国際輸送では、スチール製やアルミ製コンテナの中に貨物を入れて輸送することが一般的です。これにより、荷主は、迅速な輸送ができる上、貨物の量に関わらず、一定の輸送料金を支払えばいいです。
既述の通り、コンテナの材質は、アルミ又は鉄です。ご存じの通り、コンテナ船は、潮風を受ける海上輸送で使われるため、コンテナ自体に様々なダメージをもたらします。(水濡れなど)
自然的なダメージの他、荷主の作業により、コンテナに穴(ダメージ)をあけてしまったり、汚してしまったりすることもあります。仮に、荷主がコンテナにダメージ等を与えた場合、その責任は、誰にあるのでしょうか?
この記事では、コンテナにダメージを与えた場合の責任は誰にあるのか?、ダメージの有無を確認できるEIRについてご紹介していきます。
■結論
- EIRによりコンテナ自体のダメージを確認
- 責任は特定できないことが大半。いずれの場合も海上保険で求償する
- 船会社やそれに付随する業者に責任を問うのは不可能です!
コンテナのダメージ責任。誰が負う?
ご存知のとおり、海上コンテナは海の上をわたってきます。洋上では、自然環境の影響を強く受けます。
例えば、海洋上で、コンテナの内部温度は、太陽により50度近くになります。また台風の影響により、大波が本船を揺さぶり、コンテナ内部の貨物にダメージを与えることもあります。その他、コンテナ自体が損傷している場合は、損傷部分から海水が入り、貨物自体を汚損することもあります。
コンテナ輸送は、様々な要因によりダメージを受けることがあると考えた方が良いでしょう。ただ、実は、コンテナへのダメージは、自然的な影響だけではなく、人為的にも引き起こされることがあります。
ダメージコンテナが流通する理由
人為的なダメージとは、主にバンニングやデバンニング作業における穴や汚損などがあります。
例えば、作業員がフォークリフトの爪でコンテナに穴をあけるなどです。
- 貨物を積めるとき
- 貨物を輸送するとき
- 貨物を取り出すとき
上記3つのいずれかでダメージします。具体的な流れは、次の通りです。
- 輸出国側:船会社より空のコンテナを借りて、指定の場所へ輸送してもらう。(空のコンテナのEIR OUT発行)
- 輸出国側:指定の場所で空のコンテナに貨物を詰める
- 輸出国側:実入りコンテナを港へ搬入する(実入りコンテナのEIR IN発行)
- 輸入国側:港へ付いた貨物について輸入申告&許可
- 輸入国側:許可を受けた貨物を港から搬出します(実入りコンテナのEIR OUT発行)
- 輸入国側:指定場所へ配送後、デバンをする。
- 輸入国側:空になったコンテナを船会社へ返却します。(空のコンテナのEIR IN発行)
コンテナのダメージはEIRで管理
輸出から輸入までは様々な方が関わる為、いつの時点でコンテナにダメージが発生したのか?が重要になります。これを証明する書類が「EIR」です。
EIRは、コンテナターミナルから….
- コンテナを出したとき
- コンテナを入れるとき
の2つのタイミングで、コンテナ自体にダメージがないかを記録しています。EIR OUTがコンテナを出すときの記録。EIR INがコンテナを入れるときの記録です。この両方の記録から差を見つけて、ダメージが発生したタイミングを確認しています。
*コンテナゲートに数名が常駐していて、コンテナのダメージ状況を確認してEIRに記録しています!
