「日本に商品を輸入するときの関税率は、何パーセント?」これを調べるための表が「実行関税率表」です。そこで、この記事では、実行関税率表の基本的な知識、表の見方、各項目のポイントなどをご紹介していきます。
実行関税率表の解説
商品を輸入するときに支払うのが「関税」です。関税は、商品の原産国、価格、特恵の有無(関税を安くする取り扱い)によって細かく決められています。
例えば、
- アメリカ産のトマトは、2%
- イギリスのキュウリは、3%
- ベトナムの靴は、10%
など、輸入する品目の原産国でも変わります。そして、これらの品目と税率を一枚の表にまとめているのが「実行関税率表」です。
下の画像をご覧ください。こちらが実行関税率表です。左側に品目があり、画面右側には「●%」と記載されています。 原産国と品目、関税率の組み合わせが約10000品目あり、輸入者は、この表から最も適した関税率を見つけます。
しかし、実際、正しく関税率を特定するのは難しいです。そのため、輸入実務の現場では、専門の「税関」や「通関業者」などに依頼をして関税率を特定することが多いです。ただし、輸入原価を計算する意味では、ある程度の範囲で構わないため、ご自身で特定できる方が望ましいです。
HSコードとは?
実行関税率表の左側に注目すると「HSコード」と記載されています。 HSコードは、数字と品目を組み合わせているコード表です。世界共通の物を使っているため、HSコードを伝えるだけで対象の品目を理解できます。(実行関税率表は、表の左側に表示されている)詳しくは「HSコード」の解説記事をご覧ください。
実行関税率表
日本の関税率は、実行関税率表の他、ウェブタリフなども調べられます。外国人の方は「英語版の実行関税率表」もあります。新旧対照表は「日本関税協会のサイト」が便利です。 また、実行関税率表をエクセルデーター(CSV出力)にしたい方は、日本関税協会の「ゼーラム」をお試しください。
それでは、HSコードの一つである実行関税率表による関税率の調査方法を確認していきましょう! なお、輸出のHSコードの確認と関税率の把握は、輸出統計品目表の使い方やワールドタリフの使い方をご覧下さい。以降は、日本に輸入するときにかかる関税率の調べ方をご紹介していきます。まずは、表に関して全体的な説明をします。
表は「21部」「97類」で構成されています。いくつかの類をまとめているのが「部」です。類の下には「項」や「号」のサブグループがあります。まずは「部>類>項>号」の順番になっていると覚えましょう。HSコードを特定するとは、この部から始めるコードを徐々に絞っていき「号」までを特定することです!
実行関税率表・7つのルール
実行関税率表を見るときは、最低限、以下の7つのルールを知っておきましょう。
- 関税率は「通則」に基づき決める。
- 97類の中から最も適切な類を選ぶ。
- 類を選ぶときは「部注」「類注」を確認
- 縦ラインは、関税種類、EPA加盟国
- 左列から右側方向へ視線を移動。これが関税率。
- 同じ商品でも「原産国」が異なると、課される関税率も異なる。
- HSコードの「親子関係」に気を付ける。
1.関税率は「通則」に基づき決める。
関税率の決定とは、物品が関税率表のどこに該当するのか?を決めることです。
例えば、単体のトマトは3%、キュウリは2%の関税率が設定されているとします。この場合、100円のトマトを輸入すれば、3円が関税。100円のキュウリであれば、2円が関税です。では、仮にトマトときゅうりのカット野菜セットとして、一つの袋に入っている場合は、どのように関税が発生するのでしょうか?
別の事例も考えてみましょう。関税率が1%のマウス。3%のディスプレイ、0%の電源コードという「パソコンセット」の場合は、何を基準にすれば、いいのでしょうか?
上記2つの事例でわかる通り、一つの表ですべてを網羅するには、限界があります。そこで、関税率は「通則」を基準にして決定する原則があります。つまり、実行関税率表とは、この通則によって決められた所属を単に表としてまとめた物に過ぎないということです。物品の関税率(所属)は、一にも、二にも通則に基づき決定されます。
税関サイト:通則
2.97類の中から最も適切な「類」を選ぶ
類の抜粋例
基本的に類の番号が若いほど、自然系の物(農産物や水産物)になり、類の番号が上がるごとに加工具合が上がっていきます。
2類 肉製品
4類 天然蜂蜜
7類 野菜類
8類 お茶やコーヒーなど
16類 ソーセージなどの肉の加工品
17類 お菓子類
22類 飲料系・アルコールなど
42類 革製品(ハンドバッグなど)
50類~63類 衣料・繊維系
64類 靴など
65類 帽子系
69類 陶磁器製品
70類 ガラス製品
94類 家具など
95類 がん具系(おもちゃ)
3.部や類に含まれない貨物に該当?
