい?
では、高いといわれる革靴の関税率を確認してみましょう。確認方法は、ウェブタリフです。こちらのサイトで品目名をいれると、商品の関税率を調べられます。今回は、このサイトを使って、革製品の関税を調べていきます。なお、輸入目的は「個人使用目的」です。
下の画像をご覧ください。画面下に革製の履物に関する分類が並んでいますね。革靴は、HSコード(商品を数字で表したもの)でいうと、6403~6404に含まれます。どこに分類されるのかは、用途、本底や甲の部分の材質により異なってきます。下の画像の青文字部分(6403など)を押してみます。
上記画像の青色部分の数字を押すと、下の表が表示されます。この画面の中には、左側から「HSコード」、品物の特徴、関税率と並んでいます。紫の部分には、革製品の関税がのっていますね!緑入りが輸入する品目、紫色が対応する関税率です。紫入りの部分を見ると、多くの場合、30%や60%または、4800円の表記ですね!これが日本に革靴を輸入したときの関税率です。ただし、EPAという仕組みを利用すると、関税ゼロなどの扱いを受けられる可能性もあります。
日欧EPA×個人通販 ヨーロッパから輸入するときの関税を削減する方法
さらに下の画像をご覧ください。左側の数字(HSコード)は、赤矢印のように親子関係にあります。
例えば、640419190に属する革靴であって、メキシコで生産されたものであれば「無税」で輸入ができます。革を使っているのにです。同じ要領ですべての物をチェックしていくと、革製品であっても無税輸入ができる品があります。
革靴を生産した国 × 革靴の特徴 = 革靴にかかる関税率 革靴の関税を安くするときは、特別特恵、EPA税率をチェック
下の画像の中にある赤枠や緑枠の部分をご覧ください。これらが「革靴の関税率」を表しています。よく見ると「60%又は4800円/足のうちいずれか高い方」「30%又は4300円/足のうちいずれか高い方」という表記があります。革靴の関税は「30%又は4300円~」は、このことを言っています。
しかし、先ほどから説明している通り、この関税率は、あくまで一般的な物です。あなたが「どこの国から輸入したのか?」それが「どんな特徴の革靴なのか?」によって、支払うべき関税額は、大きく異なります。革靴の関税率は必ずしも高いわけではないことをご理解いただきたいです。このあたりの詳しい解説は「革靴を無税で輸入する方法」をご覧ください。
革靴の関税の計算方法
最後に、個人的に使用する革靴を輸入ときの関税額の計算方法を説明します。なお、革靴の関税は、必ずしも「30%又は4300円/一足のいずれか高い方」になるわけではありません。どのような革靴を輸入するのか?それをどこから輸入するのか?によって異なります。今回は、シンプルに考えるためめに「30%又は4300円/一足のいずれか高い方の関税」で計算してみます。
まずは「30%または4300円/足」に関するルールを以下の2つに分解します。ルールでは、このうち、高い方の関税額を支払います。では、以下で具体的な計算をしてみましょう。
- 課税価格の30%の関税を支払う
- 靴一足あたり4300円の関税を支払う
革靴の計算例
海外のお店(ネットショッピング含む)で40,000円の革靴が売っています。これを「個人的に使用する目的」で輸入をします。この場合、個人使用の特例制度により0.6倍ができます。
例えば、海外のお店で40000円で販売されている革靴の場合、40,000円×0.6=24,000円が課税価格になります。関税は、この課税価格に関税率をかけた額になるため、24000円の課税価格に対して、次の2つのパターンを計算します。
- 1.課税価格の30%の関税を支払う
- 2.4300円/一足
1番=24000×30%=8000円の関税額
2番=4300の関税額
1番と2番の結果、いずれか高い方の関税を支払うと決められているため、今回の革靴であれば、1番の8000円が支払うべき関税額です。
革靴の関税の決め手とは!?
【日欧EPA続報】皮革・革靴・かばんの関税は11年目撤廃
革靴の関税がかからない方法 マレーシアEPA、メキシコ協定がおススメ
革靴の関税を削減・減額するには?
