非関税障壁とは何か?
米国のトランプ大統領によりクローズアップされている非関税障壁。一部のネットやメディアなどは、非関税障壁=消費税(輸出免税)と伝えることがあるようです。ですが、実際の非関税障壁とは、もう少し広義です。
非関税障壁とは、関税以外の貿易取引の障害となる、あらゆる制度、仕組み、慣習等です。
例えば、
- この商品にはラベルが必要(不必要に厳しいラベル規制)
- 成分証明ができていない。
- 現地で認められていない素材が使われている
- 不合理な基準を設けているなど
- 車両の品質基準(耐性基準が高すぎる)
- 規格基準が高すぎる。
- 過度な技術情報の開示義務
など、様々なルールや慣習等により、関税以外の部分で流通を阻害することを指します。お金以外の部分で実質的に規制している全ての物だと考えればいいでしょう。
しかも、こうした制度の違いや規制の存在は、事前に知っていれば防げるものが多くあります。副業レベルの小さな輸出、たとえばネットショップで月に数件の海外発送をしているような方でも、非関税障壁によって商品が返送されたり、販売停止になったりするリスクが現実にあります。
このような背景から、この記事では輸出ビジネスをこれから始めたい方、またはすでに少しずつ始めている方に向けて、非関税障壁とは何か、その種類と事例、さらには小規模でも取れる対策について、できるだけわかりやすく解説していきます。
非関税障壁って何?関税との違い
お金の壁じゃなくて「制度の壁」
非関税障壁とは、価格ではなくルールや手続きで輸入を制限する全ての制度、ルール、慣習です。(検査・ラベル表示・認証・衛生基準・現地の書類など)関税とは異なり、気づかないうちに”壁”に当たることが多いです。
この壁は、各国ごとに異なり、表に現れやすい物から、奥深くに根付く物まで様々です。これらの総称が【非関税障壁】です。米大統領、トランプ氏が指摘する非関税障壁の一言には、実は、様々な物が含まれている可能性があると考えても良いでしょう。
例:輸出消費税の還付制度の見直し、アメリカ車の流通を阻害する日本の規格基準、道路交通ルール、車検制度など。
小さな貿易ビジネスでよくある非関税障壁の例
既述の通り、非関税障壁には様々な物があります。ここでは、よくある非関税障壁をいくつかご紹介します。
アメリカで問題になりやすい非関税障壁
アメリカでは、特に食品・化粧品・サプリメントに関してFDA(米国食品医薬品局)への登録義務があります。たとえ日本国内で「ただの食品」や「化粧品」として販売していても、アメリカでは“医薬品扱い”とされてしまうことがあり、その場合、事前審査や認証がなければ通関できません。
CPSIA(消費者製品安全改善法)
CPSIA(消費者製品安全改善法)によって、ベビー用品や玩具には鉛含有量などの基準があり、検査証明が必要です。さらに、原産地表示のルールも細かく、日本で一般的な表記がそのままではNGになることもあります。Amazon FBAなどを利用する輸出者も、この点でアカウント停止や返品のリスクを抱えています。

輸入は可能だが販売には追加認証が必要など
食品・飲料の成分規制にひっかかる
日本で普通に使われている食品添加物や調味料でも、輸出先の国では使用が禁止されていたり、厳しく規制されていたりするケースがあります。
例えば、梅干しや漬物に含まれる保存料が問題視されたり、日本茶のカフェイン量に制限がかかる国もあります。健康や安全に関わるため、審査が厳しく、事前の確認が不可欠です。
逆に日本に輸入する場合なら、食品輸入の現場では…
- 海外で認められている成分や添加物が禁止されている
- 禁止されていなくても独自の厳しい使用基準がある。
など、関税以外の部分で厳しいルールや不合理な仕組みや慣習等を設けて、実質的に海外産の商品が流通しないようにするなどがあります。(バターの調整金など)
化粧品やサプリが医薬品扱いになる
日本では「化粧品」や「健康食品」として販売しているものでも、国によっては医薬品として扱われ、販売許可が必要になるケースがあります。特にサプリメントは、ビタミン含有量や配合成分によって規制対象になることが多いです。当然、この逆もしかりです。
ラベル・言語表示の規制が厳しい。
EUやアメリカでは、食品や化粧品に「現地語」の成分表示や使用方法が必要です。英語のラベルだけではNGになるケースもあり、税関で止まったり、返品される原因になります。
現地で必要な「マーク」や「認証」がない
電化製品やバッテリー、ベビー用品などでは、国ごとに必要な認証(CEマーク、FCCマーク、PSEなど)が決まっています。この基準に不合理性が含まれていることがあります。

認証の基準そのものも非関税障壁と指摘されることがあります。つまり、他国産品に不利になる基準を設けることで、認証マークの取得をし難くし、結果、他国産の商品が流通しないようにするなどです。
各国に存在する非関税障壁の例
下記の他、発展途上国では、現地税関による汚職などの仕組みも非関税障壁の一種だと考えても良いでしょう。
ベトナム |
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中国 |
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アメリカ |
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韓国 |
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インド |
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インドネシア |
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EU(欧州連合) |
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タイ |
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シンガポール |
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ブラジル |
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対策は?小規模でもできる現実的な方法
まず「何がNGか」を調べよう
自分の商品が輸出先でどう扱われるのか。たとえば、化粧品か雑貨かで、ルールは大きく異なります。輸出先国の税関サイトや、JETRO・貿易支援サイトで基礎情報を確認するのが第一歩です。
無料で相談できる窓口を活用する
JETRO、商工会議所、中小機構などでは、無料で専門家に相談できます。「この商品、輸出できる?」「どんな書類が必要?」というレベルでも丁寧に対応してもらえます。
小さく始めて、実績で慣れる
いきなり大量に送るのではなく、まずは少量・限定品などでテスト輸出をすると、制度面での問題点にも気づきやすくなります。最初は現地プラットフォーム(Shopeeなど)を使うのも有効です。
参考情報:EPA(経済連携協定)を使うと関税も安くなる
日本は多くの国とFTA・EPAを結んでおり、原産地証明があれば関税がゼロまたは低くなることも。一部協定では手続き簡素化や通関円滑化の協力が含まれます。

TBT章、SPS章(技術・衛生のルール調整)、相互承認制度などの紹介
まとめ
- 非関税障壁は「制度の壁」。価格以外の理由で通関できないこともある
- ラベル、言語、書類不足、認証不足などがよくあるつまずきポイント
- 小規模ビジネスこそ、事前準備と無料相談の活用が大切
- 少量テストやEPAの活用で、リスクを減らしながら始められる



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