EPAを利用するときは、協定内で決められている品目別規則に従って、産品が原産品であることを証明します。この証明ができない限り、相手国または日本へ輸入するときの関税の免税は受けられません。そこで、この記事では、品目別規則の基本知識と調べ方をご紹介していきます。
EPAと品目別規則
「産品が協定上の原産品であること」これがEPAを利用して関税削減の恩恵を受けるための条件です。協定上の原産品とは、利用するEPAに加盟している国で生産された産品です。
例えば、日タイEPAであれば、日本またはタイで生産された物が「日タイEPA上の原産品」です。日アセアンEPAであれば、日本とアセアン諸国。TPPであれば、日本またはTPPに加盟する10カ国で生産される産品が協定上の原産品です。
ただし、その国の工場で生産されている産品でも無条件に原産品にはなりません。一体、なぜでしょうか? この答えがこの記事のテーマである「品目別規則/原産地規則」です。
品目別規則とは?
EPAを活用する上で最も大切なポイントは「協定国の原産品であるのか?」です。輸出活用、輸入活用問わず、まずは、この協定の原産品であることを証明します。
例えば、日米貿易協定を適用する場合は….
- 日本向けの輸出は「アメリカの原産品」
- アメリカ向けの輸出は「日本原産品」
上記2つの絶対的な条件を満たす必要があります。では、ここで疑問に思います。
「何を持って原産品とするのか?」です。
例えば、日米貿易協定を適用して、アメリカに産品を輸出する場合に、中国で製造した商品を日本に輸出し、そこで「テキトーな加工」をした後、日本から再輸出した物でも「日本の原産品となるのか?」です。
答えは…もちろん、原産品とはならないです。では、なぜでしょうか? この根拠や基準を示すのが「原産品規則」や「品目別規則」です。
品目別規則/原産地規則=何をクリアすれば、原産品とみなすのか?の基準
一般規則との違い。
原産地規則、品目別規則を覚えようとすると、一般規則、PSR等の用語も出てきます。何だか頭が混乱しそうです。ここで品目別規則と一般規則の違いを確認しましょう!なお、原産地規則のことを英語で「ROO」、品目別規則を「PSR」とも言います。
一般規則と品目別規則は、一般枠と特別枠の関係に似ています。イメージは、次の通りです。
例えば、このカフェの入場料は、一人500円です。これが誰に対しても適用される「一般ルール」です。そして、カフェの奥にあるVIPルームに入場するには、追加で1000円がいるとしましょう!これが「品目別規則」です。
つまり…..
- 当該協定は、すべての品目に、一般ルールを適用する
- 但し、別に品目別ルールで定められている物は、品目別ルールを優先適用する
例:「日アセアン協定」を確認してみましょう。日アセアン協定では、次の通り規定されています。
- 一般ルール=CTH(項変更)又は、RVC40%による証明
- 品目別ルール=別に付属書に定める。
よって、日アセアン協定で商品を輸出する場合は、次のように原産地規則を確認します。
- 品目別規則はある?→ある場合は、それに基づく。
- ない場合→一般ルールに基づく。
以上が一般ルールと品目別規則の違いです。そして、実際の運用では、これら2つの内、いずれかに該当することを証明するために、次のルールがあります。詳細は、別記事でご確認ください。
品目別規則の調べ方
協定ごとに決められている品目別規則は、どのように調べればいいのでしょうか? 大きく分けると、次の2つの方法があります。
- 各協定の付属書を確認する
- 税関が運営する原産地規則ポータルで調べる
基本的に各協定毎に品目別規則(付属書)があります。しかし、実際に読み込むには大変であるため、税関が「原産地規則ポータル」を提供しています。このサイトの中で、HSコードと適用希望の協定を選ぶだけで、すべての品目別規則を確認できます。
では、原産地規則ポータルの使い方を確認していきましょう!
