サプライヤー証明書とは、商品に含まれる原材料部分の原産性(日本産)を証明する書類です。具体的には、部材等のメーカーが納品先(最終完成品のメーカー)に対して、自社商品が原産ルール上の原産品であることを証明するときに使います。
今回は「サプライヤー証明書」の概要、発行するときの注意点などをお伝えします。フォーマットもダウンロード可能です。
サプライヤー証明書とは?フォーマットあり!
サプライヤー証明書とは、EPA(経済協定上)を適用する際、その商品が「域内原産品であること」を証明する書類の一種です。具体的には、日本商工会議所に申請する際に必要となる「対比表」や「ワークシート」の内容を立証するときに使います。
サプライヤー証明書を理解するためには、以下4つの用語の理解がいります。
- 最終完成品
- 最終完成品のメーカー
- 部材(部品)
- 部材メーカー(サプライヤー)
用語 | 意味 |
最終完成品 | 部材(部品・原料)をまとめて一つにした物→車、完成品の化粧、食べ物など |
最終完成品のメーカー | 最終完成品を製造するメーカー |
部材(部品) | 完成品を構成する原料料→ 例:ケーキ→小麦粉、卵、牛乳 |
部材メーカー(サプライヤー) | 最終完成品に使う部材を納入するメーカー |
サプライヤー証明書は、部材メーカーが最終完成品のメーカーに対して、納品した部材が原産品であることを証明する書類です。(部材メーカーから最終完成品メーカーに対して発行)
最終メーカーとサプライヤー証明書の関係
最終メーカーは、発行を受けたサプライヤー証明書を根拠書類の一つとして「対比表」又は「ワークシート」を作成して、日本商工会議所に申請。審査に終了すると、特定原産地証明書の発行を受けられます。これがサプライヤー証明書、最終メーカー、特定原産地証明書の関係です。
例えば、最終完成品のメーカーの立場だとしましょう!(日本商工会議所に申請をする企業)この場合、まずは最終完成品に使われる原材料をリストにします。
例1.最終完成品が自動車なら….
- タイヤ
- ブレーキ
- ハンドル
- オイル
- エンジン
例2.化粧品なら….
- グリセリン
- BG
- ベンチレングリコール
- スクワラン
- カルボマー
リスト化後、部材のそれぞれに原産判定
その後、一覧のぞれぞれに対して「原産」又は「非原産」と判定していきます。原産と非原産とは?
- タイヤ→ 非原産
- ブレーキ→ 非原産
- ハンドル→ 原産
- オイル→ 非原産
- エンジン→ 非原産
サプライヤー証明書は、これらの内「原産」として申請する物を立証する資料です。完成品に使う原材料の内「原産品」として申請する場合に必要です。(非原産であれば、不要)
具体的は、最終完成品のメーカーが対比表やワークシートを作成。この一覧に「原産」が含まれる場合に、その部材を納入するメーカーに対してサプライヤー証明書の発行を依頼してきます。
サプライヤー証明書の発行依頼を受けたメーカー
発行依頼を受けた部材メーカーは、サプライヤー証明書を作成し、最終完成品のメーカーに対して発行します。但し、ただ、書類を発行すればいいのではなく、そこには「根拠」が必要です。
サプライヤー証明書の根拠とは?
サプライヤー証明書は、自社が納入する部材(部品)が真に協定上の「原産品であること」を立証する為、必ず根拠が必要です。そして、この根拠とは、最終メーカーが適用しようとしている協定上の原産性を満たすことを書類で立証することです。
具体的には、
- 適用予定の協定を確認。
- 協定上の自社商品(納入する物)の原産性ルールを確認
- CTCルールやVAルールなどを適用し、真に原産性があることを確認する。
- 上記3の結果、原産性があると判定できた場合に、初めてサプライヤー証明書を発行できる!
