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グループ企業取引で注意!買付代理人が”売手”と判断された理由とは?【答申第99号】

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買付代理人が”売手”と判断された理由

はじめに

この記事では、平成25年10月16日付の「関税等不服審査会 答申第99号」を題材に、関税評価および申告において貿易事業者が押さえるべき実務ポイントを解説します。特に、形式的には買付代理人とされていた企業が、関税評価上は「売手」と判断された事案を通じて、形式と実態の乖離がもたらすリスクや、ロイヤルティ・手数料の課税価格への影響について学べます。

この答申は、グループ企業間で行われる輸入取引における関税申告の実務に対して、税関がいかに厳密な視点で実態を分析しているかを示した貴重な事例です。読者の皆様にとって、自社取引スキームの見直しや申告書類の整備に役立つ内容となっています。

事案の概要と争点整理

この事案では、衣料品を扱うグループ企業の一員である輸入者が、関税の更正処分と過少申告加算税の賦課決定を受け、これを不服として審査請求を行いました。主な取引構造としては、輸入者がグループ企業の一社(C社)と買付代理人契約を締結し、別会社(F社)にはロイヤルティを支払っていたというものです。

しかし、税関はこのスキームに疑義を持ち、C社を実態的な「売手」と判断。F社へのロイヤルティについても輸入取引の条件に該当すると認定し、課税価格への加算を決定しました。

審査請求人の主張と税関判断の対比

輸入者側は、「C社は買付代理人として行動しており、取引の売手は製造者である」と主張しました。買付手数料であることを強調し、C社はリスクも所有権も負っていないと主張。また、F社に支払うロイヤルティについても「輸入取引とは無関係なブランド使用料」であり、「輸入取引の条件ではない」との立場でした。

これに対し、税関と審査会は、書類上の表示よりも実態を重視。C社が製造者との価格交渉や発注、貨物の支払を実質的に担っており、注文書やインボイスの発行元である点を踏まえ「C社は売手」と認定しました。ロイヤルティについても、F社とC社の特殊関係やライセンス契約上の調達制限から、「輸入取引の条件に該当する」と判断されています。

判例・通達に基づいた判断基準

審査会の判断は、関税定率法、関税評価協定、そして関税定率法基本通達の解釈に基づいています。特に以下の点が根拠となりました。

  • 定率法第4条:課税価格の定義と加算項目の明記
  • 基本通達4-1および4-2:買手・売手の認定基準として、「計算と危険負担」「品質や数量の決定主体」等を重視すること
  • 東京地裁平成23年判決および東京高裁平成24年判決:形式的な契約ではなく、実態に基づき売手を判断すべきとする先例

また、関税評価協定第17条の「文書の真実性を税関が確認する権限」を根拠に、書類形式にとらわれない実態評価が正当化されています。

実務で学ぶべき主要ポイント

「売手」「買手」認定に関する実務上の注意点

税関は、契約書上の記載や名称だけで売手・買手を判断しません。本件では、輸入者とC社が形式上「買付代理人契約」を締結していたにもかかわらず、C社の行動実態から「売手」と認定されました。決定的だったのは、次のような取引実態です。

輸入者が発注した後、C社が製造者に別注文を行い、製造者がC社宛にインボイスを発行していた点、貨物代金も一度C社が立て替えていた点、さらにC社が発行した注文書やインボイスが事実上の売買契約の流れを構成していた点が挙げられます。

税関は、注文・決済・瑕疵処理・所有権移転といった要素をすべて実態として分析し、「売手」との認定に至ったのです。

買付手数料の扱いとその除外要件

関税定率法では、輸入取引に関連して支払う手数料のうち、一定条件を満たす「買付手数料」は課税価格に含めないことが認められています。しかし、その除外が認められるには以下の要件が必要です。

  • 買手の管理下で業務が行われていること
  • 買手の計算と危険負担の下にあること

本件では、C社が製造者への発注・代金支払い・価格交渉を独自に行っていたことが確認されており、税関はこれを「買付手数料ではない」と認定しました。結果的に、5%相当の手数料が課税価格に含まれるべきとされました。

ロイヤルティの課税価格算入基準

輸入貨物に関して支払うロイヤルティが課税価格に含まれるかどうかは、次の2点が判断基準です。

  1. 輸入取引の条件として支払われているかどうか
  2. 支払先が売手と特殊関係にあるかどうか

本件では、F社はC社と取締役を共有しており、かつライセンス契約上、輸入者はF社が指定する供給元(C社)以外からの調達ができない仕組みとなっていました。この制限が「輸入取引の条件」に該当すると判断され、ロイヤルティの全額が課税価格に加算されることとなりました。

書類・契約管理と申告実務への教訓

税関は、関税評価において「形式的な契約や表現」ではなく、「実質的な取引の流れ」を重視します。したがって、以下のような実務対応が必要です。

  • 注文書には実際の製造者名を明記し、流通経路が可視化できるようにする
  • インボイスに「買手の計算と危険負担である」旨が反映されているか確認する
  • C社等の中間業者が自己資金で先払いしていないか確認し、資金フローを文書化しておく
  • ライセンス契約に調達制限があれば、申告への影響を評価しておく

特に、税関調査後に契約を遡及して締結・修正したような対応は極めてリスクが高く、コンプライアンス体制の不備としてみなされる可能性があります。

答申書から導かれるコンプライアンス上の教訓

この答申書から明らかになったのは、形式的な「買付代理人契約」や「独立関係」の主張では通用せず、税関はあくまで実態に即して課税評価を行うという厳しい姿勢です。特にグループ企業間の取引では、以下の点に注意が必要です。

  • 関係会社間での取引スキームは、第三者基準で合理的に説明できる内容であるか
  • ライセンス契約が仕入先や供給ルートを事実上制限していないか
  • 輸入者側が真の意思決定権を持っているかどうか

さらに、関税評価に関する通達や過去の判例・答申も、社内で定期的に情報収集し、実務に反映する体制が求められます。

分科会の答申書から学べること

まとめ

今回の答申事例は、書類上「代理人」として記載されていても、実態が「売手」であれば、課税価格の計算にも大きく影響することを示しています。形式と実態が一致していない申告は、税関によって否認され、結果として追徴課税や加算税のリスクを招くことになります。

今後、グループ会社間での取引を含め、輸入スキームの構築や申告の整合性を高めるためにも、以下の点を意識した実務対応が重要です。

  • 申告の形式と実態が一致しているかを常に点検する
  • 「買付手数料」「ロイヤルティ」の定義を正しく理解し、資料を整備する
  • 契約書だけでなく、決済や貨物移動の流れも申告内容と整合させる
  • 実態判断に基づいた通達・判例を社内で共有し、教育体制を強化する

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