原産地規則ポータルの使い方
にアクセスします。
トップページの中ほどに「ピックアップ」があります。原産地規則の検索をするときは、下の赤枠部分をクリックします。
品目別規則の検索方法
品目別規則の検索画面です。2020年現在、日本は17の国々とのEPAを結んでいます。この画面において、すべての協定における原産地規則を確認することができます。具体的な操作方法は、最初に1番で調べたい協定をチェックします。(複数の選択は不可です。)次に2番の空欄の中に、調べたい品目コード=HSコードを入力します。調べたい協定と品目コードを入力したら検索を押します。
関連記事:輸出商品のHSコードの調べ方
検索結果の一例
こちらが検索結果の画面です。今回は、日シンガポールEPAのコーヒーにおける品目別規則を調べてみました。品目別規則というのは下の赤枠部分のことです。
この品目の場合「第0901.11号 又は 0901.12号の産品への他の類の材料からの変更」と書かれています。つまり、外国材料を使って生産してもかまわない。しかし、それを認めるためには、CTCルール(CC変更)の基準があります。これが「品目別規則」です。品目別規則には、CTCルールの他、VAルール(付加価値基準)、SPルール(加工工程基準)などがあります。
それではもう一つ別の物を検索してみましょう!今度は、日タイEPA、新品のゴムタイヤの品目別規則を確認してみます。この場合も外国の原料を使っていても、日本の原産品にできるルールです。赤枠部分にご注目ください。この商品の品目別規則は、3つあります。これらのうち、いずれか一つの条件を満たせば、日本の原産品と認められます。
- 第4005項から第4011項までの各項の産品への当該各項以外の項の材料からの変更
- 原産資格割合が40パーセント以上であること
- 使用される非原産材料についていずれかの締約国において化学反応…….
ちなみに上記の1~3をルール名でいうと、以下の通りです。
- 関税分類変更基準/CTC
- 付加価値基準/VA
- 加工工程基準/SP
原産地規則ポータルの3つのポイント
原産地規則ポータルを利用するときは、次の3つポイントがあります。
- HSコードのバージョンの違いに注意
- 品名で品目別規則を探したいときは品目別原産地規則一覧
- 選択した経済協定にないHSコードは該当しない
1.HSコードのバージョンの違いに注意
EPAのHSコードには「基準年」の考え方があります。2017年現在、日本における輸出入申告はHS2017という最新バージョンを基に行われています。しかし、各協定の品目別規則で示されているHSコードは「各EPAが発効されたときのHSコード」になります。これを基準年と言います。
日本は、最初の国とEPAを締結してから10年以上になります。このときに締結した国の多くが、東南アジア諸国です。もし、東南アジア諸国との原産地規則を調べるときは「HS2002のHSコード」が基準になるため注意しましょう。オーストラリアであれば、HS2012など、調べる協定ごとに入力するHSコードのバージョンを意識して使い分けます。
HSコードのバージョンを調べる方法
HSコードのバージョンは、実行関税率表(輸入)、輸出統計品目表(輸出)で確認ができます。輸入と輸出2つがあるため注意します。
関連記事:HSコードのバージョン違い
2.品名で品目別規則を探したいときは品目別原産地規則一覧
商品のHSコードがわからないときは、品目別原産地規則一覧ページから探しましょう。
3.選択した経済協定にないHSコードは該当しない
これは、ポイント1と似ています。各協定は基準となるHSコードのバージョンが異なります。商品に関する原産地規則を調べるときに、調べるHSコードを最新の2017を基準にすると「該当なし」とされる場合があります。そのため、必ず各協定で決められているHSコードのバージョンを基準にリサーチなどをすること大切です。
以上が原産地規則ポータルの使い方です。
各協定の一般協定と品目別規則一覧
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インドネシア | ブルネイ | アセアン全体 |
フィリピン | ベトナム | インド |
オーストラリア | メキシコ | ペルー |
スイス | チリ | TPP |
日欧EPA | 日米協定 | RCEP |
日英協定 |
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- 【事前教示制度】HSコードがわからないときの問い合わせ先
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よくある疑問
Q.中国、韓国、台湾、カンボジア、英国とはどうなっていますか?
中国、韓国とは、初のEPAである「RCEP」、英国とは「日英協定」が締結される予定です。また、カンボジアとの間は、先のRCEPの他、日アセアン協定があります。ちなみに、カンボジアは、特別「特別特恵税率」も適用できます。
他方、台湾との間は「中国との兼ね合い」があるため、EPA等は締結できないです。
Q.原産資格割合とは?
商品の最終的な価値(価格)に、自国の原産材料は、何パーセント含まれているか?を示す割合です。「製品の価値の半分は、自国品(原産品扱いの品)を使うことを求める物です。ちなみに、この原産資格割合のことを「QVC」や「RVC」とも言います。
EPAに関するおススメの記事→初心者向けEPAマニュアル
EPA相談/特定原産地証明書の取得代行支援サポート(対比表の作成)
まとめ
- 原産地規則は、商品の原産性の根拠
- 一般ルールと品目別規則の2つがある。
- 品目別規則に無いものは一般ルールを適用する。
- いずれの場合も証明ルールに基づいた原産であることが重要
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