革靴と言えば、高い関税率で有名です。個人使用目的、商売目的問わず発生するため注意が必要です。ただし、以下のいずれかの仕組みを使えば、高い関税率をグッと圧縮できる可能性があります。実は革靴の関税率は、合法的な法制度を使うと、ぐっと低くできる可能性があります。それが次の3つです。
- 特別特恵税率
- 関税割当
- EPA税率
1.特別特恵税利率
特別特恵税率は、別名「LDC」とも言われており、世界の中でも特に発展が遅れている地域を指します。日本政府は、革靴を含めて、これらの国で生産された産品については、ほとんどを無税にしています。
2.関税割当
関税割当とは、革靴に対する関税率を一次と二次に区分して、ある一定の数量のみに対して低い関税率を適用。一定以上の数量を超える物は、高い関税率をかす仕組みです。関税割り当てを利用する人は、毎年、募集される「割当枠」に申し込みをし、その枠を消化することにより、一定数量までを輸入できるようになっています。
詳細記事:関税割当入門
3.EPA税率
EPAとは、国と国との市場を開放してお互いの経済発展を進める仕組みです。2019年現在、日本は17のEPAを結んでおり、これらの国々とは、基本的に関税がゼロまたは定率で貿易ができるようになっています。特に革製品が有名なヨーロッパ諸国ともEPAを結んでいるため、少しでも革靴の関税率を下げたいときは、EPAを確認しましょう!ちなみに、輸入価格が20万円以下の場合、税関や国際輸送会社の方が自動的にEPAを適用してくれます。20万円を超える場合は、特定原産地証明書が必要です。
2024年4月現在 | |
発効済(利用できる国) | シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP12、TPP11、日EU・EPA、米国、英国、RCEP(韓国+中国+アセアン+オーストラリアなど) |
交渉中 | トルコ、コロンビア、GCC、日中韓 |
その他(交渉中断等) | カナダ、韓国 |
輸入価格が20万円以下におさまるときは自動的にEPAを適用してくれる(対象国の革靴のみ)
革靴の関税率を決める要素は?
革靴の関税率は、大きく分けると、次の2つの要素で決まります。
- 作られている国
- 革靴の製品特性
1.作られている国
革靴の関税の中で最も大きな影響を与えるのは「革靴の原産国」です。原産国とは、革靴の生産国です。実は、日本は、いくつかの国と自由貿易協定を結んでいます。自由貿易は、お互いの関税を無税または低減する約束です。もちろん、この自由貿易の効果は、革靴を輸入するときにも発生しています。
2019年現在、日本は17の自由貿易協定を結んでいます。そのため、このEPAを締結してる国の革靴は、他国の革靴よりも有利な税率を適用できる可能性があります。特に「革靴の関税がかからない方法」でもお伝えした通り、メキシコ生産の物や、マレーシア生産の物は、他国の物より、関税上の優遇が大きいです。
地域 | 主な国 | ||
アジア地域 | シンガポール | マレーシア | タイ |
インドネシア | ブルネイ | アセアン | |
フィリピン | ベトナム | インド | |
モンゴル | |||
オセアニア | オーストラリア | ニュージーランド(TPP) | |
北米 | カナダ(TPP) | アメリカ(日米FTA) | |
中南米 | メキシコ | ペルー | チリ |
ヨーロッパ | 日欧EPA | スイス |
2.商品特性
革靴の関税を決める2つめの条件は「製品特性」です。商品特性とは、その革靴がどんな材質で作られているのか? または、どのような目的で使用するのか?の部分です。具体的には、次の6つのポイントが革靴の関税率を決める「要素」です。
- 本底と甲の材質
- 防水性のスポーツ用
- その他のスポーツ用
- くるぶしを覆うのか
- トーキャップの有無
- 室内用で使うのか?
これら6つの観点から、ご自身が輸入される革靴を考えます。それでは、それぞれの製品特性について詳しく見ていきましょう!
1.本底と甲の材質は
革靴の特性の内、最も大きなことは「本底と甲の部分の材質」です。本底とは、下記の図の青枠です。一方、甲の部分は、図中の赤枠です。それぞれの部分が、ゴム、革、紡織用繊維などの材質により、関税率が変わります。
2.革靴は、防水性のスポーツ目的?
革靴の内、特に防水性に長けている物です。具体的には、スキー靴などが対象です。
3.その他のスポーツ目的?
スキーなどのウィンタースポーツで使う目的以外のスポーツ靴が対象です。
例えば、バレーダンスのシューズ、新体操、テニス、バスケットボール、トレーニングシューズ、その他の競技用の革靴などがこれに該当します。
4.革靴のくるぶしはどうなっている?覆っている?
