クリーンバン
クリーンバンという言葉をご存じでしょうか?
これは国際輸送の現場で、特に食品や医薬品などの清潔性が求められる貨物に対して使用される、非常に状態の良いコンテナのことを指します。通常のコンテナとは異なり、臭いや汚れ、水濡れが一切ない“きれいなバン(コンテナ)”であることが条件です。
輸出において品質管理が重視される今、クリーンバンの指定は単なる選択肢ではなく、リスク管理や信頼構築の観点からも重要です。
この記事では、小規模な輸出事業者の方でも理解しやすいように、クリーンバンの定義から手配方法、トラブル事例、バンニング作業との関係性までを実務目線で解説していきます。
クリーンバンとは?
クリーンバンとは、内部に汚れ・臭い・水濡れ・カビなどが一切ない、非常に清潔な状態の海上コンテナのことを意味します。クリーン(clean)=清潔、バン(van)=コンテナ(貨物室)を指し、日本の現場では特に食品、医薬品、化粧品などを輸送する際に用いられます。
一般的なドライコンテナは、前回の使用用途がさまざまであり、内部に油のしみ、異臭、粉体の残留などがある場合も少なくありません。これらは貨物に直接影響を与えるリスクがあるため、特に衛生基準が厳しい製品の場合には、クリーンバンの使用が必須となるのです。
なぜクリーンバンが必要とされる?
例えば、あなたが食品を輸出しているとします。その食品が輸送中に臭いの強い貨物(例:化学薬品)と同じコンテナを使った影響で臭いが移った場合、最終顧客やバイヤーから返品・クレームを受けるリスクがあります。
また、医薬品などはGMP(適正製造基準)に基づいた管理が求められており、輸送中の清潔性も含めた品質保証体制の一環として、クリーンバンの使用が求められます。このように、クリーンバンは品質保証・衛生管理の延長線上に位置する輸送手段なのです。
クリーンバンの基準と条件とは?
クリーンバンには明確な国際規格があるわけではありませんが、実務的には次のような状態が求められます。
- コンテナ内部に油染み、水濡れ、土砂、埃などがないこと
- 異臭(例:香料、化学品臭)がないこと
- 害虫やカビの痕跡がないこと
- 床材が清潔で剥がれや腐食がないこと
- 壁面にへこみや錆が少ない、または全くないこと
新品コンテナ(新造コンテナ)であれば当然この条件を満たしますが、実際の現場では中古コンテナが主流です。そのため、コンテナ選定時にクリーンバン指定をして、現場での状態確認が非常に重要になります。
クリーンバンの指定・手配方法
クリーンバンを利用したい場合は、まず貨物のブッキング時に「クリーンバン指定」と明記することが大切です。具体的には、乙仲(通関業者やフォワーダー)に「クリーンバン希望」と伝えることで、船会社や運送会社側にその指示が流れます。
現場での確認も重要です。コンテナがデポに搬入された段階、またはドレージ会社が搬出する前に、現場担当者や運転手がコンテナの内部をチェックし、清潔状態を写真で記録することもあります。場合によっては、積み込み担当者が現場で清掃をすることもありますが、本来は事前に清潔な状態のコンテナを指定することがベストです。

必ず予約時に「クリーンバン」を指定することが重要です。
クリーンバンに関するトラブルと対策
トラブルとして多いのが「クリーンバンの指定を忘れていた」「指定はしたが、現場に伝わっていなかった」というケースです。結果として汚れたコンテナが配車され、荷主側が受け入れを拒否、積み直し対応になってしまうことがあります。
このような場合、再度ドレージ手配が必要となり、納期や費用に大きな影響を及ぼします。また、クリーンバン自体の在庫が少ない港では、希望日時に確保できないという問題もあります。
トラブル回避のためには、以下の点が有効です。
- フォワーダーに事前に明確な指示を出すこと
- 積載前に実際のコンテナをチェックする仕組みを構築すること
- 必要に応じて「写真撮影→承認」のプロセスを導入すること
クリーンバンとバンニング作業の関係
クリーンバンを使用する目的の一つに「バンニングの品質維持」があります。コンテナの床や壁が汚れていると、パレットやダンボールに汚れが付着してしまい、荷崩れや品質トラブルにつながる恐れがあります。
また、輸送後に現地でデバン(荷下ろし)をする際、清潔な状態が保たれているかどうかは、トレーサビリティや検品精度にも影響します。特にGMP準拠の輸送や、ISO取得企業にとっては、クリーンバンの利用が求められる場合があります。
クリーンバン選定時のポイントまとめ
クリーンバンは、単に“きれいなコンテナ”というだけでなく、輸送品質の確保と顧客満足、ひいてはトラブル回避に直結する重要な要素です。小規模な輸出業者であっても、品質に対する配慮が輸出継続の鍵となる時代です。輸送会社まかせにせず、自ら指定・確認することを徹底しましょう。
まとめ
- クリーンバンとは、清潔性を保った高品質なコンテナのこと
- 食品、医薬品、化粧品などの輸送で強く求められる
- 指定方法は「ブッキング時に明記→現場での確認」が基本
- トラブルを避けるためには、情報共有と写真管理が有効
- バンニング作業と品質管理においても重要な役割を果たす