ステップ1
最初にEIRが発送されるタイミングです。空コンテナが港から搬出される(船会社から荷主へ貸し出すために)さいに発行されるものです。ここで記録されるEIRは「貸出時点でコンテナのダメージあったのか」を判断するさいに役立ちます。
ステップ3
実入り状態のコンテナ(コンテナに貨物が入っている状態)を港へ搬入するときに発行されます。ここでのチェックにより、荷主がバンニング(コンテナに商品をつめること)の際に「コンテナにダメージを与えていないのか」を知ることができます。
ステップ5
海上輸送された後、港から搬出する際に発行されるEIRです。ここでのチェックにより「海上輸送中に発生したダメージなのか」を判断できます。
ステップ7
納品先でデバン(コンテナから商品を取り出すこと)が完了して、空のコンテナが港へ戻されるときに発行されるEIRです。ここでのチェックにより、納品先でのデバンニングの際に「コンテナにダメージを与えていないのか」を確認することができます。
以上の4つのタイミングによって「コンテナ自体が損傷していないのか」の確認が”しっかり?”と行われているはずです。と、言いたい所なのですが、実はここに大きな問題があります。
基本的にEIRの発行は、目視による検査の結果を反映しているため「検査員による見落とし」が発生する可能性があります。また、検査員によっても「問題がないダメージと判断する基準」が異なるため、必ずしも正確な情報がEIRに記載されるわけではありません。
特に発展途上国や中国、韓国とを結ぶコンテナ船にはご注意ください。これらの国の港においては、問題がないダメージかを判断するどころか、本当にチェック自体をしているのかも怪しいくらい大きなダメージが見つかるときがあります。このダメージは、輸入許可を受けて開梱してから気づくことが多いため、さらに厄介な問題です。
コンテナのダメージによる問題
コンテナ自体に損傷がある場合は、EIRにその旨が記載されていきます。荷主側が貨物を受け取り何らかの問題がある場合は、EIRによってある程度の判断ができます。しかし、この判断ができるのは「EIRが貨物の内容を正しく反映している場合」に限られます。
検査員の見落とによってダメージが記録されていなければ「問題がないコンテナ」として取り扱われてしまいます。また、中国や韓国を結ぶコンテナには大きなダメージが有るにも関わらずEIRに記録されていないこともあります。このような事実から、実際の現場では「水漏れによる貨物の損傷が誰の責任であるのか? 」で争うことがあります。
例えば、EIRにダメージ記録がなく、輸入した後、コンテナから商品を取り出すときに損傷の事実に気付いた場合はどうすればいいのでしょうか。船会社の言い分としては、コンテナのEIRにはダメージがないため、船会社の責任ではないといいます。
一方、荷主としては、現実問題として上から水が漏れてきて貨物が損傷している。コンテナをよく調べると、天井部分に穴が開いており、そこから水が入っている事実を確認できています。
このような場合、どちらの言い分も筋が通っているため「水掛け論」になりやすいです。そこで現実的な解決として、海上保険の会社に連絡をして、そこから先の処理をすべて任せるようにします。
貨物にダメージが発生した場合の主な対応方法
コンテナ自体の損傷により貨物にダメージが見つかった場合は、保険会社に連絡をして、その判断をあおぎます。なお、保険求償の関係があるため、外装の箱を含めて、損傷した状態のまま保管しておきます。
例えば、勝手に修正する。処分する。正常な貨物と不良品をごちゃまぜにするなどのことを行うと、保険金が支払われない可能性がでてきます。まずは、保険会社に連絡をして対応方法を確認することが重要です。
- 保険会社への連絡
- ダメージ貨物の写真撮影
- EIRの取得
- クレームノーティスの作成
1.保険会社への連絡
貨物が損傷していたことを保険会社に連絡します。今後の対応方法をいろいろと相談にのってくれます。その際に以下の情報をまとめておくとスムーズです。
- 保険証券の番号
- 事故の内容(事故が発生した状況、パッキングリスト、損傷状態(写真撮影をする)、輸送した船の本船名など)
- 貨物が保管されている場所
2.船会社からEIRの請求
貨物が損傷しているとわかった時点で、船の予約をしている所や通関業者に連絡をして船会社からEIR(コンテナの場合)を請求します。もし、コンテナ以外の小口貨物であれば、デバンニングをした倉庫から「デバンニングレポート」を取り寄せます。その中にダメージに関する記載がないのかを調べてください。
3.船会社へクレームレターを発行
船会社に対して貨物が損傷していたことを伝える「クレームレター」を英文で発行します。ある程度の期間しか認められていないため、なるべく早く行うようにしてください。このクレームレターが後日、保険の求償の際に必要です。
まとめ
コンテナ自体が損傷していることにより貨物にダメージが発生することがあります。このような場合、まずは保険会社に連絡を行い、対応方法を相談してください。併せて船会社からEIRのコピーを取得して、コンテナにダメージ記録がないかを確認してください。もし、ダメージが記録がない場合でも「EIR発行時の見落とし」の可能性があります。この場合は、現実に起きている状況を優先するようにします。
いずれの場合であっても海上保険の求償が絡むため、ダメージを受けている貨物を含めて、すべて保険会社の指示通りに行うことが大切です。
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