革靴の内、くるぶしの部分を覆うのか?によっても区分けがあります。念のため、くるぶしを覆うタイプの革靴と、そうでないタイプをご紹介しておきます。
くるぶしを覆うタイプの革靴
くるぶしを覆わないタイプの革靴
5.つま先部分に「トーキャップ」はある?
トーキャップとは、革靴のつま先部分に入っている保護具です。つま先部分をつまんでみて、固い何かがあるときは「トーキャップで保護されている革靴」です。
6.主に室内用で使う目的の革靴?
主に室内で使うことを想定している革靴が当てはまります。一例としては「キャンバスシューズ」などです。
- 本底と甲の材質
- 防水性のスポーツ用
- その他のスポーツ用
- くるぶしを覆うか>
- トーキャップの有無
- 室内用で使うのか?
以上、6つの観点から、ご自身が輸入される革靴を考えてみましょう!
革靴関連の分類
以下の図は、革靴に関する関税要素をツリー上に表した物です。左側から同じレベルで段落ちしている要素を比べるようにして使います。緑線、紫線など、同じレベルにある要素を見比べていき、ご自身の革靴がどれに当たるのかを考えます。
革靴関連の用語
中底/中敷き
中底は、甲の部分と一体になっている所(赤線)です。その上にあるのが「中敷き」です。
コンポジションレザー
革製品の製造に適さない革クズを原料にして製造した物です。
天然もの、人工をとわず、紡織用繊維
布で構成された製品全体を指します。(織りや編みに関わらず)
甲に毛皮を使用した物
革靴の「甲」の部分に毛皮を縫い付けている物です。
各部の英語名称
各部の英語名は、次の通りです。材質がわからない場合は、購入する前にショップに確認することをお勧めします。
トーキャップ | Toe cap |
本底 | Out sole |
中敷き | Sock Lining |
中底 | Insole |
靴の関税率は?
靴の関税率も同じように、本底の材質、甲の材質、原産国によって変わります。
例えば、最も一般的である本底がゴムやプラスチックタイプ、甲の部分が紡織用繊維の物は、HSコードが640419290、関税率率は8%です。EPAや特別特恵税率などは、次の国々に設定されています。
主な国々 | 2020年現在の靴の関税率 |
アメリカ、台湾、中国、韓国など多くの国はここに該当! | 8 |
イギリス、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスなど欧州各国とTPP加盟国 | 5.8 |
オーストラリア | 2.9 |
メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、アセアン(ミャンマー等)、フィリピン、スイス、ベトナム、ペルー、バングラデシュ | 無税 |
よくある疑問
各国別の関税税率は?
原産国別の革靴の関税率は次の通りです。(外国→日本)
イギリスとアメリカ産の革靴=WTO協定税率
ヨーロッパ諸国産の革靴=日欧EPA
革靴は、一万円以下免税ルールが適用されません。
関税の計算をするときは、いくつかの条件を満たすことで、この課税価格を小さくできます。その一つが「一万円以下免税ルール」です。
一万円免税ルールは、輸入する商品の合計価格が一万円以下(個人使用のときは16000円以下)のときに、関税と消費税を免税輸入できる仕組みです。ただし、残念なことに、革製品については、この一万円以下免税ルールが除外されることになっています。詳しくは「一万円以下の物は、関税や消費税を免除する制度」をご覧ください。
ウェブタリフを使えば、簡単に革靴の関税率を調べられます。関税率表は、少し特殊な表現方法があるため、混乱される方も多いかと思います。そこで、ここでは、関税率表に書かれている理解しがたいキーワードをまとめてご紹介していきます。
共通限度数量以内の物とは?
革製品には、一定の量まで低率で輸入できる「関税割当(かんぜいわりあて)」が設定されています。この関割を使って輸入すれば、一般的に設定されている関税率よりも低く輸入ができます。ただし、基本的には、商業ベースでの輸入が前提です。(割当枠を消化しなければならないため)
まとめ
革靴の輸入は、高い関税で有名です。しかし、昔の情報をいつまでも覚えているのはよくありません。日本は積極的に経済連携協定(epa)を結んでいます。
革靴の税率は関税割り当て(年間の輸入数量を政府が決める。残数によって一次税率と二次税率を適用する方式)など複雑な制度を利用したとしも一時税率で若干安くなる程度です。しかし、これとは対照的でEPAの活用はすごいです。30%もの関税がかかる製品であっても、EPAを活用すれば無税またはわずかな税率で輸入ができます。
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