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輸入価格は税関に疑われる?冷凍豚肉の通関トラブルから学ぶ実務対策【答申第105号】

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冷凍豚肉の通関トラブル

本記事では、冷凍豚肉の輸入価格に対する税関からの指摘と、それに対する審査請求が棄却された不服審査答申(答申第105号)を題材に、輸入実務における価格設定と証拠資料の重要性について解説します。特に、小規模事業者の方が陥りがちな「価格の説明ができない状態」をどう避けるべきか、具体的な改善策を提示していきます。

答申書の概要と実務上の意義

今回取り上げるのは、冷凍豚肉を輸入していた事業者が「1キログラムあたり524円」として申告した価格について、税関が疑義を持ち、課税価格を再計算して更正処分を行い、過少申告加算税も賦課したという事案です。

輸入者はこれに不服を申し立てましたが、審査請求は最終的に棄却されました。このケースは、インボイス価格と実際の支払い実績との関係、国内販売価格との整合性、税関調査に対する対応の重要性を端的に示しています。

価格をめぐるトラブルの経緯

輸入者は冷凍豚肉をすべてE社という国内企業に販売しており、その再販売先も判明していました。税関は調査により、E社の再販売価格が1キログラムあたり200円台から400円台であるにもかかわらず、輸入者がE社に請求した金額が564円であった点に着目します。この価格は申告価格の524円よりも高く、しかもE社からの実際の支払額は564円を下回っていました。帳簿上の処理も曖昧で、送金の実態や契約の裏付けも不十分だったため、税関はインボイス価格に真実性がないと判断しました。

さらに、すべての部位に同一の申告価格(524円)を適用していた点も不自然とされ、輸入価格の妥当性への疑義が深まりました。そのため、税関はE社の再販売先価格から必要な経費を差し引いて課税価格を再計算し、加算税を含めて更正処分を行ったのです。

輸入価格よりも国内販売価格の方が安いので不自然。通常なら、輸入価格国内販売価格になるはずとの見解です。税関は、この国内販売価格と輸入価格との関係から疑義を持ったということです。

インボイス価格の真実性をどう証明するか

輸入申告における「課税価格」は、原則として実際に支払った、あるいは支払うべき価格に基づきます。しかし、この価格に疑義が生じた場合、その合理性を説明する責任は輸入者にあります。具体的には、契約書、送金記録、買掛帳、会計帳簿などを整備し、申告価格が実際の商取引に基づいたものであると税関に説明できなければなりません。

今回のケースでは、送金の時期・金額・対象貨物との対応関係が不明確で、どの送金がどの輸入契約に基づくものかを特定できなかったため、インボイス価格の信憑性が否定されました。税関は「説明可能な根拠がない限り、インボイス価格を採用できない」と明確に述べています。

インボイス価格が認められない場合、税関は関税定率法に基づき、同種・類似貨物の取引価格、国内販売価格、製造原価などの順に課税価格を決定しますが、これらも確認できない場合は、実際の再販売価格等から推計課税が行われます。

根拠:税関の課税価格の決定原則を参照

国内販売価格との乖離リスク

もう一つの焦点は、国内販売価格との整合性です。輸入価格と国内での販売価格に大きな乖離がある場合、税関は「価格操作」の可能性を疑います。今回は、輸入者がE社に対して高額で請求し、E社がさらに安価で再販売していたため、「帳簿上の請求価格」が商取引実態と合致していないと判断されました。

また、取引開始から短期間で多額の売掛金が発生していた点も不自然とされ、帳簿処理の信頼性に疑問が持たれました。こうした事実の積み重ねが、税関による推計課税を招いたのです。

一律価格設定の落とし穴

すべての豚肉部位を「1キログラムあたり524円」と一律で申告していた点も、税関の疑念を強めました。本来、部位や取引条件によって価格は変動するのが自然であり、それを無視した画一的な申告は「意図的な価格調整」と見なされるおそれがあります。市場価格や調達コストに即した価格設定が不可欠です。

税関が価格操作を疑う典型例には、今回のような一律価格設定、帳簿価格と実際の取引実態との乖離、資金の流れが不自然なケースなどがあります。

調査対応で信頼を損なわないために

税関調査の際、資料の提示や説明を拒否したり、曖昧な回答をしたりすると、信頼性が大きく損なわれます。今回のケースでも、資料の未提出や説明不足が決定的なマイナス要因となりました。調査時には、どのような書類が求められるかを事前に想定し、準備しておくことが非常に重要です。輸入者としての説明責任を果たす姿勢が求められます。

また、税関が「疑義が解明されない貨物」と判断する場合、申告価格の否認が行われます。この状態に陥らないためには、帳簿・送金記録・契約などの整合性を常に保つ必要があります。特に実際の銀行の出金記録と輸入書類をペアで保管することが非常に重要です。

加算税を避けるための管理体制

過少申告加算税は、故意でなくても「申告ミス」によって課されます。税関に指摘された価格差について、合理的な説明や証拠が提示できなければ、「正当な理由がない」とされ、加算税がそのまま賦課されます。今回の審査請求人は、「事情を理解していなかった」「価格の根拠はあった」と主張しましたが、それを裏付ける書類がなかったため認められませんでした。

過少申告加算税の「正当な理由」とは、最高裁判例によれば「納税者の責めに帰することのできない客観的事情がある場合」のみに限定されます。単なる勘違いや記録の不備では正当な理由と認められません。

実務で取り組むべき対策

インボイスや契約書、送金記録の整備はもちろんのこと、価格決定の透明性を高めるための体制づくりが重要です。税関からの調査が入っても問題がないように、定期的に帳簿や証拠資料の点検を行い、申告価格の根拠がすぐに説明できるようにしておきましょう。

また、輸入した商品の国内での販売価格や取引先の動向も把握し、申告価格との整合性が取れているかを見直す習慣が必要です。

販売先との資本関係や契約条件の明確化も重要な視点です。たとえ独立した法人同士でも、取引の透明性が担保されていなければ、税関から疑義を持たれる可能性があります。

分科会の答申書から学べること

まとめ(箇条書き)

  • インボイス価格の真実性を証明するには、契約書・送金記録・帳簿の整備が不可欠です
  • 一律価格や販売価格との乖離は税関からの疑念を招くリスクがあります
  • 税関調査には誠実・迅速に対応し、説明責任を果たす姿勢を持つことが重要です
  • 加算税を回避するには、日頃から「根拠ある申告」を徹底する体制が必要です
  • 定期的な価格設定の見直しと帳簿管理を行うことでリスクを低減できます
  • 課税価格は法的手順に従って決定され、インボイス価格が否認された場合の備えも重要
  • 正当な理由の範囲は狭く、客観的事情がなければ認められません

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