貿易では、商品を特定するためにHSコードを使います。HSコードとは、商品と数字を組み合わせた一覧表です。一つの数字に一つの商品が対応しているため、数字を見ただけで、それが何以かを把握できます。もちろん、これは日本国内のお話ではなく、世界各国でも同じ物を使っています。
この記事では「HSコードは誰が決めているのか?」HSコードと関税率や輸入法令の関係、実行関税率表の見方、各種ツールの使い方や事前教示制度についてご紹介していきます。
HSコード
HSコードの概要と目的
HSコードは、HS条約(世界の国々との間で決められている条約)によるコード表です。コード表は、6桁の数字と品目を一対にしたものです。
例えば、次の物があります。
- りんご=0808.10
- チューイングガム=1704.10
- スキー靴=6401.10
HS条約では、「品目」と「6桁の数字」を一対にした物が10000程あります。そして、輸出入ビジネスは、このHSコードと非常に密接な関係があります。ちなみに、貿易実務の現場では、このHSコードのことを「輸出入統計品目番号」、「関税番号」、「税番」、「通関統計」などと言います。それだけ貿易業界全体とHSコードは深く結びついています。
HSコードの2つの目的
なぜ、貿易業界とHSコードは、密接なつながりがあるのでしょうか? それは、HSコードの目的でわかります。HSコードは、輸出入のそれぞれで次の目的があります。
輸入 | 輸入関税率の把握、輸入規制を知る |
輸出 | 国内品の輸出状況の把握 |
輸入時は、輸入規制の確認(商品を輸入するときに関係する法律)の確認や、対象品目の輸入時にかかる「関税率」を知る目的で使います。他方、輸出時のHSコードは、日本と諸外国との間の貿易取引を把握するためです。そして、この輸出入状況は、財務省が運営する「貿易統計」に反映されます。輸出輸入者は、この統計価格を一つの基準として取引の見立てをし、次なる貿易ビジネスの拡大を目指す方も多いです。
HSコードの使用例
こんな場面でHSコードを使います!
- 輸入の法令を調べる。
- EMSで発送するときに使う。
- 輸入の関税率を調べる
HSコードは誰が決める? 抑えておきたい4つのルール
このHSコードは誰が決めるのでしょうか? 税関でしょうか? それとも警察でしょうか? 実は、ご自身が輸出入する品目のHSコードは、ご自身で決めるのが原則です。つまり、品目などの特徴から、後述する実行関税率表や輸出統計品目表などと照らし合わせて、輸入者が最も適当なHSコードを選びます。(10000程から該当する1つを選択)
しかし、実際の所、ご自身でHSコードを決めるのは、非常に難しい上、選定ミスを引きおこす可能性があります。そのため、貿易実務上では、取引をしている通関業者に聞いたり、税関の事前教示制度を活用したりして、該当するHSコードを特定することが多いです。
HSコードに関する3つの大原則
HSコードは、ご自身で特定することが原則です。その他、HSコードを理解するために、次の三つも合わせて知っておくと良いです。
- 世界共通は、6桁まで。それ以降は各国が任意の桁数を付け足して活用
- 輸出と輸入でコードは微妙に違う。
- HSコードは、部、類、項、号で構成される。
1.世界共通は、6桁。以降は各国による。
HSコードは、HS条約を根拠として、世界各国で共通の物を使用します。これにより、貿易取引が円滑する目的があります。しかし、実は、HSコードは、完全に共通の物を使っているわけではなく、世界共通の6桁の後に独自のコードを付け加えて利用しています。
例えば、日本の輸入HSコードは、世界共通の6桁の数字の後、3桁を足した「9桁」でHSコードを使っています。アメリカは、4桁を足した「10桁」です。このように、各国ごと、世界共通の6桁に任意の桁数を付け足しています。また、6桁部分に数字を足す方法の他、域内で独自のコードを使用。その域内コードとHSコードを紐づけている物もあります。(メルコスールなど)
2.輸出と輸入でコードは微妙に違う。
上記と同じ理屈ですが、輸出時のHSコードと輸入時のHSコードは、微妙に違います。日本の場合では、次の通りです。
