【重要】 サプライヤーが証明書を発行するときの注意点

サプライヤー特定原産地証明書
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関税ゼロで貿易(EPA)をするときは、特定原産地証明書が必要です。特定原産地証明書は、輸出国側で取得した後、輸入者へ送ることで有効になります。また、この特定原産地証明書を取得するときは、日本の原産品であることを証明する作業が必要です。

具体的には、輸出者は、日本商工会議所に対して、原産品資料の提出をして判定を受けます。判定の結果、原産品であることが認められると、無事に特定原産地証明書を手に入れられます。

ここでのポイントは、輸出者が原産品判定のための資料を作成&提出した後、判定を受けなければならないことです。つまり、原産品資料の作成ができない限り、本当に日本で生産された物であっても、原産地証明書の取得はできません。

では、この原産品資料とは、どのような物なのでしょうか? これを理解するには、輸出する品に設定されている原産性条件と、その原産性条件を満たすことを証明する各種ルール(CTC、VAなど)の理解が必要です。この基礎的な部分は「関税ゼロ貿易ガイダンス」でまとめていますので、ご覧ください。

今回は、原産条件のルールの内、部品の供給メーカーが発行する「サプライヤー証明書」の発行を受けるときの注意点をお伝えしていきます。なお、原産性がないのに、サプライヤー証明書を発行していることがわかると「検認」によって、関税免除の取り消しがなされる可能性があります。その場合、特定原産地証明書のペナルティが発生します。

サプライヤー

サプライヤー証明書を受け取るときに注意すること

サプライヤー証明書とは、ある完成品を作るときに必要な部材(部品)について、それを製造しているメーカー(部品会社)が「部材の原産性」を証明する資料です。おそらく、この説明を聞いてもピンとこない方が多いと思いますので、もう少し丁寧に説明していきます。

まずは完成品についてです。ここでいう完成品とは、車、大型機械などの機械製品もあれば、化粧品、食べ物などもあります。輸出する商品=完成品と考えてください。では、この完成品を構成する部材に分解してみましょう。イメージでいうと、ミニ四駆と呼ばれるおもちゃを分解していくのと同じです。

例えば、車であれば….

  • タイヤ
  • ブレーキ
  • ハンドル
  • オイル
  • エンジン

などがありますね。また、化粧品であれば…

  • グリセリン
  • BG
  • ベンチレングリコール
  • スクワラン
  • カルボマー

などがあります。要は、完成品と、それを構成する部材(原材料)の関係です。そして、この部材をさらに一つ一つ考えていくと、様々な会社が製造している可能性があります。

例えば、自動車であれば、

  • タイヤは、株式会社A
  • ブレーキは、株式会社B
  • ハンドルは、株式会社C
  • オイルは、株式会社D
  • エンジンは、株式会社E

などが考えられます。これらの会社のことを「サプライヤー」と言います。そして、このサプライヤーが提供する部品について「協定上の原産品であること」を証明するのが「サプライヤー証明書」です。まずは、この完成品、部材、サプライヤー、そしてサプライヤー証明書の関係を頭に入れておきます。

  • 完成品は、部材(部品・原料)をまとめて一つにした物→車、完成品の化粧、食べ物など
  • 部材は、完成品を構成するための一つの原料→ ケーキでいえば、小麦粉、卵、牛乳など
  • この部材を供給する業者をサプライヤー、そして、このサプライヤーが供給した部品に原産品であることを証明するのがサプライヤー証明書

特定原産地証明書とサプライヤー証明書の関係

次にサプライヤー証明書と、特定原産地証明書の関係を説明します。記述の通り、特定原産地証明書を取得するときは、原産性資料を用意する必要があります。この原産性資料とは、輸出する商品が「本当に日本の原産品であるのか?」を証明するものです。より具体的に言えば、CTCルールで証明するときは、対比表。VAルールで証明するときは、ワークシートです。

CTCルールとは? 完成品のHSコードと完成品に含まれる原材料のHSコードとの間に差があることで原産品にするルール

VAルールとは? 商品に対する付加価値部分(日本で製造費、人件費などの合計)が指定の割合以上で原産品にするルール

特定原産地証明書を取得する人は、これらどちらかのルールを使い証明します。このとき、対比表やワークシートの中に含まれる部材(原料)を「原産材料」として申請するときに必要になるのがサプライヤー証明書です。非原産として申請すれば不要です。

原産性とは何か?

