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国際郵便で偽物が届いたら?答申書に学ぶ課税対応とリスク管理【答申第86号】

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国際郵便で偽物が届いたら?

本記事では、国際郵便で輸入した商品が偽物であった場合に関する関税等不服審査会の答申書(答申第86号)をもとに、貿易事業者として知っておくべきリスクと実務対応について解説します。特にオークションや個人取引での輸入が増える中、輸入後に偽物と判明した場合にどのような課税が行われ、どのような対応を取るべきかを理解する上で有用です。

この答申事例を通じて、課税価格の決定方法、関税の払戻し制度の活用、偽物や不良品発覚時の対応、不服申立ての限界など、実務上の注意点を整理します。

事案の経緯と争点整理

本件は、個人が海外オークションサイトで購入したスニーカーについて、国際郵便で輸入したところ、課税通知を受け、その後商品を開封した結果「偽物」であったことが判明したというケースです。審査請求人は、すでに税金を支払ったうえで商品を受け取り、偽物であったため売主に返送し、クレジットカード会社を通じて返金も受けていました。

しかし、課税そのものが無効になることはないとして、税関および不服審査会はその主張の一部を棄却しつつも、課税価格の一部修正により課税額の一部を減額する判断を下しました。

争点は以下の3点です。

  1. 偽物に対して課税がされることの妥当性です。審査請求人は「偽物は無価値であるため、課税すべきではない」と主張しました。
  2. 課税価格の決定方法であり、税関が何をもって価格を認定したのか
  3. 返品された商品にかかった関税の払戻し、いわゆる戻し税制度の適用可能性です。

輸入貨物の課税価格決定の原則

答申書は、課税価格の算定について、原則として「実際に支払われた価格」を基準にすることを明記しています。これは関税定率法第4条第1項に基づくもので、「輸入取引がされた時に現実に支払われた価格」が基本となります。本件では、税関告知書に記載された金額と、オンライン決済システムでの送金金額が一致していたため、それが課税根拠とされました。

審査会は、商品が返品されており、当初の課税価格(税関告知書記載額)ではなく、送金確認通知に記載された価格のほうがより正確であると判断し、課税価格の算定根拠を修正し、結果的に課税額の一部を減額するよう答申しました。これは、関税定率法第4条特殊な輸入貨物に係る課税価格の決定)の規定に基づいています。

問題は、その後に偽物と判明し返金を受けたことによって課税価格が無効になるかどうかです。審査会は、「商品が偽物であるか否かの確証がない」かつ「税関における検査で偽物と判断されていない」ことを理由に、課税価格の見直しは困難であると判断しています。

このように、輸入者側で返金や返品の事実があったとしても、税関にとっては課税価格の正当性を否定する証拠にはならず、特別な資料や法的根拠がなければ価格修正は認められません。

偽物・不良品発覚時の対応

偽物や不良品を受け取った場合、最も重要なのは「税関に相談するタイミング」です。今回の事例でも、審査請求人は事前に「偽物の可能性があるので確認したい」と申し出ていたものの、税関が確認に関与していないため、正式な証拠にはなりませんでした。

また、偽物の認定は税関が行うものであり、購入者が「これは偽物だ」と主張しても、それだけでは課税取消しの理由にはなりません。さらに、返品後には物品の確認が不可能となるため、証拠保全が極めて重要です。可能であれば、商品を開封せずに税関に持ち込む、または開封時の状況を動画・写真で記録することが望ましいです。

税関が正式に「輸入禁止物品」と判断すれば、課税は行われず、場合によっては没収または廃棄の処理が行われます。

詳細解説:日本に輸入できないもの(禁止)・規制されている物と条件を徹底解説

関税の払戻し(戻し税制度)の活用

関税定率法第20条は、返品や廃棄された貨物について、一定の条件のもとで納付済み関税の払戻しを認めています。本件の答申書でも、「返送前に所定の手続きをしていれば、戻し税制度の対象となった可能性がある」と明記されています。

しかし、実際には、審査請求人は制度を理解しないまま、商品を返送してしまっており、結果的に払戻しの対象にはなりませんでした。国際郵便物課税通知書の裏面には制度の案内が記載されていましたが、個人輸入者にとっては分かりづらく、制度の存在に気づかないまま行動してしまうケースも少なくありません。

事業者の場合であれば、返品や廃棄処理の判断を行う担当者が制度を把握していないと、回収可能な税金を放棄することにもつながりかねません。

不服申立て・審査請求の限界と留意点

不服申立てには、明確な証拠と法的根拠が必要です。単に「偽物だったから返金された」「返品したから課税は不当だ」という主張だけでは、税関や審査会を動かすことはできません。

また、クレジットカード会社が返金に応じた事実は、必ずしも商品が偽物であることの法的証明にはなりません。カード会社はあくまで独自のルールに基づいて判断しているため、それが課税価格を否定する根拠にはならないというのが、審査会の見解です。

関税に関する不服申立ては「感情」ではなく「証拠と法律」で行う必要があり、申立ての準備とタイミングには十分注意すべきです。

実務への示唆と今後の対応策

この答申書が示す最大の教訓は、「トラブルが発生する前に税関と連携を取ること」の重要性です。偽物や不良品の可能性がある場合は、商品を受け取る前に税関に相談し、必要に応じて検査や確認の機会を設けることが、損失を最小化する鍵です。

また、事業者であれば、購入から輸入、受領、検品、返品、払戻しまでの一連の流れにおけるマニュアル整備が必要です。担当者が制度を理解していなければ、払い戻しの機会を逃したり、不服申立てに失敗したりする可能性があります。さらに、顧客との取引においても、返品処理に伴う税金の扱いを事前に把握しておくことで、信頼性ある対応が可能になります。

トラブル対応において最も避けるべきは、「後手に回ること」です。輸入者自身が制度を理解し、タイミングよく対応する体制づくりが必要です。

今回の記事を通し、改めて無知は、多大な費用負担につながるリスクがあるとわかります。「そんなの知らなかった」と、どれだけ主張しても後の祭りです。

分科会の答申書から学べること

まとめ

  • 税関による課税価格の決定は「現実の支払価格」が原則
  • 偽物か否かの主張には証拠と税関の判断が不可欠
  • 返品・廃棄前に税関へ相談すれば関税の払戻しが可能
  • 不服申立てには法的根拠と証拠の提示が必須
  • トラブル時は税関・通関業者と連携し、制度理解を徹底する
  • 課税額の一部減額が認められる場合でも、その根拠は明確にする必要がある

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