4.縦ラインは、関税の種類、EPAの加盟国
赤枠は、関税率の種類を表しています。関税はその種類に応じて次の順番で決まります。赤枠の税率よりも優先されるのが緑枠の「経済連携協定」の税率です。
- 特別特恵
- 特恵関税
- 暫定税率
- WTO協定
- 基本税率
5.左列のHS番号を右方向へ視線を移動した先が税率
画面上方向からの青矢印と画面左方向からの矢印(赤枠)の交点が、その貨物に適用される税率です。
6.「原産国」が違うと税率も違う。
下の図をご覧下さい。例えば「0704.10.000」のカリフラワーを輸入する場合は、商品の原産国によって以下のように適用される税率が変わります。
上の図を表にまとめると以下の通りです。同じ商品を輸入するときも、原産国によって適用される税率が大きく違います。
基本税率 | 暫定 | WTO | 特恵 | 特別特恵 | シンガポール | メキシコ | |
カリフラワー | WTO未加盟国に適用 5% | 設定なし | WTO加盟国に適用 3% | 設定なし | 特別特恵国に適用 無税 | シンガポール産に適用 無税 | メキシコ産に適用 無税 |
7.HSコードの「親子関係」に注意
下の図をご覧下さい。0704に分類されるのは、キャベツなどです。この内訳を示したものが「0704.10のカリフラワー」「0704.20の芽キャベツ」「0704.90のその他のもの」です。実は、この「その他のもの」にもさらに「ブロッコリー」「結玉キャベツ」「白菜」「その他の物」があります。つまり、HSコードには、必ず親子関係があります。
HSコードを特定するときに、この親子関係を取り間違えてしまうと、関税率が大幅に変わる可能性があるため、十分に注意しましょう!
実行関税率表から関税率を探す手順のおさらい
- 部注や類注を確認して1類~97類の中でも適切なものを選ぶ。
- 表の左側列から親子関係に気を付けながら、適切なHSコードを突き止める。
- 視線を右方向に移動させて、輸入する貨物がEPAの国ですか?YESの場合は、そこで税額確定。NOであれば、4番へ進む。
- 貨物を輸入する国は、特別特恵や特恵関税を適用できる国ですか?YESの場合は、そこで税額確定。NOであれば5番へ進む。
- 暫定是率が適用されていますか?YESであれば、そこで税額確定。NOであれば6番へ進む。
- 輸入する貨物の原産国は、WTOに加盟?YESであれば、そこで税額確定。NOであれば7番へ進む。
- 最後の基本税率で税額が確定
よくある疑問
実行関税率表の本はありますか?
はい、ございます。百科事典のような分厚い物があります。ただし、一般の方は「HSコードインデックス」という本をお勧めします。
単位が2つあるのはなぜですか?
実行関税率表を右側にスクロールすると単位があります。単位には、最大で2つあります。これは次の意味があります。
例えば、椅子の数を表すときは、それを「個」の他、「○○KG」とも表現ができますね!このように同じ物を別の観点で示すときに2つの単位を使用します。
他法令とは何ですか?
とは、対象の商品を輸入するために、税関とは別の機関から確認を受けることです。代表的な物は、食品関係の「食品衛生法」、植物関係の「植物防疫法」などです。
輸出統計品目表と実行関税率表の違いは?
輸出統計品目表は、輸出時のHSコードの分類を示す表です。他方、実行関税率表は「輸入」です。
各国のHSコードを調べるには?
各国のHSコードを調べるには、いくつかの方法があります。最も簡単な方法は「ワールドタリフ」(登録方法)です。その他、各国の税関ホームページでも調べられます。探し方は、グーグルなどで「国名(英語)+HS CODE」などと検索します。
- アメリカ:Harmonized Tariff Schedule Search
- 中国:China Customs Hs Code, China tariff– ETCN – E-to-China
HSコードの英語の略は?
「Harmonized Commodity Description and Coding System」の略です。HS条約と呼ばれるルールが根拠として、世界中の商品を数字で分類しています。
国際郵便/EMSでも利用する?
国際郵便(EMS)もHSコードを利用します。基本的には、商業貨物を対象としています。しかし、個人用の物品でもHSコードを記入することで、相手国での通関がスムーズになり、お届け日数が変わります。個人用の物品(非商業)のHSコードの記載は、任意ではありますが、なるべく早く届けたい場合は、記載することをお勧めします。
まとめ
- 実行関税率表は、日本に商品を輸入するときにかかる関税率を表示する表
- 実行関税率は、21の部から始まり、類、項、号ごとに分類されて表示されている。
- 実行関税率での関税率の調査は難しい。一般的には、通関業者や税関での調査が多い。
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