トランプ関税の発動と共に「迂回輸出」というキーワードが注目を集めています。特に小規模な貿易事業者にとっては、知らず知らずのうちに違法行為に関与するリスクがあり、正しい理解が求められます。
この記事では、迂回輸出の定義から具体例、法的リスク、国際的な規制動向に至るまで、実務に役立つ情報を包括的に解説します。

例えば、現在、中国の工場で商品を製造し、アメリカ向けに輸出している方が、アメリカにより対中関税をかわすために第三国(例:日本含む)を経由して輸出するケースなどを想定しています。(迂回させて輸出する)
迂回輸出とは何か?(安全保障貿易管理)
「迂回輸出(うかいゆしゅつ)」とは、ある国との直接取引を避け、第三国を経由して実質的に同国に商品を輸出することです。英語では、circumvention、transshipmentなどと表現されます。目的地を偽装することで、輸出規制や高関税などを回避することが意図される場合が多く、違法となるリスクが高いです。特に2025年4月から始まっている米国による対中国の高関税を回避するための策として考えている方も多いでしょう。
しかし、トランプ政権は、このような迂回輸出を禁止しています。今後、各国に、迂回輸出させることがないよう対策を求めるでしょう。
迂回輸出が行われる理由
実際の所、迂回輸出は、意外に行われています。迂回輸出の理由は、次の通りです。
- 制裁対象国への直接輸出が禁じられている場合
- 高関税の回避を狙う場合
- 輸出入規制や為替管理を迂回する目的
迂回輸出例:輸入できないはずの日本産の農産物が市場にでている理由でもある
例えば、東南アジアのある国と日本は、植物検疫に関する協定が定まっていない為、本来、日本産の農産物は流通しないはずです。しかし、実際に市場に行くと、日本産の農産物が多数あります。この理由もまさに迂回輸出です。
米国の迂回輸出輸出防止に関する取り組み
その他、例えば、2018年以降のトランプ政権下では中国製品に高関税が課され、中国企業はベトナムやメキシコを経由してアメリカ市場に商品を供給する動きが報告されました。これも典型的な迂回輸出です。
そして2025年、トランプ大統領が再選され、輸出入政策の強硬路線が再び注目を集めています。特に、関税逃れを目的とする第三国経由の取引に対しては、「原産地規制の厳格化」や「原材料構成比率の詳細開示」など、実務レベルでの対抗措置が発表されています。
米国通商代表部(USTR)や商務省は、迂回行為が疑われる輸入品について反迂回調査(anti-circumvention investigation)を積極的に展開しており、日本を含む各国の輸出業者にとっても無視できない規制強化が進んでいます。
具体的な事例と問題点
実際に行われている迂回輸出の事例には、以下のものがあります。
- 日本企業がA国に製品を輸出し、そのA国からB国を経て最終的に制裁対象国Cへ製品が流れるケース
- 北朝鮮に対して、表向きは中国や東南アジア向けとして出荷された製品が、実質的に北朝鮮に渡る構図
- 中国系太陽光発電製品の東南アジア経由米国輸出(2023年米商務省認定)
- 中国鉄鋼のカナダ・メキシコ経由米国輸出
- 中国自転車部品のEU域内組立て販売(EUの事例)
- 中国自動車・部品メーカーのメキシコ経由北米輸出
- 中国製品のベトナム・カンボジア経由米国輸出
- 中国産溶融亜鉛めっき鉄線の「軽微変更迂回」
- 北朝鮮向け日用品の中国経由輸出
- 北朝鮮産水産物の中国経由日本輸入
- 炭素繊維の第三国経由輸出(虚偽申告)
- 北朝鮮向けニット生地の中国経由輸出
- 北朝鮮向け食品のシンガポール経由輸出
- 北朝鮮向け大型タンクローリーの韓国経由輸出
- 北朝鮮向けぜいたく品の韓国経由輸出
- 対ロシア制裁品の韓国経由輸出(2024年初の逮捕事例)
こうしたケースでは、輸出者が「最終仕向地」を認識していなかったとしても、外為法違反とみなされる可能性があります。取引書類、資金の流れ、物流のルートなどから、事実関係が問われます。

実際に普通に逮捕される可能性があることであるため、十分に注意しましょう!
迂回輸出に関する法規制と罰則
日本においては、「外国為替及び外国貿易法(外為法)」および「輸出貿易管理令(安保)」により、戦略物資や特定用途向け製品の輸出が厳しく管理されています。仮に最終仕向地が規制対象であるにもかかわらず、その事実を隠して第三国経由で輸出した場合、刑事罰や行政処分の対象です。
アメリカ、EUなども同様に、反迂回措置(anti-circumvention measures)を強化しています。米国では、制裁対象国に関する輸出管理違反は非常に厳しく、罰金や禁固刑に至るケースもあります。トランプ政権はこれまで、ベトナム経由の鋼材や電子部品などに対して反迂回関税を適用した例があります。

CISTEC(安全保障貿易情報センター)が提供する最新のガイドラインに注視しましょう
小規模事業者が注意すべきポイント
小規模事業者でも、以下の点に注意することが重要です。
- 普段は輸入しかしていない。いきなり輸出を始めた。
- 相手国の規制、関税を回避する為に安易な迂回輸出に応じない。
- 最終仕向地を確認し、書類で記録を残す
- 取引先の信用調査を行い、経由地の物流に不自然さがないか検討する
- 輸出管理の専門家やJETRO、商工会議所などの相談窓口を活用する
とくに、「よくわからないが相手に任せている」という姿勢が最も危険です。知らなかったでは済まされない時代に入っていることを認識しましょう。
【保存版】eBay輸出でも違反になる?知らずに法令違反を防ぐための実践ガイド
まとめチェックポイント
- 迂回輸出とは、第三国経由で目的国に輸出する行為
- 外為法や国際的な制裁法に違反する可能性がある
- 最終仕向地の確認が不可欠
- 特に北朝鮮、中国、ロシアなどとの間で規制が強化されている
- トランプ政権は関税引き上げと合わせて、迂回輸出への取り締まりを強化している
- 小規模事業者は専門機関のサポートを受けるのが安全



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