貿易書類の用意を終えて、いよいよ輸出手続きに入ります。この輸出手続きは、日本の税関に対して「〇〇を輸出します!」と申告することです。税関は、輸出者から申告された内容に問題がなければ「輸出の許可」を出します。これで輸出者は、外国へ荷物を送れるようになります。
本来、このような輸出手続きは、輸出者(売り手)自らが行うことが理想です。しかし、輸出手続きには、専門的な知識が必要なため「通関業者」と呼ばれる代行会社を利用することが一般的です。この輸出者が通関業者へお願いするときに使う書類が「シッピングインストラクション」です。
今回は、このシッピングインストラクションの概要や役割などについて詳しくご紹介していきます。なお、輸入業務の場合は「通貨依頼書」を添え状にして送ります。
シッピングインストラクションを使って通関業者へ依頼
輸入者との契約通りに船積み書類と品物の用意ができたら、いよいよ輸出手続きに入ります。この手続きには、大きく分けると「船の手続き」と「税関への手続き」の2つがあります。船の手続きとは、外国へ輸送するための船を手配することです。一方、税関への手続きは「◆◆の国へ〇〇を輸出する」と申告して、外国に向けて貨物を送れる状態にすることです。
実は、税関への手続きは、輸出者自らが行うこともできます。社内に税関に関する知識を持っている人がいるなら、その方にお願いをするのも一つの手です。しかし、実際は、そのような方が社内にいらっしゃるのは稀ですね。そこで、通関業者と呼ばれる専門業者へお願いをします。
通関業者とは、税関に対して輸出入の申告を代理で行う会社です。通関業者の仕事は、主に「〇〇を輸入します」や「〇〇を輸出します」と申告することです。この面倒な部分を代行してくれるため、輸出者は、通関業者に対して、貿易書類を送るだけで輸出の準備ができます。もちろん、通関業者は、申告の代理だけではありません。通関に関係する業務であれば、すべて請け負ってくれます。
例えば、外国へ貨物を送るときの船の手配、税関による検査の立ち合い、食品を輸入するときの検疫所への手続きなどがあります。輸出者は、通関業者に頼むだけで、通関処理の手続きから、船の手配までを完了できるようになっています。このような理由から、多くの輸出者は、通関業務の部分を通関業者へ依頼しています。
輸出者が通関の依頼をするときは「シッピングインストラクション」と呼ばれる書類を送付します。正確に言うと、シッピングインストラクションと通関で必要になる書類(インボイスやパッキングリスト)をセットにして送ります。
シッピングインストラクションには、輸出者の氏名、本船名、カット日(船に積み込める最終日)、貨物の物量、コンサイニー(荷受人)などの情報が書かれています。「船荷証券:貨物を船に載せた時の証明書」や「輸出申告書」は、このシッピングインストラクションの情報を基にして作成します。したがって、とても大切な書類になります。
ポイント:シッピングインストラクションは、船の手配のための書類です。インボイスやパッキングリストなども同時に送付するようにしています。
シッピングインストラクションに書かかれている情報
通関業者は、輸出者から届くシッピングインストラクションの情報を基にして、輸出申告書の作成や船の手配(輸出者が行っている場合もあります。)をします。シッピングインストラクションには、以下のような情報を記載します。輸出者は、これらの情報を一枚に紙にまとめて、通関業者へ送ります。特に注意するべきポイントは「船の運賃は、どちらが払うの?」「誰が荷受人なの?」の部分です。それぞれの項目は、コンサイニーや、FREIGHT〇〇と表示します。
項目名 | 意味 | 項目名 | 意味 |
輸出者 | 貨物を輸出する人 | 本船名 | 予約したい船の名前 |
CUT日 | 貨物を船に載せられる最終日(東京CY) | FTD | 出荷予定している日付 |
積地 | 輸出国の港名 | 揚地 | 輸入国の港の名前 |
物量 | 貨物の容積(㎥) | 予約番号 | 船の予約番号 |
コンサイニー | 貨物を受け取る人 | ケースマーク | 積荷に関する情報を掲載 |
ノーティファイパーティ | 荷物が着いたことを知らせる人 | FREIGHT PREPAID OR COLLECT | 船賃は先払い?後払い? |
SI作成上の注意ポイント
シッピングインストラクションを作成するときは、荷受人(コンサイニー)の欄に注意を払いましょう。なんとなく、コンサイニー=輸入者と考えがちです。しかし、L/C取引等をしている場合は、このコンサイニーの欄は「To Order」や「To order of shipper」となるため注意しましょう!
シッピングインストラクションの提出後
次に輸出者から通関業者へシッピングインストラクションを送付した後のお話です。通関業者(フォワーダー)は、シッピングインストラクションを受け取ると、船の予約と輸出申告書の作成をしていきます。
輸出申告書は、シッピングインストラクションと一緒に送られてきたインボイスやパッキングリストなどを参考にして作成します。また、同時に「B/L Instructions(旧:ドックレシート)」と呼ばれる書類の作成にも使います。B/L Instructions(旧:ドックレシート)は、船荷証券(B/L)の基になる書類です。これを作成した後、船会社へ差し入れることによって「B/L(船荷証券)」が発行されます。
ここまでの流れをおさらいすると、まず輸出者が「シッピングインストラクション」を作成して、通関業者へ送付します。通関業者は、受け取ったシッピングインストラクション一式を基にして、輸出申告書とB/L Instructions(旧:ドックレシート)作成します。B/L Instructions(旧:ドックレシート)の作成が終ったら、船会社へ差し入れて「船荷証券」を受け取ります。シッピングインストラクション→B/L Instructions(旧:ドックレシート)→船荷証券の流れになります。
まとめ
輸出者は、貿易書類の準備ができたらシッピングインストラクションと呼ばれる書類を作成します。シッピングインストラクションには、貨物のこと、船の運賃の支払い、荷受人の情報が書かれています。この書類に加えて、インボイスやパッキングリストを一緒に送付します。シッピングインストラクションを受け取った通関業者は、輸出申告書とB/L Instructions(旧:ドックレシート)を作成します。これが船荷証券になります。
このような流れを考えると、シッピングインストラクションは、輸出申告と船積みの基になる書類として重要であることがわかります。
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