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直線開刃ナイフは輸入NG?「刀剣類」認定の実例から学ぶ通関リスクと対応策【答申第107号】

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直線開刃ナイフは輸入NG?

海外から輸入したナイフが税関で差し止められた。しかもその理由が、「直線的に刃が出るナイフは飛出しナイフ=刀剣類に該当する可能性がある」というものだったとしたら、あなたならどう対応しますか?

本記事では、銃刀法と関税法が関係する答申書(答申第107号)をもとに、貿易事業者が輸入時に注意すべきリスクや対応方法を詳しく解説します。形状や仕様が微妙な製品を扱う場合、輸入前にどこまで確認すべきか、実務的な判断基準を共有します。

税関で止められたナイフは「刀剣類」だった?

この事案では、日本の事業者が海外からナイフを輸入しようとしたところ、税関で差し止めを受けました。その理由は、ナイフの構造が銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)における「飛出しナイフ」に該当すると判断されたからです。ナイフはボタンやスライドで刃が直線的に飛び出す構造で、刃渡りは5.5センチメートルを超えていました。

事業者は、直線的に開刃するナイフは、法文中の「45度以上に開刃」という表現に当たらないとして、処分の取り消しを求めました。

しかし、審査会はこれを退け、ナイフは社会通念上、飛出しナイフの形態・実質を備えていると判断。最終的に「刀剣類」に該当すると認定されました。

飛出しナイフの判断基準とは?

銃刀法でいう「飛出しナイフ」とは、刃渡りが一定以上で、刃が自動で飛び出し、かつ固定される仕組みを持つナイフです。今回の事例では、回転して刃が飛び出すのではなく、直線的に押し出す形式でした。

審査会では、回転か直線かは重要ではなく、「危険性が同等である以上、直線式でも規制対象に含まれるべき」という判断が下されました。さらに、立法当時の国会議論の記録も示され、「45度以上に自動的に開刃する」という要件は、回転を必須とする趣旨ではないことも明確にされています。

具体的に、以下の要素が「刀剣類」に該当するか否かの判断材料とされました。

  • 刃体の材質(炭素含有量が0.03〜1.7%の鋼であるか)
  • 刃渡り(5.5cm以上)
  • 自動で刃が開く機構の有無(ボタン・スライドスイッチ)
  • 開刃後に固定する装置があるかどうか
  • 鋼質性・切断能力などの実質的な「刃物性」

所持許可と美術品登録の違い

この事案では、審査請求人が「飛出しナイフは日本刀のような美術品ではないため、そもそも所持許可制度の対象外である」と主張していました。たしかに、教育委員会による「美術品登録制度」では、玉鋼を使用し、伝統的な製法による日本刀などが対象です。

一方、公安委員会の「所持許可制度」は、銃刀法に基づき、現代製の実用品や危険性を持つ刃物(飛出しナイフなど)も含めた広範な刀剣類を対象としています。審査会では、教育委員会の登録制度はこの事案と関係がなく、公安委員会の許可が必要であることが明確に示されました。

判例が支える行政解釈の一貫性

この答申書では、過去の最高裁判決や東京高裁判決なども引用されています。

例えば、「刀剣類に該当するには、形態と実質の両方を備える必要がある」とした判例や、「鋼質性の材料で切断能力があることが重要」とした下級審の判断などが挙げられています。

これらの積み重ねによって、行政解釈は一貫性を持って形成されており、税関や警察庁の運用もそれに基づいています。このため、単に法文を読んで「回転していないから該当しない」などと判断するのは危険です。

行政手続の流れを把握しよう

今回のケースでは、以下のような手続きの流れがありました。

  1. 税関での開披検査 → 刀剣類の疑い
  2. 所持許可の有無を名宛人に照会
  3. 税関から警察庁へ認定依頼
  4. 警察庁が「飛出しナイフ」と認定
  5. 税関が輸入者へ処分通知(差止め)
  6. 輸入者が審査請求を提出
  7. 審査会が審査し、処分妥当と判断

このように、税関対応だけでなく、関係省庁との連携や不服申立ても含めた流れを理解しておくことで、実務上の備えがしやすくなります。

不服申立ての限界と実務的対応

今回の事例では、輸入者が税関の処分に対して不服を申し立てましたが、結果として審査会は税関の判断を支持しました。つまり、審査請求制度があるとはいえ、法解釈の枠を超えて認定を覆すのは難しいという現実があるということです。

審査請求人の主張には一理ある点もありましたが、「刃が直線的に出る場合は45度以上とは言えない」という主張に対しては、法令の趣旨・判例・所管官庁の見解を踏まえ、広く飛出しナイフに該当するとされました。これにより、行政庁の判断は一貫性と実務運用の妥当性が優先された形です。

したがって、グレーゾーンの製品について「法文上書いてないから大丈夫」という認識は非常に危険であり、実務では所管省庁と税関の解釈・運用の一貫性も考慮した行動が求められます。

分科会の答申書から学べること

まとめ:貿易事業者が学ぶべき5つの教訓

  • 輸入品の構造や性能が他法令に該当しないか事前に確認すること
  • 所持許可制度が存在しない製品は輸入そのものが不可能な場合がある
  • 「輸入承認書=通関OK」とは限らない。他法令の適用があることを忘れない
  • 関係法令の文言だけでなく、立法趣旨や判例、行政解釈を踏まえた理解が必要
  • グレーゾーンの製品は、事前に所管官庁・税関への照会・確認を行うことがリスク回避につながる

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