ここで一つの疑問が生まれてきます。特定原産地証明書の「原産性とは何か?」です。原産と書かれているため、日本で製造されていれば良いのでしょうか? または、全て日本の原材料だけで作れば良いのでしょうか? 残念ながら、どちらもEPAの原産性の定義には当てはまりません。EPA上の原産性とは、品目ごとに決められている「原産性ルールを満たす物」を言います。

例えば、口紅を輸出するとします。このとき、口紅の特定原産地証明書を取得するときは、口紅に定められている原産性条件を満たすようにします。もちろん、この原産性ルールは、何の商品を。どこの協定を使うのか?によって、細かく決められています。仮に、日本とタイとの協定上における口紅の原産性ルールを調べてみると….以下のように定義されています。

第三三〇二・一〇号から第三三〇六・一〇号までの各号の産品への当該各号が属する項以外の項の材料からの変更、
原産資格割合が四十パーセント以上であること(第三三〇二・一〇号から第三三〇六・一〇号までの各号の産品への関税分類の変更を必要としない。)又は、
使用される非原産材料についていずれかの締約国において化学反応、精製、異性体分離の各工程若しくは生物工学的工程を経ること(第三三〇二・一〇号から第三三〇六・一〇号までの各号の産品への関税分類の変更を必要としない。)。

引用元:原産地規則ポータル 関連記事:原産地規則ポータルの使い方

内容を見ると、少し難しく感じられますね。ただ、今は内容を理解しようとするのではなく、原産性とは、品目ごとに決められている原産性条件をクリアする物だと覚えておきましょう。逆に言うと、この原産性ルールを満たさない限り、日本の工場で生産したとしても、EPA協定上の原産品にすることはできません。

重要ポイント:原産性とは、品目毎に決められている原産ルールを満たした状態のこと。満たさない限り、非原産品扱いになる。

原産性の「原産」が持つ2つの意味とは?

EPA上の原産とは、品目ごとに決められている原産性ルールを満たすことです。そのため、特定原産地証明書を取得するときは、まずは原産地規則ポータルなどを使って、協定で定められている原産性ルールを確認することからスタートします。また、このとき、忘れてはならないのが、この原産には次の2つの意味が含まれていることです。

  • 完成品の原産性
  • 完成品を構成する部材の原産性

完成品の原産性とは、口紅であれば、口紅全体が原産性を満たしているのか?を考えることです。一方、部材の原産性とは、その口紅を構成する原材料が原産性を満たしているのか?を確認することです。この記事のテーマにしているサプライヤー証明書は、後者の原材料の原産性を証明するための書類です。

原産性とは、完成品全体に対する考え方と、完成品に含まれる原材料に対する考え方の2つがあります。

サプライヤー証明書の問題点

何らかの商品の特定原産地証明書を取得するときは、基本的に、原材料をすべて『非原産』として申請して、必要な分だけを「原産」にすることが一般的です。このようにすることで、原産部材として申請するときに必要になる「部材メーカーからのサプライヤー証明書」が不要になるからです。

下の表のように、必要最低限だけ原産品として申請します。必要最低限だけがポイントです。とはいえ、ルール上、どうしても原産性部分を必要になることもあります。この場合は、部材(原料)を供給している所からサプライヤー証明書を取得して、部材自体の原産性を証明します。しかし、このとき、一つ大きな問題点があります。それが、部材メーカーがサプライヤー証明書を発行するときに、部材自体の原産性を確認しないまま発行してしまうことです。