- 輸入=9桁のコード
- 輸出=6桁のコード
3.HSコードは、部、類、項、号で構成される。
HSコードは、21の部、その中に97の類があり、部の中に項や号があります。これらは、HSコードの上位(左側)から数えた桁数を示します。
- 類=上位2桁
- 項=上位4桁
- 号=6桁
HSコードの調べ方(検索方法)とツール
次にHSコードを調べる方法をご紹介しています。HSコードは輸出や輸入。さらには、外国などにより変わります。そのため、ここでは、目的ごとに最適なHSコードの調べ方をご紹介します。
1.日本のHSコードを調べる。(輸入)
2.日本からのHSコードを調べる。(輸入)
3.諸外国の輸入HSコードを調べる。(相手国の関税やEPAの原産地規則の確認)
1.輸入取引×日本のHSコード
日本の輸入HSコードの調べ方です。輸入HSコードは、日本側の関税や輸入規制を知るために調べます。調べる方法は、次の4つです。
- ウェブタリフ
- 実行関税率表
- 通関業者による特定
- 税関の事前教示
1と2.ウェブタリフ&実行関税率表
ウェブタリフ又は、実行関税率表は、どちらもネットを使いご自身で調べる方法です。この方法によるHSコードの特定は、ご自身の貿易取引に強く影響されるため、参考程度に利用した方が良いです。といいますのは、仮に誤ったHSコードを基準にして輸入申告をすると、本来の関税額より多かったり、少なかったりする可能性が出てくるからです。関税を多く支払っている分は問題ではありませんが、少ない場合は、輸入後の事後調査などでペナルティを受けます。
実行関税表の解説記事の中で、各表の税率の見方、エクセルなどを使う方法、英語版なども合わせてご紹介しています。
3と4.通関業業者や税関による特定
対して、通関業者や税関によるHSコードの特定は、ご自身で行うより、間違ったコードの特定を防止できます。特に税関の「事前教示制度」は、税関の関税監査官に対して公式にHSコードの教示を求められるため、安全性が高いです。
事前教示制度には、窓口などにおける口頭教示、メールなどにる教示、文書による教示などがあります。ご自身で利用しやすい方法を選べます。但し、税関審査時に優先して適用されるには、「文書による事前教示」を受けた場合に限られ、その効果は、3年間と決められています。
例えば、実際に輸入申告時に審査をした税関職員は「対象商品のHSコードは○○で関税率は何パーセントだ!」と質問をしてきたとします。このようなときに、事前教示を受けた書類を提出することで、事前教示通りに税関審査が終わります。
- 簡易的な関税額の調査や輸入法令の調査をしたい=自分でやってもOK
- 輸入原価計算などをするとき=できるだけ正確なHSコードを特定してもらう。
2.輸出取引×日本のHSコード
日本から輸出するときも一部の品目で「他法令」が関係します。また、相手国の規制を調べる上でも重要です。(参考程度)輸出HSコードを調べるときは、次の2つの方法があります。
- WEBタリフ
- 輸出統計品目表
3.諸外国のHSコードと税率、桁数などの調べ方
輸出をするときに、外国におけるHSコードを調べたいと考える方も多いでしょう。ここは、勘違いする方が多いため注意が必要です。日本の輸出HSコード=諸外国が認めるHSコードとはなりません。必ずコードが違います。この誤差による影響をうけるのは、次の物があります。
- 相手国の関税率
- 適用される輸入法令(相手国)
- 特定原産地証明書の取得
例えば、自社の商品を輸出しようと考えている。でもよく調べたら、相手国で規制されている商品だった。又は、相手国で使える特定原産地証明書を日本側で取得しようとした。日本からの輸出HSコードは○○だから。そのコードを基に証明書を取得した。しかし、相手国の税関でHSコードが違うとして否認された。などのケースがあります。
相手国の商品HSコード=日本側の輸出HSコード とはならない。
このことを十分に理解しておきましょう!では、相手国のHSコードは、どのように調べればいいのでしょうか?
例えば、相手国といっても…..