サプライヤー証明書の見本
サプライヤー証明書の見本は、次の通りです。
1.生産者情報
生産者とは、サプライヤー証明書の発行をお願いする方です。原材料を仕入れて最終完成品にしているメーカー、つまり原産品判定を受けたい人のことです。
ある商品を分解すると、完成品の製造を行う最終生産者と、その完成品を作る為の原材料を製造する生産者の2者がいます。あくまで最終完成品の生産者からの視点です。
サプライヤー証明書は、原材料の生産者から完成品の生産者へ宛てられる「原産を証明する書類」です。つまり1番に入るのは最終完成品の生産者の名前です。
2.サプライヤーの氏名
原材料の供給をしているサプライヤーに関する情報を書きます。
3.協定名
どの国との協定を使うのかを書きます。
例えば、日本とタイとのEPAを使うのであれば「日タイEPA」「日タイ経済連携協定」です。以下の7番の判定基準などは、ここで記入する経済協定で決めらている内容が基準になります。
4.品名
原材料名(日本語)/原材料名(英語)と書きます。
5.製造番号や型番など
製造する原材料の製造番号や型番号などを書きます。
6.HSコード
原材料が該当するHSコードを書きます。このHSコードは、税関や通関業者などで調べてもらうようにしましょう。
7.判定基準
上で決まったHSコードで決められている原産基準を書きます。この基準は、各協定の本文三章付近にある一般規則や品目別規則で調べることができます。この基準の中には、CC(二桁変更)、CTH(四桁変更)、CTSH(6桁変更)、RVC40%などのルールがあります。どの基準をもって原産品として判断したのかを書きましょう。多くの場合、CCやCTHとなるはずです。
8.生産場所
その原材料(完成品)は、どこの工場で生産したのかを書きます。実際に商品を製造している工場の住所、工場名などを書きます。もし、生産を委託しているときは、その委託先の工場に関する情報を書きます。
サプライヤー証明書を発行するときの流れ
- 最終メーカーからサプライヤー証明書の発行を依頼される。
- サプライヤーは、適用する予定の協定を最終メーカーに確認
- サプライヤーは、自社商品の部材(納品する物)の判定を開始する。
- サプライヤーは、自社商品の構成材料をリスト化する。
- サプライヤ構成材料のそれぞれを原産・非原産の判定
- 同時にCTCルールやVAルール等の適用を試みて、2の協定上の原産性を満たすかを確認する。
- 満たせる場合は、対比表又はワークシートを作成する。
- その後、1のメーカーに対して、サプライヤー証明書を発行
- なお、7の書類と8の書類は、管理番号等で紐づけをして、いつでも検認が受けられるように保管をしておく。
サプライヤー証明書のフォーマット
サプライヤー証明書のひな形を作成しました。この資料は、経済産業省が公開する「EPAの保存すべき資料の例示」を参考にしています。よろしければ、ご自由にお使いください。ただし、二次配布等はおやめください。
参考情報1:EPA上の原産性とは?
特定原産地証明書(EPA上)の原産性とは何でしょうか?
- 日本で製造されていれば良いのでしょうか?
- 全て日本の原材料だけで作れば良いのでしょうか?
残念ながら、どちらもEPAの原産性の定義には当てはまりません。EPA上の原産性とは、品目ごとに決められている「原産性ルールを満たす物」です。
例えば、口紅の特定原産地証明書を取得するときは、口紅に定められている原産性条件を満たします。当然、この条件は、輸出先国と使用するEPAによっても変わります。
原産性とは、品目ごとに決められている原産性条件をクリアする物だと覚えておきましょう。逆に言うと、この原産性ルールを満たさない限り、日本の工場で生産したとしても、EPA協定上の原産品にすることはできません。
参考情報2.原産が持つ2つの意味
EPA上の原産には次の2つの意味が含まれていることです。
- 完成品の原産性
- 完成品を構成する部材の原産性
完成品の原産性とは、口紅であれば、口紅全体です。一方、部材の原産性とは、その口紅を構成する原材料の原産性です。この記事のテーマにしているサプライヤー証明書は、後者の原材料の原産性を証明する書類です。
参考情報3.サプライヤー証明書の問題点
特定原産地証明書を取得するときに提出する対比表やワークシートは、基本的に、原材料を『非原産』として申請します。これをすることで、サプライヤー証明書が不要になるかです。
ただ、ルール上、どうしても原産性部分を必要になることもあります。この場合にサプライヤー証明書を取得(部品メーカーに発行を依頼する)します。ただ、サプライヤー証明書の発行を受けるときは、発行元がしっかりと根拠に基づき書類を発行しているかを確認することが重要です。
意味を理解せず発行するサプライヤーも多い!
つまり、特定原産地証明書を取得する人が、部材の供給者にサプライヤー証明書を発行してもらうときは、供給者に対して、協定上のルールを伝えて、原産品としての定義を満たしているのか?を確認してもらいます。
仮に、完成品をCTCルールで証明するなら、サプライヤーに対して「対比表(サプライヤー用)」などを渡して、判定してもらいます。
一方、完成品をVAルールで証明するなら、部材自体もVAルールで決められている閾値(しきいち=およそ40%)を超えていることを確認してもらいます。サプライヤーは、この対比表(サプライヤー用)の結果をもって、原産品であれば、サプライヤー証明書を発行します。
特定原産地証明書を取得する人→ 原材料を『原産品」として申請する物のサプライヤー証明書を取り寄せる!
部材のサプライヤー → サプライヤー証明書を要求している人から原産性ルールを聞き、それに基づき、自社の供給部材が原産性があるのか?を判定。
判定後、原産性が確認できれば、サプライヤー証明書を発行します。逆に言うと、原産性の確認をしていないのに、むやみにサプライヤー証明書を発行してはいけないです。
もし、サプライヤー証明書の根拠があやふやなまま発行していると、輸入国政府から行われる「検認作業」のさい、誤りが指摘されて、原材料の原産性が否認される可能性があります。
まとめ
- サプライヤー証明書を受け取ることで、原材料に対する原産性を証明
- サプライヤー証明書を発行するときは、原産の根拠を示す書類が必要
- 特定原産地証明書を取得する人は、サプライヤーに対して、原産ルールを説明して、協定上の原産品であることを確認してもらう。
- 基本的に部材を非原産として申請して、必要最低だけ原産品として申請するのが一般的です。
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