少し頭が混乱しそうですね。ここでおさらいをしておきましょう! まず、特定原産地証明書を取得する人は、完成品全体の原産性を立証することが求められます。完成品の全体の原産性です。この原産性を利用するときは、多くの場合、使っている原料を非原産として申請をして、なるべくサプライヤー証明書を取り寄せないようにしています。

しかし、ケースによっては、原材料についてもサプライヤー証明書で原産性を証明する必要がでてきます。(CTCであれば、HSコードが変更しない。かつデミニマスや累積でも救済不可のとき。VAルールであれば、原産資格割合(VNM)が足りないときなど)完成品の製造者は、部材メーカーからサプライヤー証明書を取得して、完成品全体の原産性をクリアするようにします。

つまり、特定原産地証明書を取得する人が、部材の供給者にサプライヤー証明書を発行してもらうときは、供給者に対して、協定上のルールを伝えて、原産品としての定義を満たしているのか?を確認してもらう必要があります。仮に、完成品をCTCルールで証明しているのであれば、サプライヤーに対して「対比表(サプライヤー用)」などを渡して、判定してもらいます。

一方、完成品をVAルールで証明しているのであれば、部材自体もVAルールで決められている閾値(しきいち=およそ40%)を超えていることを確認してもらいます。サプライヤーは、この対比表(サプライヤー用)の結果をもって、原産品であれば、サプライヤー証明書を発行する流れになります。

特定原産地証明書を取得する人→ 原材料を『原産品」として申請する物のサプライヤー証明書を取り寄せます。

部材のサプライヤー → サプライヤー証明書を要求している人から原産性ルールを聞き、それに基づき、自社の供給部材が原産性があるのか?を判定します。判定後、原産性が確認できれば、サプライヤー証明書を発行します。逆に言うと、原産性の確認をしていないのに、むやみにサプライヤー証明書を発行してはいけないということです。

もし、サプライヤー証明書の根拠があやふやなまま発行していると、輸入国政府から行われる「検認作業」のさい、誤りが指摘されて、原材料の原産性が否認される可能性があります。原材料の原産性が否認されるということは、完成品に対する原産性も否認されることになり、つまり、これまで免税扱いになっていた関税も徴収さます。もちろん、この徴収は遡及的に行われ、かつペナルティが加算されます。

サプライヤー証明書を受け取る人が発行主に対して確認するポイント

このような事実をふまえると、特定原産地証明書を取得する人がサプライヤー証明書を受け取るときは、次の2つの点を確認しなければならないことがわかります。

・サプライヤーに対して、協定上の品目ルールを伝えているのか?

・サプライヤーは、対比表(サプライヤー用)などで原産品を確認した後、サプライヤー証明書を発行しているのか?

根拠に基づきサプライヤー証明書を発行しているのか?が重要です。間違っても、サプライヤー証明書という紙一枚だけを書けばいいと考えてはいけません。証明書を発行するには、発行するだけの根拠が必要です。その根拠を対比表(サプライヤー用)で確認します。

そして、特定原産地証明書の取得する人は、サプライヤーに対して、完成品は、どちらのルールで証明しているのか?を伝えます。どちらのルールとは、CTCルールまたは、VAルールのことです。サプライヤーは、これらのルールに沿って、自社の商品(部材)に対する判定を行った後、サプライヤー証明書を発行します。

CTCルール=協定で定めらている変更基準を満たすのか?

VAルール=協定で決めらている原産資格割合を満たすのか?

サプライヤーがサプライヤー証明書を発行するときの正しいフロー

サプライヤー証明書

まとめ

  • サプライヤー証明書を受け取ることで、原材料に対する原産性を証明できます。
  • サプライヤー証明書を発行するときは、原産の根拠を示す書類が必要です。
  • 特定原産地証明書を取得する人は、サプライヤーに対して、原産ルールを説明して、協定上の原産品であることを確認してもらわなければなりません。
  • このようなわずらわしさから、基本的に部材を非原産として申請して、必要最低だけ原産品として申請するのが一般的です。
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