中国、インド、タイ、アメリカ、ドイツ、メキシコ、EU、タイ、インドネシア、シンガポール、台湾、ベトナム、フィリピン、メキシコ、ドイツ、韓国などがありますね。これらの税関サイトに行けば、対象のHSコードを探せます。しかし、非常に面倒です。そのため、輸出実務では、次の方法で相手国のHSコードを特定してもらうことが多いです。
- 輸入者に確認してもらう。
- 現地税関による事前教示(アドバンスタリフルーリング)を使う。
- ワールドタリフを使う。
最も手軽な方法は、あなたの輸出先の相手を通して現地の税関に確認してもらう方法です。この方法は「特定原産地証明書」を取得するための第一歩としてもおなじみです。次に、現地税関が提供する「事前教示」の活用です。1番よりもより正確な情報を引き出せますが、現地税関でも実務上、浸透しているか分かれます。最後のワールドタリフは、簡単な登録をするだけで、世界各国のHSコードや関税率を調べられるサービスです。
よくある疑問
HSコード表の読み方を知りたい
関税率表の独特な見方「段落ち」をお伝えします。下の画像をご覧ください。赤枠と緑枠がありますね。
赤枠は商品の「類」です。その下の緑枠が、類の詳細内容です。実は、この下にもずらっと続きがありますが、記事の作成上、省略します。ちなみに61類の前後の類は、次の通りです。
- 60類 メリヤス編物及びクロセ編み物
- 62類 衣類及び衣類付属品(メリヤス編み又はクロセ編みの除く)
メリヤス編み、クロセ編など聞きなれない言葉ではありますが、ここではあまり深く考えず「様々な要素によって類」が変わることを覚えてください。では、61類の詳細内容をさらに詳しく見ていきます。下の画像には、二つの赤枠があります。
これが61類の「項」にあたる部分です。この場合、項の定義としては、それぞれ「男子用」か「女子用」によって分類する指示があります。仮に男子用の衣類を輸入するときは、女子用の衣類(61.02)には分類できません。もちろん、その逆も無理です。必ず「分類の指示通り」に行っていきます。
男子用の衣類を輸入するとして「61.01」へと進みました。この男子用の衣類もさらに分類されているようです。下の画像をご覧ください。赤枠の部分が、インデント(段落ち)されています。これは、「分類指示」の上下関係を示しています。同じレベルに記載されている項目(緑枠)は、選択するときに、すべて見比べます。
「61.01」には、緑枠の「綿製のもの」「人造繊維製のもの」「その他の紡織用繊維製のもの」があります。これらは、同じレベルの項目です。したがって、6101の中を確定させるために、最初に「綿製の物か?」「人造繊維製の物か?」「その他の紡織繊維か」を見比べます。緑枠が決まったら、次に緑枠よりもさらに下の分類指示を見ます。
例えば、「6101.20」の場合であると、6101.20の下に「010 ~ししゅうしたもの~」と「020 その他のもの」の二つがあります。
これら二つのどちらかを選べばいいことです。この段階で、やっとHSコードが確定します(「6101.20.010」に決定)では、この商品の関税率は、どこを見ればいいのでしょうか? その答えは、表の右側の輸入国と関税率に書かれています。詳しくは「輸入するときに支払う関税・6種類の違い」を御覧ください。
ポイント
1.商品の類を特定します。
2.次に商品の「項」を特定します。
3.項をさらに分類します。分類しなければいけないかは、赤枠の一段落ちの有無を確認します。
4.これでHSコードは確定します。
5.視線を右側に移動させて、対応する関税を確認します。
HSコードを間違えるどうなる?
HSコードを間違えると、輸入の場合は、関税額の増減、輸入ができない。などのケースがあります。他方、輸出場合は、EPAの利用上で問題になる可能性があります。
HSコードの末尾がXやYの意味は?
輸入と輸出で次の意味があります。
輸入の場合
- 課税価格が201,000円未満の少額品→「E」
- 少額合算をしている場合は→「X」
- 再輸入の場合は→「Y」
輸出場合
・再輸出品→「Y」
EPAとHSコードの関係を知りたい!
EPA(自由貿易)を使うためのルールを「原産地規則」と言います。輸出者や輸入者は、商品がこの原産地規則に従っていることを確認した上で、各国税関に申告をすると、関税などが免除や減額されます。そして、この原産地規則と深く関係するが「HSコード」です。
原産地規則の例
- 完全生産品
- 原産材料のみで構成される産品
- 非原産材料を使い生産される産品
上記の内、いずれかの条件を満たすのがEPA上の原産品です。そして、この条件を確認するときに使うのがHSコードです。具体的には、品目のHSコードを類、項、号などに分解した上で、完成品と材料との間に必要な変更があるのか?を確認するために使います。
HSコードの分解
EPAでは、原産地規則を正しく理解するために、HSコードを分解して考えます。先ほどのトマトの例を考えてみましょう。トマトのHSコードは、0702.00です。これを分解すると….
