2025年3月現在、トランプ大統領は、日本を含む外国産の自動車に対して一律25%の関税をかけると発表。これを受けて、東京市場等は大幅に下落。週明けも厳しい展開が予想されております。
さて、日本とアメリカとの間には、日米貿易協定があります。今回のトランプ大統領による一方的な関税の引き上げは、この協定に違反する恐れがあります。
そこで、今回は、日米貿易協定の協定書の中身から、問題個所と輸出事業者としてできることをご紹介したいと思います。
トランプ大統領の一方的な関税引き上げ宣言!日米貿易協定はどうなる?
日米貿易協定とは何か?
まず、日米貿易協定について簡単におさらいしておきましょう。この協定は、アメリカと日本の間で締結された2国間の貿易協定です。物品の関税率(農産物や工業製品)のみを取り決めており、他のEPAよりも限定的です。この協定で注目すべき品目は、自動車関連品です。
この協定を締結することで….
アメリカ側は、日本から輸入される乗用車に対する関税(2.5%)を維持する。=新たな関税を課さない。
日本側は、アメリカ産の農産物(牛肉や豚肉などの農産物)をCPTPP並みに拡大するとの認識が、当時の政府説明や共同声明などで示されていました。

アメリカ側が一方的に25%の関税を発動ができないようにされていました。(当時から25%への引き上げの話があった)
関税強化は日米協定に違反している?
日米貿易協定上の問題だと考える点をご紹介します。なお、法律の専門家ではないため、より正確な情報は、弁護士や税関などの専門家へのご相談をお願いします。
第2条、撤廃や引き下げはあっても「引き上げ」はない。
協定の第2条では、両国が附属書に従って関税を撤廃または引き下げることが定められており、引き上げについて明示的な規定がなく、協定の趣旨に反する可能性があります。
5条、第二項のセーフガード
5条第二項では、直接、セーフガード措置に言及はないもののWTOに準ずると規定されています。WTOでは、セーフガードを発動するさいは、相手国との事前協議が義務付けられています。この点、アメリカ側の立場からのセーフガードの発動は無理があると思います。
仮にアメリカ側が国家安全保障を名目に国内法「Section 232」を適用したとしても同様です。いずれの場合も日本と協議を行わずに発動するのであれば、この条項との整合性が問われます。
WTO協定(GATT)の最恵国待遇(MFN)原則
WTO協定(GATT)の最恵国待遇(MFN)原則
に照らしても、特定国に対して差別的な関税を課す行為は国際的な通商ルール上、問題です。
関税強化が輸出者に与える影響
今回の関税引き上げは、日本から部品や完成車を輸出している中小企業、アメリカ現地法人に納品している商社、さらにはOEM供給契約を結んでいる中堅メーカーなど、さまざまな業種・規模の事業者が対象になるでしょう。
関税が引き上げられた場合、即座にコスト構造が変化し、価格競争力が著しく低下する可能性があります。その結果として、取引先の再選定、価格の再交渉、さらには生産拠点の移転を検討せざるを得ないケースも出てくるでしょう。日米間のサプライチェーンに深く組み込まれている企業にとっては、物流面や納期対応の変更など、実務的な負担が一気に高まることになります。
また、アメリカ現地での評価や契約の継続性にも影響が及ぶ可能性があり、長年にわたって構築してきたビジネス関係が揺らぐ事態も想定されます。中小企業にとって、こうした不確実性は資金繰りや人員計画にも影響するため、早期の対応が求められます。
輸出者が今できること
このような状況下において、輸出者ができることは決して少なくありません。特に中小規模の企業でも、今のうちから備えておくことで将来的なダメージを最小限に抑えることができます。
1. 日本政府の窓口に要望する
まず一つ目は、日本政府の関係窓口に対して、関税強化に関する懸念を具体的に伝えることです。日米貿易協定6条には「協議」が規定されています。
一方の締約国の要請があった場合には、締約国は、この協定の運用又は解釈に影響を及ぼすおそれのある事項について、相互に満足のいく解決に達することを目的として、要請の日から30日以内に協議を開始し、60日以内に解決を図るよう努める。
引用元:日米貿易協定の資料
経済産業省や外務省、あるいはJETRO(日本貿易振興機構)などでは、企業からの意見や事例を集め、政策立案に役立てる体制が整っています。実際に影響を受ける可能性がある事業者として、自社の立場を明確に伝えることは、政府の交渉材料としても非常に重要です。

日本政府は、6条の規定に従い、何らかの協議を開始することを願います、協議は「義務」として規定されているため、政府にはしっかりと対応してもらいたいと思います。
2. アメリカ現地のパートナー企業からアメリカ政府に伝えてもらう。
二つ目は、アメリカ現地のパートナー企業や販売業者と連携し、情報を共有することです。トランプ前大統領の政策が実行に移された場合、現地の販売業者も被害を被る可能性があります。こうした企業と協力し、州政府や議会に対して反対の意見を表明するなどのロビー活動を展開することが有効です。
3. 輸出市場の多角化を検討
三つ目として、輸出先市場の多角化を進めることも重要です。アメリカ市場への依存度を下げることは、リスク管理の観点からも賢明な判断です。近年では東南アジア、中東、アフリカ諸国など、日本製品へのニーズが高まっている地域もあり、これらの市場を新たに開拓することは中長期的な成長戦略にもつながります。
まとめ
- トランプ前大統領による関税強化は、日米貿易協定に違反する可能性がある。
- 中小輸出者にとっても、価格競争力の低下や取引停止など深刻な影響が生じる恐れがある
- 対策としては、日本政府への意見提出、現地パートナーとの連携、輸出先の多角化、現地生産の検討、情報収集の強化が有効である


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