- 07が上位2桁。この部分を「類」
- 0702が上位4桁。この部分を「項」
- 070200が6桁。この部分を「号」
上記の図でもわかる通り、原産地規則は、類>>項目>>号の順に、変更基準が厳しいことを示します。では、もう少し具体的な手順で考えてみましょう!
- 原産地規則を調べる
- 原産地規則の条件とHSコードの関係を知る
この1と2の順番で頭の中を整理していきましょう!
1.原産地規則を調べる方法
EPA(自由貿易)の原産地規則は、税関が運営する「原産地規則ポータル」で調べられます。このサイトで、利用する協定と輸出国側のHSコードを指定するだけで、対象のHSコードに設定されている原産地規則を調べられます。もし、輸出国側のHSコードがわからないときは「外国税関の事前教示制度」の利用を検討しましょう!
2.原産地規則の条件とHSコードの関係
原産地規則ポータルで原産地規則を調べると、商品ごとに表示があります。それぞれがどのような意味なのか、HSコードの関係と合わせて説明していきます。
- 第〇七〇一・一〇号から第〇七一〇・二一号までの各号の産品への他の類の材料からの変更
- CC
- CTH
- CTSH
- 第七六・〇四項から第七六・一六項までの各項の産品への当該各項以外の項の材料からの変更又は、原産資格割合が四十パーセント以上であること(第七六・〇四項から第七六・一六項までの各項の産品への関税分類の変更を必要としない。)
- RVC40%
表示内容例 | 意味 |
CC | CCとは「類変更」を指します。トマトの例であれば、07類ですね。つまり、原産材料として、7類に属する物を使っているときは、原産品とは認めないということです。7類以外/strong>の材料からの生産であれば、原産品と認められます。 例えば、12類に属する種などからの生産であればOKです。 |
CTH | CTHとは「項変更」を指します。トマトの例であれば、0702です。つまり、0702以外に属する材料で作られているものは、原産性が認められます。 |
CTSH | CTSHとは「号変更」を指します。トマトの例であれば、0702.00です。0702.00以外に属する材料で作られているものは、原産性が認められます。CC、CTH、CTSHの中では、最も変更基準が優しいものです。 |
第〇七〇一・一〇号から第〇七一〇・二一号までの各号の産品への他の類の材料からの変更 | CCと表示されている他、類変更は、次のようにも表示されています。この文章の意味は、0701.10~0710.21までに属する完成品の原産性は、他の類(7類以外)の材料を使って生産した物だけ認める意味です。CCだけの表示とは異なり、対象の品目を絞っています。 |
第七六・〇四項から第七六・一六項までの各項の産品への当該各項以外の項の材料からの変更又は、原産資格割合が四十パーセント以上であること(第七六・〇四項から第七六・一六項までの各項の産品への関税分類の変更を必要としない。) | こちらは、関税分類変更基準(CC、CTH、CTSH)と付加価値基準(VA)のどちらも設定されている場合の原産地規則です。 関税分類変更基準の条件は、7604~7616までの各項(7605や7611など)に属する完成品は、それら以外の項の材料(7604~7616以外の材料)を使うことが条件 付加価値基準を利用するときは、完成品に含まれる付加価値の部分が40%以上であること この2つの意味があります。そして、輸出者または、生産者は、どちらか利用しやすい方の証明ルールを使います。 |
RVC40% | こちらの表示もよく目にします。これは、付加価値基準で証明をして、その付加価値が40%を超えていれば、原産品とする条件です。上記で説明した「原産資格割合が四十パーセント以上であること」と「RVC40%」の意味は、同じです。 |
その他、関税率表・HSコードの注意点を知りたい!
関税率表は、商品の関税を決定するための表です。この表は、常に変化し続けています。法律で決められた規定であっても非常に早く更新されます。特にEPAによる効果は、いきなり現れるため、常に情報をウォッチしておくことが重要です。
まとめ
世界中のすべての商品は、HSコード(日本独自を含む)の番号で分類しています。商品のHSコードを特定することによって、それに対応する関税率がわかります。HSコードを特定するための「要素」と、HSコードに対する関税率は「関税率表」に書かれています。
関税率表は「各国との約束」「日本国内の輸入状況」「輸出状況」「国民からの訴え」によって、常に情報が変化し続けています。この変化をしっかりと読み取っていくことが、適切な関税納付、戦略的な貿易取引へとつながります。


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